俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第12話 巨大芋虫の大群はまじで核兵器級の被害をもたらすと思う。主に精神に







 魔物を探して三千里。そもそも一里の距離もわかっていないのだが。
 しかもさらに問題なのは、探すまでもなく姿を現す魔物だよな。まぁそりゃ敢えてわかりやすく魔力を放出してたら、魔力が生命力と言っても過言ではない魔物にとっては楽に感知できますわな。


 そしてこの109階層は、女性陣が絶対に嫌がる場所というか、簡単に言うと芋虫がクネクネと嫌な動きで更に高速で壁床天井問わず這って移動してくる訳だ…………しかも群れで。


 その光景には、特別虫を嫌いな訳でも無い俺でもゾッとせざるを得ない。スキルにある[恐怖制御]を使用することでどうにか平常運行となったが、あのキモイ動きを前にすれば本当にやばいのだ。


 なお、それは現在進行形で表している。


 現在の俺の後ろには、三桁に届くのではないかという数の芋虫が、その見た目からは考えられないようなスピードで向かってきていた。


 何が言いたいかと言うと、くっそキモイんだよコイツら!


 「あぁもうキモイから取り敢えず凍っとけ! 『氷結薔薇フロストローズ』ッ!」


 半ば適当に発動する魔法は、上級水魔法『氷結薔薇フロストローズ』。


 すると、俺が発動した地点に氷の薔薇が咲く。触った瞬間に壊れてしまうような、とても脆く、小さな薔薇。
 そこに芋虫魔物が到達する。そして氷の薔薇に触れた瞬間───


 パキッと割れたかと思うと、途端シャァン!! と音を立てながら、氷の薔薇に触れた芋虫魔物が氷に包まれる。
 更に芋虫魔物を覆った氷の表面に新たな氷の薔薇が咲き、それに触れた別の芋虫魔物が凍りつき、表面にまた新たな氷の薔薇が……と連鎖していく。


 この魔法は、要するに薔薇に触れた物体に反応してその物体を全て氷で覆い、新たな薔薇を作り上げ、魔法に込められた魔力が尽きるまで連鎖発動するものだ。
 無論言うまでもなく結構な魔力は込めている。俺の最大魔力量からしたら微々たるものだが。


 対処法としては、氷の薔薇に触れないようにすること、内蔵魔力が尽きるまで何かをぶつけながら待つこと、後は発動したそばから『氷結薔薇フロストローズ』の威力を上回る火魔法で対抗とか。


 背後でなす術なくどんどん氷漬けにされていく芋虫魔物達を見て、何となく気休め程度にしかならないことを考えたのである。


 「ふぅ、悪は滅びた」


 [生体感知]の反応が消滅したのを期に止まり、額を腕で拭う動作をしながら呟いた。


 「にしても、この魔法絶対火魔法とかでも代替できるよな」


 水属性の部分を火属性に変えてやり、実体ではなくエネルギーとして扱えば使えそうな気が。


 取り敢えず芋虫の表面にある氷の薔薇を砕く。すると、先ほどとは真逆に、その全てが中身諸共砕け散っていく。こんなのあったら邪魔だし、凍ったままだと倒した判定になってないんだよなぁ。氷と中身を砕いて初めて経験値が入る様子。


 「火バージョンのフロストローズは後で作るとして、体を砕いても魔石は残るんだな」


 芋虫魔物の身体は跡形もなく崩れ去っているが、その後には芋虫魔物の魔力の残滓と、大量の魔石が残っていた。


 「『ちりとり』っと。まじ便利だなこれ」


 風魔法……[暴風魔法]で一箇所に集めて、普通の『無限収納インベントリ』に収納。家庭用として作ったが、出力さえあげてしまえばある程度重量のあるものも行ける。
 『無限収納インベントリ』の感覚からしても、やはり三桁に達しているだろう。


 「大量に売りさばいたら価値が崩落しそうだな」


 魔物は同じ種族でも、レベルや強さで魔石の純度や大きさが変わる。基本的に、大きいほど、純度が高いほど魔力の質がいいと言われている。


 そしてこの芋虫魔物、正式名称『アーミーワーム』は、その名の通り軍のように群れをなして襲ってくる芋虫であるのだが。


 ワームなのだから、どちらかというとミミズというか細い系のはずなのだが、見た目は完全に芋虫キャタピラーだ。それでいてでかいから嫌だ。


 ……というのはともかく、アーミーワームは、迷宮内だけの魔物ではなく、普通に地上にも生息している。そしてあまり強くはない。
 だがこの迷宮のアーミーワームは、レベル140越え、スキルが地味に豊富で、魔石の価値は跳ね上がっている。使い道があるのかは知らないが、取り敢えず高く買い取ってもらえるのに越したことは無い。






 ◆◇◆






 その後は、[生体感知]に複数の反応が引っかかった側から、敵の姿も視認せずに魔法で殲滅していった。基本魔法の発動には、発動場所や相手の姿の視認が必要不可欠だが、[千里眼]で視界を飛ばせる俺は、あまり距離は関係ない。


 今までは時空魔法で視界だけを転移するのをやっていたが、魔力が残らないという点から、スキルの[千里眼]の方が有能という事実。
 まぁ、そりゃ専門特化のスキルの方が効果は高いに決まってるな。


 ようやく見つけた階段を降りている途中、『無限収納インベントリ』から携帯食料を片手に取り出して食べる。
 この味にも慣れてしまった。というか、噛めば噛むほど味が出るのが地味に癖になってしまう。


 水に関しては[海洋魔法]で蛇口のように出してやればいい。魔法で作り出した水って一定時間で消えそうなんだが、どうなんだろうか?


 既に魔法で作り出した水は結構飲んでいるが、急に喉が渇くといったことは無かったはず。
 真相はわからないまま、110階層へと到達した。


 「そう言えば、第一階級アインスの探索者はまだギルマス以外見たことないな……探索に来てないのか?」


 ふと、他の第一階級探索者の動向が気になった次第。みんなギルドマスターぐらい強いのだろうか? そしたら勇者必要ないんじゃねと思ったり。


 俺としては1人ぐらいとはお近づきとなっておきたいのだが。俺に足りないのはコネだ。うん。コネが足りん。貴族とかそっち系に対するコネが。
 第一階級の中にはきっと貴族といい感じにコネを持ってるやつがいると思うんだがな。


 そうこう考えているうちに、俺は最初の敵と遭遇エンカウントした。


 「『ウガルーム』ね。はいはい相手しましょう」


 曲がり角から完全に俺めがけて走ってきたのは、『ウガルーム』と言う巨大な獅子だった。
 レベルは162と高く、敏捷が抜きん出ている。次いで筋力で、魔法も一応使えるようだ。


 「とりあえず、まずは『枝蔦領域ソーンフィールド』」


 俺は早速、ウガルームの機動力を削ぐために魔法を発動する。


 上級土魔法『枝蔦領域ソーンフィールド』。石畳で栄養の欠片もないこの場所に、突如として蔦が生い茂る。それは迷宮の通路を這うように成長し、生物に対して絡みつく。


 『グラァ!!』


 ウガルームが足に絡みついてきた蔦を力任せに引き千切ろうとするが、出来るはずもない。なんせ俺の場合[土魔法]ではなく[大地魔法]。魔法の効力は二段階以上引き上げられていると考えても良い。


 四肢を蔦に拘束され、更にさらにと蔦は成長する。俺は『枝蔦領域ソーンフィールド』に遠隔で魔力を込めているので、その魔力を餌にどんどん成長するわけだ。


 そしてとうとう全身を覆い隠すほどにまで成長した蔦は、今度はギリギリとウガルームを締め付ける。
 拘束系統の魔法に分類される『枝蔦領域ソーンフィールド』。ゲームでは拘束魔法と言えば威力皆無、または激低だが、現実では拘束の力で絞め殺すことも可能だ。
 力の強さはやはり魔力量や【知力】依存だが、俺にかかれば安いものである。


 しばらくすると、ゴキッ! と鈍い音がして、[生体感知]の反応が消える。
 魔法を解除すると、白目を向き、ベロをダランと垂らした状態のウガルームが。首は180度回転しており、口が上に、目が下にとおかしくなっていた。


 「ま、比較的良質な状態だろう」


 早速その場で解体。このレベルの魔物は外皮が硬いために、解体するのにもそれ相応の解体ナイフが必要になるのだが、運がいいというか、35層の階層主フロアマスターの宝箱からは特級の解体ナイフがピンポイントで出たため、特に困っていなかった。


 それにいざとなれば[魔力纏い]もとい[魔刀]さえあれば切れ味はいくらでも良くできるので、問題は無いのだが。


 サササッと皮を剥いで、部位ごとに切り分ける。解体なんぞ理科でやった魚とか蛙とかの解剖ぐらいしか分からんが、部位に関しては本で読んだので分けられる。正しいかはわからないが、売れている以上問題は無いはず。


 ものの数分ほどで解体を終える。[動物解体]便利だな。


 「ふぅ……行きますか」


 一息吐いてから移動。初めての魔物はちゃんと姿を見てから倒す主義。何となく目に収めておくというね。


 [完全記憶]のお陰で、図鑑を埋めるような気分で魔物を目に焼き付けるという楽しさ。
 というか俺の記憶領域はどんだけ広いんだか。幾ら[記憶領域拡大]を手に入れたと言っても、それを手に入れる前から少なくとも図書館一つ分の知識は軽く収納出来る程の記憶領域だ。


 ………ここまで考えてから、そもそも常人の記憶領域の広さというか、そういうのが分からなかった罠よ。
 記憶できる領域という意味ならば、通常の人は絶対に忘れないということは無理だ。その分必要な記憶領域も少ないとしよう。


 一方で俺の場合は、完全記憶で忘れない代わりに、一つ一つの知識が必要とする記憶領域は広くなっている……はず。つまるところ、絶対に忘れない代わりに、覚えられる数の上限が少ないみたいな感じか。
 図書館一つ分の知識を丸々叩き込めるというのは、一体どんな構造してるんだか……。


 まぁ、こういうのは地球の専門家でもなきゃわからんよな。うん。ここらで思考を切り上げますか。


 俺は頭を一回振って思考をリセットしてから、再び迷宮の奥へと足を進めた。







「俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く