俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第11話 派手な魔法って割と久しぶりな気がする(105層ボス)





 現在俺は、105層の階層主フロアマスターの部屋の前まで来た。


 この階層は、敵の強さこそあれだが、オーガキングという、ある意味因縁の相手だからか、殲滅しつつ歩いていた。まぁ実際オーガキングに恨みなんかほとんど抱いちゃいないのだが。


 問題は、あの時出た黒い靄、やはりここのオーガキングにはそんなものが全くないことだ。
 あの時と似たような状況を作り出して、軽めの重力魔法で動きを封じてもやはりそのまま。無効化レジストされることもなく時間だけが過ぎた。


 とすると、あの黒い靄すら腹黒達か、迷宮側が仕掛けたということになる。魔物を強制的に強化する技術……ありえない話ではない。
 もし腹黒達がしかけたとして、実はルサイアは魔族や魔王と通じていて……みたいな話がありそうだ。


 「っと、陰謀論はどうでもいいのだよ。俺がやるべきはレベルアップ!」


 やっぱ力は大事だと思います。特にこういう力があればとりあえず問題ないみたいな世界は。
 地球ではどんなに力があったところで、流石に銃器や核兵器なんかに立ち向かえるわけはない。だがこの世界のステータスなら、核兵器にすら勝てそうで恐ろしい。つまり、誰にも止められない。


 心の中で黒い笑みを浮かべつつ、開かれた扉の奥へと足を進め、そして背後で扉が閉まる。
 相変わらずの食虫植物のようなこの構造。ただ養分になるつもりなど毛頭ないがな。


 魔力の奔流が、部屋の中央に吹き荒れる。
 異能の【魔眼】、その【魔力視】によって魔力を視認できるようになったのだが、マジマジと見たのは初めてだな。


 白い粒。俺には魔力がそう見えていた。今までは感覚で掴んでいたのだが、今では完全に目視できる。
 キラキラと輝く様は、一度しか見たことのないダイヤモンドダストを彷彿とさせる。綺麗に見えるが、魔力の量が多すぎると今度は眩しくなるようだ。


 そんな魔力が発生させた魔物フロアマスターは、大きいにも程がある、少なくとも軽く10mは超えている巨人だった。


 『オオオオォォォォォオオォ!!!』


 名前は『ゲリュオン』。足が六本あり、腹で接続され、腕も頭も3対。
 確か何かでそんな怪物を見たことがあるな。どっかの国の何かにあった巨人だった気がする。


 地球の頃の話だが。


 「っと、あぶないな」


 早速とばかりに打ち出された拳を避ける。しかし、その腕の多さを生かして追撃をしてくる。
 その速度は驚異的だが、別にゲリュオンの腕に追尾機能があるわけでも湾曲機能があるわけでもないので、避けるのは造作もない。


 『オオオオォォォォォ!!』
 「っ!? 魔法を使うのか!?」


 まずは小手調べとばかりに避けていたが、ゲリュオンが雄叫びをあげると、突如として魔力が発現し、この空間を冷気が満たした。


 それと同時、床全面を厚さ3センチ程の氷が覆う。確かこんな感じの魔法を本で読んだことがあるぞ。


 上級水魔法『凍結領域フローズンフィールド』。空間内を冷気で満たして、尚且つ地面を氷で覆い、地面に足を付いている対象を拘束する技だ。


 俺は氷に覆われる前に、属性が真反対の、しかし一段階下の魔法である中級火魔法『ブレイズ』を発動することで対抗する。
 相手が幾ら上級魔法とは言え、流石に[火炎魔法]を凌ぐほどの魔法力はないらしい。俺の魔法がゲリュオンの『凍結領域フローズンフィールド』を一瞬で消し去った。


 代わりに空間内には熱気が立ち込め、地面が俺の足場も含めて全てが炎に包まれる。が、何となく自身が炎に包まれている状況は嫌なのでキャンセル。
 幾ら自身の魔法が無効化レジスト出来ると言っても、見た目は結局変わらないからな。それに見てるだけで熱い。


 「ふぅ。さぁ、仕切り直しと行こうか」
 『オオオオオオォォォォォォ!!!』


 またもゲリュオンが叫ぶと、今度は腕を振り回す。流石にそれは当たらないが……と油断していたところに、音速を超えて鎌鼬が飛来した。


 「おっと」


 気の抜けた声とは裏腹に、行動は迅速だ。
 流れるような動作で即座に剣を鞘から抜いて、攻撃特化となった[魔刀]で魔力を纏い、鎌鼬を下から斬り上げる事で無効化する。
 今のはおそらく[飛剣術]の腕バージョンのようなものだろう。振り回した腕の延長線上に攻撃をするやつか。


 その予測を証明するかのように、振り回した腕の先から更に更にと鎌鼬が出現する。めちゃくちゃに回しているように見えて、意外としっかりこちらに照準を合わせているらしい。その殆どがこちらへ真っ直ぐ向かってくる。


 「『次元の壁ディメンションウォール』」


 それに対し俺は、人差し指をクイッと上げ、自身の前面を覆うように『次元の壁』を発動させる
 あの未熟な頃───オーガキングと戦った時───とはうってかわり、現在の『次元の壁』はオーガキングより圧倒的に強いゲリュオンの攻撃を簡単に防いでしまう。


 少なくとも今の攻撃ではどんなに攻撃されたところで、俺の魔力が切れる以外の攻略法はない。
 そして俺の魔力は異常な程ある以上、それを狙うのは悪手だ。


 「次はこっちから行かせてもらうぞ。『炎燃拡散フレイムボム』」


 俺は手の中に『ファイアボール』のような火の玉を作り出し、それを無造作にポイッと投げる。
 放射状に飛んでいったそれは、ゆっくりと落ちていきやがて地面に着弾した途端。


 ドゴオォォォォォォオン!!


 空気を震わせて、爆発を起こした。


 上級火魔法『炎燃拡散フレイムボム』。熱量を圧縮して球状にし、それが着弾地点で爆発する魔法だ。


 『オオォォォォォオオオ!?』


 防御をしながらも爆発を食らったゲリュオン。その爆発力によって、防御した腕の内4本は消し飛んで胴体まで被害が及んでいた。
 下半身に至っては全て消し飛んでおり、盛大な音を立てながらゲリュオンの体が落ちていく。


 『炎燃拡散フレイムボム』いやはや、恐ろしいな。上級魔法は本当に、中級とは桁違いの強さだ。


 無論、通常の『炎燃拡散フレイムボム』はここまで威力が出るはずもない。こいつ相手だと、せいぜいが足に被害をもたらすぐらいだっただろう。範囲的にも胴体まで届くことは無かったと思う。
 それが、俺の【知力】の爆上げ+[火炎魔法]によりこんな風になったという事か。


 恐ろしいのは、これでも威力を下げているということか。前の宿の庭での一件以来、魔法は全て威力を下げる方針でいます。


 「んじゃ、お詫びにもう一個プレゼントな」


 俺は新たにまた手の中に火の玉を作り出し、今度は地面ではなくゲリュオンに投げる。


 俺の筋力によって投げられた火の玉は、その実魔法なのだが、力の影響を受けて音速を超えて向かっていき、ゲリュオンの顔に着弾する。


 ドゴオォォォォォォォォン!!!!


 再度爆発が発生し、衝撃波で髪が揺れる。目の前から叩きつけられる熱は全て俺には効かない。
 やはり無効化レジスト出来るか否かは結構重要そうだな。今回も普通に喰らってたらめっちゃ熱いだろうし。


 爆発が終わり、爆風が去ると、そこには黒く焦げた床や壁、天井のみが残っており、死体は跡形もなく消えていた。


 上級火魔法……というより俺の魔法ヤバイな。あれフレイムボム、今回は一つずつ作ってたが、同時に十数個作ることだって可能だからな。マジで軍事ミサイルといい勝負だ。街一つだったら数分で破壊できそう。


 核ミサイルの威力は再現しないよう気をつけましょう。想像もできないけどね。


 そして、そんな考察をしていたために勝利の余韻を感じることは無く、階層主フロアマスターが倒されたことにより、魔力が中央に集まって宝箱を形作る。


 「さてさてさーて、今回の宝はなんだろうか」


 今のところ、20階層までは使えないもの、そこからはまぁまぁいい剣やら槍やらアイテムやらが出ていた。まだ魔道具マジックアイテム秘宝アーティファクトは出ていないが、まぁ別にそんなに欲しいわけでもないので良いか。


 ということで、開いた宝箱から出たのは、意外なことに指輪であった。


 「とりあえず鑑定してみるか」


 現実世界なら指輪など売るだけだか、ゲームやこの異世界では、指輪はアクセサリーという装備品であり、ステータスを向上させるものである。
 取り敢えずは鑑定だ。


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 過負荷の指輪 


 己の力を抑制、制限することで、常に限界に挑むことが可能となる。その状態での鍛錬は、必ず己に返ってくる。
 指輪を連続でつけている時間が長いほど【鍛錬】の効果が上昇する。指輪を外すとリセットされる。


 特殊効果
 【スキル任意封印】【パラメーター任意低下】
 【鍛錬】


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 「これまた妙な奴が出たな……」


 うん。役に立たない、とまでは行かないが、今は使わないであろう指輪だ。


 力を制限して鍛錬、指輪を外した時にパラメーターだがスキルだか何だかが上昇するとかそういうもんだろう。
 そして【鍛錬】の鑑定結果は『体にかけられた負荷によって、パラメーターとスキルの効果をレベルに関係なく上昇させる』というものだ。
 ビンゴというか、やりこみ要素系か? レベルマックスになった人へのやりこみ的な。


 ちなみに【スキル任意封印】は、自身のスキルを自分で封印できるもので、封印は任意で解除が可能だが、若干のタイムラグがあると。そして封印しているスキルの数だけ成長速度が上昇だな。


 【パラメーター任意低下】は、パラメーターを好きなだけ、それこそ1まで下げられるとのこと。下げれば下げるほど、成長速度、成長力が上昇とな。


 おそらく二つとも【鍛錬】の効果を上昇させるものだろう。


 今のところこれの使い道は、本来のように鍛錬として使うか、後は自身の実力を隠すために使うかだな。
 今は『無限収納インベントリ』の肥やしにしておこう。


 「よしっと。さっさと次行くかぁ」


 出現した魔法陣へと乗って、俺は次の階層へと移動した。







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