俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第9話 魔法が強すぎると剣を使わなくなる事実





 探索者ギルドに掲示されている依頼は、言うまでもなく迷宮関連のものしかない。探索者とは迷宮専門だからだ。
 基本的には、『〇〇の素材を取ってきてくれ』『〇〇のアイテムを取ってきてくれ』『〇〇階層まで護衛してくれ』といった依頼が多く、特に最後の護衛依頼は、実力のない探索者が階級を上げるために出すこともある。
 無論依頼主は偽名を使っているため、グレーに近いものだが、探索者ギルド側は黙認している。


 まぁ、それで死ぬのは自己責任という事ではないか。


 「トウヤさん、おはようございます」
 「おはようございます。早速ですみませんが、出来るだけ下の階層の魔物の素材を取ってくる依頼を下さい」
 「出来るだけ下の階層ですか? 少々お待ちください」


 俺はわざわざ掲示板には行かずに、受付嬢さんに依頼の選別を頼んだ。面倒くさいというのもあるが、美人さんと話してモチベーションをあげるためだ。


 「え~っと……あ、ありました。『アルラウネの花』の回収依頼ですね。アルラウネの出現階層は───」
 「82層ですね」
 「そうそうってなんで分かるんですか!?」
 「記憶力がいいもんで」


 [完全記憶]様様ですよホント
 ちなみに、アルラウネは緑色の女性の上半身を生やした、下がスカートみたいになってる植物系の魔物だ。この女性の上半身の完成度は高い……というより、アラクネと違ってその女性の上半身部分はちゃんとした本体なので、動くし感触は人間と同じやらなんやらで、色々と男にとっては嬉しいお相手だ。


 主に触手、いや蔦か。蔦による攻撃や、媚薬成分を含んだ吐息で誘惑したりと、後者に至ってはサキュバスのようなことをする。


 なお、誘惑された場合はサキュバスのように嬉しいことはことは無く、蔦で絡まれて血や栄養を干からびるまで吸われる。女性が蔦に絡まれるのは見物だが、男が絡まれてもあんまり需要がない。


 また、死体ももれなく他の魔物に食われるとか。カラッカラだから食う意味があるのかは知ないが。


 とまぁ、搦手が得意な中々厄介な魔物である。


 「しかし82層か……」
 「なにか思うところがあるんですか?」
 「そのぐらいの魔物、弱いんで」
 「あぁ、そう言えばそうでしたねぇ」


 俺の言葉に一瞬受付嬢さんの瞳のハイライトが消える。そこまで引くことか?
 まぁ幸いなのは、弱いんだが俺のレベル的にまだ効率よく経験値を稼げる場所ということか。


 俺はレベルに対してのパラメータが高いだけで、レベル自体は思っているよりも高くない。
 だから、レベリング自体は比較的楽に可能だ。


 探索者ギルドを出てそのまま迷宮へ。あそこの入口には騎士がいるから面倒事が起きそうだ。
 昨日の今日で覚えているかは知らんが、流石に第一階級アインスとなれば何かしら言われるのは必須だろう。ましてや、無名の第一階級アインスなど意味不だ。


 仕方ないので、少し心苦しいが[気配遮断]……じゃないか。[生体遮断]を使わせてもらう。スキルの名前が変わりすぎでついつい間違える。


 ちなみに[生体遮断]の効果だが、簡単に言うと『生物としての反応を遮断する』というものだ。
 いや、まぁ生物としての反応がまずわからないが、考えるに体温とか、心臓の鼓動とか、血液の流動とか、取り敢えずそういったものを全て探知されないようにするとかそんなものだろうか。恐らく気配もその中に入る。


 騎士から何も言われることなく素通りし、迷宮へと入る。
 入ってすぐにあるのは、魔法陣。昨日も見たが、この魔法陣に乗って目的の階層───5階層ごとではあるが───を告げると移動できるらしい。まずは80階層だ。


 「転移、80階層!」


 なんとなく剣の世界のオンラインのセリフのように叫んでみる。すると、瞬時に視界が切り替わり、恐らく80階層の階層主フロアマスターを倒した後の場所へと転移した。


 「っと、まずはアルラウネだったな」


 転移独特の浮遊感が終わる。まずは準備運動も兼ねて、大体秒速20m位のスピードで次の階層へと向かうとするか───


 「おわっ!?」


 ───と思ったのだが。
 なんと、いつもの感じでやったら、スピードが勢い余って壁へ激突。
 ベチン!! と痛い音が響き、その場にズルズルと倒れ込む。というか、実際とても痛い。車と衝突するよりも普通に勢いがあったぞ多分。


 「いっつつ……何でだ? あ、スキルが進化してたからかなぁ」


 確か新しいスキルの中に[神速移動]みたいな感じのやつがあった気がする。[高速移動]というスキルの上位変化だと思うが、速い。速すぎる。


 そのせいで壁に激突するのも避けられなかった。まぁ不意打ちだったというのもあるが、[反射神経超強化]を持ってるのにこれとは、随分と油断していたな。




 その後少し走って感覚を掴んでから、迷宮内を走り抜ける。迷宮内はどこぞの不思議な迷宮と違って地形は変わらんから、道順は完璧に把握している。
 道のりにして約数kmはあるはずの81階層を1分ほどで踏破。恐ろしいのは、これでも本気ではないことだ。一体本気を出したら俺はどこまで早くなるのか。


 そう言えば道中敵が出てきたが、自分からぶつかったら弾け飛んでしまった。無論、粉々に、パアァン! とな。
 スプラッタとなった魔物を見て、攻撃にも転用できるという事実に気づいたが、正直魔物に自分から当たりに行くのは嫌なので、特殊な状況以外は使わないと思う。


 82階層へとついたら、走りから歩きへ変更。[生体感知]で反応がある方向へと移動する。


 そこに居たのはアルラウネではなくブルーゴブリン。名前の通り青いゴブリンなのだが、恐らく拓磨や樹たちじゃ勝てないぐらいには強い。
 まずレベルがこの階層だけあって100レベを超えている。更にこいつはゴブリンの派生みたいなもので、正統進化がホブゴブリンなのに比べて、こいつはその身体のまま強くなった感じのやつだ。


 同レベルで比較した場合、ブルーゴブリンの方が強い。体が大きくない分力が圧縮されているのだろうか? ホブゴブリンと比べ、1.5倍近くはステータスがある。
 それに加えて、なんと魔法が使えるのだ。初歩的なものしかないが、レベルに合わせているのだろうか? 魔法のスキルレベルが7となっていて、初級魔法のくせに『グギャグギャ』という変な叫び声と共に何気に強い魔法を放ってくるのだ。


 悲しいよな。中途半端な魔法使いが来たらゴブリンに負けるぜ? 知力がそこまで高くないから、俺なら当たっても無傷で行けるが、プライドは傷つきそうだ。


 そんなブルーゴブリンに対して、俺は指をパチンと鳴らす。無詠唱で中級光魔法(今は[神聖魔法]だが)の『光槍ホーリーランス』を発動したのだ。


 この魔法は『レーザー』と同じような魔法だが、難度はともかく、威力はこちらホーリーランスの方が高い。


 『レーザー』は光を魔法単体ではなく他から集めて、その熱によって攻撃するために威力が周囲の光依存となっているが、『ホーリーランス』は光から形状に至るまで、完全に魔力で形成されている。
 言わば、その光すら魔力の一部なのだ。だからこそ魔法使いは大ダメージを出せる。魔力ならばステータスの【知力】の値があれば威力が上がるからな。


 魔法を発動すると、俺の胸の前に現れる光の玉。その玉が突如としてブルーゴブリンに、先端が尖った棒状の光を飛ばす。
 それは確かに『光の槍』と言え、高速で距離を詰めるそれにブルーゴブリンは避ける素振りすら見せることは無かった。


 「グギャ?」


 ブルーゴブリンが首を傾げると同時、ズドン。重低音が響き、綺麗にブルーゴブリンの胸を貫通し、その後数10m後方まで直進し、光の槍は消えた。
 これに熱はなく、ただ単に対象を『貫く』という定義が強固に設定されているために、レーザーよりも抵抗の余地がなかっただろう。恐らく貫通した衝撃すらなかったのではないか。


 まぁ、代わりに傷口が焼けることもないから、そのまま血は垂れ流しだがな。どっちが使いやすいかは場合によりけりだな。


 「ブルーゴブリン様ごあんな~い」


 無論案内するのは無限収納インベントリだ。大丈夫、中にはきっとお友達がたくさんいるさ。個室なのか大部屋なのかも知らないけどな。


 にしても弱い。中級魔法ですらオーバーキル気味なんだ。マジで初級魔法で事足りるんじゃないのか?
 この世界の魔法って、レベル100を超えてるモンスター相手に一発で決めるようなものじゃない気がするんだが。


 試しにと、懲りずに出てきたブルーゴブリンに俺は指をパチンと鳴らす。その途端ブルーゴブリンの首が血をまき散らしながら飛ぶ。
 無詠唱で『ウィンドカッター』を使用してみたのだが……だめだこりゃ。魔法が進化してから強すぎるな。


 「はぁ、アルラウネの花を取ったらもっと下の階層に行こう」


 少なくとも百レベじゃ無理だろう、と俺は考えながら[生体感知]を発動した。







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