俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第8話 やっぱり嬉しい補正が働いてる気がするけど、期待しすぎると痛い目を見ると思います





 「おはようございます! トウヤさん!」
 「おはよう。朝から元気だね」
 「はい! 探索者さんの相手をするにはこうでもしないといけないので」


 なるほど、明るく振舞った方が良いということでこれか。大変だなぁ。
 まぁでも別に無理してやってるようでもないし、俺の言うことではないか。




 素振りを終えた俺は、1回水魔法……もとい[海洋魔法]で水を出して汗を流して食堂に来たのだが。


 この時、[海洋魔法]の威力が思っていたよりも強すぎて俺諸共庭がグチョグチョになり。
 水分を蒸発させようとして[火炎魔法]で熱したら、今度は熱すぎて庭の草が燃え。
 焼け野原になったのを見てヤバイとおもって[大地魔法]で草を生やそうとしたら、なんとジャングルが如く草木が生い茂ってしまい。
 ようやく制御できた[暴風魔法]で植物を根こそぎ刈り取って。
 再度弱めに[大地魔法]を掛けて元通りにしてきたという事があったのだが、些細なことだ。うん。結局誰にも迷惑はかけてない……はず。


 どれも強力な魔法だったが、[魔力支配]のお陰で完璧に魔力を隠蔽しているため、余程魔力の感知が上手くないと捉えられないだろう。


 そんなこんなで食堂に来たら、昨日のように食堂を掃除してるラウラちゃんがいて、今に至るのだ。


 「また掃除手伝うよ」
 「えぇ? またですか?その、あんまりお仕事を取られると……」
 「大丈夫。この後ラウラちゃんにはご飯作ってもらうから」
 「それは大丈夫というか、恩の押し売り何ですけど」
 「作ってくれないの?」
 「いや、まぁ作りますけどぉ」


 なら良し。なんだかんだ言って作ってくれるんだから優しいよなぁ。


 無詠唱で『教室掃除』を発動。
 そうそう。そう言えばなんだが、実はこの魔法、効果は初級並みのしょぼいものだが、難易度的には上級魔法に匹敵することが発覚した。


 まず魔法には難易度というかクラス……あぁいや、等級か。そういうのがあって、初級、中級、上級、最上級とあるのだが。


 基本的には後ろに行くほど効果も範囲も大規模なものとなり、その分難易度も高くなっていくのだ。
 比較対象として、『ウィンドボール』という風の玉を作り出す魔法は初級であり、一番最初に覚える魔法と言っても過言ではないが、最上級光魔法『断罪の光ジャッジメント・レイ』なんかは勇者しか使えなかったみたいな話がある。


 基本初級の魔法だけは、例外的に皆、詠唱破棄+同時発動ができるようになるまで練習する者が多い。まぁ牽制用に沢山打てた方がいいからという意味だろうが.
 それと同系列で『ウィンドカッター』という攻撃魔法もあり、これも初級なのだが、一方でカッターというだけあり殺傷性もあるため、一言で使えるようになれば十分有効的な魔法となる。


 つまり、通常の人間を殺すだけなら初級魔法で十分事足りるのだ。


 初級魔法の難易度は、簡単に言えば小学校の裁縫レベル。才能が絶望的なやつは出来ないが、基本的には少し練習すればできるようになるものだ。


 次いで中級魔法。ここからが魔法使いと魔法を使える人の違いとなってくる。


 まず中級魔法は対魔物用の魔法だ。それもそのはずで、真の意味で対人間用の魔法なんか作ったら人類への反逆と見なされるからだが、初級魔法で倒せる魔物というのは、ゴブリンやその系列のみだ。


 例えばオーク辺りになってくると、余程使用者が強くない限り、初級魔法で倒すことは出来ない。だからこそ、中級魔法となる。


 中級魔法の筆頭は、前に俺が使ったこともある『炎柱ファイアバーン』だな。範囲も威力も、初級魔法とは桁違いだ。
 その名の通り地面から炎の柱を噴出させる魔法だが、オークなんかに使えば、1、2発で倒せる威力はある。


 中級魔法の難易度は、跳び箱7段レベル。まぁできる人には出来るな。魔法が多少上手く使えればという事か。
 基本的には、初級魔法を使えるのは『魔法を使える人』、中級魔法以上は『魔法使い』と区別されるらしいが、みんな知らなそうだから別にいいだろう。


 それで上級となる。上級魔法の難易度は一気に跳ね上がり、何かの全国大会でトップ10に入る感じか。限られた人数、という事だ。


 上級魔法で有名らしいのは、上級回復魔法『エリアハイヒール』だな。範囲回復魔法。見た目が神々しいから印象に残りやすいとか。
 勿論効果も高いが、それでも部位欠損までは治らんし、魔力の消費量的に数発打ったらガス欠になるのだとか。


 この『エリアヒール』が上級魔法に位置づけられている理由は、その魔法の構成の難しさだ。範囲回復魔法と銘打ってはいるが、これは『範囲内にいる味方を回復する』というものであって、『範囲内の味方を回復する領域を展開する』訳ではない。
 その性質上、例えば範囲が10mだとして、その中に自分以外誰もいなかった場合、『エリアハイヒール』の魔力消費量は、中級回復魔法である『ハイヒール』より少し多い程度だ。


 一方で、何十人も居た場合は、魔力消費量は何十倍にも膨れ上がる。


 つまり、味方が範囲内にいるかどうかを識別し、なおかつその全員にハイヒールを個別にかけているのだ。だからこそ、一つの魔法で補うために緻密な構成が要求される。


 そして俺の『教室掃除』は、効果云々の前に、魔法の構成が七段階に分かれているということから上級魔法というくくりに入る。


 基本、魔法というのは、『ウィンドボール』ならば、『座標を指定する』『球状の風を生み出す』という段階に分かれる。更にここから『どこどこに動かす』という構成を追加するのだが。
 つまりこの『ウィンドボール』は二、三段階で構成されている魔法だ。


 『炎柱ファイアバーン』ならば、『座標を指定する』『柱状の炎を生み出す』『座標から上へと炎を上げる』といった三段階構成だ。


 一方で『教室掃除』は、『風を作る』『威力を調整する』『一箇所に集める』『新たに『無限収納インベントリ』を発動する』『水浸しにならないように湿らせる』『無魔法でゴワゴワとした形を作る』『範囲内全てをこする』と、七段階もの構成になっている。


 この複雑さは上級魔法の中にも無く、構成の複雑さだけ見たら、最上級と捉えようといいほどだ。


 まぁ、これは『教室掃除』として見た場合で、『箒』『ちりとり』『水拭き』とそれぞれ単体で見た場合は、どれも初級か中級に収まるのだが。威力の調整というのが地味に難しいようだな。


 それで、これが上級魔法と俺が分かったのは、[禁忌眼]による鑑定のおかげなのだが。
 とうとう魔法まで鑑定できるようになったのか。流石『ありとあらゆる事象を鑑定できる』とだけ言うな、と感心してしまった。




 というのを頭の中でダラダラと解説してはいたが、実際だからなんだという話なわけだが。
 ここから話を発展させるとしたら、『教室掃除』は強い魔法使いじゃないと使えないということか。まぁ時空属性が必要であるし、一概にそれだけじゃないが。




 「はい、綺麗になったよ」
 「本当に便利な魔法ですねぇ」


 風が吹き、ゴミを収納し、汚れが消えた食堂内を見ながらラウラちゃんが呟く。


 「ラウラちゃんが魔法上手だったら使えるんだけどねぇ」
 「むぅ、私だって魔法使えますよ! ……少しですけど」
 「だと思ったよ。出来ても最初の埃を掃く部分までじゃないかな」
 「そうですね。でもそもそも魔力があまりないので……」
 「レベルアップができれば楽なんだけどね」
 「私非力ですから無理ですよ。っと、朝ごはん、昨日と同じの作ってきますね」
 「了解」


 少しして、運ばれてきたステーキ、味噌汁、黒パンを食べる。朝にステーキは重いとか言ってたが、別にそうでもなかった事実。動くようになったから腹が減りやすいのだろうか。
 そもそも腹が減ってる感じも、満腹の感じも最近は無いんだが。本格的に胃袋がおかしいのだろうか。


 [悪食]みたいなスキルもあったし、もしかしたらなんかいらんもんまでエネルギーに変換してるのかね。例えば空気とか。
 あれ? [悪食]ってなんだっけと思う事例だぞそれは。


 「そう言えばトウヤさんは探索者何ですよね?」
 「うん? まぁそうだね」


 昨日第一階級アインスまで上り詰めましね。はい。


 「じゃあ、トウヤさんって何歳なんですか?」
 「俺は17」
 「若っ!? 17で探索者なんかしてるんですか!?」
 「ごめん。若いって言うけど俺から見たら君の方が若いというか幼いからね?」


 何歳かは見てないけど恐らく14、5辺りじゃなかろうか。若いではなく幼いだ。


 「そうは言いますけど、探索者さんってみんな大人の方ばっかりで……トウヤさんもやっぱり見た目より歳上なのかなぁと思ったら、見た目通りだとは……」
 「ちょいと一攫千金を求めてね。まあまあ実力はあるから稼げるんだよ」
 「さっきの魔法も凄かったですもんねぇ。実はトウヤさんって結構有名な方だったりして?」
 「ハハハ、それこそ無い無い」


 俺が有名だなんて、冗談が得意だなぁもう。
 これから有名になる、だったらあながち間違いではないかもしれないけど。勇者と会ってからが本番だしな。


 「でも17で探索者さんかぁ……私もなれますかね?」
 「ラウラちゃんはこの宿継ぐんじゃないの?」
 「そうなんですけどぉ。何というか、探索者とか冒険者とかには憧れますから」
 「男じゃないんだから」
 「女の子だって冒険には憧れます!」


 腕を下に伸ばして不満を露わにするラウラちゃんマジかわです。特に若干お尻を突き出してるところとか、エロさは無いけど、代わりに可愛い。


 こんな事考えてるって知ったら軽蔑されそうだから、せめて顔はすまし顔で行きますよ?


 「っと、そろそろ行くか」
 「えぇ? もうですか? もう少しお話しても良くないですか?」
 「探索者は忙しいんだ。また明日かな」
 「もぉ……絶対ですよ?」


 なっ!? 上目遣いで人差し指を立てる……だと!?


 なんというか、ルリの「……ん」を初めて聞いた時と同じ種類の感動を覚えた気がする。


 というかラウラさん? そんな甘い声出したら俺も理性がですね……いや、まぁ本人はそんなつもりじゃないんだろうけどさ。失礼極まりないよな。


 「うん、大丈夫、約束するよ」


 そんな動揺を微塵も見せず、俺は頷く。


 「分かりました。じゃあ、行ってらっしゃいませご主人様!」
 「お見送りの時だけはご主人様か」
 「ちゃんと稼いでお金を落としてくださいね!」
 「それも忘れないのね」


 まぁでも、少しそういう方が『小悪魔』という単語が似合いそうで……違うかな? でもまぁ近いのはそれだし、良いだろう。
 ニコッとした笑みを尻目に、俺は宿屋を出た。









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