俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第5話 一気に最高階級まで上がると、ストーリー全飛ばししてるみたいだ





 「はぁ……」
 「あ、トウヤさん、でしたよね? 探索帰りですか?」
 「あ、はい、どうもです」
 「その、元気が無さそうですが何かあったんですか? 見たところお怪我はしてなさそうですが」
 「それはもう、こうして落ち込むぐらいには少しありまして」


 夜、日が暮れた頃。探索者ギルドにて、俺に声をかけてくれたのはあの美人受付嬢さんだった。
 迷宮の敵が思った以上に弱くて、見所というか、気分の高揚するような戦闘ができなかったので、少し気分が鬱になっている。俺が強くなりすぎたのだろうか。


 「それは、その、大丈夫ですか?」
 「大丈夫です。気分の問題ですので……あ、階級のランクアップに必要なのって、どの階層主フロアマスターの魔石でしたっけ?」


 受付嬢さんの気遣いに感謝しつつ、俺は聞いてみる。少し元気は戻ったから、今はため息も抑えている。


 「ランクアップですか? えぇっと……こちらですね」
 「どれどれっと……」


 渡されたのは資料。目を通してみると、どうやら以下のようになっているらしい。


 第九階級ノイン 登録時点
 第八階級アハト 10階層階層主フロアマスターの魔石
 第七階級ズィーベン 25階層階層主フロアマスターの魔石
 第六階級ゼクス 40階層階層主フロアマスターの魔石
 第五階級フュンフ 50階層階層主フロアマスターの魔石
 第四階級フィーア 60階層階層主フロアマスターの魔石
 第三階級ドライ 75階層階層主フロアマスターの魔石
 第二階級ツヴァイ 90階層階層主フロアマスターの魔石
 第一階級アインス 100階層階層主フロアマスターの魔石


 名前が無いから分かりにくいけど、階層主の魔石は普通の魔石と少し違うからそれを出せばいいはず


 「じゃあまずこれを」
 「これは……『ハイコボルト』の魔石ですね。10階層の階層主、もう倒してきたんですか?」
 「このぐらいは楽じゃないですか?」
 「それもそうですね。マスルさんも出来てましたし」


 あの筋肉か。躍動する筋肉と筋肉、どちらがいいだろうか? 未だ俺の中では定まっていないが、今のところ筋肉が有利だな。
 ちなみに受付嬢さんは手元にある道具鑑定系の魔道具マジックアイテムで魔石を鑑定している。
 [鑑定]の秘宝アーティファクトとは違い、詳細な説明などはなく、ただアイテムの名前が表示されるだけの簡易的なものだ。
 だが、それでも偽物かどうか等の判断はできるため、重宝はされているそうな。


 「じゃあこれで第八階級となります」
 「あ、これもあります」


 すかさず次の魔石をドン。


 「え? まさか25階層の……やっぱり! 『クラウドヴィーチェ』の魔石ですか!」
 「このぐらいは普通じゃないですか?」
 「いやいや、たった1日でここまで出来るのは、少なくとも私の勤務中には初めてですよ!おめでとうございます!これで晴れて第七階級となり───」
 「あ、あとこれも」
 「トウヤさんどれだけ持ってきてるんですか!? というかなんで1個ずつ!?」


 更に出そうとする俺に受付嬢さんが叫ぶ。その顔は怒りというよりも、困惑とか驚愕とかそっち系だ。


 ちなみに25階層の階層主の『クラウドヴィーチェ』は、簡単に言うと蜘蛛女アラクネだ。上部分が人間の女性を模していて、下部分が蜘蛛。


 なお、人間の女性を模しているだけで、質感とか色とかは蜘蛛まんまなので、特殊な人以外は特になんの面白みもないと思う。
 ……いや、別に期待してたわけじゃないからな!


 戦闘としては、本来は糸を出して相手の動きを封じて攻撃する、という戦い方をするのだろうが、俺がさっさと質量を持たせた魔力の糸でクラウドヴィーチェの足を地面に縫いつけて、下部分の蜘蛛の顔を剣でブスリと刺したら終了。 
 蜘蛛を糸で捕まえるとはこれ如何に。


 最初は上部分の女性の顔が、クラウドヴィーチェの顔かと思ったが、鑑定したら下部分の蜘蛛が本体で、上はあくまで誘惑用なのだとか。
 誘惑もっと頑張ってくれよ! と心の中で叫んだのは内緒。


 「いや、驚かせようと思いまして」
 「そんな子供心を出さないでください!、もう、持ってる階層主の魔石全部出してください!」


 正直に告げたら怒られた。解せぬ。
 言われた通り、俺は階層主の魔石を出す。
 ボトボトとカウンター(?)に落ちる魔石の量に、受付嬢さんの顔が引き攣る。


 「こ、こんなに……これは5階層の『ホブゴブリン』の魔石。これは15階層の『ヤクトドーガ』の魔石。これが40階層の『グラジオファング』の魔石でこっちが30階層の『ナイトストーカー』の魔石……こ、これは、60階層の『プルモラフ』の魔石……」


 段々と受付嬢さんの目から光が消えていく。ちょっと、予想以上に驚いてくれたようだ。


 「な、70階層の『キメラ』の魔石……!? トウヤさん、これで最後ですよね!!もうありませんよね!?」
 「え? は、はい」
 「ですよね流石にこれ以上はあり得ませんよね! では私ランクアップしたことをギルドマスターにお伝えしなければいけないのですみません!」


 突然のことに慌てて頷いてしまい、「すみませんやっぱりまだあります」と俺が言う前に受付嬢さんは階段から二階へと上がってしまう。
 ドスドスと音がして、一際大きい音が鳴ったあと『すみません!』と声がしたんだが、大丈夫だろうか? というか途中からテンションがおかしくなかったか?


 一応、俺の手元には100階層〃〃〃〃〃までの階層主の魔石があるのだが……まぁ、頃合いを見て出せばいいだろう。




 ◆◇◆






 気配遮断を併用していたおかげで、どうにか周りから注意を逸らせたなと思っていたところ。
 受付嬢さんが戻ってきた。それと同時に注意も戻ってきて、俺の頑張りは水の泡となった。


 「トウヤさん、ギルドマスターがお呼びです!」
 「はぁ、分かりました」
 「……あ、あの、また元気なくなりました?」
 「いえいえ、気にしないでください」


 美人に罪はありませんからね。


 ギルドマスターに呼ばれるという事態は、まぁ何となくで予想はしていた。
 受付嬢さんが慌てて伝えに行ったのだ。ギルドマスターとしても、本人を直接見たいと思うのは不思議じゃない。


 二階へと上がると、その雰囲気になんとなく緊張する。職員室の前とかって、何でか緊張するよな。まぁ騒いだら先生に怒られるからとかだろうけど。


 二階は事務専門の職員の仕事場や、泊まりの職員用の就寝室、それと資料室があり、それに加えてギルドマスターの部屋があるようだ。


 受付嬢さんはまだ若干テンションはおかしいものの、それは高揚から来ているようだった。まぁ確かに異例の事態っぽいし、そういうのを見ることが出来て気分が高揚しているのだろうか。


 コンコン。


 「ギルドマスター、トウヤさんを連れてきました」


 ノック2回。そして受付嬢さんが告げると、中から『入って』と、恐らく女性のような、澄んだ声が聞こえる。 
 それに応え、受付嬢さんが扉を開ける───と同時。


 ヒュン!!


 「キャッ!?」


 受付嬢さんが驚いて悲鳴を上げて尻餅をつく。若干膝が開いているおかげで、絶対領域であるタイトスカートの中身が見えたのは内緒。
 今はそちらに意識を割く時間ではない。


 受付嬢さんが驚いたのは、開けている最中の扉の隙間から剣が飛び出し〃〃〃〃〃〃てきたからだ。


 そして、その剣は俺の顔面ルートだったのだが、俺は半身になって避けている。背後にある壁の貫通具合から、その剣に込められていた威力は相当なものだとわかる。


 「……随分と愉快な性格な方なんですね。ギルドマスターは」
 「は、はひ……」


 まだ驚愕が抜けていないのか、それとも俺の笑みに凄みを感じたのか、単にはしたない格好をしたせいで恥ずかしがっていたのか、上ずった声を上げる受付嬢さん。
 この感じ……白、だな。勿論犯行の話でスカートの中の話じゃない。そっちは寧ろブラッ───ゲフンゲフン。何も見てない何も見てない。


 とは言え、既にやられた後だ。ギルドマスターが愉快な人物であるということは理解したし、それなら俺も多少強気に出てもいいだろう。
 その前に、受付嬢さんを立ち上がらせてと。好感度はしっかりと稼いでいきます。


 「さて、弁解はありますか?」


 中に入って、俺はすぐに口を開いた。中にいるはずのギルドマスターへと向けてだ。


 ギルドマスターの部屋は、まずテーブルがあり、左右にソファが。恐らく応接間の役割も果たしているのだろう。
 その奥に執務机があり、あのクルクル回るようなイスがある。そのイスに、ギルドマスターと思われる女性が笑顔で座っていた。


 「やぁ、君がトウヤ君だね」
 「余裕たっぷりなところ申し訳ないですが、弁解はありますかね?」
 「弁解? 何のだい?」


 白々しい。この女性はどうやら本当に愉快な性格をしているらしい。


 仮にも命を狙われた身としては怒りを向けた方がいいんだろうが、もし当たっていたとしても、特に致命傷にならなかったという事実が問題で、あまり強く責める気になれない。


 俺だって躍動する筋肉にそんな感じのことをしたしな。


 「ぎ、ギルドマスター! いくら何でも先ほどの仕打ちといいこの態度といいあんまりです!! トウヤさんに謝罪をしてください!」
 「ほら、一旦落ち着いてメレス」
 「これが落ち着いていられますか!!」


 代わりに受付嬢さんが怒ってくれている。なんか美人さんが自分のために怒ってくれてるって、嬉しい。それが例え仕事上のものだとしてもだ。というかメレスって名前なんですね。


 そんな怒りを受けてなお、ギルドマスターはその笑みを絶やさない。寧ろ笑みを濃くした。


 「まぁまぁ、実際彼は今の攻撃を避けたみたいじゃないか。それに彼からもそこまで怒気は感じない。それが全てじゃないかい?」
 「そ、それはそうですが……」


 いっそここまで来ると清々しいな、と思いつつ、俺は受付嬢さんの前に移動する。名前呼びは許可をもらってからにしよう。


 「それで、一体俺に何のようです? ランクアップというのはギルドマスター直々にするものなんですか?」
 「よくぞ聞いてくれた。ちなみにランクアップは受付で階層主の魔石さえ提出すればすぐに出来る。今回は事態が事態だけに私が直々にその探索者を確かめようと思ってね」
 「なるほど。さっきのは試した、という訳ですか」


 納得顔をしていながらも、この世界のやり方は心臓に悪いという印象は抱いている。
 もし俺が弱かった場合、この人は犯罪者になっていたと思うのだが……そこの所、どうなんだ。


 「あの程度の攻撃も防げないようでは、とてもではないが第三階級など務まらないよ。私はてっきり誰か高位の探索者と一緒に行ったんだと思ったんだけど」
 「安心してください。俺はソロですから」
 「……ソロ、ね」


 ギルドマスターの目が細められる。つまり、俺の真意を確かめたいのだろう。


 無論嘘なんかついてないが、確かに探索者も冒険者も基本的にパーティーだ。例えば第三階級の冒険者が居たら、野良じゃない限りはパーティーメンバーも第三階級と思っていい。


 役割分担をするのが普通だ。物理が効きにくい魔物、魔法が効きにくい魔物、空を飛んでいる魔物、これをたった一人で対処するのは、普通に考えて難しすぎる。


 「嘘はついてませんし、貴女なら俺の力量ぐらいわかると思うんですが……その眼とかでね」
 「───ッ!?」


 俺の何気ない言葉にギルドマスターが驚いた顔をする。
 受付嬢さんは何が何だかわかっていないのか、頭にハテナを浮かべているが、それでいいと思う。


 実は俺、こっそりギルドマスターのステータスを鑑定させてもらったんだが、この人はまずめちゃくちゃ強い。グレイさんよりも強い。
 現役か元かはしらないが、第一階級探索者で、種族がエルフ。
 なお名前はテレシア・リューエル。


 見た目は妙齢の女性だが、それは長命種だからで、実際は625歳と、こう言っては悪いが結構年を食っている。


 これだけでも十分に驚愕に値するな。


 そんな彼女は、鑑定系スキルの[浄化の瞳]というユニークスキルを持っている。ステータスしか見ることは出来ないようだが、恐らく俺の[偽装]を無効化する程の鑑定能力である。


 「……いやはや参った。一体どこで聞いたんだい?」
 「……? 風の噂ですよ」
 「そうかそうか。確かに私の眼なら君のことを見れる。が、そうするまでもなく君は十分強いと分かるよ」


 何でわざわざ聞いたのか俺は疑問に思ったが、ただ単にまだ俺のステータスを見ていなかっただけかと納得。俺が[鑑定]を持っていることを知っていれば、そんな言葉はわざわざ使わない。
 こういう所のマナーは弁えているのか。なら先ほどの行動もマナーに当てはめて欲しかった。


 既に[鑑定]している俺が言えたことじゃないがな。


 「ではどうするつもりですか?」
 「普通にランクアップ、昇格だ。ちなみに実はまだ階層主の魔石を持ってたりとかはしないかい?」
 「あっ、そう言えばありますよ」
 「そうかい。まぁ冗談のつもりで聞いたんだが───ってあるの!?」
 「えぇ!? トウヤさんまだ持ってたんですか!?全部出してって言ったのに!?」
 「はい。一応100階層までのがあります」
 「……もういい。それ出して」
 「あ、はい」


 投げやりな感じで言うギルドマスターに、俺も素直に差し出す。
 出したのは75、80、85、90、95、100階層の階層主の魔石だ。どうやら25階層毎の階層主は一気に強さが跳ね上がるようで、だからこそ100階層は桁違いに難しいのだろう。


 実際、100階層からが本番だと言うかのように、敵のレベルが上がった。多分125階層まで行けば、流石の俺も瞬殺〃〃は出来ない気がする。


 「……本物だ。間違いない」
 「はぁ~……じゃ、じゃあ、トウヤさんは僅か2日……いえ1日で第一階級になったってことですか!?」
 「そうなるね。史上初だよ。過去を探しても勇者ですらそんなことは……勇者?」


 ギクリ。


 ピンポイントで違和感があるとでも言いたげなギルドマスターに、俺は平然を装う。
 スキルにそんな感じのヤツあったかなと思考しながら、どんな質問が来ても当たり障りのない回答をする。


 「勇者といえば、だ。トウヤ君。君の名前はとても不思議な響きだよね」
 「遠く離れた故郷のですよ。確かにここら辺じゃ聞き慣れませんね」
 「遠く離れた……東の大陸のナージアかい? それ以外にそんな所はないからね」
 「そうです」
 「はいダウト。東は『深淵の森』があって大陸があるかもわからない場所だよ?そんなところから来たのかい?」
 「……カマをかけたんですか」
 「引っかかったのは君さ」


 俺はため息を吐く。こういうの腹の探り合いはこっちに来ても成長しないからやめて欲しい。出来れば実力行使に出てくれと思う。
 咄嗟に『深淵の森』のことが出てくれればなぁ、俺も反応できたはず。そうすればまだ確信は得られなかっただろうに。


 「偶然だと言われればそれまでだけど、君の名前の響きは勇者達の名前と似ているよね」
 「さぁ? 俺は勇者じゃないのでなんとも」
 「あくまで白を切るつもりか……ならいい。実はこの街の王城に勇者が召喚されていてね、だからこそ他の国の勇者じゃないかって思ったんだけど」
 「……何?」


 思いもよらない情報に、俺は咄嗟にギルドマスターに食いつく。それは自身と勇者との関連性を裏付けてしまうものだったが、既に口にしてしまったことは仕方ないことだ。
 それに、諦めというのはあっさり出来るものだ。相手も半ば確信しているようだし、なら必要な情報を引き出しておくのがいいだろう。


 「その話、詳しくお願いできますか?」
 「……ハハ。君ならそう言うと思った」


 俺の言葉に、ギルドマスターは一層笑みを深くした。







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  • ノベルバユーザー288695

    ギルマスうざい

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