俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

クリスマスパーティー 中編









 俺が追及を逃れるのに要した時間は、およそ30分。
 繰り出される質問を巧みに躱し、何一つ答えることなく終えることが出来たのは朗報だと言えよう。


 問題は、妹たちの話になると『刀哉シスコン疑惑』が浮上してくるため、もうあいつらの中で俺のシスコンというのは決定なんだろうな、と分かってしまったことか。
 まぁ、別に構わないのだが。確かに妹に甘いのは自覚しているのだ。
 ただ、他者からの評価というのは、たとえ正当なものであれ、時には何となく不名誉に思えてしまうことがあるのだ。


 ともかく、8:46となった現在、俺達は役割分担を決めていた。


 「じゃあ、美咲と叶恵は買い出しかな」
 「えぇ、問題ないわ」
 「任せて!」
 「俺と樹と拓磨は、クリスマスの飾り付け担当だな」
 「飾り付け……センスが問われるのか」
 「俺がこっちに入るのは、ここが俺の家だからだ。だからダメならダメって言うし、そっちの方が早く決まるだろ?」
 「おうよ。だがクリスマスツリーはあるのか?」
 「それなら結構でかいのがあるぞ。確か階段下に置いてあったと思う。ただ飾り付けが無いから、それは買ってきてもらおう」
 「それじゃあ刀哉君も買出しに行った方がいいんじゃない? どうせ戻ってから飾り付けするんでしょ? 家主がいないんじゃ、ね?」
 「あ、そうか……じゃあ俺は買出しに混ざるから、拓磨と樹はクリスマスツリー引っ張り出しておいてくれ。階段下、分かるよな?」
 「大丈夫だ。お前ん家の間取りはほぼ分かってる」
 「あんまり嬉しくないな」


 ということで、買出しには叶恵と美咲と俺、飾り付けは拓磨と樹と俺ということに。
 なんか俺だけはしゃいでるみたいでやだな。一番はしゃいでるのは樹の気がするんだが。


 「さて、何買ってきたらいいのか」
 「まずケーキは絶対ね。後はケンタ〇キーとか?」
 「ローストビーフだよ! 確かベイ〇アに売ってたよね?」
 「寿司も欲しいな。フレ〇セイのが俺は好きだ。特にマグロづくし、頼んだ」
 「マ〇ク頼もうぜ〇ック。ナゲットとポテト」
 「何で見事に違う店なんだよ」


 今の全部聞くと五つも店を回ることになりそうなんだが、寿司が持たんわ


 「取り敢えず寿司は後で買ってくるとして、マッ〇は今回は無しだ。近くだとジョイ〇ルしかないから、諦めろ」
 「そりゃ残念」
 「ケ〇タッキー、ローストビーフは買うとして、後はなんだ?」
 「唐揚げと焼き串と、ピザとかも頼むか?」
 「重いな。女子2人が葛藤と戦いそうだ」
 「そ、そんなことないわよ! 今日はハメ外すって、決めたんだから!」
 「うん! 食べるって決めたもん!」


 何を決意しとるんだ。そんな意志固いアピールしたところでなんにもならないんだが。
 まぁ、一日ぐらいならそう大したものでは無いのか。


 「じゃあちょっくら買ってくるから。拓磨と樹はその間だ何してるんだ?」
 「そうだな、どっすっかなぁ」
 「そう言えば拓磨、樹が課題持ってきてくれたぞ?」
 「そうなのか? じゃあ俺は樹の課題を写させてもらうとしよう。」
 「ということで樹は?」
 「適当にゲームやってる。そこに出てんのはやっていいだろ?」
 「そうだな、シム〇ティ以外はやっていいぞ」
 「あぁ……あれ、壊されるとマジで困るもんな」


 災害を起こしまくった後にセーブした時の絶望感と言ったら半端じゃないからな。
 頼むから壊さないでくれよ? と念のため忠告。樹のことだから程々にしてくれると思うが、熱中すると周りが見えなくなるタイプだし、少し危険な気もしないでもない。


 まぁその時はその時だ。樹には最大級の拷問にかけることにするか。


 「じゃ、行きますかね」
 「そう言えば、お金どうするの?」
 「今回は俺が奢るよ。親からもらってるお小遣いでいける範囲だし」
 「……そのお小遣いって、刀哉君の宝くじからひかれてるんじゃ───」
 「おっと、それ以上はいけない」


 例えそうだとしても、俺は親からのお小遣いだと思っているのだ。






 ◆◇◆




 徒歩で十数分の距離にあるケーキ屋。今回はそこにケーキを買いに来ていた


 「あらぁ刀哉君、叶恵ちゃん、元気?」
 「恵那えなさんどうも。今日はクリスマスパーティー用のケーキを買いに来ました」


 店に入ると、早速とばかりに駆け寄ってきてくれたのは、このケーキ屋『ルート・クレファス』を経営している松山恵那さんだ。
 年齢は三十代で独身と、少し行き遅れている感じがあるが、見た目はいいのだ。だが貰い手がいない。何がいけないのか。
 恐らく酒癖が悪いのだろうと勝手に推測している。合コンに行っているらしいことは既に聞きえていた。


 そんな恵那さんは、俺と叶恵を見たあと、目ざとく美咲の方を向いた。


 「あら、今日は叶恵ちゃんだけじゃないのね」
 「初めまして。柳井美咲と言います。今日は刀哉君のお家でクリスマスパーティーを開くということで、買い出しを手伝っています」
 「フフ、ご丁寧にどうも。私は松山恵那。このお店を経営してるわ。それにしても見れば見るほど、叶恵ちゃんとは違った美少女ね……刀哉君の彼女ちゃん?」
 「ち、違います! 彼女じゃありません!」


 礼儀正しく、凛々しい姿から一転、美咲は恵那さんの一言で顔を真っ赤にしながら否定をした。
 初心なんだなと笑い半分、そんなに否定しなくてもと苦笑い半分。
 それは恵那さんも同じだったようで、その顔には喜色の笑みを浮かべている。


 「それにしても、こうしてみると、両手に花ねぇ刀哉君」
 「2人共俺には勿体ないですけどね。綺麗な花も、担い手がこれじゃ魅力を半減してしまうかもしれませんし」
 「謙遜ねぇ。お姉さんがもう少し若かったら、刀哉君のこと貰っちゃってたわ」
 「俺も、恵那さんが相手なら是非もありませんが、如何せん、俺じゃ釣り合いませんよ」
 「もう! ホント口が達者なんだから!」


 口元に手を当てて『や~ね~』のジェスチャーをする恵那さん。そして背後でヒソヒソと声が。


 「と、刀哉君っていつもあんな感じなの?」
 「そうだよ。恵那さん相手だとあんな感じなの。恵那さん綺麗だから、刀哉君も満更じゃないように見えるね」
 「……そうね」


 ……声とともに、敵意ではないのだが、トゲトゲとした視線が背中に突き刺さる。自分達そっちのけで他の美人と喋ってたら、確かにアレだよな。
 恵那さんもそれは感じ取ったのか、少し苦笑い気味に俺へと口を開いた。


 「いつか刺されるわよ?」
 「肝に銘じておきます」


 否定するだけの材料がないため、俺は素直に忠告を受け取っておいた。




 ◆◇◆




 その後ケーキを格安───お世辞でも嬉しかったからそのお礼だと───で貰い、次はベイ〇アである。


 「何買うんだったっけか?」
 「ローストビーフと唐揚げ、お寿司かな」
 「後焼き串よ」


 そういえばそうだった。
 ちなみに2人は既に機嫌を直している。『美少女2人を放っておいて、悪いな』と言ったら、すぐに戻った。
 叶恵は普通に嬉しそうに、美咲は『そんなこと言っても騙されないんだから』と言いながらも、態度が軟化したから凄い。


 それにしても、ちょろすぎて将来が心配になってくる。俺の言葉でこれだ。大丈夫なのだろうか。


 「寿司は生物なまものだし、夕飯の前にもう1度買いに来るか……焼き串もフ〇ッセイの方が美味しいから、ベイシ〇ではローストビーフと唐揚げ、それと後は……」
 「飾り付けは? この辺りにダ〇ソーとかあったっけ?」
 「う~ん、ジョイ〇ルならあるんだけどな……」
 「じゃあもうジ〇イフルにも行きましょ。樹君がマ〇ク食べたいって言ってたし」
 「……そうだな。少し距離があるが別に構わないか」


 そうこう話しているうちにベイシ〇に到着。


 「お~温かい」
 「そうだな。ただこれだと少し暑いな」


 店内は温かいのだが、現在の服装だと少し暑く感じる。
 仕方ないので一枚脱ぎ、腕にかける。モコモコとしているやつなので少し重いな。


 「にっくにっく~」
 「楽しそうね、叶恵」
 「刀哉君とお買い物なんて久しぶりだからね! ちょっと気分が高揚してるの!」
 「それは嬉しい限りだな」


 素直に返すと、キッと美咲のキツめの視線が。デレデレしてるんじゃない、とのことだろうか。 


 にっくにっく~と言っていた割には、叶恵はお菓子コーナーへと消えていた。俺との買い物で気分が高揚って、もしかして菓子買えるからなのか?
 そんなことを思いながら、まず最初に目に入ったのはローストビーフ。しかし二種類ある。


 「ローストビーフは、四角いのサイコロ薄いのスライスがあるわね」
 「サイコロは噛みごたえがあり、スライスは数が多いと……」
 「悩むわね……」
 「悩むな……」


 美味しさ的にはサイコロ、量的にはスライス。
 ここは一旦拓磨達と連絡取るか、と携帯を取り出したところで、お菓子売り場に行っていた叶恵が帰ってきた。


 「刀哉君これ買っていい?」
 「ん? あぁペ〇ツか、懐かしいな。別にいいぞ」


 俺も昔食べてたな。レモン味とコーラ味が好きだったっけか。わざわざ容器(あのディ〇ニーのキャラとかの顔が上に乗ってるやつ)に入れて食べてたな。


 「叶恵、これとこれ、どっちがいいと思う?」
 「え? う~ん、両方?」
 「あ、その手があったか」


 何気なく美咲が叶恵に意見を求めたが、解決策が出ました。
 結局両方ともカートへ入れて、次に行くことに。やはり第三者の意見は役に立つよな。


 「あ、お肉がクリスマスセールで、全品30%オフよ」
 「え? うっそマジか~。こりゃどうするかな」


 お肉コーナーに行けば、そこには『30%オフ』とデカデカと書かれていた。普段なら朗報なのだが、今日に限って言えば微妙だ。


 「買っても焼く手間がかかるしな……あ、いやでもホットプレートで焼けば食べながらできるし、時間短縮できるか」
 「しゃぶしゃぶでもいいんじゃない? 今日は全体的に重いでしょうし、ポン酢で食べればスッキリするわよ?」
 「じゃあしゃぶ肉にするか。5人だけど他にも食うもんあるし、3個ぐらいでいいか」
 「そうね」


 取り敢えず3パック買い、更に移動。
 なお、叶恵はまたどこかをほっつき歩いている模様。お前は親の買い物についてきた子供かってツッコミたくなる。


 「唐揚げ……どのぐらい食べる?」
 「そうね、二つぐらい買っておけばいいんじゃない? よく良く考えれば、2、3時間は食べてるんだろうし、話しながら食べると考えれば結構いけると思うわよ」
 「そうか。じゃあ買っていくか」


 少し多いか? と思ったが、時間をかければ食べられるものだな。


 それにしても、こう、今の俺達を周りから見たらアレなんじゃなかろうか、とちょっと変なことを考える。残念ながら俺も美咲も、お互いに恋愛感情など抱いているはずが無いので、『お前ら新婚夫婦かよ!?』とか言われても『んなわけないやん』で済ませられる。


 まぁ美咲には失礼な話かもしれないが。だが、そう嫌がられることもないだろう。
 その程度には、仲がいいはず。


 「そういやしゃぶしゃぶに野菜って入れるっけか?」
 「さぁ? 提案しておいてなんだけど、私もあまりしゃぶしゃぶは食べないから。でもポン酢だから、レタスとかもやしとかは合うんじゃないかしら」
 「なるなる。んじゃ買ってと」


 更にカートに入れる。


 こう、目に付いたものを全て検討していくスタイルだが、これ高校生の買い物で収まるだろうか。まぁ結局は買うんだが。


 家とか車とか買っといて何を今更と思う気もしなくもないが、あれは別だろう。金銭感覚狂いそうだし、あんな高額な買い物は何度もやるものではない。


 「あ、ハリケーンポテトだってよ」
 「え? なにそれ、面白いわね。買っていきましょうよ」


 長い棒にポテトが螺旋状に巻かれている商品、ハリケーンポテトを発見。美咲が即行でカートに入れているので、検討する時間は無かったが、どうせ考えた上でも買っていたと納得させる。


 「そんでもって……なんか菓子が増えてる」


 今何入れたっけとカートに視線を向けたら、上にポテチが3袋ほど乗っていた。しかも3つともコンソメである。
 置いた張本人は既に後ろ姿しか見えず、恐らくまたお菓子コーナーに行ったのだろうなと嘆息。その行動速度たるや、『スタタタ~』とでも音が鳴りそうだ


 「なんと言うか、大変ね」
 「まぁそこまで多い訳でもないしな。買える範囲だ」


 久しぶりで高揚してるとも言ってたし、少し歯止めが効かなくなっているのだろう。
 ただ、こうやって金を払うのを俺に任せていたら、将来に困りそうだなと心配はするが。


 「そうだ。飲み物も買ってくか。どうせ炭酸系飲むだろ?」
 「私はそこまで飲まないわよ。家は親が行儀にうるさいから、炭酸とかも何となく飲みにくいのよ。まぁ、こういう日には飲むつもりだけど」


 結局は飲むんかい。


 それにしても、美咲の家って何となくだけど厳しそうなイメージがある。まぁ美咲が礼儀正しいからな。それに付随するイメージだろう。


 「コーラとサイダー、どっちがいいかしら?」
 「ローストビーフみたいに、両方で良くないか」
 「……金銭感覚がおかしくなってるんじゃないかしら」
 「今日だけの話だ」


 なんせ一人暮らしだからな。買い物も自分───たまに妹が買ってきたりするが───でやらなきゃいけないし、そうなるとお金の管理も上達する。


 とは言え、今日はパーティーだし、少しぐらい贅沢したところで怒られはしないだろうと、やっぱり管理できてない気がしなくもないが。まぁこういう日は別ということで。


 「大体買い終えたかしら」
 「夕食についてはな。昼飯も買ってかなきゃだ。なんか昼飯持ってこいよ」
 「それもそうね。あ、叶恵にもついでに言っておくわ」
 「りょーかい」


 恐らくパンの方にったのだろう。途中でお菓子コーナーに寄って行ったので、叶恵にも伝えてくれたはず。。
 俺は取り敢えず唐揚げ弁当を。


 「あ、樹と拓磨に聞いておくか」


 ついでに俺はRAINレイン───携帯端末間での連絡アプリの名前だ───で2人に聞いておく。すぐに返ってきたが、樹が『ピザパン』で、拓磨が『ハンバーグ弁当、おろしで』と偏った。


 取り敢えずハンバーグ弁当を買う。俺はデミグラの方が好きなんだが、そこは個人の好みか。


 樹のピザパンを買うために冷凍食品売り場へ。しかし、ピザパン、無い!


 『ピザパン無いけど他になんかある?』
 『えぇ~無いのかよ。じゃあ肉まんでお願い』
 『りょ』


 そんなやり取りをした後、肉まんをカートへシュート。あんまんも入っているのは、俺が食べようと思ったからだ。


 どうせ近いしとパンコーナーへ。美咲はすぐに見つけ、叶恵も見つけた。


 「何にするんだ?」
 「私はチュロスにしようと思ってるわ」
 「甘いけど、大丈夫か?」
 「そ、そこを心配しないでちょうだい!」


 砂糖って聞くとカロリーをイメージするが、パンだからそこまで無いのだろうか。チョコとかめっちゃカロリーがな。


 「私クリームパン!」
 「お前はクリームパンではないだろ」


 アソパソマソにそんな奴いたな確か。ただ男か女かもわからない。というか顔も出てこないけど。


 チュロスは袋に入ってないためその場で買うので、俺は叶恵のクリームパンをカートに入れて先に会計を済ませてくることに。
 というか、ベ〇シアの中に揚げ物系のパンコーナーってあったのな。初めて知ったよ。


 会計を済ませて袋に詰めていると、美咲と叶恵も戻ってくる。というか叶恵は少しは手伝ってくれてもいいと思うんだが。


 「この荷物の量だと、一旦帰らないとだな」
 「そうね。重そうだから、一つ持ってあげましょうか?」
 「いや、大丈夫だ。というかどこの世界にか弱い女の子に荷物を持たせる鬼畜が居るんだよ」
 「……何故かしら。か弱い女の子というのが皮肉にしか聞こえないわ」


 全然そんなつもりはなかったのですが。何か思うところでもあったのだろうかと顔を伺う。


 「ちょっと、新婚夫婦みたいなことしてないで早く行こうよ!」
 「……そんなわけないだろ」


 今の場面でそう言われても、新婚夫婦要素が無いんですが。


 ただ、その言葉を聞いて顔を赤らめた美咲を見れば、まぁ確かに新婚夫婦までとは言わないまでも、"カップル"には見えるんじゃないか? と、少し失礼なことを考えた俺である。


 対照的に、プンスカと、構ってもらえないことが気に障ったのか、少々不機嫌気味な叶恵に、俺は難しい乙女心を見たのであった。







「俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

  • みなぎ。

    ◯が付きすぎて面白いです笑
    メタイですけど私は結構好きです笑笑

    5
コメントを書く