俺の学年が勇者として召喚されたが、俺は早速腹黒王族にマークされたようです

イミティ

第7話 ピンチは突然やってくる







 『グラァァァァ!!』
 「なっ、オーガキングだと!? 何故こんな高位の魔物がここにいる!?」


 グレイさんの驚愕の声は、幸か不幸か全員に届いた。それは士気の降下、指揮系統の破損を意味した。


 オーガ……俺の知識によれば魔物の中でも上位に位置する魔物だ。そのパラメータは高く、B、Aランク冒険者でないと相手にできない強さだ。
 その中でも上位のハイオーガ、更にその上にオーガキングは存在する。冒険者ランクSS相当で、1体で国の危機にすら繋がる。


 「勇者は今すぐ階段に行け!! オークを倒している暇はない!! 騎士団はその援護、ベルトは私と共にオーガキングの足止めだ!!」
 「了解!!」
 「みんな、今すぐ階段へ急ぐんだ!! 道は俺が開ける!!」


 グレイさんの言葉をすかさず復唱した拓磨は、剣を片手に後方のオークへと突っ込む。


 オークの数は、今の一瞬の内に100体まで戻っていた。いや、更に増えている。先程までとは明らかに違う増加速度に、俺もすぐに声を上げる。


 「美咲と樹は拓磨の援護に行ってくれ!」
 「分かったわ! 刀哉君は?」
 「俺はグレイさん達の援護に行ってくる!」
 「無茶だ刀哉!! 危険すぎる!!」


 俺の言葉にすかさず反論してきた樹。直感で奴の強さを感じ取ったのだろう。俺も正直言って正面から戦って勝てるとは思えない。


 だが、と俺は視線をグレイさん達に向ける。オーガキングは魔法こそ扱わないが、厄介な力を持っている。その一つは、圧倒的なパラメータによる、棍棒で地面を叩きつけて衝撃波を飛ばすものだ。
 今はまだグレイさん達も捌けているようだが、一つでも後方の勇者達に届いたら被害は損大、今度こそ戦況は絶望的になる。


 「安心しろ、遠くから魔法で援護するだけだ! それよりさっさと退路を開かないとグレイさん達も危ない!!」
 「くっ……絶対無茶だけはするなよ!!」
 「刀哉君、気を付けなさいね!!」


 一刻を争う事態だと理解したのか、2人は苦い顔をしながらも拓磨の援護へと向かった。
 これで問題は無い。後はグレイさん達の援護だが、オーガキング相手では二人がかりでも防戦一方の状態だ。


 「───『次元の壁ディメンションウォール』ッ!!」


 だから、俺はすぐにグレイさん達と勇者達の間に時空魔法で作り出した壁を形成する。範囲内の空間の座標を少しずつズラすことで空間を歪めて、物理的な攻撃は一切通さないようにする、俺のオリジナル魔法だ。
 勿論それも、限界を超える攻撃をされれば壊れてしまうのだが、そうやすやすと壊れるものでは無い。


 「な、なんだ!?」
 「魔法を使った!! その歪んでるところよりこっちには来るなよ! 死ぬぞ!」


 声を上げたモブ君に大声で伝える。勿論ほかの奴らにも聞かせるためだ。


 空間が歪んでるから、そこに無理やり入ろうとすると体の座標が全てずれる。綺麗に全身がズレてくれるといいが、上半身が右に、下半身が左にとなったら、想像したくないようなことが起こるだろう。


 そして、その情報の真偽はたった今突っ込んだオークによって証明された。胴体と頭と下半身がそれぞれ違う場所に現れた。勿論盛大な血飛沫付きでだ。


 「………」
 「グレイさん、魔法で勇者達の方には被害が行かないようにしました! 衝撃波の心配はありません!」
 「何!? どうやって!?……いや、良くやった!」


 青ざめた顔をしている勇者達は置いておいて俺は叫び、グレイさんの返事に答える間もなく更に次の魔法を行使する。


 「『重力檻グラビティプリズン』ッ!」


 ズン!!


 俺は棍棒を振り上げ、今にも地面に叩きつけようとしているオーガキングを対象に、魔法を発動する。
 その名の通り、重力を通常の数十倍にして対象の動きを封じる魔法だ。


 その効力は、先程まで暴れていたオーガキングの動きを封じ、地面に縫い付けていることからも確認できる。流石にレベル8の魔法の効力は伊達じゃないらしい。


 対象が一体だけなら、大きさにもよるがオーガキングほどの強さの魔物も縫い付けることが出来る。


 「グレイさん、今の内に!」
 「分かった! ベルト、特攻だ!」
 「了解しました!!」


 俺の魔法に驚きながらも、今まで防御に回していた分を全て攻撃に使って特攻を仕掛けるグレイさんとベルトさん。たちまちオーガキングの身体に傷をつけていくが、それでも倒すには至らない。
 そこに、遠くから声がかかった。


 「刀哉、グレイさん! 全員階段までの移動完了しました!」
 「分かった! こちらもすぐに向かう! 刀哉、この魔法の維持は可能か?」
 「この状態ならあと一分は持ちます!」
 「よし、なら私たちも行くぞ!」


 グレイさんはそう言って走り出す。その後をベルトさんが続く───って危ない! 魔法解くの忘れてた!


 急いで『時限の壁ディメンションウォール』の魔法を解く。危うくグレイさん達もオークの二の舞になるところだった。いくらグレイさん達でもこの魔法を防ぐことは難しいと思うし。


 俺もオーガキングを封じるのに思考を割いているので少し動きが遅くなっているが、それでも着々と進んでいく。
 が、その時だ。


 『グ、ガァァァ!!』
 「何っ!?」


 オーガキングは雄叫びを上げながら、俺のかけた魔法を自力で解いた。
 その反動は、術者である俺に一気にくる。魔法に思考が占有されていたせいで、俺の脳内を一時的にノイズが埋めつくした。


 「あぐっ!? チッ!! 『重力檻グラビティプリズン』!!」


 無理矢理思考を直し〃〃、再度魔法をかけるも、すぐに破壊される。
 おかしい、明らかに先程よりも強くなっている。


 よく見ると、オーガキングの身体に黒い靄が取り付いていた。


 「クソッ! 魔法が効かないのはアレの仕業か!?」


 その事実に足止めを諦めて、俺は階段の方へ向かうが、オーガキングの動きはとても俊敏だった。


 「チィ!!」


 目で見るよりも先に、気配と勘で右に飛ぶ。
 すると、先程まで俺がいた場所に棍棒が叩きつけられ、真横にいた俺も衝撃で飛んでいく。


 「「刀哉!?」」
 「「刀哉君!?」」


 樹達の声が聞こえるが、今はそれどころではない。


 壁に叩きつけられる前に『次元の壁ディメンションウォール』を再度先程までと同じ場所に発動し、更に自身は風魔法で衝撃を殺し、地面に着地する。
 避けていなければ俺は死んでいただろう。まじでそれぐらいあいつはヤバイ。


 俺の張った『次元の壁ディメンションウォール』にオーガキングの棍棒の衝撃波が当たる。空間に亀裂が走るが、ギリギリで耐えたようだ。
 少なくない魔力を消費し、再度重ねがけをしておく。


 「あぁくっそ、どうする俺。マジで詰んでるぞ」


 棍棒の衝撃だけで怪我をした身体に無詠唱で回復魔法をかけながら、オーガキングを見据える。


 このオーガキングだが、今は俺だけを狙っているからいいものの、階段に避難した奴らを攻撃しだしたら危ない。俺の『次元の壁ディメンションウォール』も1発までしか持たないから、連発されたら危険だ。


 「『フラッシュ』、からの『炎柱ファイアーバーン』!」


 試しに攻撃魔法を使ってみるが、光魔法で視界を潰し、回避場所まで織り込んで範囲を指定した炎柱も、当たってもろくにダメージを与えられていない。


 頼みのグレイさん達も、激しさを増したオーガキングに出てくるタイミングを計り損ねている。
 それほどまでに今のオーガキングは危険だった。


 振り切られる棍棒を回避するが、またしても衝撃波で飛ばされる。あの棍棒に当たらなくても衝撃波でダメージを負うので、回避が難しい。


 また自身に回復魔法をかけつつ、俺はオーガキングの奥を見る。


 俺の後ろには階段と勇者達、目の前にはオーガキングだが、その奥には奈落の底と思われる崖が存在する。
 倒す方法がない今、どうにかして奴を下に落とせれば良いのだが……。


 「っクッソ!! 考えてる暇がねぇ!!」


 横に振られた棍棒と俺の間にすぐに『次元の壁ディメンションウォール』を張って避ける。
 直接の攻撃はやはりキツかったのか、『《ディメンションウォール》』は壊れてしまったが、一瞬のタイムラグの隙に衝撃波が届かない場所まで全速力で逃げる。


 もちろん、場所は崖の方向だ。


 「っ!? おい刀哉ダメだ!!」


 俺が何をやるか察知したのか、樹の静止の声が聞こえるが、無視。余り時間をかけてられないのだから。


 俺を追いかけて来たオーガキング。その勢いは俺が全速力で逃げたからか、今までで一番速い。
 俺と崖までの距離は残り30メートル位。この距離なら、今の俺なら一瞬で詰めることが出来る。


 俺は地面を思いっきり蹴って、そのまま宙に身を投げ出した。


 『グラァァァ!!』


 後を追いかけてきたオーガキング。何でかわからないが、終始俺だけを狙ってくれていたお陰でこういう手を使うことも出来た。


 俺と同じように宙に身を投げ出したオーガキングに、本気の重力魔法を掛けてやる。


 「これなら避けられないだろ!!」


 目に見えて空間が歪み、今度はしっかりと魔法が発動したのを確認する。その分魔力もごっそりと減ったが、この際仕方ない。
 俺は風魔法によって自身の体を一気に地面がある方へ押し戻す。ここで俺が落ちたら元も子もない。


 だが、そこでひとつ誤算が起きた。


 『ガァァァァ!!』
 「なっ!? おい、離せよッ!!」


 突然、最後の抵抗とばかりに腕を伸ばしたオーガキングによって、俺はその手に捕まった。


 すぐにオーガキングにかかってる重力魔法を解除しようとしたが、時は遅く……。


 ───俺は、オーガキングと共に奈落の底へ落ちて行った。





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