朝の来ない異世界と七大魔法剣士(マジックナイト)

七瀬はやと

不気味に笑う影

ギルドを出た後にレミナと別れて、宿に泊まった。


翌朝


屋台が並んでいて、美味しい肉巻きを2個買うことにした。

「レミナが喜んでくれると良いけど。」

町の中心部に近づくとレミナの白い髪の毛が見えた。


「おはようレミナ!」

「おはようカイト......ふわぁぁぁ....眠い」

寝不足なのか、レミナが大きなあくびをする。


「眠いの?」

「違うよー多分。」

「カイトは眠い?」

「特に眠いわけではないよ。」


「あのさレミナ!これ良かったら一緒に食べない?」

レミナに買った肉巻きを見せる。

それを見たレミナは眠そうな目から輝きを取り戻した。

「良いの?」

「好きでしょ?これ。」

「よく分かったね!これは小さいときから好きな食べ物なんだよ!」

「ありがとうねカイト!」

「どう致しまして。」

はむっ はむっ

レミナが一瞬にして肉巻きを完食する。

早いな!また今度買ってあげるか。

そろそろ俺も食べようかな。

はむっ

「うん!やっぱり旨いなぁ!」

はむっ   
二口で肉巻きを食べ終わる。
「ごちそうさま。」


「ん?あれは?」
ふと、街灯が目に入った。

街灯か......確かイリエルが言ってたな。この世界では魔法使いの光魔法のお陰で朝が来なくても、ずっと明るいんだっけ?でも、MPがあるんだよな?無くなったりしないのかな?



「レミナ!ちょっと質問良いかな?」


「良いよ!肉巻きくれたし、昨日助けてくれて本当に感謝してるから!」

「この町は魔法使いの光魔法のお陰で明るいだろ?」


「はい」


「でもMPがあるから、継続的には光魔法は出来ないんじゃ無いかな?」

一人で光魔法をしてこの町を支えるのは到底無理に等しい。

「その疑問が普通だよ?一日約1000MPを消費するって言われてるから、並の魔法使いじゃないとMP切れになっちゃうよ。」

1000MPか.......多いのかは分からないが、高LVじゃないと無理そうだな。

「ちなみに町の街灯には魔法陣が無数に巡って伝っているからMPを消費すると一気に明るくなるようになってるよ!」

「後は三人構成でMPを分けてやってるらしいよ。LVやランクでどう分けるかが決まるって聞いたことがあるよ。」


「私の知ってるのはこれくらいかな?カイトの役に立てたかな?」


「うん!ありがとレミナ!また知らない事があったら教えてくれないかな?」

「はい!喜んで!」
初めてレミナとあった時よりはこっちの方がやっぱり良いよな。

「やっぱり素のレミナの方が良いよ!」
思ってた事が口に出てしまう。

「え?」


「俺と初めて会ったとき、敬語を使ってたでしょ?そのレミナも清楚な感じがして良かったけど、今のレミナは本当のレミナが居る感じで何か話していて楽しいよ!」

「唐突にそんなことを言われると恥ずかしくてしょうが無いです。」
レミナの耳が赤くなる。


「でも、たまには清楚なレミナにものなってね!」

「分かりました!カイト!」

「もう少しだけ俺の話を聞いてくれるかな?」

「うん。」

「俺はこの世界には居ない別の世界から来た人間なんだ。まぁ色々あってこの世界に来たんだけど。俺には母さんと弟が居たけど俺の目の前で二人は.....
もう大切な人は二度と失いたくない。
だから自分の出来る範囲内でレミナを守りたい。」

「守ってくれるのは嬉しいけど、嬉しくない。」



え?どっち?


「確かに守られるのはありがたいです。でも私だって一様LV300ですよ?カイトを守る位の力は持ってるはずです。なのでお互いに守り合うで良いんじゃないですか?」


肝心な事を忘れていた。それは手を合わせて一緒に戦うこと。自分のトラウマを少しでも消すために俺は誰かを守ることしか考えてなかったのか....それでもレミナは協力し合うことを決めた。何で分からなかったんだろう?

「そうだね。ごめんねレミナ...後ありがとう。大切な事を思い出せたよ。」

「これからはお互いに絶対に死なせない位の気持ちで守っていこうね!」

「うん!その方が良いと思うよ!」


「じゃあ今日も依頼を頑張ろうか。」

「はい」


そう言いギルドに向う時だった。
どこからか声が聞こえる。

「緊急事態!緊急事態!パルミーネにキラーオーガ10体ダークゴブリン20匹ダークウルフ20匹計50の魔物が急接近しています。戦える冒険者はパルミーネの中心部の広場に一刻も早く集まって下さい。」

この声はあの受付のお姉さんの声か?

「カイト、戦いの準備するよ!」


「おう!」

周りを見渡すと強そうな人ばかりがいる。

「カイトあの人見て。」

指を指している方を見ると黒いマントで身を包んでいる男の人がいる。

「あれはSランクの漆黒の竜騎士...アレス・バルチャーだよ!生で見るのは初めて!」

「他にも同じくSランクで唯一の賢者のメルカ・ネホートもいる!」

「凄い人ばっかだね。カイト!」 
そう言われても誰だか分からないのだが...でも強者の威圧感なのだろうか?明らかに強いことがすぐ分かる。

「集まって頂きありがとうございます。このパルミーネの町を守るために絶対に勝ってください!」
オォーッ

集まっていた冒険者が叫ぶ。

あの受付のお姉さんやるなー

「じゃあレミナ、俺達も行くか。」

「はい!」

俺達は門を出て外に出た。






「レミナ。ホーリーロードで明るくして貰っても良い?」

「勿論!」

「光よ集え!ホーリーロード!」

レミナの白い髪が光で黄色に変わる。

詠唱後地面が明るくなったことを確認した。

どんくらい遠くに魔物がいるのかな?
確か遠くを見る事が出来る固有魔法を覚えてたよな?


遠眼(レルスト)!!そう言うと望遠鏡を使ったんじゃないか!って思うくらい遠くが見えるようになった。

えーとどれどれ

前方にキラーオーガ5体とダークゴブリンが10匹かな?こっちに向かってるのが見えた。

「レミナ、前方からキラーオーガ5体とダークゴブリンが10匹向かってるよ!」

「カイト、見えるの?」

「遠くが見える魔法を使っただけだよ?」

「そんな魔法があるんだ!」

珍しい魔法なの?遠くが見えるだけの魔法だよ?


じゃあ俺も準備をするか。


「フレアソード生成!アイスソード生成!」

お気に入りの二刀流で戦うか!

右にフレアソードを左にアイスソードを装備する。


保険として身体能力強化も掛けておく。

「レミナも身体能力強化した?」

「はい。念には念をだからね!」


ここからは戦場。生死を分ける戦い。


「気を引き締めて行こう!」

「カイトもね!」


魔物の居るところまで走って向かった。
ただ走っているとは思えないスピードだ。

本当に慣れないけど楽しい。


ん?あれはダークゴブリンかな?5匹とも固まって行動している。大きさ的には余り大きくないけど木で出来た棍棒を持っている。


先に倒した方が良いな。

「レミナ!ダークゴブリンを先に倒すよ!レミナはダークゴブリンの左に回って。俺は右に回るから。」

「分かった。」


ダークゴブリンに気づかれないように右から不意打ちを仕掛ける。

「はぁぁッ!」

ダークゴブリンを二匹まとめて斬り付ける。
俺に気付いたダークゴブリンが棍棒を投げてくる。
「炎盾の守り(フレアシールド)!」

俺めがけて飛んできた棍棒が一瞬にして灰になる。

危な!棍棒投げるのありかよ。

でもダークゴブリンの注意をひくことが出来た。俺ばっかりに気にしすぎ。

残りの三匹のダークゴブリンは俺を集中狙いしていたため、左に回ったレミナに気づかなかったらしい。


「剣よ!炎を纏え!!」

鞘から剣を出して炎を纏わせる。

「てやぁぁッッ!」

やっとレミナの存在に気づくがもう遅い。

ダークゴブリンの体をレミナの剣が切り裂く。三匹まとめて灰になってしまった。

くぎゃぁぁーー

「ありがとう!レミナ!」

「ダークゴブリンの注意を引き付けて油断させるとは流石だよ!」

「どうも!」

ん?何だあれ?
俺の倒したダークゴブリンの場所に何かがある。

レミナの倒したダークゴブリンは灰になったが、俺の倒したダークゴブリンは何かアイテムを落としたらしい。
取りあえず拾うか。

「ゴブリンの牙を手に入れました。」

ステータスウィンドウが喋る。

は?喋れるの?てかいらな!牙なんて誰が得するんだろうか?

まぁ一様持っとくのも良いかも知れない。役に立つかも知れないからな。


「た、助けてくれー!」

ん?声が聞こえる方にふり向くとキラーオーガ?に襲われている三人の男女がいた。


あれはやばい!キラーオーガは鉄の斧を持っていてダークゴブリンの時よりも数倍危険だ。
「カイト?」

助けないと!
キラーオーガが三人に向かって鉄の斧を振るう。

「やめろーッッ!」

走ってその場に向かうがどうしても間に合わず。遠距離から魔法を使うことにする。


「ブリザード!」

キラーオーガを氷で動きを止めた。
危ないあと少しで当たっていたぞ。
「今の内に逃げて下さい。」

「あ、ありがとう。この恩はいつか返します。」


そう言って三人の冒険者は走って行った。

「町の人を一人たりとも殺させない!」


キラーオーガを固めている氷に向かってフレアソードをありったけの力を加えて投げた。


フレアソードは氷を貫通してキラーオーガに刺さった。
余程痛かったのだろうか?刺さった後にキラーオーガが暴れて氷の塊を粉々にした。


しかしかなりダメージは入ったらしく、体制を崩している。

今がチャンス!
「地獄の岩撃(ヘルストーン)!」
キラーオーガの数倍大きな岩石がキラーオーガを潰した。

「ふぅー流石に疲れるなぁ。」


「カイトー大丈夫?」

レミナが心配そうに聞いてくる。


「うん!大丈夫だよ。ごめんね一人で勝手に動いちゃって...」

「カイトは冒険者を助けたんでしょ?なら結果オーライだよ!」


「そうだな。」

レミナにそう言った後魔物を探しているときだった。

後ろから女性の声が聞こえる。

「ねぇ君達、少し手伝って欲しいんだけど良いかな?」
髪が黄色い女性が話し掛けてきた。
俺に聞いてるんだよな?その割にはレミナをちらちら見ている。

「はい。別に構いませんが...」
「あっ!サチカだー久しぶり!!」

レミナがサチカと言う人物に抱き付く。

「こらレミナ!はな、離れなさいよ。」

そう言われているのに一切離れようとしない。
久しぶりの友人との再会だろうか?レミナの顔が笑顔に包まれていた。


「あ、そうそう自己紹介をしていなかったわね。」

「私の名前はサチカ・クロムネル。今は聖騎士をやっていて、レミナとは同い年なの。」

俺で言うところの直也みたいな存在って訳か。
「へぇーそうなんだ。俺の名前は天宮海斗。宜しくねサチカ!」
「アマミヤカイト?珍しい名前ね。」

そうだろうか?レミナに自己紹介をしたときも珍しいと言っていたな。

「どうして俺達に?」

「さっきのダークゴブリンやキラーオーガの戦いを見ていて貴方たちの実力は何となく分かっているの。」

見てたんだ。全く気づかなかった。


「ここから東の場所にキラーオーガが5体いたから、私一人じゃ無理って訳では無いけどかなり時間が掛かるから手伝って欲しいんだけど良いかな?」

「カイト!やりましょう!」

レミナの友達が困ってるなら手伝わないとな。
「そうだなレミナ。倒しに行くか。」

「レミナ.....カイト.....二人はそんなに仲が良いの?カップルなのかな?」

サチカが何かぶつぶつと独り言を言っている。

「どうしたの?」

「え?いや、何でも無いよ。」

「分かった。じゃあそこまで案内してくれないか?」


「うん!じゃあついてきて。」


そう言われサチカの後をついていった。





「あれよ!」

そう言われてサチカの見ている方を見るとキラーオーガが5体固まっている。


「あれを一発で灰にすれば良いのか?」

「5体も一気に倒せるの?」

「いや、無理では無いと思うけど....」

「キラーオーガを灰にして良いかなレミナ?」

「カイトが出来るって言うなら私はそれを信じます。」


「ありがとうレミナ!じゃあ灰にするか。」

右手をキラーオーガに向ける
「地獄の黒炎(ヘルダークフレア)!」

真っ黒い炎の塊がキラーオーガに命中する。

5体とも固まっていたので全滅させることに成功した。


「終わったよ!レミナ、サチカ!」

そう伝えるがサチカは呆然としている。

「流石ですねカイト!」


「あ、貴方たちは何ランクなの?」

「つい最近Dランクになったばっかりだけど。」

「Dランク!!?キラーオーガ5体を一瞬で倒した人がDランク?ハハハ冗談を言うのもやめて欲しい物ね。」

冗談では無くて事実を伝えただけなんだが....

「サチカ!カイトは本当の事を言ってるんだよ?冗談なんかじゃ無いよ?」

「まぁ本当だとしてもキラーオーガはBランク以上の人が戦ってやっと勝てるような魔物なの。」

それなら驚いて当然だな。絶対に勝てないランクで勝ったのは正直あり得ないことだし。


じゃあ次の魔物を探すか。


そう思って辺りを見渡しても一匹も魔物の姿を見ることが出来なかった。

もう全部倒したのか?俺とレミナは五分の一は倒したから役には立てたよな?


そう思っていると聞き覚えのある声が聞こえて来る。


「冒険者の皆さんのお陰で魔物を一匹も町に入れずに済みました。報酬はステータスウィンドウに倒した魔物の数が書いてあると思うのでその討伐数によって変更していきたいと思います。本当にお疲れ様でした。」


この声はどっから聞こえるんだ?近くに居るようには思えないし、声を遠くに届ける魔法なんて無いと思う。


「レミナ、さっきの受付のお姉さんの声ってどうやったら俺達に聞こえるんだ?遠くに声を届ける魔法なんて無いよな?」


「遠くに声を届ける魔法だけど.....そうゆう固有魔法があるんだよ?」

すみませんでした!まさかそんな魔法があるとは思わなかった。

「そうなんだ....知らなかった。」

無いと言い切った魔法があったという恥ずかしさを隠すために話を逸らすように話題を変えた。

「もう魔物を倒したことだし帰らない?」

「え?話し逸らした!」

やはりばれた!

「いやー今日は疲れたなー宿でゆっくりしようかなー。」

逃げるようにレミナの聞こえる声で独り言を言って町に戻る。


「カイトー待ってよー」

そう言って俺の後をついてくる。


「私の存在を忘れてない?」
そんなサチカの声が聞こえた。


町に戻った俺達は報酬を貰いにギルドに向かった。


ギルドの中に入るとこれまでに無い盛り上がりを見せていた。

「あんたはダークウルフを6匹倒したんだろ?流石だな!」

「ま、俺にかかればこんなもんよ!」

凄いのか分からないが頑張って倒したらしい....お疲れ様です。

そんな光景を見ながら受付のお姉さんの元へ向かった。


「すみません!報酬を貰いに来ました。」

「はい!あっ!カイトさんじゃないですか~期待してますよー。ではステータスウィンドウを見せて下さい。」

そう言われたのでステータスウィンドウを開く。

「えーとダークゴブリンが5匹とキラーオーガが6体ですか!!相変わらず期待を裏切らないですねー。」

勝手に期待されても困るんだが。

「ダークゴブリンが200ゴールドでキラーオーガが1800ゴールドになります。合計で2000ゴールドになります。」

ステータスウィンドウに1000ゴールドが追加された。


「ありがとうございます。では」

「ちょっと待って!」

それはサチカの声だった。


「どうしたの?」

「私も貴方たちのパーティーに入れて貰えないかしら?」

「俺は良いと思うけど。レミナは?」

「はい!私も良いと思います。」


パーティーは多い方が良いからな。

「うん!じゃあ今日から改めて宜しくねサチカ!」

「うん!宜しくね!」

「再びすみません!パーティ登録したいんですけど。」


「カイトさん!!また女の子ですか!!モテますねー」

仕事をしなさい仕事を!
サチカを見て新しいメンバーがサチカだと察したらしい。
「じゃあ貴方の名前を聞いても良いかな?」

「はい!私の名前はサチカ・クロムネルと言います。」

「サチカさんですね。はい!登録完了しました。報酬は三人なので三分の一になるのでしっかりと分けてくださいね!」

「分かりました!度々すみません。また依頼を受けにここに来ます。」


「はい!お疲れ様でした。」

賑やかなギルドを出るとさっきまでの盛り上がりが嘘だったのかと思ってしまうほど外は静かだった。



「いやー今日は疲れたなー」

「私は結局何もしてないけどね。」

「そんなこと無いよ!私達にキラーオーガが集まっている所を教えてくれたじゃん。」

「まぁそれが今日の私の頑張りにしとくわ。」

そんな会話をした後にレミナとサチカに別れて宿に泊まった。












「パルミーネは襲撃出来たのか?」


「それが....手配した魔物は全員倒されてしまいました。」


「次はお前も行くと良い。きっと楽しい戦いになるであろう。」

「ありがたきお言葉!魔王様のためにも必ずやパルミーネの町を占領して見せます。」

「よろしい!下がって良いぞ。」

「はっ!」

「カイトッ!絶対にお前だけは許さん!」


その怒りの声は手下達が震え上がる程だった。

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