不老不死とは私のことです

6W

入学式編 25話


「……」

遠ざかるロボと鼻水つきブレザーをなんとも言えない気持ちで見送る私と纏わりつくクロエ。それはとても奇妙な情景だった。

「ハハッ、2人って仲いいよな。付き合ってるのか?」

……節穴かな眼科推奨

「へへっ、わかるぅ〜?」

……いや、何が?

そう言えば、監視と護衛任務をし易くするために、恋人のフリをする予定だったか。例えば人気のない場所で密談していてもおかしくない関係に見せかけるため、でしたっけ。

つまり、この邪竜も任務のことを考えてこんな演技を……いや、ねーな。引っ掻き回して遊んでるだけでしょう、多分。

でもその路線で行くとすれば、下手な真似は出来ないか。

男二人(いや一人と1匹か?)の暢気な会話に突っ込まないよう必死で我慢しながら様子を見守る。

「 うん、それでねー。卒業次第雀とは直ぐに結婚を……」
「いやどこまで話進んでんの?!」

「ふふっ、雀は照れ屋さんだなあ」

イラッ☆(殺意)

テメー、そこで調子に乗ってろよ!いつか、いつか絶対殺してやるからなぁァァァァ!

とりあえず、この爬虫類とは早急に話し合いの場を持たなければならなさそうだ。

軽い身体チェックの後は目の前にある、島と島をつなぐ大きな橋へ。
本格的な身分証明などは学園区画側のゲートで行うらしい。

見えるものといえば青い空と青い海。
波の音に混じって遠くに海鳥の声が聞こえる他何もないので何となくダラダラとお喋りしながら進む。



門の近くまで来ると、新入生達が一列に並んでいた。どうやら身分証明のチェックの行列らしい。

「新入生はここで学生証と認識チップを受け取ってくださーい」

誘導係の生徒の案内に従って、ノロノロと私たち新1年生の集団が動く。

行列を進む中で、ふと誘導係が真剣な表情で見つめる端末の画面が目に入った。明らかに忙しいこのタイミングでご迷惑とは思いつつも、職業柄どうしても気になり、質問する。

だって先輩への失礼はまだ入学していないので適応されないはず。(屁理屈)

「先輩、その端末に写ってるのはなんですか?」

「え、なんでシャツ……」

「そこは触れないで頂きたい……あ、ホラそれ何ですか?」

「ん?ああ、これか?ほら、赤と青と黄色の三色のマーカーが見えるだろ?」

なんと、先輩は嫌な顔ひとつせずに親切にも答えてくれた。まるでネズミーランドのキャスト並みの神対応だ。

先輩の言葉に従って画面を覗き込めば、比に偏りはだいぶあるものの、確かに三色ある。ちなみに、比率で言うと青がものすごく多い。赤や黄色と比べると10倍以上はありそうだ。

「これ、リアルタイムで俺たち誘導係と、端末を持ってる人物の現在位置、1年生の位置を教えてくれてんだよ。人がここまで集まればGPSも役に立たないから、異能を応用してるんだぜ」

ということは、1番多い青=新入生、とびとびで存在する黄色が、自分以外の誘導係、一つだけ画面中央にポツンとある赤色のマーカーが自分の位置ってことなのか。

凄い。ちょー便利!欲しい!!……と言いたいところだけどこれがなかなか難しい。

ここ以外でこれをやろうとするとコストがかかりすぎるからだ。異能者の人件費って、べらぼうに高いんですよぅ。

「おー、なるほど。空間把握系統の異能を使って新入生、誘導係の先輩方の位置と数を確認してるってわけですね!そして伝達系で共有、最後に変換系で電気信号化……かな?」

「おっ、よく分かってんじゃん!でもなーこれ学園外でやろうとするとやばいぞー」

「ここまで異能者の数を確保出来ないですもんね。人件費いくらかかるんだか」

「そうそう、だからこそ学園ならではってやつよ!」

通りで、誘導係の動きがスムーズな訳である。上から俯瞰した映像か何かを共有しているのだろう。勿論、この先輩を見るに先輩自身の動きに無駄がないのにも原因がありそうだ。

そして、こういう場にいることから考えて、戦闘に長けた異能持ちだろうか……人材がしゅごい(じゅるり)。

やっぱり何人かウチに引っ張れないだろうか?待遇のすり合わせを本家としておく必要があるな……夢が広がります。

しかし、ここまで異能者を揃えられるなんて、学園以外ではありえない。規模としてはちょっとした軍事演習並だ。

個人が手を出せる範囲ではないのは確かですね。

ちょっと残念に思いつつ、先輩にお礼を言って、私達もまた列に並んだ。



「はい、これが貴方の学生証とチップよ。事前に配布してある端末にチップをセットすれば、尞の部屋を調べることが出来るからね」

美人な女の先輩からお礼を言ってそれらを受け取った。

早速端末を取り出して起動してみる。見た目は、掌にちょうど収まるくらいの液晶画面だ。確か400年前に流行したっていうスマートフォンとかいうものに似ているかもしれない。

ちなみに、こういった端末は、一時空間投影型と呼ばれる液晶画面の無いタイプが主流になった。

しかしながら、構造の複雑さ故に、故障が相次いだ上、メンテナンスが難しいことも手伝って、再び液晶画面付きのものが今は主流になっている。

機能は主に、メール、通話などのコミュニケーションツール機能と、持ち主の生体認証による学園のセキュリティの第1関門。

それから、学内ネットワークに接続されているため、授業等のアナウンスを受け取ることも出来る。

そのほかの細々とした機能については、別途アプリケーションをインストールすることによって可能となるらしい。

生徒の多くはこれでゲームなどを楽しんでいるとか。

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