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不老不死とは私のことです

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入学式編 24話


「ここが……」

柚様が溜息を着きながら、思わずといった様子で声を出した。

溜息とは言っても、多分感嘆から出たものだろう。島に来た時はテレポートで一瞬でしたもんね。勿論景色なんか見る暇もなかった。

そう言えば、私もこうして直接島の外縁を見たのは初めてだ。

私たちが今いるのは、ひょうたんのような形をした学園島の、ちょうどくびれている部分。目の前には巨大な門がそびえ立っている。

門の向こうに見える第2学園島……つまり学園本体の岸壁に白く泡立った波がぶつかっているのが見える。

ただでさえツルリとしている人工物で、とっかかりのない島の岸壁をよじ登るのは至難の技だろうし、この海域事態が厳しい環境らしい。

この上、至る所に罠が仕掛けられているそうです……ちょっと神経質過ぎない?

話を戻そう。

この門は、この学園島の中でも屈指のセキュリティ設備であり、同時に堅牢さを象徴する一種のモニュメントと化している。

しかしこうして見ると、ピカピカ光る硬質な輝きといい、いかにも金属製で硬いです、とでも言うかのような外見だ……事前調査で、これが希少鉱物アダマンタイト製だと知っている私には、建造にいくらかかったのかを邪推してしまう輝きだけど。

どっかの邪龍はブレス一息で吹き飛ばせるとか豪語してましたけど。相変わらず無茶苦茶である。

それも、今日ばかりはと言わんばかりにその厳つさが和らいでいる。ちらりと見た阿久津氏が苦笑したくらいだ。

「入学式仕様だね……」

紙で作ったらしいピンクや黄色やその他カラフルなお花や輪っかで装飾されている。

「ん、あっちは撮影スポットみたい」

私が指した方には、学校の入学式でよく見られる感じの『国立 異能高等専門学校 入学式』の文字が書かれた立て看板がある。

そして今この瞬間も、誇らしげにピースサインする新入生と保護者が写真を撮っているみたいだ。

「私たちも写真撮る?」

どこかワクワクした表情で柚様が尋ねた。

「遠慮する」
「いや。随分並んでるみたいだし、そこまで時間が余ってる訳でもないからな。今日は諦めよう」

「そっか……」

柚様は目に見えて落ち込んだ。いやいや、
一応アナタがここに居るの、機密事項なんですけどっ!

上陸してわずか二日目。今から色々心配だ。


「…………ずめ〜!!!」
「ぐえっ」

なんかきた。

と思うが早いか首への重い衝撃と、肩にかかる体重。というか今絶対首から変な音がした!!

振り向かずとも、私にこんな事をするクソ野郎は限られている。……奴だ。奴が来た。正直思ったよりも早い。

もうちょっと寝ててもいいのに。つーか永眠してろよ。

「よ!クロエ。随分と遅い起床だな。あと少し遅かったら開門に間に合わないところだったぞ」

苦笑混じりに阿久津氏が片手を挙げて挨拶した……いちいちコイツは爽やかじゃないといけない病気なのでしょうか。

というか、遅かったら学園に入れない所だったのか。完全に忘れてた。

信じられないようなクソ野郎だけど、居ないなら居ないで困ることもあったかもしれない、多分きっとめいびー。

当の本人は阿久津氏の挨拶に答えず叫んだ……涙と鼻水がばっちいです。

「ひどい!酷いよ雀!!」

やっぱ要らなかったな、コイツ。

邪龍さんの必要性が一気に薄れた瞬間だった。

「置き去りにするなんて、ひどいよ!」
「アーゴメンゴメン」

もう二度とやらないよ!(偽りの0円スマイル)私は薄っぺらい笑顔を精一杯振りまいた。

「待ってるって言ってたのに……この人でなし!」

あーサーセンサーセン。

ついついクロエの泣きっ面がみたい欲に負けてしまったんです。つい出来心でした……あと人でない、、、、お前が言うなよ、ハンッ。

「あー……とりあえずクロエ、人目を集めてるから静かにな?あと、涙と鼻水はこれで拭け」

挨拶を無視されたことは気にしない様子で阿久津氏がポケットティッシュを上着から取り出した。

……こんな顔面の汚い男を甲斐甲斐しく世話するなんて、アンタ良い奴だな。そして女子力高い。

い、いえ!!私がポケットティッシュどころかハンカチすら持ってない訳ではなく!

それどころか、邪龍の牙製ナイフもきちんとこちらに!……ってこれは女子力とは関係ないか。大事な仕事道具ですけど。

しかしながら、クロエはその差し伸べられた手を振り払った。

いや、振り払いやがった、、、、のだ。

「ひっくっ、ヒトデナシな雀なんてこうしてやるっ!ちーん」

脳髄、背筋、その他神経全体を嫌な予感が駆け巡る。
しかし、どうせ一般人に毛が生えた程の私の速さなど、生きた災害に通用する筈もなく。


ぎゃぁぁぁぁぁ!


厳粛なる交渉の結果、私のブレザーの上着はお洗濯へ。
どこからか現れた洗濯物回収ロボによれば、私のブレザーは綺麗になって帰って来るらしい。

だが、例え戻ってくるのだとしてもそれを着たいかどうかは別問題だ。

いや着ない!絶対着ない!!
着ないったら着ないんですからねーーっ!



と、決意した僅か数時間後、思ったよりも買い直しにかかる費用が高いので諦めざるを得なかったことを、屈辱の記憶と共に記しておく。


クロエェェエエ工、おぼえてろよぉぉ!!


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