不老不死とは私のことです

6W

入学式編 22話


面倒なので、朝食は部屋に持ってきてもらうことになっている。

つい先程その朝食セットも届いて、テーブルセッティングが完了した。最高級ホテルの朝食に相応しい、派手ではないが心躍るメニュー。

清々しい朝の空気に、芳しい紅茶の香りと、焼きたてのパンの香りが混じって鼻に届く。

うーん、いい香り!何とも気持ちのいい朝ですね!

「おはよーございまーす」

朝食の準備を完璧に整えて(と言っても並べただけ)、寝室に向かう。声をかけると同時にカーテンを容赦なく全開にした。

光が目に刺さるでしょうが、柚様は朝に弱いのでこのくらいしないと起きないのだ。

「うぅん……」

柚様は、朝の光から逃れるように身を捩ると、何だか悩ましげな声を出した。

……何でそんなに無駄にエロいの?

「……んはよ、雀ちゃん」

やがて目をこすり、欠伸をしながら柚様が半身を起こした……やっべぇ……。

何がヤバイって、たったこれだけのシーンでサービスタイムになっている事である。最早この状況に恐怖すら感じるのは私だけでしょうか?

「おはようございます、柚様」

そんな内心の動揺を何とか顔に出さずに頭を下げた。美少女ってすごい。

柚様は半身は起こしているけど、まだ眠いのか目の焦点は合わずめをしょぼしょぼさせている。

涙目美少女、ごっつあんです!

しばらくそのままぼんやりしていたけど、突然雷にでも打たれたかのように、目がバチッと開いた。

「……!!雀ちゃんっいま何時!?」

「7時です。まだ時間はありますので、ご安心ください」

そんなに心配しなくてもまだ遅刻するような時間ではない。

って言ってもそんなに悠長にもしてられないけどね!

柚様が起きたので次は身支度の時間である。

お顔に関してはスッピンでも恵まれたその造形がよく分かるので、お化粧はごく薄めに。だけど柚様の髪は美しい一方で、細くて柔らかな毛質なので、寝癖がめっちゃついている。

しかも今日は入学式。メイドとして、主人の晴れの日にノーマルな髪の毛で送り出すのは沽券に関わります。

さぁーて、腕が鳴りますよぉー!

とはいえあんまり派手にしてしまうと、柚様の好みから外れてしまう。という訳で、編み込みを駆使した地味過ぎず、かといって上品さを忘れないハーフアップの予定です。

ぐふふ。ヒロイン=ハーフアップの公式は定番だよね。



「……こちらでいかがでしょうか」

髪を結い終わり、柚様に手鏡を渡して確認してもらう。

「わぁっ!雀ちゃんすごーい!」

「西園寺のメイドとして当然のことかと」

せやろ?もっと褒めて褒めてー!!
セリフと内心が正反対なのはご愛嬌。

大袈裟に喜んでくれる主のおかげでモチベーションもぐぐっと上昇した。やっぱ持つべきものは、報酬をケチらず、何かとチョロくてかつ褒めて育てる主人だよね!(前半が特に大事)

何より、鏡に映る笑顔の主人は、女神も恥らわんばかりの眩さだ。なんだかこの神々しさを作るのに、私も貢献したのだって考えると、妙な達成感がある。

本日のこだわりポイントはズバリ、素材の良さを殺さず、生かすだけ。

とはいえ無造作感があってはならず、どこか高嶺の花のような、手の届かない感じと上品さを匂わせるお嬢様ルックだ。

ハッキリ言って大成功だった。

そして、誇らしさと共に湧き上がってるのは不安。何だかやってしまった感が半端ない気がする。

例えば、こんな圧倒的なヒロインが目の前に居て、高専生たちはマトモな恋愛が出来るのだろうか、とか。多分周りの女子が霞んで見えてしまう筈だ。

女子男子共にどんまい。

ちなみに、柚様に目が眩んで理性を失った輩は一括して邪竜さんのオヤツになって頂くことになるので、ぜひ注意して欲しい。

こちら、駆除と証拠の隠滅と餌代の節約が一度に出来るお得なセットプランとなっている。後暗いことをやる際にはぜひオススメしたいセットだ。

「……バリューセット」
「ん?雀ちゃん何か言った?」

「いえ、何でもありません」

さぁーて。朝食よし、荷物よし。(大半の荷物は既に学園に送ってある)

主の身支度よし。

「雀ちゃん、準備できてる?」

柚様あなた待ちですよ!とは当然口にしない。姿勢を正して一礼するに留めた。

勿論、準備万端です。柚様。

「ふふっ、じゃあ行こっか!雀ちゃん」
「はい、柚様」

私の返事を聞いた柚様は首を振った。

「ダメダメ!雀ちゃん、やり直し」
「……そうだね、柚」

柚様がやっと頷いた。

「雀ちゃんとこうやって歩くの、夢だったんだ!」
「……はぁ」

よく分からないけど、柚様がご機嫌ならそれでいっか。

まるで友達のように、柚様と並んで2人で歩く。普段は少し下がって従う形を取るので、柚様の背中が視界に入らないのは何だか新鮮だ。

一瞬考え事をしていた隙に、ウキウキとスキップをしそうなくらいに浮かれた柚様が私より先に行って扉を開けた。
「あっ、柚!扉は私がっ!」

「キ、キャァァァァア!」
「!!」

上がった悲鳴に、血の気が引く思いで柚様の元へ駆ける。

「柚様っ!お怪我は!?」

柚様はバッと私に抱きついて行った。……声が震えてるので、半分泣いてると思う。

と、同時に廊下に蹲る物体へんたいに目がいき、頭を抱える。頭痛が……頭痛が痛い、、

「す、雀ちゃん!そ、外にね!裸の男の人がっっ」

やっべー。倒した変態クロエの始末、忘れてました。




栞ジリジリ増えてるみたいで……ありがとうございます。ちなみに、今読んで頂けてる方って、この作品の何を気に入って(?)頂けて読んでくださるのですか?

これからの参考にするため、数字だけでも結構ですので、教えてくださるとありがたいです。

1、更新頻度が高いから
2、ギャグが面白いから
3、クロエが好きだから
4、雀が好きだから
5、その他のキャラが好きだから
6、文章の出来がいいから
7、なんとなく目に止まったから
8、元々6Wの作品を知っていたから
9、その他の理由


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