不老不死とは私のことです

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入学式編 21話


「えー?!ぱ、【パライソ】が品切れ?!何それ」

朝起きた瞬間、見計らったように鳴る端末に浮かんでいたのは、にっくきオカマの名前。

アイツ私のこと見張ってんのか気持ち悪いな!なんて思いながらも、ちょうどいいや、殺剤の効果がユーザーのニーズ満たしてねぇぞコルァと苦情を入れたらとても怒られた。

イラついたので電話を切ったら再度の鬼電。仕方ないから出れば、案の定怒鳴り声のバーゲンセール。おいおーい、本性オッサンが出てんぞオカマ、と思った午前四時。

それから、ひとしきり怒られきって、只今午前五時。クソ、時間無駄にしたわ。

「入荷直前だって聞いたけど。ちょっとちょっと、品質管理なってないですよ。オッサン」

『おっさん言うな!コノこけし女。つーかなんでアタシがそんな事しなきゃいけないのよ。ストレスで乙女の柔肌が荒れたらどーしてくれんのよ!』

「……えっと、どこから突っ込むべき?」

まあいい、本題に入ろう。そんなしょうもないことに時間は割けない。

一応メイドですからね。ニュースの確認、主人の身支度の手伝いに、お茶の準備と、朝の仕事は沢山あるのです。

『口が減らないわねこの小娘……ちっ、まあいいわ。それで、パライソだけど簡単よ。摘発されたの……その入荷分がね』

摘発ってことは、どこかから嗅ぎ付けられたか。情報の管理には充分気をつけていたつもりなので、十中八九内部通報だろう。

世の中ってままならないものですね。

「……うーん、なるほど。でも、護衛には精鋭を付けてた筈。念入りに洗脳しといたから、きっと死に物狂いで戦った筈なのに。どうして?」

『ホントクソよね!アンタ!』

いえいえ、褒められても困りますぅ~!

『ちなみに、褒めてないわよ』
「口に出してないのになぜ分かった」

このオカマ、解せぬ。

『相手にするのも疲れるから結論から言うけど、ALICEよ』
「えー……またタイムリーな名詞が」

昨日からいつ殺されるかドキドキでしたもんね。全然心が休まらない。おかげさまでドキがムネムネですよぅ。

これが恋か!恋なのか!?(絶対違う)

『ちなみに、お嬢様の彼氏も居たらしいわ。ざまあ(笑)オーホッホッホ』

高らかに笑いながら煽ってくるオカマには舌打ちを返しておく。

ざまあ(笑)じゃねえよ。こいつは一体どちらの味方なのだろうか。

そして阿久津氏よ。またお前か。

しかしそれは確かに精鋭でも難しかっただろうな。精鋭揃いのALICEの中でも、五本の指には入る実力者だそうだから。

仕方ない。切り替えますよ、次次!過去に囚われない女、それが私。

「じゃ、次の入荷予定は?」
『ないわよ』
「はい?」

思考が一瞬停止した。このオカマ、
NANIナニITTENNOイッテンノ

『だから、ないわよ』

「嘘だね」

『何で言いきんのよ。そりゃ隙あらば嘘つくけど、今回は正直に言った方がアンタが嫌がるから嘘つかないわよ』
「何ですか、そのトンデモ屑理論」

なんか凄まじい事言われてる気がする。

『アンタにだけは、それ言われたくないわ』
「言ってる意味がわからない」

何言ってんだこのオカマ(n回目)。

「何にせよ、ルートはまだあったはず」

何かと必需品故、リスクマネジメントはしっかりしてた筈。それなのに駄目だと言うのか?

「無理ね。捕まった売人が全部ゲロったせいで、昨日の内に壊滅よ。輸入ルートから、生産ルート、原料栽培してた農園まで全部ね」
「……マジか。優秀すぎる」

農園とか生産ルートって海外にあった筈なんですけど。1日でやったにしては余りにも範囲が広すぎるので、ALICEの中に優秀なテレポーターが居るのは間違いない。

それに、売人にしても外部の人間だから洗脳は難しかったので、暗示を強めにかけておいたのだ。拷問されたって、口を開かない筈だった。

それなのに吐いたってことは、暗示が何らかの理由で解けたか、或いは頭の中を直接覗かれたか。多分後者でしょう。どうやらあちらにも随分優秀な精神系の能力者がいるようだ。

ここまで作り上げるの、大変だったんだけどなぁ。やってくれたね阿久津くん。

『ま、どんなに優秀でも肝心の黒幕には辿り着けなかったみたいだけどね』
「そりゃ、おとーさんだし」

肝心な部分については父が処理をしているので情報を吐けたはずがない。

だって彼をはじめとする関係者の中では、黒幕はいなかったことになっている、、、、、、、、のだから。

私の父、羽鳥鷹也の能力名は【有無転変パルモニデス】。記憶の有無を完全に改竄できる。

例え話をしよう。

ある人が「朝食にバナナを食べた」とする。
父の能力ではその記憶を「バナナを食べなかった」ことにできるが、「バナナの代わりにリンゴを食べた」ことには出来ない。

だけど、融通が効かないかわりに、その範囲での権能は絶対であり、例え精神系の異能では世界最高とされている異能者の力をもってしても、それは覆らない。

ご覧の通り、使いようによってはとても怖い能力である。

「もうあの魔薬エナドリが手に入らないなんて……」
『あのねぇ、何度でも言うけど、あのパライソをリポD扱いすんのはアンタくらいよ』

「分かってる。もっと健康に悪そうな魔剤扱いしてるから大丈夫」
『そうじゃねーよ!!』

ぶーぶー何でですかっ。

副作用が死ぬ以外無いなら、実質ゼロリスクですよっ!ゼロカロリーです!

しかし、阿久津くんもちょっとは見逃してくれたっていいと思いません?だって自分が使う分だけなんですよぅ、作ってるのも、輸入してるのも。




前話末尾にも文を追加してます。ご注意ください。

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