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不老不死とは私のことです

6W

入学式編 16話


「oh......ジーザス」

あれからマジで大変だった。そう、とても大変だったのである。



まずはコントロールを失った車は、クロエの空間伸長の効果が切れたために脇のガードレールにそのまま激突。黒のバンは跡形もなく大破した。炎上しなかったのが幸いである。

ギリギリで車内に侵入した私によってブルドッグおじさんは救出されたものの、死者4名(襲撃者×3と、私)の大事故だ。

しかしどうせ入国記録もない不法滞在者と、今もピンピン動く私が死亡者のリストに名を連ねているからには、うっかり報道する訳にもいかず、大人の権力ぱぅわで無かったことになるのが世の常である。

大人って汚いね!!

また、唯一の生存者たるブルドッグおじさんは、文字通り私が命を擲ってまで、車外の安全な場所に投げたので命は助かった。

だけど私によって投擲され、市場で取引される凍ったマグロのようにアスファルトを滑っていった彼は、擦りどころが悪かったためか乳首を片方失ったらしい。隻腕ならぬ隻乳首である……なんかごめん。

乳首は喪っても再生するってどっかで聞いた事あるし、どうにか元気を出してもらいたいものである。

そして、目下の問題は

「うわ、雀くさーい」
「うるさい黙って」

この耐え難い悪臭だった。いつもなら擦り寄って来るはずのクロエも傍に寄りたがらず、むしろこちらが距離を詰めた分だけ離れていく有様だ。(でも絡んでくる。うぜぇ)

しかし気分が良かったのもほんのつかの間。乙女としてはクサイと言われるのはちょっと心にくる。

主成分がアンモニアなため、途中のサービスエリアで水をぶっかけたらちょっとマシになったけど、予想通り服はもう駄目だった……けどそもそもが撃たれたせいで穴の空いたボロ同然なので何も問題はない。

むしろ問題は匂いの染み付いてしまった私のぬばたまの黒髪及び繊細なる頭皮である……とりあえず頭皮ごと剥いじゃえばどうにかなるだろうか?



という訳でいっそもう面倒になった私は全身を身綺麗にすべく1回死んで、、、、、(クソ痛い)から着替えて柚様の乗る車へ戻ったのだった。

ツンと鼻を容赦なく攻撃してくる刺激臭のない、新鮮な空気を吸いながら思い切り伸びをする。無臭ってこんなにも有難いことだったんですね!

「うーん、生まれ変わった気分とはまさにこの事!」

「雀ちゃん!あの激突した車に乗ってたって聞いたけど、大丈夫なの?!」

酷く血相を変えた柚様が視界に乱入してくる。ぺっ、ぺっ。柚様の、サラツヤな黒髪ストレートが口に入りそう。

分かったから落ち着いて!その美しい顔をとりあえず遠ざけてくれ!

「だ、大丈夫。大丈夫だから落ち着いて」

ほら見てみ?私のお肌に何も傷残ってないでしょ?(負ってないとは言わない)

首とか見て?継ぎ目ないでしょ?(飛んでないとは言わない)

服は汚れたので変えたよ?ダサいし。(フォローは入れない)

今の私は、先程敵の車のボンネットの上でハンバーグにされたとは思えないほどにまっさらである。何より無臭!もうクサイなんて言わせません!

だが、大丈夫の言葉だけでは納得しなかった模様の柚様は、唇をむーっとへの字に曲げて私の体をぺたぺた触り、負傷してないか確認している。

……うん、同性である上に美少女なことが幸いしてそこまで絵面は酷くなさそうだけど、一歩間違えたらセクハラですよ?……まあいいか。

「怪我してないならそれでいいけど……あんまり無理しないでね?」

唇を噛みしめ、今にも泣きそうな表情で言う柚様。ハッキリ言って凄まじく美少女(形容詞)である。

こんな美少女のお願いを聞かずにいられる人間っているのでしょうか?──私はいないと思う。

「うん、死ぬようなヘマはしないよ。信じて」

首が飛ぼうが心臓が止まろうが、死なないの間違いですけどね!しかし、不老不死とはいえ殺す方法がないと決まった訳でもないので用心するに越したことは無い。

私はまだ若くてピッチピチなのだ。まだ、ぐーたら楽しく自由に生きる道を見つけてないのに死ぬ訳にはいかない。それに、これまで無駄に苦労した分幸せになってもいいじゃないかとも思いますし。

……後あの邪竜ぶっコロしてないですしね。(立ち上る怨念)(殺気)(修羅のオーラ)

アイツをぶちのめして標本にしてやるまでは私の心に平穏はないといっていいだろう。あーあ、どっかに「竜をぶっ殺せる剣ドラゴンバスター」なんて落ちてればいいんですけど。

メ〇カリか何かでうっかり買えたりしませんかね?

どっかの勇者様の中古装備とか、上手いこと安く横流しされてないかしら。



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