不老不死とは私のことです
入学式編 15話
『やられた!ダンジョン化だ!!』
襲撃犯4人組の中でも、比較的若そうな男が叫んだ。
「あっ気付かれた」
今や万国共通の単語となってる【ダンジョン】が会話の中で聞こえた。
いや流石外国人と言うべきか、もっと発音がいい感じだったけど。単にダンジョン、じゃなくて、ダぁンジヨン的な感じだったけど。
まあそれは良いです。投降もしてくれないし、(そもそも言葉通じないし)これ以上死ぬのは時間の無駄というか、特に資源の無駄というか。
見たところ、いかにも屈強な傭兵というような雰囲気だったので、この前の作戦で減ってしまった分の補充も兼ねたかったのですが、仕方ありません。元々実力者は反骨精神が強い傾向があるけど、ここまで手強いとへし折るのも一苦労だし。
──1人残ればいいかなぁ。
情報の保有量を考えて、リーダーみたいな、ブルドッグ顔のオッサン1人残ればいいんじゃないでしょうか?……イケメンもいないことですしっ(泣)
どうするかはもう決めている。というか考えた。ただ無駄に殺されて、無為な時間を過ごしていた訳では無いのですよ!(胸を張る絵文字)
……あ、それにしては時間がかかり過ぎだというツッコミは辞めてください。
『まずい、弾切れです!!』
相変わらず何言ってるか分からないけど、車内でガチャガチャやり始めた雰囲気と、焦った表情から恐らく弾が切れたのだろうと予測できる。
恐らくさっきの銃撃もあくまで威嚇目的なだけで、メインはこちらの車を停めさせてから、柚様を車外へ引きずり出すのが目的だったのだろうし。
ひたすら撃ちまくってましたもんね。寧ろよく今まで弾がもったもんだわ。
──弾が切れたのは好都合。この際一気に始末をつけてしまおう。
「この指とーまれ……じゃなかった。あてんしょん、ぷりーず」
そう言いながら、私は玄関チャイムを押すように、人差し指でフロントガラスに触れた。フロントガラスに触れるが先か、人差し指の先に、小指の直径ほどの黒い円が現れる。
襲撃者たちにはそれを確認する暇は無いだろうけど、その穴に触れてみようとすれば、微かな風が通っていて、単なる図形と言うよりも、先を見通せない穴のようなものだと理解できるだろう。
……コレが私の異能である。
おいおい、しょぼい言うなし!
私の異能は大別するなら空間操作系に属する。まあつまり、この穴は次元の穴という訳で、私は任意の空間同士を距離を無視して繋げることができるのだ……小指分だけ。
ちなみに、必死に修行しても、どうしても小指以上に穴の直径が広がらなかったのは苦い思い出である──いいんですよぅ。最初は針の穴ほどの小さな穴しか開かなかったので、危うく異能の存在に気付かず無能力者認定受けるところだったんですから。
これでも頑張ったのだ。
その、黒い穴から、白い煙が車内に流れ、充満し始める。元々車は気密性が高いので穴は1つで十分でしょう。
効果はすぐに現れた。
『ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!目が!目がァ!』
『は、鼻が……!!』
まさに阿鼻叫喚。ふっふっふ、好きなだけ悶えるとよいぞよいぞ〜。
『ぎゃぁぁぁっ!クセェ!!』
そうなのだ。
本当は噴射したら即相手が眠っちゃうようなガスを開発出来れば良かったんだけど、現実的な使用用途を考えると、相当気密性が高い場所でなければ実用化は狙えず、その副産物として出来たのがこの悪臭ガスである。
主成分はアンモニアで、その他カプサイシンなんかも配合した、目と鼻両方を一網打尽にできるスグレモノだ。
しかし、開発者のオカマからは、開発する時に服に匂いが着くだの何だの文句を言われたので、これ以上の改良の見通しが立たない、いわく付きの品でもある。
浴びたら最後、2日は料理の味がしなくなり、1日は涙が止まらなくなる処方です。ご利用は計画的に!
さーて。後は、この車が操作不能になる前に、このガスマスクを装着して、袋の鼠をさらに一網打尽……と、そこまで考えて私の手が止まった。
あれ。なにか、忘れてないだろうか?
「ノォォォォォォオォォォォ!!!」
ガスマスク持ってねえじゃん!!今の装備はこちら。
【装備】
胴体:ぬののふく(ボロ同然)
右手:邪竜のダガー……以上。
ちなみに今右手に構えている邪竜のダガーは、勿論クロエの牙(部位で言うと親知らずのところ)を整形し、ナイフに仕立てたもので、防弾ガラスくらい細切れどころか、みじん切りも容易な刃物である。
フロントガラスもこれで楽ちん☆と言いたいところだけど全然別の所で楽ちんじゃなかった。
悩んでいると、インカムが壊れたからだろう。クロエが先行している護衛車から身を乗り出して叫んだ。
「……くくっ。雀ー?そろそろ切り上げないと予定がおしすぎるって!」
「……了解」
最早一刻の猶予もなし。しかし、クロエの声が笑っていたのが気になる。もしかして、この失敗が気づかれてるとか?
「……死にたい」
末代の恥!でも、このままにするわけも行かないかぁ。
フロントガラスの向こう、白目を向いて気絶したらしい運転手と、慌てて横からハンドルをとる襲撃者たちを見やる。その慌てようが結構面白い。
仕方ねぇ。
「すずめ、行っきマース」
この後の惨状を悟った、何とも言えない気持ちで、私は自分自身に号令をかけたのであった。
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