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不老不死とは私のことです

6W

入学式編 14話



『おい、何なんだよ!なんなんだよ!コイツは!!??』

車内には絶叫が満ちた。叫んでいる男は、今回の依頼においてチームを組んだ中でも腕利きで、リーダー的な存在で、その実績に裏打ちされた冷静さがいかにもベテランといった印象の男だった。

しかし、そんな男が取り乱そうと、誰も責めることは出来ないだろう。

──なにせ、誰も、その問いに対する答えを持っていない上に、皆その心は全く同じなのだから。

発端は、ターゲットの車から飛び移ってきた貧相な印象の女だった。年端はそれほどいかない少女と言ってもいい年齢。

染められていない鮮やかな黒髪といい、切り揃えられた髪といい、ジャパニーズホラーでよく見る日本人形を彷彿とさせるような、目に光のない陰気な印象の少女。

細い手足は鍛え上げられた様子もなく、飛び移ってきたはいいものの、何も考えていなかった事がバレバレな視線の彷徨わせ様に、車内には、とんだ素人が飛び込んできたと、失笑が起きたものだ。

……痺れを切らしたリーダーが、その少女を撃ち殺すまでは。

それからその少女は、叫んでも殺しても、振り落としても、殺しても殺しても殺しても殺しても、

殺しても

殺しても

殺しても
殺しても
殺しても
殺しても
殺しても
殺しても
殺しても
殺しても
殺しても
殺しても




殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺……

「へいへい、兄さんたち、はうあーゆー?てかそろそろ殺すのは止めてくれませんかね?ほら、投降したほうが楽ですよ〜えーっと、ぎぶゆあせるふあっぷでーす、ぷりーずぷりーず」

血塗れのその少女が、背筋も凍るような無表情で、自らの血を拭いながらまた、自らボンネットへと戻って来る。

長い手足を動かして這い上がるその動きは、節足動物じみたものを思い起こさせた。決して人間のものでは無い。

『シィネェェェェェ!!』

ズダダダダダッ!

またしても重低音が鳴り響き、少女の頭を粉砕する。ただでさえ大口径の武器は、見た目は華奢なその少女の頭をスイカのように粉砕させた。噴水のように吹き上がった血は、ボタボタと重たそうな音をたてて、先程まで、、、、と同様にフロントガラスを鮮やかな赤に染め上げた。

明らかに致命傷だ……通常ならば。

首のない少女の体がこちら側に傾いでいく。それを見て馬鹿めと、無駄死にだったなと、下品な笑い声を上げられたのは、随分と遠い昔のような気もするが、さっきまでの話だ。

ベタリ、と生気なく倒れた少女の首先に白く光が集まり始めた。

『ちくしょう、またか、化け物め!』

力を失った手のひらに、また力が入るのを悪夢を見ているような気持ちで見つめる。

否。悪夢だったらどれほどいい事か。

瞬く間に、白い光は赤黒い塊に変質し、少女の傷一つない顔へと再生した。

「……酷いことする。これ取り返すのにどんだけ金がかかると思ってるんだ。もう〜」

空間に嘆息が満ちた。最早全員悲鳴を上げる体力すら残っていない。目の前のおぞましい光景から逃げ出さない事だけで精一杯だった。

いや、逃げ出さないで済むのだって、望んでするのではなく、この状況で車のドアを空けて飛び出してしまえば、この高速でアスファルトに叩きつけられると分かっているから、それだけだった。

──高速?

襲撃者の脳裏に、引っかかりが生じた。

『お、おい。逃走予定のヨコハマまで、襲撃ポイントから何分かかる予定だ?』

元から心臓は煩いほどだった。だが、今は痛いほどに心臓が暴れている。

『あぁ?10分に決まってんだろ。テメェ、そんな事も確認してねぇのかよ?つーかそれどころじゃないだろ!!!』

目の前の化け物をまず殺せと、先輩に当たる男が怒鳴り声を上げた。仕事を終える手順としてはまずそうだろう。

だが。

『じゃ、じゃあ。……俺たちはどこに向かってるって言うんだ?!こうなってから何分走り続けてんだよっこの車は?!?!』

襲撃を始めてから優に10分は経過していた。始めた際に、計画通りである事を確認している。

そして、スピードメーターが示す数字は120。つまり、予定より少し早く逃走のポイントまで着いても良い筈だった。

高速道路故、やたら滅多な分かれ道がある筈もない。すなわち、道を間違えた確率も限りなくゼロに近い筈だった。

慌てて周囲を見る。

今日は平日とはいえそこそこの交通量があった筈のだだっ広い道路上には、ターゲットとその護衛の車、そして自分たちのみ。

何よりも、いつの間にか空は赤黒く色を変えていた。赤黒い空が示す予兆、それは───、

『やられた!ダンジョン化だ!!!』

答えにたどり着いた瞬間、

『まずい、弾切れです!!』

ただでさえ最悪なこの状況が、さらに悪化した事を告げる言葉が響いたのであった。





雀「でいすいず、ジャパニーズホラー!!」
そもそも、明らかに銃で武装している相手に、ブサイクな猫柄Tシャツ1枚で挑むとは、なんて狂気の沙汰。


更新忘れてました、すみません。とりあえず高速道路での戦い(笑)は次話にて多分終了です。

あと、あらすじ欄の雀の年齢を17歳から15歳に変更。高校入学なのに、17はねぇだろうよ……グズマァ!何やってんだ!!!


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