不老不死とは私のことです

6W

入学式編 4話


中身はちょっと履歴書にも似ている。最初のページには柚様の彼氏(怒)の顔写真と、簡単な経歴が記されてるみたいだ。

この写真は真顔だから怖い印象もあるけど、案外目元が柔和な感じ。これはかなりのイケメンだな。……柚様、アナタ面食いだったんですね。

「どう?」
「柚様が面食いだったという事実に驚愕を隠しきれません」

「……顔の感想じゃなくてね」

父が溜息をついて、「そのページの補足欄を見てみて」と言う。その言葉に従って目線を下にずらして行くと、

「ALICE所属……?え、ALICEってあのALICEですか?」

見慣れた、けれど嫌な名詞が目に入った。

【ALICE】、それは政府直属の実行部隊……と言えば聞こえはいいものの、実際のお仕事は暗殺と何も変わらない。異能者の犯罪を取り締まるのは主に警察の役目だけど、それでも取り締まりきれないのを管轄する感じだろうか。

ただあそこって、その仕事内容もあって物凄く実力主義のエリート集団だったのでは……?それが高校一年生のペーペーが所属ってこれ如何に。

「一応未確認な情報ではあるけど、異能レベル5以上っていう情報もあるんだよ」
「5ォ?!は?え、ファイブの5?!」

余談ではあるが、異能者の能力には、その引き起こす現象の規模によってレベルが割り振られている。

異能者の内およそ97パーセントがレベル2〜3。
残りの2パーセントほどがレベル4だと言われている。

実際、天変地異みたいなことを引き起こせる異能者は少ないし、レベル2で充分に対人戦を行えるくらいの能力者だといわれている。逆に4以上はもはや災害レベル。この判定を受けただけで軍や警察、もしくはこの西園寺みたいな組織から引っ張りだこになるのだ。異能を使う仕事では出世は約束されたと言っていいだろう。

とはいえ、それは一面の話であって、レベル2ですら生物兵器とされるこのご時世。制限がつきまくって逆に生きにくいって話も聞くけれど。

そして、5にまでなってしまうとそれは公にされている中での最高位だ。私はそれ以上のランクにある人を知ってるけど、その人だって対外的にはレベル5ということになっている、、、、、、、、、、、

「でも、この人異能者の家系出身では無いですよね?先祖返りの例は報告されていても、ここまで強力な異能を持つことは有り得る……のか?」

異能が遺伝することは最早定説だ。親から子へ。子から孫へ。受け継がれる異能は必ずしも同じではないのがまた不思議だけど、非異能者から異能者が生まれることは無い。

そして、力の弱い異能者の子供は、同じく弱い異能を持って生まれてくる。だからこそ、有力者同士の婚姻が重要視されて……うんぬんかんぬん。まあこれはいい。

ちなみに、最初の異能者=異能者の始祖は誰なのかという論争がされているものの、逆算するに暗黒時代の真っ只中か、それよりも前の人間だ。なので、資料は全く残っておらず、研究は全く進んでいない……どころか実在したかすら諸説ある状態である。

「これはあくまでも仮説だと、聞いたんだけどね……。クロエ君なら知っているだろう?」

父が黙っていたクロエに突然話を振った。

「直接の面識は無いけど、そういうの、、、、、が居るっていう噂を聞いて、昔見に行ったことはあったなぁ。まあ確かに、人間にしてはそこそこ強かったと思うよー。何といったかな……そうだ、人間は【始祖】とかって呼ぶんだっけ」

ねえちょっと奥さん、今ここでサラっと学会を揺るがせる事実が出てきてるんですけどー!?とは思うけど騒がない。そのくらいには、この男がこの家に居座るまでに様々な事情があったのだ。

そもそもこの男、訳ありどころか人間ですらないし。人類の敵たる異形種、そのさらに上位種の魔王型異形種ですからね。そんな危険な生物がなんでこんな民家で大人しくしてるのかを説明すると長くなるのだけど、あえて一言で言うなら、私のストーカーだからです、以上。

ちなみにそんな訳でこのドラゴンを殺さない限り、私に幸せな人生が訪れないのは明白である。早く死んで欲しい。

「……すると、この柚様の彼氏(激怒)はその【始祖】である可能性がある、と?」

そして、【始祖】だから強力な異能を持つと?え、なにそれずるいよ、酷いよ。

他人がチートを持ってて楽しいのはライトノベルの中だけであって、現実ではマジで許さねえ。あ、私が持つ分には不問としますけど。

「とはいえ、その【始祖】ですら学説上の存在だからね……思いがけず、実在が証明されたけど」

苦笑しながら父がクロエを見る。クロエは現在私に後ろから腕をまわして抱き込むような体制をとっていてとても邪魔。まあ、手に耳くそ鼻くそついてないなら無視する方向でいくけど。

始祖激レアで、イケメンで、天才ですか……一体どこの主人公だよこの男。

私は、資料のイケメンを睨みつけた。その才能1割でいいから分けてくんないかな。

「それから、その阿久津という苗字に見覚えがある」

HA?アクツって誰だよそれって思ったら、資料のイケメンの名前だった。ふむふむ、阿久津あくつ 大雅たいがですか。名前までカッコイイんですけど。世の理不尽をこれでもかというくらいに感じさせる名前だな!……ってそうじゃない。


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コメント

  • 6W

    異能者のレベル分布を変更しました。
    誤 レベル2〜3→90パーセント
    レベル4→7パーセント
    正 レベル2〜3→97パーセント
    レベル4→2パーセント

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