不老不死とは私のことです
入学式編 3話
そんな人物と我が家になんの関係があるかと言えば、羽鳥家が古くから西園寺家に御庭番として仕える家だからなのだ。
御庭番で想像出来ない人は、忍者を想像して欲しい。NINJAですよ、NINJA!ちなみに、よくイメージされる忍者はフィクションだって言われるけど、そこは異能者の家系。
割と想像に近い忍者像だったりもする。
ちなみに目の前にいるうちの父は、影分身は使えないけど催眠術紛いのものは使えるのだ。なんてデンジャラス。
その伝統のせいで私も、怪しげな修行を沢山させられたっけな……サバイバルしたり、水の上を走ったり、ドラゴンと戦ったり……思い出すと涙出るわ。
あれ、最後のは偶然だったっけ?
とにかく、いたいけな少女時代を修行の日々に明け暮れたのは間違いない。
それはそうと、話に出てきている柚様は、現当主、西園寺蒼樹様の一人娘だ。そして、私と同い年という嫌な偶然……いえいえ光栄な巡り合わせがありまして。
裏社会から表社会まで、大きな力を持つ西園寺家を狙う敵は多い。だから、柚様はそれはもう大切に育てられてきた訳なのだけれど、今回ばかりはいつも通りいかない。
それもそのはず。異能者の家系に生まれた柚様は、勿論その身に異能を宿している(とされている)。何故かまだ発現してないのが少し気になるところではあるけど、既に国内屈指の精霊術者でもあるので、まあいつか発現するだろう、というのが上層部の見解だ。
そしてなんとこの春、異能者達の決まりに則って、彼女もまたこの国立異能高等専門学校に入学あそばされるわけである。
全寮制なこの国立異能高専は、巨大な人工島の中にあり、その神経質なまでのセキュリティが邪魔をして、島の中に生徒でもない西園寺家の護衛を大勢入れることは難しい。
……まあ、無理とは言わず難しいに収まるのが西園寺家らしいと言えばらしいけど。実際陰ながら守る人は配置してるらしいし。
という訳で、公然と彼女の側に居ることができる護衛が必要になる。(あくまでも陰ながらだと初動が間に合わない場合も考えられる)
そんな、重要人物を間近で守る役目をなんと、「彼女と同い年だから」というだけで私が任されてしまったのだ……死にたい。
勿論先に述べた通り、プロは西園寺家から派遣されるので、役目といえば主に肉盾だろうけど。
実は戦闘要員としては実力可もなく不可もなく……いや不合格に近い私だけど、肉盾役としては結構優れていると自負している。
何故なら私は、怪我をしても直ぐに治るどころか不老不死な特殊体質なのだ。つまりこの肉盾はリサイクル可能、エコでしょ?……というのが、上層部の言い分である。じゃあテメーも一回死んで見ろよと言いたい(怖くて言えないけれど)。
「コホン、今回の役割は理解してるよね
?と聞いたんだ。それと分担も」
咳払いして、父はもう一度質問の内容を口にした。
つまり、事前の打ち合わせの復習をここでしなさいと言いたいらしい。
「ああ、なるほど。わかりました。まず、このクロエを私の前面に配置します」
「そんなとこ触っちゃイヤン☆」
「…………」
クロエの脇を掴み、強引に私の前へとスライドさせる。なんか言ってるけど喜びに身悶えてるみたいなので放置だ放置!
「そして次に、柚様を私の後ろに配置します、以上です」
残念ながら、というか当たり前に柚様はこの場には居ないので、居るつもりでシミュレーションしておく。
「……つまり?」
「肉盾です」
「えっ」
「えっ?」
「そういうことじゃないよ?!雀ちゃん」
えー違うのー?と目で訴えれば、溜息を吐いた父は、なるべく学校での時間を共にすごし、特に私はトイレなどの時間を気を配るようにと言った。
……つまり肉盾じゃね?
そして父は最後に、頭の痛い問題を告げた。
「それと、柚お嬢様だが、なんでも春休み中に彼氏が出来たらしい」
「は?」
「……」
おかしい、よく聞こえなかった。えっと何だ?カレシ?イワシの聞き違いだろうか?もしくはタニシ?
「彼氏が、できた、らしい」
「ああ、庭師の変更ですね。人見知りな柚様にしては珍しいですね」
人見知りな柚様は、出来るだけ自分の周りにいる使用人までも変えようとはしない。別に外にまでそれが発揮されることは無いのだけど、プライベートな空間によく知らない人がいることは落ち着かないのだとか。
「彼氏だ」
「も、もしや、それは世にいう彼ピッピのことではありませんよね?!」
あの箱入り令嬢が恋愛だと?!ねえ嘘だよね、嘘と言ってよ!
「か、彼ピッ……うん、そうだね」
「……担当者ぶち殺す」
今の柚様の身辺警護担当は田中だったかな?私は素早く人事表を頭に思い浮かべた。
「こらこら女の子がそんな言い方をしちゃ行けません」
「だって不可解ですよ!なんであの箱入り娘に彼氏が出来て、この私は彼氏いない歴=年齢なんですか!そんなの羨ま……けしからんでしょうよ!」
窘めた父に私は食ってかかった。
「羨ましいんだね……」
う、羨ましくなんて、ないんだからねっ!(血涙)
「それに、1回死ぬくらい、大したことでもないと思うんですがねぇ?ほら、ちょっと痛いくらいじゃないですかっ」
「充分大したことだよ?!」
それにしても春休みか……。令嬢といえど、西園寺の名代として色々と集まりに参加する機会は多く、柚様は忙しくされていたはずだ。
その間のどこに、出会う機会があったというのか。
「いや逆に、パーティで知り合われたのか?」
なるほど、そんな機会があったのか……私も切実に出会いが欲しかった。
「いや、お忍びでコンビニに行かれた際に出会ったらしいな。」
「やっぱり担当者コロス」
お忍びって何ですか!聞けば、護衛も付いてなかったらしいし。つまり一人で外に出たと言うわけだ……アイツ何考えてるのー?!
「まあまあ……不特定要素が増えて大変なのも分かるけど、こちらもプロだ。柚様を完璧に守ってみせなさい」
「えー……その何処の馬の骨とも知らん奴を殺すんじゃあ駄目なんですか」
「……殺せるものなら、ね」
そう言って何故かニヤニヤ笑った父が手渡したのは、一冊の本も作れそうなくらい分厚い紙の束だ。どうやら、その相手の資料らしい。
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