異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第13節 ジークハルト(魔法)の試験②

『はぁ・・・』
『モグモグ・・・』
『・・・ふぅ・・・』
『ムグムグ・・・』
『やっぱり違うんだなぁ・・・』
『ゴクゴク・・・ん?何がだ?』
桐生とレイナは朝の練習を切り上げ、朝食を取りに来ていた。結局魔法の練度については練習する必要はないとの判断で終わったのだった。
『やっぱり勇人は召喚者だなぁって・・・。私たちと魔法の威力が違いすぎるもん』
そう言いながらレイナは朝食のウィンナーをコロコロと転がしていた。
『まぁそこら辺はよく分からんけど、別にそんな考え込まなくていんじゃないか?』
桐生は何度目かわからないお代わりを持ちながらレイナに答えた。
『そうは言うけどさぁ・・・Sクラスとしては負けたくないって思うんですよぉ・・・ ︎  ︎』
その気持ちは分からなくもない桐生だった。元の世界で仕事をこなす中、能力のある人材は早くに退社していたのを見ていたからだ。桐生の場合人の仕事を貰ってまでやっていたので仕方ないとは思うが、やはり処理能力の差は感じてしまうものだ。
『ん~じゃあ今度は俺のやり方とか教えるか?加護でも能力があがればその分回復も大きくなるし』
そう言うとレイナは沈んだ顔から一気に明るくなった。
『えっ?!いいのっ?!』
『あぁ、ちょうど俺のスキルで魔力譲渡とか付与とかあるし、多分出来ると思う』
『じゃあ練習するっ!』
その内容に心弾んだのだろう。レイナは先程までとは打って変わって食欲が増えたのか朝食の残りを一気に平らげてしまった。
『また後で連絡して♪♪試験頑張ってね♪!』
レイナはウキウキしながら食器を片付けに向かっていった。
『やれやれ、現金なもんだなwwwまぁ気持ちは分かるけどなw』
桐生もその光景に楽しくなったのかどう教えようなど考えながら食事を済ませ、試験に向かうのだった。

ーー
ーーー
『ちょっと早かったか・・・?』
桐生は最後の試験を受けに闘技場に来ていた。しかし予定よりも早かったのかまだジークハルトの姿はなかった。
『今日は魔法か・・・朝とは違う魔法がいいけどどんな内容なんだろうな』
そう思案しているとゆっくりと向かい側から歩いてくる老人がいた。今日の最終試験の担当ジークハルトだ。
『おや?早い到着じゃの?』
『おはようございます。今日は宜しくお願いします』
『うむ。本日の担当、ジークハルトじゃ。まぁ最初は説明じゃから気楽に聞けぃ。』
そう言うとジークハルトはどこから出したのか椅子に座り始めた。
『空間魔法?アイテムボックスか?』
『ほぅ。異世界から来た割には博識じゃのう?』
『あ、はい。元の世界でそういった物を出す娯楽の読み物があって・・・』
『ほっほっほ♪なるほどのぅ。じゃから魔法と言われても適応出来たわけじゃな?』
『はい』
『ふぅむ・・・非常に気になる物じゃが見る事は叶わんじゃろう。あ、ワシには敬語は要らんぞ?学園の子らも親しげに話しかけてくるんじゃからヌシもそれに習ってよいぞ♪』
『あ、あぁ、分かったよ。』
『さて、試験の内容じゃな・・・悩んだんじゃが・・・』
そう言うとジークハルトは長い髭を擦りながら思案していた。
『はっきり言ってお主の力を測るのは無理じゃ。恐らく段違いの実力を持っておるじゃろう。』
『?じゃあどーすんだ?試験もなしか?』
『いや、それは出来ん・・・どうしてもやれとうるさいからのぅ・・・‪w』
『・・・』
『じゃから、お主の魔力の使い方を見てみる方が良かろうと思っての』
『使い方?』
『うむ。魔力とは魔法の力になるもの。それが弱ければいくら強い魔法でも威力は落ちてしまう。逆に弱い魔法でも魔力をたくさんやれば強くなる。つまりお主が持ってる魔法で強いと思う物を魔力を少なめに使い、弱いと思う魔法を魔力を増やして行う。そうすれば自ずとどれ程の力があるかわかりやすいと言うわけじゃ』
桐生はその発想に至らなかった為なるほどと思った。たしかに今朝の魔法は自分の中で弱い物を発動した。詠唱で強くなるスキルを使用すると威力は目に見えて違った。そこに魔力調整が入ればバフとしての役割を覚える事が出来るという事だ。
『(このじいさんすげぇなw確かにそのやり方なら俺が使える上位の魔法でも被害は少なく出来るし、範囲魔法なら尚更だ。)』
桐生はその提案にワクワクしていた。それを感じたのかジークハルトは満足げに髭を触りながら話を続けた。
『よいかの?では早速取り掛かってもらうかの。まずは弱い魔法で魔力を増やしてみるんじゃ』
そう言うとジークハルトは闘技場に結界を張った。
『なに、保険じゃよw外まで被害が出たらワシが怒られてしまうからのw』
そう言うと悪戯っ子の様にケラケラと笑っていた。
『じいさん、あんた中々いい性格してるぜwww』
桐生もニヤリとしながら魔法の発動に備えた。
『対象はこの人形でよかろう。確かスキルで詠唱すると威力が上がるとかいうものがあったろうがそれも使うがよい』
『分かった。でも俺も心配だから結界は貼らせてもらうぞ?』
そう言うと桐生は上空に向けて加護の魔法を放った。
『邪なる威力よ退けっ・・・!ディメイションフィールドっ!』
発動すると先に出したジークハルトの結界の内側に甲羅の模様の様な結界が出現した。
『ほぅ・・・やはり大したものじゃな。魔法、物理に対しての絶対防御かの?』
『絶対迄じゃないけど硬いのは認めるぞwww』
『ほっほっほ♪謙虚なやつよの♪』
『さて、準備も終わったし・・・行くぞ?』
『うむ』
『焔よ、我が仇なす敵を撃てっ!ファイヤーボールっ!!』
桐生は人形目掛け魔法を発動した。今朝と違い今度は魔力を多めにして。すると朝の練習と同様に同じ火球が目の前に現れ、人形に向かって飛んでいくが、着弾すると違う光景がそこにはあった。粉砕する予定が砕くと言うよりも消失させたのだ。人形を支えている木材の切り口は鋭い刃物で切られた様になっていたが近くまで行くと燃えた匂いがしていた。すると、切り口から発火しその炎は結界まで届くのではないかと言わんばかりに燃え上がった。炎は一瞬で消えたが、人形の形跡も一瞬で消えたのだった。
『・・・』
『・・・なんと・・・』
ジークハルトは予想の上を行く結果に驚いていた。桐生は何となく感覚を掴んだのだろう。満足気に手を握りしめていた。
『やはり凄いのぉ。下位の炎魔法でこれほどとは』
『俺もビックリだわwwwここまで魔力だけで変わるんだなw』
桐生が驚いてる間にさらに今度は人形が複数体出現した。
『ほっほっほ♪では次じゃ。範囲魔法はわ
かるかの?この人数の人形を一度に攻撃してみるのじゃ。それで今回の試験は終わりとする』
桐生は標的の人形を数えた。1、2、・・・13体を同時に攻撃出来る範囲魔法は上位魔法以上でなければない事に気付き先程の応用をしようと考え、詠唱に入った。
『攻撃・・・でいいんだな?なら・・・試してみるか。氷結は終焉、せめて刹那にて砕けよ!インプレイスエンドっ!!』
発動した瞬間人形の頭上に巨大な氷塊が出現し、落下した。辺りは一面氷の世界になり人形諸共凍りつかせ、そのまま敵を砕け散らした。周囲には人形だった物が散らばっていた。
『・・・ふぅ。こんなもんでどうだ?』
桐生は結果に満足してジークハルトに聞いた。ジークハルトはその光景を見て深く頷いた。
『うむ、合格じゃ。召喚されただけあって魔力の使い方もすぐに覚えおったw不合格にする者はおらんじゃろうて』
そう言うと拍手を送った。桐生は照れくさいのか頭をポリポリとかいていた。
『これで全ての試験は合格じゃな。ならば学園長に面会し、合格した旨を伝えてくるのじゃ。それで今回の試験は終わりじゃからのぅ』
ジークハルトはそう言うと椅子から立ち上がり、帰り始めた。椅子は現れた時と同様静かに消えていた。
『ありがとうな♪』
桐生はお礼を述べて学園長の部屋に向かうべく踵を返した。ーーこの後の出来事など予測していないのか、その足取りは軽かった。

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