異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第7節 旅の終わり

『・・・』
『・・・』
2人は無言だった。それもそのはずだ。あの事件があり2人は過酷な現実に直面したのだから。
『・・・ダメだな』
『え?』
それを解決しようと動いたのは桐生だった。レイナは彼を見ると、彼は笑っていた。
『確かに、あれはちゃんと考えなきゃならない事だけどずっと気を張りつめても精神的に良くないし、戦闘になれば絶対にミスる。ここは、自分なりに受け止めて前を向かなきゃならないなってさ』
そう言いながら桐生はレイナを諭すように語りかけた。確かに今の二人ではいざ戦闘になれば思うような連携を取れないだろう。それはつまり目的を果たせず死ぬ可能性が増えるという事に直結する。レイナは軽く頬を叩き気合いを入れた。
『・・・うん、そうだね。その通りだね。私たちがちゃんとしなきゃ同じことの繰り返しだけど、ずっとこの雰囲気じゃ・・・やだな・・・』
『だろ?だからとりあえず・・・笑っていこう。俺もこの雰囲気は苦手だwww』
笑いながら桐生はレイナに話した。
『うん♪・・・ありがとね・・・』
『うん?』
『その・・・慰めてくれて・・・』
『あ、あぁ。なんかゴメンな?いきなり抱いたりして』
『うぅん!!嬉しかったから・・・』
『でも彼氏とか居たらって思うと軽率だったな』
『か、彼氏なんていないよっ!!』
『ん?そーなのか?学園ってぐらいだからそんな浮ついた話も無いわけじゃないだろ?』
『それは・・・そうだけど・・・ゴニョゴニョ・・・』
『なんだよwww?はっきり言えよwww』
『私・・・モテないもん・・・可愛くないし・・・↓↓』
その言葉に桐生は思いっきり『はぁ?』という顔をしてしまった。現代風に言うと(۳˚Д˚)۳??の顔文字が正しいだろう。その顔やスタイル、どれをとってもモテない理由が分からない。周りの男共は見る目がないのだろうか。桐生は理解できなかった。
『そうなのか?俺は今まで見てきた女の人の中でダントツで可愛いし、綺麗だと思うけどなwww』
桐生はフォローをしたが、どこか照れくさかったのかそっぽを向いてしまった。元の世界ではこんな風に女性と話す機会も少なかった為免疫がないのが理由だろう。
『っ?!?!ば、バカっ!変な事言わないでよっ!』
『いやっ!?すまんっ!?思った事を言ったのが間違いだったか!?』
『・・・////』
今度はレイナがそっぽを向いた。その耳は若干赤みがかかっていたが桐生は気付いていない様だった。
『(初めて可愛いって言われたっ?!初めて綺麗って言われたっ?!めちゃくちゃ恥ずかしいっ!!)』
初々しい反応が2人を包む中旅は進み、ついに目的地が見えるまでに至った。
『あれが学園都市レミニセンスだよ♪私たち園生はあそこで住んで、勉強して、訓練をするの♪たまに外でお仕事はするけどね??』
そう指差しながら教えてくれるレイナを横目に桐生は目が釘付けになっていた。都市と言われどんなものかと思っていたがお城の様だったのだ。周りを高い城壁に囲まれその奥にはそびえるように高い建物がある。その横には小さいが2番目に大きな建物も見えた。
『・・・ビックリw??』
『あぁ。こいつはすげぇやwww』
『ふふーん♪凄いでしょ♪中には学園の他にも皇族の人が居るお城や街の皆が住んでいる住宅、後は露店や食べ物、装備なんかを売る店もあるよ♪ギルドホールもあるから色々な人が住んでるの♪』
『楽しみになってきたな♪早く行こうぜ♪』
『あ、ちょっと待ってよ!!置いてかないでよーっ!!』
2人は早く行こうと急かしながら駆け出した。近付くにつれその大きさに驚愕したが、門の入口で止まってしまった。
『通行許可証を』
『はーい♪・・・あっ?!』
『どうした?』
『私は許可証あるけど勇人の分ないんだった・・・どうしよう・・・』
『ないと入れないのか?』
『うん・・・ダメですか・・・?』
レイナはおずおずと門番の警備兵(?)に訪ねた。
『そうですね。違う国から来た場合だとしても共通のものなので持っているのが常識ですし、もし道中無くした場合などはギルドの紹介などあれば可能ですが・・・』
そこまで言うと門番は不審者を見るように桐生を見始めた。
『ち、ちょっと待ってくださいっ!!』
そう言うとレイナは桐生を引っ張り門番から離れたところまで距離を取った。
『どーしよどーしよどーしよどーしよどーしよどーしよどーしよ・・・っ!!!!』
レイナは頭を抱え何かの解決策を探そうとしていた。桐生本人はといえば・・・
『まーそー焦んなって♪なんとかなるっしょ♪♪』
この通りである。どれほどの危機か理解出来ていないのか緊張感は皆無であった。
『はーやーとー!!』
『お、おう!?やばいなどーしよーか?!』
『もぅーっ!ホントにどーしよー・・・』
レイナはその場に蹲り絶望していた。と、その時・・・
『あら?』
『ん?』
桐生はこちらに向けて歩いてくる人間に警戒しつつ向き直った。服は一般の人よりも小綺麗で気品がある感じを受けた。隣には守ろうとしているのだろう。桐生に向けて値踏みする様に見る兵士がいた。
『レイナさん?』
『ふぇ・・・?』
桐生が声をかける前にその女性はレイナに話しかけた。どうも顔見知りの様な態度に桐生は警戒を解いた。
『が、学園長っ?!』
『学園長?』
『あらあら。そんな所に蹲ってなにかありましたか??』
学園長と呼ばれた女性はレイナに問いかけながらチラリと桐生を見た。
『もしかして・・・?』
『はい・・・ミントの召喚から噂を頼りにココルの森に捜索に行った所、彼が召喚されたと判断してここまで連れてきました・・・』
『あらあらまあまあ』
『ですが・・・許可証がないので都市に入れなくどうしようか悩んでいまして・・・』
『なるほど・・・』
『学園長ぉ・・・』
『分かりました。私に任せてください』
そう言うと学園長(?)は門番に2、3言話しかけると門番は脱兎のごとく走って門の中に消えていった。数分後、門番は何かの紙を持ちながらこちらに向かってきた。
『ど、どうぞ!偉大な召喚者様!事情も知らず無礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでした!!』
桐生はなんの事か理解出来なかったが渡された紙を受け取り中身を確認した。
『学園都市レミニセンス・・・通行許可証・・・本文は学園都市レミニセンスにおける住人として学園長サラ・ゲーティアの名のもとに都市における住民としてここに認める。また他国への入国に関して犯罪等における責任の一切を上記する者が受ける。・・・はぃ?!』
桐生は文面を読み返しながら間違いがないか探した。だが、その文面をいくら見ても通行許可証以外には見えなかった。
『これであなたはこの学園都市の住人になれましたよね?』
学園長(?)は、当たり前の様に話したが、レイナは目をパチクリして何が起こったのか理解が出来ていなかった。一方桐生は・・・
『ち、ちょっと待った!?』
『はい?』
『学園長・・・さん?で、いーんすか?』
『はい♪不肖ながらこの学園都市レミニセンスにおける学園の長をしております、サラ・ゲーティアと申します。以後お見知り置きを・・・』
そう自己紹介をすると綺麗な姿勢で頭を下げた。
『あ、すいません。ご丁寧にどうも・・・おれ・・・じゃなく、私は桐生勇人と申します。レイナさんから説明があったようにこの世界に転生・・・召喚された者と言うことでした・・・それで・・・』
『なんでしょうか??』
『いきなりこんな事を言うのはあれなんですが・・・全くの知り合いでもない人間にどうして自分の都市への通行許可証を学園長さんの名義で頂けたのかな、と・・・』
『なにか不味かったかしら??』
『そういうわけではないんですが・・・不審に思ったり、警戒したりしないんですか?』
『あら?どうして?』
『いや、だって・・・嘘を言ってるかもしれないじゃないですか?そこから都市に侵入して何か良からぬ事をする可能性とか無いわけじゃないですか?』
そう答えると学園長は手で口を隠しながらクスクスと笑い始めた。
『いえ、ゴメンなさい・・・(笑)大丈夫ですよ♪ちゃんと見てましたから♪』
『見てた?』
『はい♪あなたは私が近付く際にレイナさんを守る様に警戒していましたね?私がレイナさんと顔見知りと判断すると警戒を解いて話をちゃんと聞いていましたし、何よりレイナさんと一緒に居る事が決定的でした。』
『?』
『レイナさんは当学園でSクラスの人間。その様な方とココルの森から一緒に来た。悪い事を考えているのでしたら私やレイナさんに少なからず媚を売る仕草が入るはずですから。ですが、あなたは違った。だからこそ私は信用したのです。・・・理由になりませんか??』
そこまで言われると桐生は何も言い返せなかった。確かに警戒はしたし、解いたのも事実。悪い事をする気はサラサラないから媚を売ることも無い。
『参りました・・・(笑)』
『あらあら♪面白い方ですね♪レイナさん??』
『ひゃ、ひゃい!?』
『彼は園生になりたいの?それともギルド?』
『そこは・・・』
レイナはいきなり話を振られ言葉を選んでいたので、隣から桐生が説明をする事にした。
『学園長さん。実はレイナさんに見てもらったんですがどうも私のステータスが異常だと言うことでして・・・どの様に処置したらいいか判断のアドバイスを貰いたく、ここまでやって参りました。』
『あら?そうでしたの?でしたら・・・わたくしの部屋でゆっくりとお話しましょうか??』
そう言うと隣の兵士に先に戻るように伝え、学園長はゆっくりと手を向けてきた。
『ようこそ、学園都市レミニセンスへ。桐生勇人さん。この世界の危機を救うべくして召喚された厄災の救世主。私達は貴方を歓迎致します。』
桐生は差し出された手を知らぬうちに握り返していた。
『厄災の救世主・・・なんだか恥ずかしいけど、俺の力が役に立つなら世界を・・・救ってみるさ。正義の味方になるのが夢だからな♪』
その言葉を受け学園長は静かに微笑みながら小さく『頼みますよ・・・どうかあなたの力を・・・』と言っていたが、レイナにも桐生にもその言葉は聞こえなかった・・・ただ、何かが変わるのだろう。その2人の間を強く、だが優しい風が通り抜けたのだった・・・

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