異世界呼ばれたから世界でも救ってみた

黒騎士

第2節 異世界『メルト・フォーレン』

『状況を整理しよう・・・』
桐生はそう言うと手頃な石を見つけ、そこに腰掛け某アニメの司令官ばりに手を組み口元を隠した。
『(仕事・・・は1時頃に終わった・・・。その後コンビニで弁当とタバコと野菜ジュース買って・・・帰ろうとしたらなんか黒くてモゾモゾ動くヤツが居て・・・ブツブツ喋ったら消えて・・・黒猫出てきて撫でてやったら・・・)』
そこまで考えた瞬間、立ち上がり自分の身体を確認しだした。
『怪我・・・してねーな。むしろいつもより身体が軽い感じがする?』
ぴょんぴょんとその場で飛んでみるが異常は見当たらなかった。
『んー、わからん。とりあえず、マジでどこ?ここ?』
辺りは森、森、森。近くには小川が流れ、木々はそよ風に揺れ、鳥は楽しげに鳴いている。猫は日向ぼっこをしていた。
『あ!?猫っ!?』
そう。目の前にはさっき助けようとした猫が太陽の日を浴びてゴロゴロとしていた。
『お前、助かったのかぁ♪良かっ・・・』
近寄り触ろうとした瞬間。
辺りの景色が真っ白に変わり、何も無くなり、自分が立っているのかも分からなくなる様な場所に居た。いや、目の前には黒い猫が中を浮いていた。
『っ?!』
咄嗟に身構え、距離を取るが襲ってくる気配がなく、警戒だけしていた桐生の頭に誰かが話しかけてきた。
『桐生・・・勇人・・・』
その声は人の様で人ではない声だった。どこかで聞いた事があるかと言えば、ない。だが、懐かしく、暖かく、穏やかになれる声だった。
『あ、あんたは?』
『私はお前の前にいる猫だ・・・仮の姿だがな・・・』
いきなりのファンタジーに混乱しかけたが、そこはオタク。即座に適応出来た。
『俺は・・・死んだのか?』
今1番気になっていることをまず聞いてみた。桐生自身はどちらでもいい様な気持ちだったが。
『死んではいない。だが、お前が居た世界には桐生勇人なる人物は存在していない。我が連れてきたからな』
『・・・おk』
死んではいない。違う世界に来た。喋る猫。ファンタジーな空間。桐生はその要素だけで不安よりも好奇心が優先されてきた。
『我がお前を連れてきたのは他でもない。お前の夢を叶えてやろうと思ってな・・・』
『夢?』
『お前は正義の味方になりたかったのだろう?』
その言葉が頭に届くと同時に返事を決めていた。だが、確認しなければならない事もあった。
『返事はイエスだが、一つ確認だ。その世界・・・なんて世界か分からんが、そこでは誰がどんな風にどんな事で困っているんだ?ましてや、俺なんかが救えるような世界なのか?ただの一般人だぞ?』
すると声の主(猫?)はふむふむと納得した様に唸り、説明を続けた。
『そうか。世界の名を知らなかったな。世界の名はメルト・フォーレン。まぁお前がいる世界とはかけ離れた世界だな。そこではモンスターの襲来が年々増加している。世界の流れでな、500年周期でモンスターが大量発生するのだ。それがお前を呼んだ理由の一つだ。手の届く範囲で誰かが泣いていたら助けたいだろう?そんな感情を持つお前だからこそ選んだのだ。』
桐生はその言葉を深く考えながら聞いていた。
『そして、一般人、と言ったな?この世界ではお前にかなう人間は極々稀に居るぐらいだろう。負けるかどうかはお前次第だが。メルトフォーレンにおけるお前のステータスは変えさせてもらった。後で確認しておくがいい。我が無理やり連れてきた詫びだ。』
そこまで話終えると、桐生は大きく深呼吸を2、3度行い最後は深く深く吐き出した。そしてーー
『分かった。やろうじゃん。俺の力が役に立つならどんな所でもやってやるさ。』
そう言うと拳を突き出した。その拳で世界を掴むと決意する様に。
『それに、あの状況じゃ恐らく即死だろうからな。都合が良かったぜww』
『そう言うと思ったよ。やはりお前は我が見込んだ男だった』
『あ!!もしかしてあの時居た黒い塊っておまっ!』
そう言いかけた時、また眩い光に包まれ始めた。
『そろそろ時間のようだ。お前の働きに期待している。頼んだぞ・・・世界を』
声が微かに聞こえる中、桐生は意識を失っていった。

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