異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??

頤親仁

第91話『予感』

「本当に、ありがとうございました!」
深々と、マサタは頭を下げた。
マサタは、自身を看病していたレンタ、ヒカリ、コウジのいるSSクラスで、三人に感謝の言葉を述べていた。
「ううん。気にしなくていいよ。ただ、今後は、お友達が怪我したら同じように看病してあげてね」
レンタは、優しくマサタの肩を叩いた。
「はい!」
「そうよ、気にしないで頂戴。アタシは、コウジと平佐名にだけ、手を焼かせたくなかっただけよ」
ヒカリは少し気恥ずかしそうにそう言った。
「あ、ありがとうございます……」
そして、コウジは……。
「べ、別にアンタのためじゃないんだからねっ(裏声)」
この上なくふざけていた。
「えぇー…、じゃあ誰の為なんですか…」
困ったようにマサタが応えた。
「まあ!元気になって良かったよ。退院祝いにメシでも行くか?」
「いいですね!お願いします!」
そうして、SSクラスの三人に礼を言い終えたマサタは、別の教室へと向かった。
カラカラと扉を開ける。
同時に、多くの視線がマサタへと突き刺さる。
マサタは、この感覚があまり好きではなかった。
だが、その人物は、マサタに気が付くなり手を振りながらこちらに駆け寄ってきた。
「マサタ君だね!戻れたんだね!」
「あ、ああ。お陰様でな」
駆け寄るハナの胸が大きく揺れ動き、そのたわわな胸にしか視線が向かなかったのは、マサタだけの秘密である。
「本当にありがとうな。助かったよ」
「私もね、マサタ君が無事で良かったね!」
「お、おう………」
照れて赤くなる顔を隠すように、マサタは俯いてしまった。
自分でも自覚はしていた。
自分はきっとこの少女に、恋をしているのだと。
「な、なあ、その、さ………」
刃こぼれだらけの言葉を、ハナへと向ける。
ハナは今なお、不思議そうにこちらを見て首を傾げている。
その視線に急かされるように、マサタは言った。
「良かったらさ、連絡先、交換しねえか…?」
「………? うん!もちろんだよね!」
少しの沈黙ののちに、ハナは快活にそう返事をした。
教師に見つからないように、こっそりと、二人は息を殺しながらお互いの連絡先を交換したのだった。

その時、ハナは気が付いていた。
背中から注がれる、異様な視線に。
教師でもない、生徒でもない。
言葉で言い表すのは難しい。
曖昧な表現を用いるとすれば、それは、『嫌な感じ』とでも言うべきだろうか。
その視線は、ハナが振り返るころには既に消滅していた。
何とも言えない不愉快なあの感覚を、ハナは背中で確かに感じていた。

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