異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??
第79話『籌策』
「…………はっ?」
圧倒的な違和感が、柄越しにマサタへ伝った。
そんなマサタの動揺を気にも留めず、アツシが肉薄する。
一気に接近したアツシは、右手の拳をマサタの顔面へ目掛けて打ち出した。
恐らく、平常時のマサタであれば容易に躱せたであろう。
だがこの時、マサタは薙刀の柄から伝わった異様な感触に困惑していた。
アツシが繰り出した拳は、マサタの頬を掠める。
それで終わるはずだった。
しかし、明らかに掠める程度の接触であるにも関わらず、マサタの頬の肉はアツシの拳に引き摺られ、頭部ごと水平に回転した。
顔面の皮膚全てが剥げそうな痛みと同時に、肉体は後方へと倒れ込んでいく。
その拳はまるで、拳と頬を接着剤で癒着させられた様な、そんな強い力が作用していた。
本能が、距離をとれと叫ぶ。
「〈境界超越〉ぁああああ!」
その咆哮と同時に、自身の左側の空間から距離軸を一つ消し、一つ下の2+1次元へと転移させる。
それに伴い、マサタ自身の肉体も左方へと移動する。
「おいおい、逃げンなよォ…。負ける覚悟はしてきたンだろォ?」
嘲るようにアツシが笑う。
その笑みに対して抱く感情は、紛れもない恐怖である。
冷静にアツシの能力について考察する時間を稼ごうとしたが、どうやらこの判断は誤りだったようだ。
距離を取ることで、かえって自分の恐怖心を見抜かされてしまった。
だが、得られた情報が皆無というわけではない。
まず分かることは、アツシの才華は現時点では自分自身にしか作用していないということ。
空間レベルで作用する才華であれば、その射程圏内にマサタが入った瞬間に才華を発動すると考えられるし、何より態々殴る必要など無い。
そして、触れるだけでは才華が発動しないということ。
事実、拳と接触したマサタの頬には異常が感じられない。
それはつまり、才華の発動に何らかの条件や制約があるからだろう。
先ほどの異様な感触と拳の異常性。これらの情報を加味して、アツシの才華を推測するとすれば…。
「あンだけ大口叩いておいて、ビビって逃げンのかァ?」
「ああ。正直、ビビったよ。だから次は……………お前の番だぜ」
「ァあ?」
「チビる準備はできたか?」
「気持ち悪ィなァ、さっさと負けちまえ────よッ!」
その言葉と同時、アツシが素早くこちらへと走ってきた。
対峙しているマサタは、不敵に口角を上げるだけだった。
アツシが攻撃を仕掛けてくるのならば、こちらは仮定を決定にすべく、検証を行うだけだ。
一気に接近したアツシは、再び右拳をマサタへ向けて打ち出す。
それを見切り、マサタは薙刀の鋒をその拳へと振り下ろした。
アツシはそれを見るなり、空いた左手で鋒を受け流した。
首筋に切り込んだときに似た、刃が逃げていくような気味の悪い感触。
これは仮定の証明に足る反応である。
だが、確たる証拠を掴むためにはまだ弱い。
確証を得る為に、マサタはアツシへ向かって半歩踏み込んだ。
そして手首を返して、握っている薙刀の柄を半回転させる。
そのまま、それをアツシの喉へと振り抜いた。
「がはァッ!!」
確かな手応えと共に、アツシの喉から血が吹き出る。
吹き出した血が、マサタに付着する。
アツシは側方へと跳躍し、マサタから距離を取った。
「てめェ、何しやがった?」
「お前の才華が分かったから、対処してるだけだ」
「………ンだと?」
アツシは初めて、驚いた表情を見せた。
「摩擦係数、それを変えるのがお前の才華だろ?」
マサタは自分史上最高のドヤ顔と共に、そう言い放った。
圧倒的な違和感が、柄越しにマサタへ伝った。
そんなマサタの動揺を気にも留めず、アツシが肉薄する。
一気に接近したアツシは、右手の拳をマサタの顔面へ目掛けて打ち出した。
恐らく、平常時のマサタであれば容易に躱せたであろう。
だがこの時、マサタは薙刀の柄から伝わった異様な感触に困惑していた。
アツシが繰り出した拳は、マサタの頬を掠める。
それで終わるはずだった。
しかし、明らかに掠める程度の接触であるにも関わらず、マサタの頬の肉はアツシの拳に引き摺られ、頭部ごと水平に回転した。
顔面の皮膚全てが剥げそうな痛みと同時に、肉体は後方へと倒れ込んでいく。
その拳はまるで、拳と頬を接着剤で癒着させられた様な、そんな強い力が作用していた。
本能が、距離をとれと叫ぶ。
「〈境界超越〉ぁああああ!」
その咆哮と同時に、自身の左側の空間から距離軸を一つ消し、一つ下の2+1次元へと転移させる。
それに伴い、マサタ自身の肉体も左方へと移動する。
「おいおい、逃げンなよォ…。負ける覚悟はしてきたンだろォ?」
嘲るようにアツシが笑う。
その笑みに対して抱く感情は、紛れもない恐怖である。
冷静にアツシの能力について考察する時間を稼ごうとしたが、どうやらこの判断は誤りだったようだ。
距離を取ることで、かえって自分の恐怖心を見抜かされてしまった。
だが、得られた情報が皆無というわけではない。
まず分かることは、アツシの才華は現時点では自分自身にしか作用していないということ。
空間レベルで作用する才華であれば、その射程圏内にマサタが入った瞬間に才華を発動すると考えられるし、何より態々殴る必要など無い。
そして、触れるだけでは才華が発動しないということ。
事実、拳と接触したマサタの頬には異常が感じられない。
それはつまり、才華の発動に何らかの条件や制約があるからだろう。
先ほどの異様な感触と拳の異常性。これらの情報を加味して、アツシの才華を推測するとすれば…。
「あンだけ大口叩いておいて、ビビって逃げンのかァ?」
「ああ。正直、ビビったよ。だから次は……………お前の番だぜ」
「ァあ?」
「チビる準備はできたか?」
「気持ち悪ィなァ、さっさと負けちまえ────よッ!」
その言葉と同時、アツシが素早くこちらへと走ってきた。
対峙しているマサタは、不敵に口角を上げるだけだった。
アツシが攻撃を仕掛けてくるのならば、こちらは仮定を決定にすべく、検証を行うだけだ。
一気に接近したアツシは、再び右拳をマサタへ向けて打ち出す。
それを見切り、マサタは薙刀の鋒をその拳へと振り下ろした。
アツシはそれを見るなり、空いた左手で鋒を受け流した。
首筋に切り込んだときに似た、刃が逃げていくような気味の悪い感触。
これは仮定の証明に足る反応である。
だが、確たる証拠を掴むためにはまだ弱い。
確証を得る為に、マサタはアツシへ向かって半歩踏み込んだ。
そして手首を返して、握っている薙刀の柄を半回転させる。
そのまま、それをアツシの喉へと振り抜いた。
「がはァッ!!」
確かな手応えと共に、アツシの喉から血が吹き出る。
吹き出した血が、マサタに付着する。
アツシは側方へと跳躍し、マサタから距離を取った。
「てめェ、何しやがった?」
「お前の才華が分かったから、対処してるだけだ」
「………ンだと?」
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