異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??
第67話『服用』
帰宅してすぐに、マサタは渡された薬を服用した。
違法薬物や毒物など、様々なリスクを想定する。
だが、仮にこの薬が違法薬物で、検挙され、服役することになったとしても、今自分が通っている学校よりは居心地がいいだろう。
また、これが致死量の毒物であったとしても、死ぬことで現状から解放されるのなら、それもまた悪くないだろう。
「これで楽になれんのかな……」
そう呟き、カプセルを嚥下する。だが、変化は訪れなかった───────────その時は。
変化が現れたのは、その日の晩。寝に就こうとしていたマサタを襲ったのは、激しい頭痛だった。
脳が膨張し、破裂するような痛み。その他にも様々な体の不調がマサタを苦しめた。
頭痛の他に、吐き気・嘔吐・眩暈・発熱・腹痛・下痢・手足の痺れ等だ。
そんな最中に、マサタは幻影を見た。
自分の目の前に、自分が居たのだ。
だがそれは自分ではなく、鏡に反射した自分自身であった。
しかしその鏡は、触れるなり消えて失くなり、元の虚空へと戻ってしまった。
マサタの頭の中で様々な想定が浮かんだ。
自分は夢を見ているのか?それとも幻覚か?やはり劇薬か?はたまた、違法ドラッグだろうか?
そう考えるマサタの手は震えていた。
それは症状なのか、それとも土壇場で怖がってしまっているのか。それは知る由もないが。
今考えればそれは、自身で生み出した3次元空間に過ぎないのだが、なにも知らない人間がそれを理解できるはずもなかった。
マサタは布団に潜り込むが、眠ることはできなかった。
眠れても、苦痛によってすぐに目が覚めてしまうのだ。
結局、症状が治ったのは朝5時を回った頃だった。
マサタは皆勤賞を失うことを覚悟しつつ、病院へと向かった。
そして、医師に昨夜の病状や、もらったカプセルの事を洗いざらい話した。
尿や血液の検査、幻覚・幻聴などの症状の問診など、危険ドラッグ等を摂取したときに現れる症状を徹底的に調べられた。
暫くして、医師が検査結果の記された紙を渡した。
「検査の結果は───────陰性でした」
「え?」
「よかったですね。でも、もう知らない人からもらったものを口にしてはいけませんよ」
医師は優しく微笑んだ。
「…………………」
「それでは、お大事になさってください」
そう言うと、医師は頭痛薬や解熱剤が入った紙袋を手渡した。
きっと、この結果は喜ぶべきなのだろう。
だがマサタの胸の中にあったのは、現状を何も変えられなかったことに対する落胆と、あの少女の思うままに騙されたことに対する無念だった。
「……遅刻か…」
ケータイ画面に表示された時間は午後二時半。
今から学校へ向かえば、5限目の途中には到着できるだろうか。
行きたくない、休みたい、逃げ出したい。
だがここで休めば、まるで自分が奴らに屈してしまったようで、想像するだけで悔しくて堪らないのだ。
それに何より、汗水垂らして働く親父に合わせる顔がない。
マサタは回避─回避型の葛藤を背負いながら、重い脚を学校まで引き摺った。
違法薬物や毒物など、様々なリスクを想定する。
だが、仮にこの薬が違法薬物で、検挙され、服役することになったとしても、今自分が通っている学校よりは居心地がいいだろう。
また、これが致死量の毒物であったとしても、死ぬことで現状から解放されるのなら、それもまた悪くないだろう。
「これで楽になれんのかな……」
そう呟き、カプセルを嚥下する。だが、変化は訪れなかった───────────その時は。
変化が現れたのは、その日の晩。寝に就こうとしていたマサタを襲ったのは、激しい頭痛だった。
脳が膨張し、破裂するような痛み。その他にも様々な体の不調がマサタを苦しめた。
頭痛の他に、吐き気・嘔吐・眩暈・発熱・腹痛・下痢・手足の痺れ等だ。
そんな最中に、マサタは幻影を見た。
自分の目の前に、自分が居たのだ。
だがそれは自分ではなく、鏡に反射した自分自身であった。
しかしその鏡は、触れるなり消えて失くなり、元の虚空へと戻ってしまった。
マサタの頭の中で様々な想定が浮かんだ。
自分は夢を見ているのか?それとも幻覚か?やはり劇薬か?はたまた、違法ドラッグだろうか?
そう考えるマサタの手は震えていた。
それは症状なのか、それとも土壇場で怖がってしまっているのか。それは知る由もないが。
今考えればそれは、自身で生み出した3次元空間に過ぎないのだが、なにも知らない人間がそれを理解できるはずもなかった。
マサタは布団に潜り込むが、眠ることはできなかった。
眠れても、苦痛によってすぐに目が覚めてしまうのだ。
結局、症状が治ったのは朝5時を回った頃だった。
マサタは皆勤賞を失うことを覚悟しつつ、病院へと向かった。
そして、医師に昨夜の病状や、もらったカプセルの事を洗いざらい話した。
尿や血液の検査、幻覚・幻聴などの症状の問診など、危険ドラッグ等を摂取したときに現れる症状を徹底的に調べられた。
暫くして、医師が検査結果の記された紙を渡した。
「検査の結果は───────陰性でした」
「え?」
「よかったですね。でも、もう知らない人からもらったものを口にしてはいけませんよ」
医師は優しく微笑んだ。
「…………………」
「それでは、お大事になさってください」
そう言うと、医師は頭痛薬や解熱剤が入った紙袋を手渡した。
きっと、この結果は喜ぶべきなのだろう。
だがマサタの胸の中にあったのは、現状を何も変えられなかったことに対する落胆と、あの少女の思うままに騙されたことに対する無念だった。
「……遅刻か…」
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今から学校へ向かえば、5限目の途中には到着できるだろうか。
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だがここで休めば、まるで自分が奴らに屈してしまったようで、想像するだけで悔しくて堪らないのだ。
それに何より、汗水垂らして働く親父に合わせる顔がない。
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