異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??

頤親仁

バスタオル



まだ星々が誕生する前の宇宙に一人放り投げられたような孤独感。コウジはホワイトルームの中で、この孤独感を搔き消すために、何かしらを発注するしかないと考えた。
「発注をしたいんですけど…」
コウジは小声でそう言った。すると天井から機械音のような声が聞こえてきた。
「では、発注する物と数量を言ってください」
「えっと、ノート2冊とボールペンを赤と青と黒の計3本。水、鉄、銅、ステンレス、ジュラルミン、杉、白樺をそれぞれ10cm×10cm×10cmの1000立方センチメートルずつ。デジタル計り、メスシリンダー、45Lバケツ、電卓をそれぞれひとつずつ下さい」
コウジは頭で描いた実験に必要な機材を言った。
「承りました。これより2時間以内にそれらの物品がこちらへ送られます」
機械音声が止むと、室内を再び静寂が満たしていった。
「やっぱり暇になるよな」
コウジは横になり、そのまま眠りに就いた。
翌朝、いや、厳密に言うと今は朝かどうかわからない。眠りから覚め、瞼を開くと、視界いっぱいの白がコウジの眼前に広がった。やはり昨日の出来事は夢ではなかったのだと確信させられる。
部屋を見回すと、隅の方にコウジが発注した実験器具一式が届いるのが見て取れた。
「いつつつ………」
硬い床で眠ったせいか、肩と首が重く痛い。
「そういやここって便所とかってどこにあるんだ…?」
「バスルームは向かって右側です」
「いや独り言も聞かれちゃってたの!?恥ずかしいよ!!!」
コウジは羞恥心で赤面し、その顔を両手で隠した。
しかし、昨日から色々なことが起こりすぎてしまったため、少し湯船に浸かってゆっくりしたかった。
コウジは体を右へ向け、バスルームがあるという方向を見たが、やはり真っ白で何も見えない。しかし、目を凝らすと他の壁とは何かが違う様に見える。
「歪んでる……?」
よく見ると、壁の白の中にわずかに影のようなものがある。
近づいて触れてみると、それが布であると分かった。そして、その布を掴んで横へスライドさせる。
「…カーテンか」
布の向こうは便器と湯船とシャワーが設けられており、 最低限の生理現象は済ませられるようになっていた。
コウジはシャワーを浴び、軽く汗と汚れを流した。
「色々発注しなきゃいけないものが多いかもな…」
コウジは湯船の中で、今後三週間生活する上で、かなりの物品の量が必要になってくることを懸念した。
「………………あ、タオルないじゃん」
コウジは落胆した。どんな物品も2時間以内には届くとは言っていたが、それは最長で2時間かかることもあるということだ。最悪の場合2時間もシャワールームから出られないかもしれない。
仮にすぐに到着したとしても、シャワールームから部屋の隅まではそれなりに距離がある。このシャワールームから外はすべて録画されているため、この学校の職員に自身の全裸を見られてしまう。もはや公開処刑である。致し方ない、ジャケットを腰に巻いて、下半身だけでも守るとしよう。コウジはシャワールームから発注を行なった。
「すいませーん、発注なんですけどー」
「発注する物と数量を言ってください」
「バスタオルを二枚、Lサイズのジャージを21組、シャンプーとボディーソープを二つずつ。あ、それと、2リットルの緑茶とスポーツドリンクと水を10本ずつと、食パン1斤とピーナッツバター下さい」
コウジは必要と思われる物を発注した。あとは待つのみだ。
結局、物品の到着までは30分程度だったのだが、コウジは祈るようにバスタオルの到着を待っていた。


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