異能があれば幸せとか言ったヤツ誰ですか??

頤親仁

追放

「親父、俺この学校に転校したい」
突然の言葉に親父は驚いたように目を見開き、こちらを見てきた。だが、すぐにいつもの威厳ある顔に戻る。そして。
「馬鹿なことを言うな。今のお前に転校は必要ない」
やはり反対されてしまった。だが、このまま檜戸高校に居続ける方が迷惑だと思ったのだ。もう隠しきれない。言うしかないだろう。
「親父…俺、実は……学校で…人を一人……殺したのかもしれないんだ」
絶対に隠しておきたかった事実を震える声で親父に告げた。親父は最初、何の冗談かと思ったのだろう、眉をひそめて俺の顔を凝視してきた。だが、俺の真剣な眼差しを見て、これが嘘偽りのない事実であると察してくれたのだろう。
「なんで、なぜ殺したんだ?」
今まで聞いたこともないような、怒気の込められた声で俺にそう尋ねてきた。
「それが、自分でも無意識のうちに…やってたみたいなんだ……」
あの日の光景を思い出しながらその事実を告げる。
しかし、親父の口調は変わらなかった。
「そうか、そんなことがあったんだな…」
「ああ、でも俺自身よくわからないんだ」
「なるほど。なら、出ていきなさい」
「え?」
あまりに違和感なく発されたその言葉に、理解が追い付かなくなる。
「出ていきなさいと言ったんだ。無意識で人を殺すような人間はうちには置いておけない」
俯き加減だった視線を戻して親父の顔を見るが、親父の眼差しは真剣そのものであり、何の冗談でもないことが見て取れた。
「今すぐに荷物をまとめて出ていきなさい」
冗談でないということは明らかなのに、全く現実味がなかった。
「で、でも!まだそうかどうかは分からいな――――」
「黙れ!貴様のような外道の者の発言など聞きたくない!」
憤怒と軽蔑とを混ぜ合わせたような視線をこちらへ向けてくる。
俺はそのままリビングの扉へ向かい、ドアを開け放つ。
ドアのすぐ近くにいたスミレが驚いたようにこちらを見てくる。その横を通り、自室へと通じる階段を駆け上がった。
階段を駆け上がってすぐにある自室に入り、携帯電話、財布、ジャケットをとり、また階段を駆け下りる。
そこで、スミレが不安そうな顔をして俺にこう尋ねた。
「お兄ちゃん。さっきの話、本当…?」
どうやら、先ほどの会話を聞かれてしまったらしい。
両目から溢れそうになる涙を堪えつつ顔をうつむかせて、こう言った。
「ああ。俺は多分、人を殺したんだと思う…」
「お兄ちゃん……」
「スミレ、でも、アレは……」
「最ッ低…………!」
瞬間、コウジの中でとてつもない孤独感がこみ上げてきた。
心のどこかで、誰か、誰か一人くらいは自分の味方でいてくれる。
そう思っていたところがあった。だが、現実は非情で冷酷。幼馴染も、友人も、家族さえも。もう二度と今まで通りに話せることはないのだろう。
手早く荷物をまとめたコウジは階段を急いで駆け下りた。
コそして、玄関扉に手をかけ、
「…………ごめん」
と言い残すと、そのまま寒夜の風と共に家を去った。

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