錬金術師の転生無双 ~異世界で勇者になった錬金術師は【魔法錬金】で万能無双~
第14話:錬金術師は創造する
ウルフとの戦闘があってからおよそ四時間が経過した。
村を出発してここまででちょうど二十キロほどの距離を歩いたことになる。なかなかのハイペースだが、まだ目的地までの距離は果てしない。
その間の景色はほとんど変わらない。平坦な道だということは、川や山が無いのだ。石と草ばかりの代わり映えしない道を背景に進んでいく。
隣を歩いていたリーゼが突然止まった。
「足が痛いです……」
「ふむ、ではそろそろ休憩をとるとしようか」
リーゼが訴えたことをきっかけに、エルゼは休憩を決定した。
誰かが音を上げなければ休憩を取らないというシステムなのかもしれない。
効率が良いのか悪いのかちょっとよくわからないが、やっと休憩ができるということで俺はホッとしたというのが本音だ。
長時間の歩行でふくらはぎがちょっと痛い。
近くあった大きな岩に腰を落ち着ける。
「シュンは長距離の移動になれているのですか? 勇者の私よりも体力があって凄いです」
「俺は男だしそりゃリーゼより体力もあるさ」
……いや、よく考えてみると性別が男だからというだけで、帰宅部のオタクが現役の勇者よりも体力があるというのもおかしな話だ。
リーゼは納得顔だが、俺としては疑問が残る。もしかすると、これも転生した際に何らかの影響があったのかもしれない。
そういえば、この世界に来てから身体が軽い気がする。
精神的なものじゃなくて、本当に身体が軽い。
ちょっとジャンプしてみる。
ふわっと身体が浮かび上がり、いつもより高く飛べた。
「どうしたんですか? シュン」
「いや、なんでもないよ」
この世界の物理法則が地球とまったく同じだと考えていた。でも、それは違うのかもしれない。
俺の身体能力が上がったんじゃなく、この世界の重力か何かが低いとも考えられる。それに、酸素も少し濃いような気がする。
高地トレーニングと似た効果で能力アップしたように錯覚していたのだとすれば、腑に落ちる。
そんなことを考えていると、リーゼは靴を脱いで足を確認していた。
俺はリーゼのしなやかな脚や足よりもその靴に注目する。試しにちょっとだけ持ち上げてみる。
「なんだこの靴は?」
「え?」
「溝が無いじゃないか。……しかも、衝撃を吸収する仕組みがない。それに、重すぎる」
リーゼは困ったような顔をしながら靴をジッと見る。
「そ、そうでしょうか? 買った時は高かったんですけど……」
「これはさすがに無いよ。こんな靴で歩いていたらリーゼの大事な足を痛めてしまう」
「そんな……!」
重さはこの際許すとしよう。しかし溝が無いと滑ってしまうし、衝撃を吸収できないと足に負担がかかる。長距離の移動では無視できない。
「ちょっとこの靴を預かるぞ」
「え? はい、わかりました」
リーゼから預かった靴をもう一度しっかり確認していく。
手に触れることで、なんとなく構造がわかってくる。
【錬金魔法】では魔力の構造を理解し、一部を改変するなどして組み合わせたり強化している。
魔法に比べれば簡易な靴の構造は簡単に理解できる。
魔法は、魔力を精密に組み上げている。物質も、言ってしまえば究極は元素の集合だ。
この元素を魔力と見立てることができれば、【錬金魔法】を使うことで物質の改良もできるかもしれない。まだ推測の域を出ないが、俺の勘がそう言っている。
そしてその勘は正しかった。
俺のイメージした通りに靴が新たな構造に組みあがっていく。
靴底に溝を入れるだけでは終わらない。バネのような機構を埋め込み、移動をアシストする機能も追加した。
材質をも変化させ、軽くて丈夫に仕上げる。
オマケに防水対策もしておこう。強酸にも溶けない加工を施しておく。
そして俺の作品は完成した。
表面を見ただけではあまり変化がないようにも見えるが、実際に履いて歩けばその効果が実感できるはずだ。
「リーゼ、試しにこいつを履いてちょっと歩いてみてくれ」
「わかりました!」
リーゼはすぐに俺が改良した靴を履くと、スタスタと歩き始めた。
ジャンプしたり、走ったりとその動きはバラエティ豊かだ。
「さっきよりもめちゃくちゃ履き心地が良いです! それに、前よりも動きが軽くなったような……!」
「そういう工夫をしたんだ。気に入ってもらえたのなら良かったよ」
「シュンは凄いです!」
大喜びではしゃぐリーゼ。
彼女を見ていたエルゼとエレナが俺に詰め寄る。
「あれは何なのだ!? 私のもなんとかしてくれ!」
「リーゼだけズルいわよっ! 私にも同じ魔法をかけてちょうだい!」
あれれ? ちょっと試しにつくってみただけなのだが、思いのほか評判が良かったらしい。
仕方ないな、今後の移動効率がアップするなら、それはとても良いことだ。
少々面倒だが引き受けるしかあるまい。
俺はエルゼとエレナから靴を預かると、リーゼと同じ構造に組み替えた。
軽くて丈夫で動きやすい現代式に。
連続でできるのも【魔力無限】のおかげで魔力が豊富にあるからだ。
このスキルには感謝してもしきれないな。
村を出発してここまででちょうど二十キロほどの距離を歩いたことになる。なかなかのハイペースだが、まだ目的地までの距離は果てしない。
その間の景色はほとんど変わらない。平坦な道だということは、川や山が無いのだ。石と草ばかりの代わり映えしない道を背景に進んでいく。
隣を歩いていたリーゼが突然止まった。
「足が痛いです……」
「ふむ、ではそろそろ休憩をとるとしようか」
リーゼが訴えたことをきっかけに、エルゼは休憩を決定した。
誰かが音を上げなければ休憩を取らないというシステムなのかもしれない。
効率が良いのか悪いのかちょっとよくわからないが、やっと休憩ができるということで俺はホッとしたというのが本音だ。
長時間の歩行でふくらはぎがちょっと痛い。
近くあった大きな岩に腰を落ち着ける。
「シュンは長距離の移動になれているのですか? 勇者の私よりも体力があって凄いです」
「俺は男だしそりゃリーゼより体力もあるさ」
……いや、よく考えてみると性別が男だからというだけで、帰宅部のオタクが現役の勇者よりも体力があるというのもおかしな話だ。
リーゼは納得顔だが、俺としては疑問が残る。もしかすると、これも転生した際に何らかの影響があったのかもしれない。
そういえば、この世界に来てから身体が軽い気がする。
精神的なものじゃなくて、本当に身体が軽い。
ちょっとジャンプしてみる。
ふわっと身体が浮かび上がり、いつもより高く飛べた。
「どうしたんですか? シュン」
「いや、なんでもないよ」
この世界の物理法則が地球とまったく同じだと考えていた。でも、それは違うのかもしれない。
俺の身体能力が上がったんじゃなく、この世界の重力か何かが低いとも考えられる。それに、酸素も少し濃いような気がする。
高地トレーニングと似た効果で能力アップしたように錯覚していたのだとすれば、腑に落ちる。
そんなことを考えていると、リーゼは靴を脱いで足を確認していた。
俺はリーゼのしなやかな脚や足よりもその靴に注目する。試しにちょっとだけ持ち上げてみる。
「なんだこの靴は?」
「え?」
「溝が無いじゃないか。……しかも、衝撃を吸収する仕組みがない。それに、重すぎる」
リーゼは困ったような顔をしながら靴をジッと見る。
「そ、そうでしょうか? 買った時は高かったんですけど……」
「これはさすがに無いよ。こんな靴で歩いていたらリーゼの大事な足を痛めてしまう」
「そんな……!」
重さはこの際許すとしよう。しかし溝が無いと滑ってしまうし、衝撃を吸収できないと足に負担がかかる。長距離の移動では無視できない。
「ちょっとこの靴を預かるぞ」
「え? はい、わかりました」
リーゼから預かった靴をもう一度しっかり確認していく。
手に触れることで、なんとなく構造がわかってくる。
【錬金魔法】では魔力の構造を理解し、一部を改変するなどして組み合わせたり強化している。
魔法に比べれば簡易な靴の構造は簡単に理解できる。
魔法は、魔力を精密に組み上げている。物質も、言ってしまえば究極は元素の集合だ。
この元素を魔力と見立てることができれば、【錬金魔法】を使うことで物質の改良もできるかもしれない。まだ推測の域を出ないが、俺の勘がそう言っている。
そしてその勘は正しかった。
俺のイメージした通りに靴が新たな構造に組みあがっていく。
靴底に溝を入れるだけでは終わらない。バネのような機構を埋め込み、移動をアシストする機能も追加した。
材質をも変化させ、軽くて丈夫に仕上げる。
オマケに防水対策もしておこう。強酸にも溶けない加工を施しておく。
そして俺の作品は完成した。
表面を見ただけではあまり変化がないようにも見えるが、実際に履いて歩けばその効果が実感できるはずだ。
「リーゼ、試しにこいつを履いてちょっと歩いてみてくれ」
「わかりました!」
リーゼはすぐに俺が改良した靴を履くと、スタスタと歩き始めた。
ジャンプしたり、走ったりとその動きはバラエティ豊かだ。
「さっきよりもめちゃくちゃ履き心地が良いです! それに、前よりも動きが軽くなったような……!」
「そういう工夫をしたんだ。気に入ってもらえたのなら良かったよ」
「シュンは凄いです!」
大喜びではしゃぐリーゼ。
彼女を見ていたエルゼとエレナが俺に詰め寄る。
「あれは何なのだ!? 私のもなんとかしてくれ!」
「リーゼだけズルいわよっ! 私にも同じ魔法をかけてちょうだい!」
あれれ? ちょっと試しにつくってみただけなのだが、思いのほか評判が良かったらしい。
仕方ないな、今後の移動効率がアップするなら、それはとても良いことだ。
少々面倒だが引き受けるしかあるまい。
俺はエルゼとエレナから靴を預かると、リーゼと同じ構造に組み替えた。
軽くて丈夫で動きやすい現代式に。
連続でできるのも【魔力無限】のおかげで魔力が豊富にあるからだ。
このスキルには感謝してもしきれないな。
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