Eランク特典【謙虚】をもらって異世界転生したら万能すぎた件 ~謙虚すぎて世界最強なのに自覚なし~
プロローグ:こんな異世界転生は普通じゃないですよね?
真っ白な空間で俺は突っ立っていた。
えーと、なんで俺こんなところに……。
「ようこそ死後の世界へ、佐々木浩司さん」
どこからか、声が聞こえてくる。
やがて白い空間の中に人影が見えてくる。
赤い髪の女。少し気が強そうだが、どこか神々しい見た目をしている。……というか、少し輪郭が光っている。上品に装飾された椅子に座って、俺を手招きしているらしい。
「えーと、君だれ?」
「私はルビア。炎の女神よ!」
ルビアはさらりと髪を撫で、
「そんなことよりも、あなたは死んでしまいました。一応聞きますが、死因を覚えていますか?」
俺はボーっとする頭を回転させ、思い出す。
「大体はな」
俺は虐められていた。俺が何をしたということはない。ヤンキーグループに目をつけられ、河川敷で毎日殴打されていた。虐めは次第にエスカレートし、思い出したくもないことを色々とさせられた。
俺が死んだ日――と言ってもついさっきのことだが――は金属バットで殴打された。当たり所が悪かったらしく、意識が遠のき、気づけばここに立っていたと言うわけだ。
「よろしい、そんな可哀想な人間に女神は慈悲をかけることにしました。あなたは日本で赤ん坊として生まれ変わるか、異世界で生まれ変わることを選択できます。……どうしますか?」
どこかで聞いた話だが、俺は異世界という単語に興味を惹かれた。
「異世界ってのはその……中世ヨーロッパ風の世界でモンスターと戦うとかそういうやつか?」
「日本人の少年って異世界に詳しすぎて面白くないわぁ……もうちょっと驚いてもいいじゃない?」
……と言われてもなあ。
異世界と言えばなんかゲーム的なそういう感じのイメージで楽しそうだ。
そして異世界転生と言えばお約束がある。
「それで、転生特典は?」
「へ?」
「ん?」
女神は「はあ?」みたいな顔をしてきた。
いや、俺の方が意味わかんねえよ。普通お詫びになんか超強い特典をくれるってのが定番じゃないのか?
「ハァ……また特典クレクレですか。転生自体が特典なのにまだ何かねだるんですか? あなた乞食ですか? 生きてて恥ずかしくないんですか? ……おっとごめんなさい、死んでたんだったわね」
こ、こいつ……。
俺のハートは崩壊寸前だぞ。女神とあろう者がこんな仕打ちをするなんてどうかしている。
「そんな目で私を見ないでよ。あげないとは言ってないでしょ? 仕方ないわねぇ」
ルビアはハァと、ため息をついて、電話帳みたいな厚さの本を取り出すと、俺に手渡した。
俺は両手で受け取ると、その重みに少し驚いた。
「仕方ないのであなたにはEランク特典をあげるわ。前世でもう少し善行を積んでおけば特典のランクも上がったんだけど、あなた迷惑かけてばかりだしねぇ」
「お、俺だって……」
「何かしたわけ?」
「いや……でも虐められてたんだからもう少しオマケしてくれても……とかさ?」
「もちろんその辺も十分加味しています。でも、十六歳で息子を亡くした両親の人に迷惑かけてますしねぇ。二人とも『なんで殺される前に気づけなかったのか』って泣いてるわよ?」
うっ……それを言われるときついな。
俺は最後まで誰にも相談せず、死ぬまで殴られた。俺があの時なにか行動を起こしていれば、変わったのだろうか。
「そういうわけで、この中から選んでね。できるだけ早く」
「わかった。……しかし数が多すぎて何を選べばいいのか……」
猫に好かれるスキル、バレにくい嘘を思いつくスキル、近隣の人とうまくやれるスキル……etc
どれもパッとしない。パンチに欠ける。
「Eランクの特典なんてどれも似たようなものよ。あれば便利な特典ばかりだからさっさと選んでしまいなさいな」
俺は分厚いスキルブックを眺めながら、大いに悩んだ。
だが……どれもショボいものばかりだった。こんなにたくさんあるんだからどれか一つくらい当たりがあってもいいのに。
もういい、ルビアの言う通り適当に決めてしまおう。
俺は適当なページを開き、たまたま最初に目に留まったスキルに決めた。
【謙虚】※ペナルティスキル
常時『謙虚』状態になる。各種特典を獲得する。
いまいちピンと来ないのだが、謙虚になる代わりに、ステータスが優遇されるらしい。よくわからないが謙虚になったとしてもデメリットなんてないんじゃなかろうか? ペナルティなしでスキルを得られる風にしか見えない。
早速ルビアに報告してスキルをもらうことにしよう。
「ふーん、ペナルティスキルね」
「なんだそれ」
「普通の特典はプラス補正になるスキルだけど、これはマイナス補正になる代わりに効果が大きいスキルよ。Eランクの中から破格のスキルだけど……」
「そうなのか、じゃあ早速お願いします!」
「ねえ、本当にそれでいいの? 後悔しない? 別のにしたほうが良いと思うけど……これは女神からの忠告よ」
……と言われてもなあ。他もパッとしないし、女神評価で破格の性能ならこれでいいだろう。
「これにするよ。後悔はない」
ルビアは何かを諦めたようにハァと溜息をつき、
「……じゃあ早速転生させるからあっち向いて」
ルビアの指示通り俺は回れ右した。
「そういえば、あの不良グループどうなりました? 俺を殺したのがバレて逮捕されたとか?」
「逮捕? されてないわよ」
「……まあ、そんなもんか」
日本での殺人事件がいくつあるのか知らないが、犯人が逮捕されない事件だってたくさんあるだろう。
「何を勘違いしているのか知らないけど、女神の鉄槌で彼らは死んだわよ?」
「は? 死んだ?」
「ええ、ちょっとムカついたから少し幸運値を調整したらバイクで事故ったりして全員死んだわ。無免許だったし当然の帰結ね」
マジですか……。しかしそう聞かされても胸がスッとすうことはなかった。俺は復讐など求めていなかったのだろう。
「じゃあ、転生させるわよ」
ルビアの言葉を最後に、俺は白い光に包まれていく――。
脳……はないから魂だろうか、声が聞こえる。
――特典獲得
【ステータス上昇:全種】
【魔力抵抗】
【魔力効率化】
【剣術スキル】
【鍛冶スキル】
【錬金術スキル】
【能力獲得可能性上昇】…………etc.
――ペナルティ有効化。【謙虚】
全てを聞き取ると、いつの間にか意識を失った。
気が付くと、転生していた。
赤ん坊スタートではなく、十六歳のこの身体で転生していた。
学生服姿のままの俺は、異世界では少し目立ってしまいそうだな。
そういえば、さっきなんか声が聞こえた気がするけど……気のせいかな。
「さーて、まずは村でも探そうか」
と、目の前に三人の女が倒れているところを見つけてしまった。
そのうちの一人は赤い髪の女神――ルビアの姿だった。
俺はびっくりしてルビアを叩き起こす。
「ちょ、ちょっとこれどういうことですか!?」
「ん、んーふぁあ……あれ、コージ? もう少しゆっくりしましょうよ」
「いや……っていうかなんで女神が異世界来てんの? ねえなんで!?」
「そりゃあ、コージがペナルティスキルなんて取るからでしょ」
え? ペナルティスキルってそういうもんなの? 全然知らなかったのだが。
「あと、ここに倒れてる二人は?」
青髪の女と、金髪の女が倒れている。
「青いのがマリンで黄色いのがシロナ――女神よ。当たり前でしょ?」
「もしかしてこの二人も異世界に来ちゃったわけ?」
「だってそれがペナルティだもの。じゃあ、これから養ってね」
「嘘つくな! そんなの書いてなかったぞ……!」
「書いてあったわよ! ほら、見てみなさい」
バンっと天界規約と書かれた書類を突き出すルビア。
改めて確認すると、隅の方に小さく『【謙虚】を選択した場合、女神が三人付属します』と書かれている。老眼の爺さんなら文字と識別できないくらい小さい。
「ちっさいわ! こんな大事なこともっと大きく書いたり口頭で説明するとかだな……」
「そんなに世の中甘くないのよ! 口頭では説明できないルールだから! 何度も確認したのに!」
「じゃ、じゃあもうどうしようもないのかよ!」
「そうよ、諦めなさい」
なんてことだ。
……俺の異世界生活はいきなり自由を奪われたようである。
えーと、なんで俺こんなところに……。
「ようこそ死後の世界へ、佐々木浩司さん」
どこからか、声が聞こえてくる。
やがて白い空間の中に人影が見えてくる。
赤い髪の女。少し気が強そうだが、どこか神々しい見た目をしている。……というか、少し輪郭が光っている。上品に装飾された椅子に座って、俺を手招きしているらしい。
「えーと、君だれ?」
「私はルビア。炎の女神よ!」
ルビアはさらりと髪を撫で、
「そんなことよりも、あなたは死んでしまいました。一応聞きますが、死因を覚えていますか?」
俺はボーっとする頭を回転させ、思い出す。
「大体はな」
俺は虐められていた。俺が何をしたということはない。ヤンキーグループに目をつけられ、河川敷で毎日殴打されていた。虐めは次第にエスカレートし、思い出したくもないことを色々とさせられた。
俺が死んだ日――と言ってもついさっきのことだが――は金属バットで殴打された。当たり所が悪かったらしく、意識が遠のき、気づけばここに立っていたと言うわけだ。
「よろしい、そんな可哀想な人間に女神は慈悲をかけることにしました。あなたは日本で赤ん坊として生まれ変わるか、異世界で生まれ変わることを選択できます。……どうしますか?」
どこかで聞いた話だが、俺は異世界という単語に興味を惹かれた。
「異世界ってのはその……中世ヨーロッパ風の世界でモンスターと戦うとかそういうやつか?」
「日本人の少年って異世界に詳しすぎて面白くないわぁ……もうちょっと驚いてもいいじゃない?」
……と言われてもなあ。
異世界と言えばなんかゲーム的なそういう感じのイメージで楽しそうだ。
そして異世界転生と言えばお約束がある。
「それで、転生特典は?」
「へ?」
「ん?」
女神は「はあ?」みたいな顔をしてきた。
いや、俺の方が意味わかんねえよ。普通お詫びになんか超強い特典をくれるってのが定番じゃないのか?
「ハァ……また特典クレクレですか。転生自体が特典なのにまだ何かねだるんですか? あなた乞食ですか? 生きてて恥ずかしくないんですか? ……おっとごめんなさい、死んでたんだったわね」
こ、こいつ……。
俺のハートは崩壊寸前だぞ。女神とあろう者がこんな仕打ちをするなんてどうかしている。
「そんな目で私を見ないでよ。あげないとは言ってないでしょ? 仕方ないわねぇ」
ルビアはハァと、ため息をついて、電話帳みたいな厚さの本を取り出すと、俺に手渡した。
俺は両手で受け取ると、その重みに少し驚いた。
「仕方ないのであなたにはEランク特典をあげるわ。前世でもう少し善行を積んでおけば特典のランクも上がったんだけど、あなた迷惑かけてばかりだしねぇ」
「お、俺だって……」
「何かしたわけ?」
「いや……でも虐められてたんだからもう少しオマケしてくれても……とかさ?」
「もちろんその辺も十分加味しています。でも、十六歳で息子を亡くした両親の人に迷惑かけてますしねぇ。二人とも『なんで殺される前に気づけなかったのか』って泣いてるわよ?」
うっ……それを言われるときついな。
俺は最後まで誰にも相談せず、死ぬまで殴られた。俺があの時なにか行動を起こしていれば、変わったのだろうか。
「そういうわけで、この中から選んでね。できるだけ早く」
「わかった。……しかし数が多すぎて何を選べばいいのか……」
猫に好かれるスキル、バレにくい嘘を思いつくスキル、近隣の人とうまくやれるスキル……etc
どれもパッとしない。パンチに欠ける。
「Eランクの特典なんてどれも似たようなものよ。あれば便利な特典ばかりだからさっさと選んでしまいなさいな」
俺は分厚いスキルブックを眺めながら、大いに悩んだ。
だが……どれもショボいものばかりだった。こんなにたくさんあるんだからどれか一つくらい当たりがあってもいいのに。
もういい、ルビアの言う通り適当に決めてしまおう。
俺は適当なページを開き、たまたま最初に目に留まったスキルに決めた。
【謙虚】※ペナルティスキル
常時『謙虚』状態になる。各種特典を獲得する。
いまいちピンと来ないのだが、謙虚になる代わりに、ステータスが優遇されるらしい。よくわからないが謙虚になったとしてもデメリットなんてないんじゃなかろうか? ペナルティなしでスキルを得られる風にしか見えない。
早速ルビアに報告してスキルをもらうことにしよう。
「ふーん、ペナルティスキルね」
「なんだそれ」
「普通の特典はプラス補正になるスキルだけど、これはマイナス補正になる代わりに効果が大きいスキルよ。Eランクの中から破格のスキルだけど……」
「そうなのか、じゃあ早速お願いします!」
「ねえ、本当にそれでいいの? 後悔しない? 別のにしたほうが良いと思うけど……これは女神からの忠告よ」
……と言われてもなあ。他もパッとしないし、女神評価で破格の性能ならこれでいいだろう。
「これにするよ。後悔はない」
ルビアは何かを諦めたようにハァと溜息をつき、
「……じゃあ早速転生させるからあっち向いて」
ルビアの指示通り俺は回れ右した。
「そういえば、あの不良グループどうなりました? 俺を殺したのがバレて逮捕されたとか?」
「逮捕? されてないわよ」
「……まあ、そんなもんか」
日本での殺人事件がいくつあるのか知らないが、犯人が逮捕されない事件だってたくさんあるだろう。
「何を勘違いしているのか知らないけど、女神の鉄槌で彼らは死んだわよ?」
「は? 死んだ?」
「ええ、ちょっとムカついたから少し幸運値を調整したらバイクで事故ったりして全員死んだわ。無免許だったし当然の帰結ね」
マジですか……。しかしそう聞かされても胸がスッとすうことはなかった。俺は復讐など求めていなかったのだろう。
「じゃあ、転生させるわよ」
ルビアの言葉を最後に、俺は白い光に包まれていく――。
脳……はないから魂だろうか、声が聞こえる。
――特典獲得
【ステータス上昇:全種】
【魔力抵抗】
【魔力効率化】
【剣術スキル】
【鍛冶スキル】
【錬金術スキル】
【能力獲得可能性上昇】…………etc.
――ペナルティ有効化。【謙虚】
全てを聞き取ると、いつの間にか意識を失った。
気が付くと、転生していた。
赤ん坊スタートではなく、十六歳のこの身体で転生していた。
学生服姿のままの俺は、異世界では少し目立ってしまいそうだな。
そういえば、さっきなんか声が聞こえた気がするけど……気のせいかな。
「さーて、まずは村でも探そうか」
と、目の前に三人の女が倒れているところを見つけてしまった。
そのうちの一人は赤い髪の女神――ルビアの姿だった。
俺はびっくりしてルビアを叩き起こす。
「ちょ、ちょっとこれどういうことですか!?」
「ん、んーふぁあ……あれ、コージ? もう少しゆっくりしましょうよ」
「いや……っていうかなんで女神が異世界来てんの? ねえなんで!?」
「そりゃあ、コージがペナルティスキルなんて取るからでしょ」
え? ペナルティスキルってそういうもんなの? 全然知らなかったのだが。
「あと、ここに倒れてる二人は?」
青髪の女と、金髪の女が倒れている。
「青いのがマリンで黄色いのがシロナ――女神よ。当たり前でしょ?」
「もしかしてこの二人も異世界に来ちゃったわけ?」
「だってそれがペナルティだもの。じゃあ、これから養ってね」
「嘘つくな! そんなの書いてなかったぞ……!」
「書いてあったわよ! ほら、見てみなさい」
バンっと天界規約と書かれた書類を突き出すルビア。
改めて確認すると、隅の方に小さく『【謙虚】を選択した場合、女神が三人付属します』と書かれている。老眼の爺さんなら文字と識別できないくらい小さい。
「ちっさいわ! こんな大事なこともっと大きく書いたり口頭で説明するとかだな……」
「そんなに世の中甘くないのよ! 口頭では説明できないルールだから! 何度も確認したのに!」
「じゃ、じゃあもうどうしようもないのかよ!」
「そうよ、諦めなさい」
なんてことだ。
……俺の異世界生活はいきなり自由を奪われたようである。
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