世界に裏切られた勇者は二度目の世界で復讐する

美浜

第9話  伝説の魔剣

「あ、そうだ。えっと······俺はなんて呼べばいい? さすがに椿はよくないよな」

「ううん。椿でいいよ。その方がやりやすいでしょ?」

「そっか。じゃあ椿、早速で悪いんだが一つお願いできるか?」

「私にできることならね」

「よし、なら───」


俺の頼み事を聞いた椿はすぐさま駆け出していった。




















椿がある場所へ向かっている間。
俺は戦力を増強するべく街の近くの森までやって来ていた。


「ここだな」


俺の目的地はこの森の奥に存在している小さな神殿だ。
ぼろぼろで壊れかけの神殿は今では誰にも認識されていないだろうが、ここにはとても重要なものが眠っていることを俺は知っている。
念のため周囲を警戒しつつ森の奥に進む。


所々崩れたかつては神殿であったであろう柱、苔も生えていて長年放置されていたのがわかる。

ここに眠っているもの、それは最高クラスの力を秘めた魔剣だ。

ただし誰にでも手に入れることができるわけではなく、魔剣自身に認められなくてはならない。
数々の腕に自信のあるものが挑んだが全滅だったらしい。

失敗した者の中には命を落とした者もいたらしい。
それゆえ、魔剣に挑む者は減っていきいつしかその存在は忘れ去られた。

俺が知っているのは前の世界である人に教えてもらったからである。


「静かに眠りし古の魔剣よ。我の召喚に応じその姿を現せ!」


呼び出すのは簡単。
ここからが正念場である。

しばらくすれば魔剣が現れ、一戦交えてそこで自分の実力を剣に認めさせる。
それで俺は魔剣を手にすることができる······はずだった。


しかし、ここで予想外のことが起きた。
しばらくすると現れたのは剣ではなく、幽霊のように体が透き通って見える少女であった。


「私はエスト。全てを穿つ剣。あなたの名前は?」


この展開は俺の知るものではない。
けれど黙っていては何も始まらない。


「俺は、サトル。あんたは魔剣······でいいのか?」

「合っていますよ。けれど今のあなたには私を使う資格はありません。残念ですが出直してください」

「なっ。資格ってなんだよ? そんなの前は無かったはずだ!」

「前? 安心してください。あなたには資格を得る資格があります。資格を手にしたらもう一度ここへ来てください。そう遠い日ではないはずです」

「資格の資格? なんだよそれ。俺にはお前の力が必要なんだ! 剣の実力なら自信あるぞ!」

「いえ、剣の実力がどうこうではなくあなたはまだ資格を持っていないのです。それではまた」


すうっっと空気に溶けるように少女は消えていった?


「資格? 資格ってなんだよ? 魔剣がなきゃこれからの作戦に賭けの要素が増えちまうじゃねぇか」


やるせない気持ちを近くの木にぶつける。
けれどやはり俺のステータスでは殴るだけで木を倒すことなどできるはずもなく、拳にじーんと痛みが広がるのみだった。


どうしようもないので予定よりも早いが椿との集合場所に向かう。
そこには既に椿の姿があり頼んでいたことの報告を受け、最初の復讐を果たすべく最初の一手を打ちにいった。

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