チート級能力は学園では封印します。

紫水シズ

12

 学園からバスに乗って数十分。
 ここは学園が所有する遊園地で、『帝桜パーク』というらしい。
 名前はあれだが、外観は遊園地によく見られるようなカラフルな遊戯施設や建物が多く並び可愛らしい雰囲気になっていて、お子様や家族、学生など幅広い層を対象としているようだ。
 施設には見たことないようで見たことあるようなキャラクターも使われており、この遊園地は大丈夫なのかと心配になる。


 しかし以外にも園内はかなり賑わっているようで、地図を見ればかなりの施設があるようだがどれも列ができるほどだ。


「よし、じゃあ最初は──。」


「私はあれに乗りたいぞ!」


 楓の言葉をさえぎって純子が指差したのは、ジェットコースターだった。


「いきなりか……。」


「なんだ、怖いのかい?弥生くーん?」


「望むところだ……。」


 純子に煽られ静かに闘志を燃やした翔太は、純子と二人でジェットコースターに向かって歩いていってしまった。


「ちょっと二人とも!」


 あとを追いかけて行った楓に皆続いていった。


 結局最初はジェットコースターに乗ることになり、列の最後尾に並んだ。


「優くん、大丈夫?」


 隣で落ち着かない様子の優に蒼は話しかけた。


 「う、うん……。僕ジェットコースター乗るの初めてだから……。」


「そうなんだ。無理しないでもいいと思うよ。」


「優はジェットコースター初めてか。そうかそうか。ならばぜひ、私は優くんの初めてが欲しい!」


 二人の会話を聞いていた純子が突然会話に割り込んできた。
 それはジェットコースターのことだろうな?と蒼は思ったが、優は華麗に無視を決め込んだ。


「大丈夫だよ。一回乗ってみたかったんだ。」


 そう言って優しい笑みを浮かべた。


 純子は優に無視されたこととその笑顔に悶ているが、誰も相手にしていない。
 列は長くなく、並び始めて数分で順番が回ってきた。


 シートに座りバーが降りてくる。
 放送が流れた後、コースターはゆっくりと進み始めた。
 後ろ向きの重力を全身で受けながらコースターは最初の大きな山を登っていった。
 そして頂上に到達するやいなや、重力は前方に切り替わり登りきったその高さから一気に降下していく。
 強い風と普段味わうことのない浮遊感に酔いながら、全員が悲鳴をあげた。


 体を振り回されながらもスタート地点に戻りコースターから降りると、皆乗るときとは違って髪が乱れまくっていた。


「あははは! なんだ瑞穂その髪型!」


 瑞穂は班の中で一番髪が長く、スタート地点まで戻ったときに一番髪が荒ぶっていた。


「う、うるさい純子! 純子も似たようなものじゃない!」


 瑞穂は恥ずかしそうに頭を撫でて髪を直しながら言った。
 純子の髪もそれなりの長さで、暴風に晒された長髪は荒れまくっていた。


「おい、優が……。」


「優くん! しっかり!」


 翔太が指差した方で楓が優の方を掴み揺さぶっていた。
 優は真っ青な顔色をして、揺らされながらただ渇いた声で笑っていた。


 優の様子を見てしばらく休んだ後、班はアトラクションを回った。
 回るコーヒーカップやゴーカート、空中ブランコに迷路。
 それらを回ると、ちょうど昼飯時となっていた。


「そろそろお昼にしましょうか。」


「ちょうどこのあたりがフードコートみたいだし、いいんじゃないか……。」


「私ここ食べたい!」


 言い出したのはまたもや純子だった。


「他のみんなは何かない?ないなら純子ちゃんが行きたい場所に行くけど──。」


 楓が言うと、ゆっくりと瑞穂が手を挙げた。


「私ここが食べたいな……。」


 片手に持っていた園内のマップを広げ、みんなに見えるように指差した。
 そこは明るい雰囲気で、料理はこの遊園地にちなんだ少し変わったデザインの料理が出される店だった。


「うわっ! この料理見て、超かわいいじゃん! 私もこの店がいい!」


 園内のキャラクターの見た目の料理を見て、純子も気が変わったらしい。
 楓も目をキラキラさせて写真を見ている。
 やはりこういうのは女子のほうが食いつくのだろうか。


「じゃあそこで決まりだな……。」


「そこの角を曲がったところみたいだね。」


 蒼が指を指すと、純子は優を拉致して先頭を歩き出し、その後ろを残りのメンバーがついていく今日何度目かわからない見慣れた陣形になった。


 角を曲がるとすぐに店は見え、そこからは外にいても料理の匂いが漂い、皆の空腹を加速させた。
 明るくカラフルな建物に、窓から見える内装も可愛らしい。


 中に入って席に座りメニューを広げると、先程の写真以外にもたくさんの凝った料理が写っていた。
 皆目を輝かせながらメニューを見ていると、聞きなれた声が蒼の名前を呼んだ。


「四葉じゃねえか。」


 そこには純也とその班のメンバーがいた。
 こういうのもなんだが、純也の不良っぽいイメージとこの店の可愛らしいイメージは、ある意味合わせてはいけない組み合わせのような気がする。


「何しに来た……。」


 席を立ち上がり翔太は蒼と純也の間に割って入った。
 純也と蒼が以前のような関係ではないということは愛羅以外は知らないこと。
 翔太も他のメンバーもここで騒ぎにならぬようにしているのだろう。


「ああ? 偶然会ったダチに声かけちゃ悪いかよ。」


「それが友人と呼べる関係なら文句はない……。」


「ちょっと、ここで騒ぎを起こさないでよ二人とも。」


 喧嘩腰の二人にしっかりものの班長は、念を押すと同時に二人を抑えようとする。


「翔太くん、大丈夫だよ。純也くんはそんなことしないから。」


「蒼、だがこいつは前科があるからな……。」


「大丈夫だから。」


 蒼の真剣な表情に翔太は仕方なく引き下がり、もといた自分の席に再び腰を下ろした。
 周りがほっと胸を撫で下ろすと、純也は蒼の隣の空いた席に腰を下ろした。
 張り詰めた空気はまだ変わらないが、蒼が純也に話しかけると少しずつその空気も緩やかになっていった。


「純也くん自分の班は?」


「それがよ、安嶋の野郎が一人ではしゃぎやがって迷子になりやがったんだ。まあもう見つかったんだがよ。」


 安嶋はクラスでいつも馬鹿騒ぎをしてよく教師に怒られている男で、一言で表すと天然バカである。
 その話を聞いた全員が、入園してテンションが上がり、一人で園内の奥の方へ消えていったのだろうという想像がついた。


「それは最難だったね。」


 話していると、そこへ純也の班の班長である女性がやってきた。


「宇堂、何をしている。さっさと帰ってこい。」


「げっ! 西条……。」


 低い声で純也に強気に声をかけた黒髪美人は、『西条さいじょう 春香はるか』である。
 クラス内では瑞穂の影に隠れ目立ってはいないが、クールな性格にかなりの美人でまさにクールビューティーという言葉がふさわしい女性だ。
 実は、男子の間では瑞穂の次に人気なのだが、その性格ゆえに誰も声をかけられないでいる。


「さっさと班に戻れ。」


「痛てっ! 痛てててててっ!!」


 純也は春香に耳を引っ張られながら連れて行かれてしまった。
 おそらく、クラスで純也に対してあそこまで強気にいける女子は彼女くらいだろう。
 いやもしかすると、男子を含めても彼女だけかもしれない。


「西条さんは相変わらずみたいね。」


 楓が苦笑いで班に戻る二人を見送っていた。


「でも、ああ見えて結構優しいんだよ。」


 そう言ったのは瑞穂だった。
 知ったような口ぶりだが、瑞穂が春香といるところなど蒼は見たことがなかった。
 いつも誰かと一緒にいてクラスの誰にでも明るく接する瑞穂と、誰にでもきつくあたりいつも一人の春香が一緒にいるところなど想像もつかないが……。


「夜空さんって、西条さんと仲よかったっけ?」


「よく遊んだりするよ。この前も休みの日に春香と一緒にケーキ食べに行ったんだ。」


 純子の問いに瑞穂が答えると、皆以外な組み合わせに言葉を失った。
 あの春香がケーキなどという可愛らしいものを口にしていることにも驚きだったが、それ以上に誰も近づくことのできなかった彼女を瑞穂は普通に呼び捨てにしていることにおどろいていた。


(瑞穂さんと西条さんが仲良かったなんて……以外だ……。)

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