チート級能力は学園では封印します。
9
午後二時。随分と寝てしまったようだ。
ベッドから抜け出し、下の階の食堂へと降りた。
「……まだ帰ってないのか。」
午前中に昼食の買い出しに出た瑞穂だったが、いくら街まで時間がかかるとはいえ遅すぎる。
心配になった蒼は瑞穂の後を追うことにした。
※※※
蒼が目を覚ますより少し前。
学園近くのスーパーで瑞穂は昼食の食材を買い、帰宅する途中だった。
「今日のお昼はオムライス。これで蒼くんも私に夢中よね。」
クラスのアイドルで、今や学年内でもその名を知るものはいないほどの有名人となっていた瑞穂だが、そんな超美少女とは思えないような不気味な笑みを浮かべていた。
「あっれ〜? もしかして夜空さん?」
「あなたたちは……。」
「同じクラスの三波だよ。覚えてる?」
そこにいたのはクラスのギャルである『三波 愛羅』だった。
その隣にも二人のギャル女子が並んでいたが、顔に見覚えがない。おそらくは他のクラスの生徒だろう。
「もちろん覚えてるわよ。」
「よかった〜。ちょ〜うれし〜。」
普段通りに振る舞ってはいるが、瑞穂は愛羅が苦手だった。
軽い性格で拒否反応を起こすような言葉遣い。対して話したこともないのにこの馴れ馴れしさ。
それが瑞穂にとっては何を考えているのかわからず恐怖すら感じた。
この笑顔も、瑞穂にとっては何か裏があるようにしか見えなかった。
「いまからうちらオケりにいくんだけど〜、夜空さんも一緒行こ〜よ〜。」
「いや、私は……──。」
「いいねそれ〜。私も夜空さんと友達になりた〜い。」
瑞穂の言葉になど聞く耳を持たず、三人のギャルに瑞穂は連行された。
(参ったなあ……。カラオケ苦手なんだけど……。蒼くんのご飯も作らないといけないのに。)
このあたりは学園に近く、様々なショップやアミューズメント施設などが立ち並び、若者が生活するのに事困ることはないほど充実した区画だ。
カラオケ店など少し歩けばいくらでもあるのだが、何故か愛羅たちは街から遠ざかり、人の少ない方へ少ない方へと足を進めていた。
気づけば人一人通らない路地、三人は歩みを止めた。
「あの……愛羅さ──!!?」
不審な愛羅に尋ねようとしたとき、瑞穂のすぐ後ろの細い路地裏から手が伸び、口をふさがれ引きずり込まれた。
「噂通り、いや噂以上の女だな。」
そこには、瑞穂や愛羅たちより少し大人びた容姿の男が四人いた。
しかし、その制服は帝桜学園のそれであった。
おそらくは帝桜学園の二年、もしくは三年の生徒。
言葉を発した男は後ろから瑞穂の口と腕を抑え、瑞穂の自由を封じている。
その状態の瑞穂に愛羅はゆっくりと歩み寄り話しかけた。
「夜空さ〜ん。あんた最近調子乗ってんじゃない? クラスの奴らに信頼されてて、男にちょっとちやほやされてるからってさ〜。あたしらのこと、見下してない?」
口をふさがれた瑞穂は、必死に首を横に振った。
しかし愛羅はそれを見て笑うと、瑞穂の制服の前を引きちぎるように開いた。
糸が切れる音と共に、前を止めていたボタンが弾けとんだ。
瑞穂は必死に抵抗するが、男たちの力は強く、逃げることはできない。
愛羅たちはそれを見て高笑いを決め込んでいる。
「あたしらのこと見下した罰。先輩たちに、いっぱい可愛がってもらってね〜☆」
「そんじゃ、品定めといくか。」
男たちは、瑞穂の体を拘束したまま瑞穂のシャツの中に手を伸ばし始めた。
男たちの手が体中を這う感覚に吐き気を催した。
嗚咽を繰り返す瑞穂に、拘束していた男はつい口もとから手を離した。
その隙に自分の腕を掴んだ男に噛みつき、必死に抵抗しようとした。
体の自由を取り戻し、口の中に血の味に耐えられず嘔吐しながらも全力で逃げた。
しかしもう一人の男に行く手を阻まれ、噛みつかれた男は怒りの表情を浮かべている。
恐怖で助けを呼ぶ声さえ出ない。
そもそもこのあたりはめったに人が通らず、叫んだところで誰かが来てくれる保証はない。
偶然にも誰かが通りがかったとして、たまたま通りがかった人間が勝てるような相手には見えなかった。
噛みつかれた男は怒りに身を任せ、瑞穂の頬を殴った。
そして、続けて体中を殴り、瑞穂はそのまま気を失い地に伏した。
「おいおい誠也、その変にしとけよ。せっかくの上玉が傷だらけだぜ。」
「悪い。ついムカついちまってよ。」
仲間の呼びかけによりわれに返った誠也という男は、倒れた瑞穂のシャツのボタンを外し始めた。
「うっひょ〜! こりゃたまんねえな!」
「愛羅といい勝負なんじゃねえか?」
「私のほうがでかいわよ!」
男たちは瑞穂の体に興奮を隠しきれない様子で、愛羅は手にビデオカメラを持って撮影をしていた。
誠也が瑞穂の下着に手をかけようとしたとき、背後から立てかけられた鉄パイプが倒れる音がした。
「誰だ!」
そこから出てきたのは、身長はそれなりだが特に目立った特徴もないおとなしそうな少年だった。
「誰だてめえ……。」
「四葉蒼……!」
愛羅がそう呼んだ少年は、倒れた瑞穂に気がつくと男たちを睨みつけた。
愛羅は蒼に歩みより、自分より高い頭を軽く叩いた。
「あら四葉くん。何しに来たのかな〜?」
「なんだ、てめえの知り合いか?」
後ろで座りこんだ男たちのリーダーであろう誠也が愛羅に問う。
「クラスメイト。この女の味方よ。」
「ほう。つまりこいつも、おもちゃにしていいってことだよな?」
誠也が涼と呼びかけると、男たちの中で最もがたいのいい男が前へ出た。
手には立てかけられていた鉄パイプを取り、首をならしている。
「悪いが手加減はしねえぞ。」
静かにそう言うと、その大きな体のせいで玩具にさえ見える鉄パイプ。
それを素早く振りかぶると、軽々と振り下ろした。
そのいともたやすく振り下ろされた鉄パイプは、銀色の光を放ち蒼をめがけて綺麗な弧を描いた。
しかし、これまたいともたやすくその光は輝きを失い、描かれた弧は姿を消した。
振り下ろされた鉛の棒は蒼の右手の平に納まっていた。
パイプは蒼の手のところで曲がり、涼が動かそうとしてもピクリとも動かない。
蒼は顔を上げると、光の宿らない目で睨みつけ、そこにいた七人に静かに言葉を叩きつけた。
「──もう……謝っても許さない……。」
ベッドから抜け出し、下の階の食堂へと降りた。
「……まだ帰ってないのか。」
午前中に昼食の買い出しに出た瑞穂だったが、いくら街まで時間がかかるとはいえ遅すぎる。
心配になった蒼は瑞穂の後を追うことにした。
※※※
蒼が目を覚ますより少し前。
学園近くのスーパーで瑞穂は昼食の食材を買い、帰宅する途中だった。
「今日のお昼はオムライス。これで蒼くんも私に夢中よね。」
クラスのアイドルで、今や学年内でもその名を知るものはいないほどの有名人となっていた瑞穂だが、そんな超美少女とは思えないような不気味な笑みを浮かべていた。
「あっれ〜? もしかして夜空さん?」
「あなたたちは……。」
「同じクラスの三波だよ。覚えてる?」
そこにいたのはクラスのギャルである『三波 愛羅』だった。
その隣にも二人のギャル女子が並んでいたが、顔に見覚えがない。おそらくは他のクラスの生徒だろう。
「もちろん覚えてるわよ。」
「よかった〜。ちょ〜うれし〜。」
普段通りに振る舞ってはいるが、瑞穂は愛羅が苦手だった。
軽い性格で拒否反応を起こすような言葉遣い。対して話したこともないのにこの馴れ馴れしさ。
それが瑞穂にとっては何を考えているのかわからず恐怖すら感じた。
この笑顔も、瑞穂にとっては何か裏があるようにしか見えなかった。
「いまからうちらオケりにいくんだけど〜、夜空さんも一緒行こ〜よ〜。」
「いや、私は……──。」
「いいねそれ〜。私も夜空さんと友達になりた〜い。」
瑞穂の言葉になど聞く耳を持たず、三人のギャルに瑞穂は連行された。
(参ったなあ……。カラオケ苦手なんだけど……。蒼くんのご飯も作らないといけないのに。)
このあたりは学園に近く、様々なショップやアミューズメント施設などが立ち並び、若者が生活するのに事困ることはないほど充実した区画だ。
カラオケ店など少し歩けばいくらでもあるのだが、何故か愛羅たちは街から遠ざかり、人の少ない方へ少ない方へと足を進めていた。
気づけば人一人通らない路地、三人は歩みを止めた。
「あの……愛羅さ──!!?」
不審な愛羅に尋ねようとしたとき、瑞穂のすぐ後ろの細い路地裏から手が伸び、口をふさがれ引きずり込まれた。
「噂通り、いや噂以上の女だな。」
そこには、瑞穂や愛羅たちより少し大人びた容姿の男が四人いた。
しかし、その制服は帝桜学園のそれであった。
おそらくは帝桜学園の二年、もしくは三年の生徒。
言葉を発した男は後ろから瑞穂の口と腕を抑え、瑞穂の自由を封じている。
その状態の瑞穂に愛羅はゆっくりと歩み寄り話しかけた。
「夜空さ〜ん。あんた最近調子乗ってんじゃない? クラスの奴らに信頼されてて、男にちょっとちやほやされてるからってさ〜。あたしらのこと、見下してない?」
口をふさがれた瑞穂は、必死に首を横に振った。
しかし愛羅はそれを見て笑うと、瑞穂の制服の前を引きちぎるように開いた。
糸が切れる音と共に、前を止めていたボタンが弾けとんだ。
瑞穂は必死に抵抗するが、男たちの力は強く、逃げることはできない。
愛羅たちはそれを見て高笑いを決め込んでいる。
「あたしらのこと見下した罰。先輩たちに、いっぱい可愛がってもらってね〜☆」
「そんじゃ、品定めといくか。」
男たちは、瑞穂の体を拘束したまま瑞穂のシャツの中に手を伸ばし始めた。
男たちの手が体中を這う感覚に吐き気を催した。
嗚咽を繰り返す瑞穂に、拘束していた男はつい口もとから手を離した。
その隙に自分の腕を掴んだ男に噛みつき、必死に抵抗しようとした。
体の自由を取り戻し、口の中に血の味に耐えられず嘔吐しながらも全力で逃げた。
しかしもう一人の男に行く手を阻まれ、噛みつかれた男は怒りの表情を浮かべている。
恐怖で助けを呼ぶ声さえ出ない。
そもそもこのあたりはめったに人が通らず、叫んだところで誰かが来てくれる保証はない。
偶然にも誰かが通りがかったとして、たまたま通りがかった人間が勝てるような相手には見えなかった。
噛みつかれた男は怒りに身を任せ、瑞穂の頬を殴った。
そして、続けて体中を殴り、瑞穂はそのまま気を失い地に伏した。
「おいおい誠也、その変にしとけよ。せっかくの上玉が傷だらけだぜ。」
「悪い。ついムカついちまってよ。」
仲間の呼びかけによりわれに返った誠也という男は、倒れた瑞穂のシャツのボタンを外し始めた。
「うっひょ〜! こりゃたまんねえな!」
「愛羅といい勝負なんじゃねえか?」
「私のほうがでかいわよ!」
男たちは瑞穂の体に興奮を隠しきれない様子で、愛羅は手にビデオカメラを持って撮影をしていた。
誠也が瑞穂の下着に手をかけようとしたとき、背後から立てかけられた鉄パイプが倒れる音がした。
「誰だ!」
そこから出てきたのは、身長はそれなりだが特に目立った特徴もないおとなしそうな少年だった。
「誰だてめえ……。」
「四葉蒼……!」
愛羅がそう呼んだ少年は、倒れた瑞穂に気がつくと男たちを睨みつけた。
愛羅は蒼に歩みより、自分より高い頭を軽く叩いた。
「あら四葉くん。何しに来たのかな〜?」
「なんだ、てめえの知り合いか?」
後ろで座りこんだ男たちのリーダーであろう誠也が愛羅に問う。
「クラスメイト。この女の味方よ。」
「ほう。つまりこいつも、おもちゃにしていいってことだよな?」
誠也が涼と呼びかけると、男たちの中で最もがたいのいい男が前へ出た。
手には立てかけられていた鉄パイプを取り、首をならしている。
「悪いが手加減はしねえぞ。」
静かにそう言うと、その大きな体のせいで玩具にさえ見える鉄パイプ。
それを素早く振りかぶると、軽々と振り下ろした。
そのいともたやすく振り下ろされた鉄パイプは、銀色の光を放ち蒼をめがけて綺麗な弧を描いた。
しかし、これまたいともたやすくその光は輝きを失い、描かれた弧は姿を消した。
振り下ろされた鉛の棒は蒼の右手の平に納まっていた。
パイプは蒼の手のところで曲がり、涼が動かそうとしてもピクリとも動かない。
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