チート級能力は学園では封印します。
5
下校のチャイムがなり、それを合図に生徒たちは教室から去っていくが、蒼は未だに教室の端の席でじっとしていた。今日の午前、健康診断が行われたあとに蒼はクラスのヤンキーの、名前は確か純也といっただろうか。彼に、一年校舎の屋上に来るように言われていた。というより、完全に呼び出しをくらっているのである。
この学園では校舎の屋上はどの校舎も鍵がかけられ立入禁止とされている。誰かに屋上へ行くのを見られ、教師にチクられでもしたら何かしらの罰は避けられないだろう。だからと言って、その場所に足を運ばなければ、後日彼らに何をされるかわかったものではない。
屋上へ行くことを決心すると、蒼は椅子から腰を上げ机の横に掛けたカバンを持って教室をあとにした。蒼の教室は校舎の一階に位置し、その上が呼び出された屋上である。まさか入学早々にヤンキーから呼び出しを食らうとは、入学前には想像打にしていなかった事態だ。足取り重く階段を登り、屋上の扉の前までやってきた。普段は鍵をされているはずの扉だが、ドアノブをひねるとその重い鉄扉はいとも容易く開かれた。そしてそこには、教室で蒼に絡んできた三人が待ち構えていた。
「よお、四葉。よく逃げずに来たな」
にやにやと笑みを向ける三人に苦笑いをうかべつつ、「来なかったらもっとしつこくなるくせに」と内心吐きすてていた。
「なにニヤついてんだてめえ!」
「なめてんのか? あぁ?」
「まあ落ち着けお前ら。」
苦笑いを浮かべていた蒼を見て純也の両脇の二人は怒りを顕にした。それを純也が抑えると、二人はすぐに黙りこんだ。こんななりをしているが、瑞穂とはまた別の、純也にもカリスマ性と呼べる何かがあるのだろう。しかし、今はそんなことは関係ない。蒼にそんなもので優しさを振りまくような男のはずがないからだ。純也は一歩ずつ前に出て蒼に近づいてくる。
「お前、随分と夜空と仲が良さそうだな」
「いや……仲良くは……」
「そうか?そうは見えねえぞ? まるで見せつけて俺らを見下してるみてえだ……」
蒼からすると仲がよい自覚もなく、実際そうではないので本当のことを言ったまでなのだが、彼らからすると他の男子を見下しているようにしか思えないようだ。「お前の目は節穴か!」と言いたいところだが、そんなことを言えば確実にぶっ飛ばされる。純也は突然蒼の胸ぐらをつかみ、低い声で威圧した。
「お前はもう夜空に近づくな。あんま調子乗ってっと、ただじゃおかねえからな」
そのままお互いに固まっていると、誰も来ないはずの屋上の扉が開かれた。それは激しく髪を見出して息をきらした瑞穂だった。
「あなた達何してるの!」
「ちっ……。夜空か……」
瑞穂の姿を確認すると、純也は掴んでいた蒼の胸ぐらを離した。それと同時に瑞穂が駆け寄り、二人の間に割り込んで蒼をかばった。
「蒼くんに何したの!」
「人聞きが悪いな。何もしちゃいねえよ。なあ四葉」
純也を睨む瑞穂の後ろで、蒼は座りこみ黙っていた。純也が蒼に視線を移すと、蒼は純也から視線をそらした。
「お前ら、行くぞ。……おい四葉、俺が言ったこと忘れんなよ」
扉に向いて歩き出すと、純也はにやりと笑みを浮かべ屋上を去っていった。瑞穂はそれを見送ると蒼に寄り添った。
「蒼くん大丈夫? 何かされなかった?」
「大丈夫。何もされてないよ。それよりどうしてここがわかったの?」
瑞穂を安心させるために笑顔を作り、その後なぜここがわかったのかという疑問を尋ねた。
「ちょっと松風先生に呼ばれてて、帰ろうとしてたらまだ蒼くんの靴があったから。それでクラスの男子に蒼くんがどこにいるか知らないか聞いたの……」
瑞穂がなぜここにいることがわかったのかは理解できた。男子なら瑞穂に聞かれれば、挙動不審になりながらもついつい教えてしまうだろう。クラスのヤンキーに屋上に呼び出されたことも。正直瑞穂が来てくれたことは助かった。しかし今後、不用意に瑞穂に近づくことはできなさそうである。そんなことをすればまたあの不良どもがめんどくさく絡んでくるに違いない。寮がおんなじということもあり、完全に関わらないことはほぼ不可能だろうが、そのことを黙って学園内だけでも彼女を避けていれば問題はないだろう。瑞穂に心配をかけないためにも、蒼はこのことは他言しないことにした。
「ごめんね瑞穂さん、心配かけて。僕は先に帰ってるね」
「え? でも、蒼くん……」
蒼は立ち上がると、瑞穂に見向きもせずすぐに扉へ向かい屋上をあとにした。瑞穂には迷惑をかけられないし純也たちに絡まれるのもごめんだ。置いてけぼりをくらった瑞穂は、いつものごとく自分に振り向かない蒼に腹を立てつつも蒼のことを心配していた。
「蒼くん……。私が守ってあげないと! ……でも、もう少し私に見とれてもいいと思うんだけど! 蒼くんのためだけにここまで来たのに! もしかして蒼くん、照れてるのかな?」
たくましい想像力で照れる蒼を妄想し、幸せそうに笑う瑞穂。相変わらずナルシストで情緒不安定である。瑞穂を避けようとする蒼とは裏腹に、どうやら瑞穂は蒼の助けになることを選んだようだ。
この学園では校舎の屋上はどの校舎も鍵がかけられ立入禁止とされている。誰かに屋上へ行くのを見られ、教師にチクられでもしたら何かしらの罰は避けられないだろう。だからと言って、その場所に足を運ばなければ、後日彼らに何をされるかわかったものではない。
屋上へ行くことを決心すると、蒼は椅子から腰を上げ机の横に掛けたカバンを持って教室をあとにした。蒼の教室は校舎の一階に位置し、その上が呼び出された屋上である。まさか入学早々にヤンキーから呼び出しを食らうとは、入学前には想像打にしていなかった事態だ。足取り重く階段を登り、屋上の扉の前までやってきた。普段は鍵をされているはずの扉だが、ドアノブをひねるとその重い鉄扉はいとも容易く開かれた。そしてそこには、教室で蒼に絡んできた三人が待ち構えていた。
「よお、四葉。よく逃げずに来たな」
にやにやと笑みを向ける三人に苦笑いをうかべつつ、「来なかったらもっとしつこくなるくせに」と内心吐きすてていた。
「なにニヤついてんだてめえ!」
「なめてんのか? あぁ?」
「まあ落ち着けお前ら。」
苦笑いを浮かべていた蒼を見て純也の両脇の二人は怒りを顕にした。それを純也が抑えると、二人はすぐに黙りこんだ。こんななりをしているが、瑞穂とはまた別の、純也にもカリスマ性と呼べる何かがあるのだろう。しかし、今はそんなことは関係ない。蒼にそんなもので優しさを振りまくような男のはずがないからだ。純也は一歩ずつ前に出て蒼に近づいてくる。
「お前、随分と夜空と仲が良さそうだな」
「いや……仲良くは……」
「そうか?そうは見えねえぞ? まるで見せつけて俺らを見下してるみてえだ……」
蒼からすると仲がよい自覚もなく、実際そうではないので本当のことを言ったまでなのだが、彼らからすると他の男子を見下しているようにしか思えないようだ。「お前の目は節穴か!」と言いたいところだが、そんなことを言えば確実にぶっ飛ばされる。純也は突然蒼の胸ぐらをつかみ、低い声で威圧した。
「お前はもう夜空に近づくな。あんま調子乗ってっと、ただじゃおかねえからな」
そのままお互いに固まっていると、誰も来ないはずの屋上の扉が開かれた。それは激しく髪を見出して息をきらした瑞穂だった。
「あなた達何してるの!」
「ちっ……。夜空か……」
瑞穂の姿を確認すると、純也は掴んでいた蒼の胸ぐらを離した。それと同時に瑞穂が駆け寄り、二人の間に割り込んで蒼をかばった。
「蒼くんに何したの!」
「人聞きが悪いな。何もしちゃいねえよ。なあ四葉」
純也を睨む瑞穂の後ろで、蒼は座りこみ黙っていた。純也が蒼に視線を移すと、蒼は純也から視線をそらした。
「お前ら、行くぞ。……おい四葉、俺が言ったこと忘れんなよ」
扉に向いて歩き出すと、純也はにやりと笑みを浮かべ屋上を去っていった。瑞穂はそれを見送ると蒼に寄り添った。
「蒼くん大丈夫? 何かされなかった?」
「大丈夫。何もされてないよ。それよりどうしてここがわかったの?」
瑞穂を安心させるために笑顔を作り、その後なぜここがわかったのかという疑問を尋ねた。
「ちょっと松風先生に呼ばれてて、帰ろうとしてたらまだ蒼くんの靴があったから。それでクラスの男子に蒼くんがどこにいるか知らないか聞いたの……」
瑞穂がなぜここにいることがわかったのかは理解できた。男子なら瑞穂に聞かれれば、挙動不審になりながらもついつい教えてしまうだろう。クラスのヤンキーに屋上に呼び出されたことも。正直瑞穂が来てくれたことは助かった。しかし今後、不用意に瑞穂に近づくことはできなさそうである。そんなことをすればまたあの不良どもがめんどくさく絡んでくるに違いない。寮がおんなじということもあり、完全に関わらないことはほぼ不可能だろうが、そのことを黙って学園内だけでも彼女を避けていれば問題はないだろう。瑞穂に心配をかけないためにも、蒼はこのことは他言しないことにした。
「ごめんね瑞穂さん、心配かけて。僕は先に帰ってるね」
「え? でも、蒼くん……」
蒼は立ち上がると、瑞穂に見向きもせずすぐに扉へ向かい屋上をあとにした。瑞穂には迷惑をかけられないし純也たちに絡まれるのもごめんだ。置いてけぼりをくらった瑞穂は、いつものごとく自分に振り向かない蒼に腹を立てつつも蒼のことを心配していた。
「蒼くん……。私が守ってあげないと! ……でも、もう少し私に見とれてもいいと思うんだけど! 蒼くんのためだけにここまで来たのに! もしかして蒼くん、照れてるのかな?」
たくましい想像力で照れる蒼を妄想し、幸せそうに笑う瑞穂。相変わらずナルシストで情緒不安定である。瑞穂を避けようとする蒼とは裏腹に、どうやら瑞穂は蒼の助けになることを選んだようだ。
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