旅人少女の冒険綺譚

野良の猫

4-1「お金の管理は慎重に」

三日間。
シャルルはケルト帝国をこれでもかと言うほど食べ歩き観光をしていた。カイウスの紹介された店を一つずつ周り、街をゆっくりと探索して行く。

露店で売られていたご当地物の名物料理はほぼ制覇出来たし、カイウス御用達の料理店も少しなら堪能できた。

お金に余裕を!と宿代をなんとかしようとしていた頃に比べて、食べ物と観光にかなりのお金を消費してしまっていた。あれこれ必死に稼いだはずなのだが...。

最終日の夜。顔を暗いオーラでも出ているかのようにどんよりした旅人少女の姿があった。

「あぁー...使いすぎた...いやいや、これは私が悪いわけじゃ無くてきっとケルト帝国の美味しい物が悪いわけで...それにカイウスさんの紹介してくれたお店が高いって言うのも要因だとシャルルは思う訳なんだけど...はぁ。次は本当に気を付けよう...」

宿の一室で残りのお金を確認して肩を落とした。使ったお金は戻ってくることはない。もう半分は使ってしまっただろうか?いや半分以上かも。少なくとも宿代は払えるはず。仕事によっては宿代はかなり減らせるはずだし__。

そんな淡い期待を込めながら、シャルルは寝床に着いた。明日の朝からは初の冒険者の仕事がある。どんな仕事かまで教えてはくれなかったため不安もあるが、今はお金を使いすぎた自分への反省の方が上だった。やってしまったことは仕方ない。今度から...今度から...と、シャルルは夢へと誘われたのだった。


そんな状況で迎えた三日目の朝__。
日がまだ出ていない様な時間を指定されたため、かなり早くシャルルは準備して下に降りてきた。受付には相変わらずな冒険者のような生い立ちをした男が座っている。


「おはようおじさん、約束通りに来たよ!」
と元気良く挨拶をして受付に座っていた男に声を掛けた。声を掛けられると、不意をつかれて驚いた様子だ。

「あぁ、嬢ちゃんか。すまねぇな早速仕事の話をと思ってたんだが__。」
依頼書の紙だろうか。羊皮紙を開いて何かを確認しているようだ。

「ん、仕事...まさか無くなった?」
キョトンとしながらシャルルは問う。
もしも無くなったらそれこそ死活問題なんだけどなぁと少し焦りもあるが、なんとかなるでしょ主義なシャルルは軽い気持ちで捉えていた。

それでもお金の使い方に関して反省はしてる__。けども後悔はしない...。良いような悪いような。

「そうじゃねぇんだ。今回任せようと思ってた依頼はミルクの配達だったんだがな?なんでか、依頼内容が変わっちまってんだ」

「というと...?ミルクの配達から仕事内容が変わったって事?」

「そう言うこった。今更変更は出来ねぇからなぁ...いやまさか俺が間違える事は無いとは思うんだが__。ほれ嬢ちゃん、今回の仕事だ。内容を確認しといてくれ」

依頼内容が書かれた羊皮紙を受け取る。
さらっと流し読みで読み進めていくと依頼内容欄にはミルクの配達ではなく、ヴェデルティア王国までの護衛となっている。

「あれ、配達から変更されたって割には凄い仕事ねぇ...商人の護衛って。気楽さが天と地の差だよ?!...しかも護衛って事はケルト帝国を抜けて別の街へ行くって事だよね?」

「あぁ、その通り。そいつの行き先は隣の国だな。確かーヴェデルティアだっけか?」
  
「うん、ヴェデルティア王国までの護衛だって。でもどうしよう...旅人の決まりで私国を抜けると旅終わるまで同じ国には戻ってこれないよ?」

そう。旅人の決まりだ。二度同じ地に踏み入れては成らないと言う習わしがある。シャルルには何故この習わしがあるのかは分かっていないが、師匠から教わった旅人の極意の一つだった。そうなると、宿代は今払う必要があるのだが...。

「あぁ。宿代の話か?宿代については問題ねぇ。今回の護衛は破格の契約金だからな。宿代は今払うのは免除で良いさ。依頼者と連絡を取って、宿代を差し引いた契約金を嬢ちゃんに払うと約束すりゃいい。嬢ちゃんは仕事が終わったら依頼者にお金貰う。俺は依頼者から宿代やら利用料やらを貰う。これで問題ねぇ。」

「本当?それなら良いんだけどね!...仕事終わってまたケルト帝国に戻って来ても良いとは思うけど...今はよく分かんないし。」
 
「はは、難儀なもんだな旅人ってやつは。
でもきっちり契約金から宿代は引かせて貰うぜ?少し割高で!」
 
「...その一言が無ければ、冒険者の宿の店主は素晴らしく良い人!で話が終わってたと       思うんだけど?」

「冗談だよ。俺から言えんのはきっちり稼いでこいよって事だけだ。」

「うん、任せて!こう見えて私結構強いのよ?ゴブリンの親玉だって__」

「へいへい、そう言う戯言はいいから。しっかり依頼内容確認しとけよ?今回はこっちの不手際だったが...任せられるのは嬢ちゃんだけだ。本当に頼むぜ?もし依頼すっぽかしたら__。」

「なーんかあんまり色々と信用されてない気がするけど大丈夫、分かってるってば。前にも言ったけど私約束は絶対に守る主義なの。宿の御礼も兼ねてるから安心してよね?」

受付の近くの椅子に座り依頼内容を確認していく。スケジュールも細かく書かれているため、仕事のイメージしやすい内容だった。

ケルト帝国の出発は午後六時過ぎから。ヴェデルティア王国到着予定は翌朝の早朝との事だ。

「ねぇおじさん、これって夜通しの護衛って事になるよね。」

「あぁ、依頼内容から見りゃそうなるな」

「なるほど、徹夜での仕事になるのかぁ」
となれば、これからの行動の予定が決まった。

「おじさん、もう一回部屋の鍵貸して?」
シャルルは目覚めてから半時間あまりで、就寝することに決めたのだった。


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