旅人少女の冒険綺譚

野良の猫

1-7「試練を超えて-2」


森の中へと逃げた二人は、息を潜めながら木の陰へと隠れた。シャルル一人なら逃げ切れるかもしれないが、今は子供が一緒だ。

無茶させるわけにはいかない。
それに、怪我をさせるわけにもいかない。
旅人は常に、弱き者のために___。

シャルルしゃがみ、少年の肩を掴む。

「いい?私の言うことをよく聞いて?今から私が、あの魔物の足止めをするから、君はこれを持って直ぐに逃げて。いい?」

シャルルは鞄なら、薬草を取り出すと少年に手渡す。少年は不満そうな顔をしていたが、シャルルの真剣な眼差しに、頷くしかなかった。

少年はポケットにしまっていた木の実や野草をシャルルに手渡す。

「これ、シャルルお姉ちゃんが居ない間に集めたんだ。」

意外なプレゼントだった。今まで、プレゼントを貰うことは殆ど無かったのだ。

貰えたのは、師匠からの依頼の報酬くらいしかなかったために、非常に感激していた。

シャルルは手渡された野草や木の実を受け取ると満面の笑みを浮かべる。

「本当に?!ありがとね。これがあればきっと何とかなるよ!」

わしゃわしゃと少年の頭を撫でる。
少年は喜んでもらえたのが嬉しかったのか、笑みを浮かべた。

「うん!シャルルお姉ちゃん。」
      
そんな癒やしの時間は、一瞬で終わってしまった。もうそこまで、ゴブリンの子分が迫ってきていたのだ。

「それじゃあ、また後でね。絶対君だけは守るから!」

「シャルルお姉ちゃん...また後で...僕...待ってるから!!」

シャルルは少年の背中をポンと押した。
少年はまた森の中へと走り出す。

振り返らない。約束したんだと言い聞かせながら、少年は走った。

走り去るのをゴブリンの子分が見つけ、そちらに走り出そうとしたとき、刃がゴブリンを
貫く。

「悪いけど行かせないよ...!あんたたちの相手は私だぁぁぁ!!」

シャルルは剣を構えて子分達に向かい突撃していく。自分の事はいい。

あの子が無事に母親にあの薬草を届けてくれればそれでいい__。




突撃し、何匹か倒すことは出来たのだが。

他の子分達にあっという間に囲まれてしまい、総攻撃を受けた。

防ぎきれるわけもなく、攻撃を受けてしまった。

今までの疲れと、蓄積されたダメージに、シャルルはついに膝をついてしまった。

剣を支えになんとか立ち上がろうと、力を入れる。


そうした最中、ゴブリンの親玉が目の前に現れた。そして力を込めて棍棒を振り上げ、トドメをさそうとした。

絶体絶命だが、誰かの為にと頑張ったのだ。
「...こんな所で...いや...私は...!」

なんとか立ち上がり剣を構えるも、振り下ろされた棍棒を、剣で受けようとしたが、力及ばず。シャルルの体を吹き飛ばしてしまった。

数メートル飛ばされ、地面を転がる。
それでも体を起こそうと力を入れたが、流石にもう立てなくなっていた。

「ぐっ...あぁ...、流石に...ここまで...かな」

もう立てない__。
魔力も無いし、体力だって__。



ぼやけた視界の先に、ゴブリン御一行がこちらに向かって歩いてきている。

「いや...まだだめ...せめて...せめて子分だけでも...」



これが最後。本当に最後だと覚悟を決めた。
無理矢理に体を起こして立ち上がった。足も震えているし、体中あちこちが痛い。もう正直、寝ていた方が楽だ。寝て楽になりたいとも思う。

「あの子....の、笑顔の...為に...!!」


剣を構えフラフラになりながら御一行に攻撃を仕掛けた。もう無い筈の魔力を剣に注ぐ。

体が持たないとか、死ぬかもしれないとか、そう言うのは後だ。今はあの子の為に!!

「うぉぉぉぁぁぁあ!!」


気合いの叫び。


もう立ち上がる力をくれているのは、あの少年の笑顔のためでしかない。



魔力を込めて剣を振る。


戦いの最中。
シャルルの意識はいつの間にか無くなってしまったのだった。


















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