旅人少女の冒険綺譚

野良の猫

1-1序章「一冊の手帳」

夕暮れ時。

草原と畑しかない、という田舎の国の小さな家で。窓辺に座りながら居眠りをしている老婆の姿があった。

そのすぐ脇に小さな丸いテーブルの上には、ティーポットと紅茶。虹色の砂が入った小さな小瓶が置かれていた。

老婆の住む家には、沢山の本と小瓶。そして物で溢れていた。それでも全く汚く見えないのは、置かれている物が綺麗で、魅力的な物が多いからなのだろう。

でも一冊だけ、ボロボロになってしまっている手帳があった。今老婆の眠る膝の上にある一冊の手帳。表紙の皮も既に破けかけているし、紙も少し黄ばんでいた。

でも大切にしてきたのだろう。表紙の皮には何度も直した縫い目が残っている。
         
窓から、爽やかで優しい風が吹き込んでくると、老婆の髪を撫でるように吹き抜けながらパラパラと音を立ててページが捲れていった。

その音に目覚めたのか、老婆は小さく目を開き、手記に目を通す。

「...__。」
何か呟いたようにも見えたが、何を言おうとしたのか分からなかった。きっと思い出に浸っているのだろう。

老婆はゆっくりと手帳を閉じて、窓の淵に手をかけながら立ち上がると窓の外を眺めていた。

黄金色に染まる空を、青い瞳で真っ直ぐに見つめている。その視線の先には、飛行船が空を駆け抜けていた。


物語の始まりの日__。


黄金色に染まる空。青い瞳の少女が駆け抜けた物語の始まりは、そんな夕暮れ時だった。


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