えっ、転移失敗!? ……成功? 〜ポンコツ駄女神のおかげで異世界と日本を行き来できるようになったので現代兵器と異世界スキルで気ままに生きようと思います〜
1-19 実里とお買い物
陽一は、地元の新幹線停車駅への到着予定時刻5分前にアラームをセットしていた。
ズボンの前ポケットに入れていたスマートフォンが無音で振動し、それを合図に陽一は目覚めた。
「実里ちゃん、もう着くよ」
自分にもたれかかって寝息を立てる実里を軽く揺すって起こす。
「んん……」
実里は両腕を前に出してぐぐっと身体を伸ばすと、陽一の顔を見上げた。
寝ぼけ眼《まなこ》を向ける実里の眼鏡が、少しずれていた。
(か、かわいい……)
実里はしばらく陽一をぼーっと見上げたあと、ふと我に返り、あわてて眼鏡の位置や姿勢を正した。
「あの、ごめんなさい。私、寝ちゃって……」
「ああ、大丈夫。俺もほとんど寝てたから」
「そうですか……」
そう答えた実里は、ほっと胸を撫で下ろしているように見えた。
「じゃ、降りよっか」
車内放送のアナウンスが停車を告げる。
「あ、はい」
ほかの乗客が網棚からカバンを降ろしたり、スーツケースの持ち手を伸ばしたりしているあいだに、身軽なふたりはさっさと立ち上がってデッキに向かった。
【無限収納+】のある陽一は手ぶらであり、仕事明けから家に戻らず陽一についてきた実里は、普段から持っているであろうショルダーポシェットのみなので、降車のための準備は必要ないのである。
「んんー……!!」
電車を降りた陽一は、乗降口から数メートル歩いたところで大きく伸びをし、実里のほうを振り返った。
「えっと、これからどうしようか?」
陽一は家に帰る、実里はそれについてくる、というかたちでここまで来たわけであるが、まだ日は高い時間帯である。
このまま家に帰るというのも味気ないので、せめて食事でもと思い陽一は訊ねてみたのだが、実里から返ってきた答えは少し予想外なものだった。
「あの、着替えなんかを……、用意したいです……」
実里は自分の服を軽くつまみ、少しうつむき加減で陽一に訴えた。
「あー……、そうだよねぇ」
これに関して、陽一は迂闊《うかつ》だったと言わざるをえない。
着の身着のまま新幹線で半日の場所へ訪れた女性を、まさか終電で帰れと言えるわけもなく、無論陽一も最初から泊めるつもりではあったのだが、着替え云々《うんぬん》に関しては完全に失念していたのだった。
「じゃあ、どこか服屋さんに行こうか。どこ行こう?」
「私は、どこでもいいですけど」
この駅にもちょっとしたショッピングモールはあり、衣料店もあるのだが、どちらかというと大衆向けの安い店しかない。
陽一は女性のファッションに精通しているわけではないが、実里が身に着けているものはシンプルではあるものの、それなりにいいものではないかと予想していた。
(あ、鑑定すりゃいいか!!)
そこで【鑑定+】を発動。
「ん…………? ぶほっ!!」
「……あの、なにか?」
「ああ、いや、なんでもない」
実里が身に着けている服を鑑定したものの、聞いたことのないブランドばかりが出てきたので、次に参考価格を出してみたところ、シャツひとつ取ってみても数万円を超え、それ以外もなかなか高価なものばかりだった。
安い服屋に連れていって不興を買うというようなこともなかろうが、陽一としては少し格好をつけたいところである。
ここから電車で少し移動して県の中心街へ行けばデパートなどもあるので、できればそちらに行きたいところだが、「ここは安い服屋しかないから別の場所に行かない?」と言ったところで「べつに安いところでいいです」などと言われそうである。
「あ!!」
そこで陽一は、なにかを思いついたように声を上げた。
「えっと、化粧品なんかもいるよね」
「あ、はい……。できれば、でいいですけど……」
現在実里はすっぴんのように見えるが、ホテルでシャワーを浴びたあと、簡単な化粧を行なっていたのを陽一は思い出した。
肩にかけている小さなポシェットに入る程度の化粧品では、化粧直しはできてもちゃんとした化粧はできないはずである。
「よし、じゃあデパートのあるとこまでいこうか」
「えっと、遠回りになりませんか?」
「あ、大丈夫。そっちからのほうが電車は早いから」
ここから中心街へ移動した場合、距離的には陽一の家から離れるのだが、いざ電車で移動となった場合、この駅から乗るのと中心街から乗った場合だと、路線の関係で中心街から乗ったほうが早く着くのである。
ただし、ここから直接向かうのと中心街を経由するのとでは、無論ここから直接向かったほうが早いのだが、そこを詳しく説明する必要はあるまい。
「じゃあ、お任せします」
「オッケー。じゃ、行こっか」
陽一が先導するように歩き始めると、実里は少し戸惑ったように周りを見回したあと、不安げな表情を浮かべた。
そして少し小走りに陽一へと追いつき、うしろから彼の服の袖をつまんだ。
「ん?」
それに気づいた陽一は、少し歩くペースを抑え、うしろを振り向いた。
実里は少し恥ずかしげにうつむいたまま、陽一について歩いていた。
(くそぅ……いちいちかわいいなぁ……)
陽一は視線を前に戻し、しばらく歩いたあと、意を決して実里の手を握った。
「あ……」
突然手をつかまれた実里は驚いて顔を上げたが、陽一は前を向いており、その表情は見えなかった。
在来線で数駅、県の中心街へ到着したふたりは、駅から連結されている入り口を通ってデパートに入った。
まずは1階の化粧品売り場へ行ったが、ここはさすがに実里任せとなる。
男にとって、化粧品売り場というのは居心地が悪いものである。
そんな陽一の気分を感じ取ったのか、実里は手際よく各ブランドを巡り、店員の会話をうまくかわしながら必要なものをさっさと購入していった。
「えっと、俺出そうか?」
「いえ、これはさすがに自分で……」
と、ここでの支払いは拒否された。
実里は主に電子マネーかデビッドカードを使用しており、クレジットカードを使用する気配はなかった。
ひととおり化粧品がそろったあと、次はレディースファッションのフロアへと移動した。
「こんな感じで、どうでしょうか……?」
「うーん、いいんじゃないかな」
試着室から姿を現わした実里に、陽一は少し自信なさげに答えた。
もともと陽一は普段着を作業服で済ませるような男であり、自分自身のファッションにすら興味がない。
自分のファッションに興味がない人間というのは、他人のファッションにも興味がないのである。
なので、よっぽど奇をてらったものでなければ「いいと思う」「問題ない」くらいの感想しか出せないのであった。
その毒にも薬にもならないような感想を参考にしたのかどうかはともかく、実里は落ち着いた色のスカートとキュロット、それにあうカーディガンをそれぞれ1点ずつ購入。
シャツは白無地を2点と色や柄が抑えめのものをさらに数点購入した。
洋服を買い終えて移動していると、マネキンに飾られたルームウェアが現われた。
そしてほぼ同時にふたりの足が止まった。
どうやら陽一と実里は同じものを目にしているらしい。
立ち止まったふたりは、自然とお互いを見合った。
「えっと……」
「あの……」
声が被ってしまった陽一と実里は、お互い照れたように視線を逸らした。
このままの流れでいけば実里は陽一の家に泊まることになると思われるが、しかしそれを互いに明言はしていない。
ここでルームウェアを買えばそれはもう決定事項になるのだろうが、自分から言い出しいていいものかと、各々迷ってしまったのである。
「あのさ……」
互いに視線を泳がせ、何度か目が合っては逸らすということを繰り返したあと、意を決したように口を開いたのは陽一のほうだった。
「……はい」
「これも、買っとこうか……?」
陽一は実里から目を逸らし、恥ずかしそうに頬をかきながらそう訊ねた。
「……はいっ!」
少し嬉しそうな感情が乗った実里の返事を聞き、陽一はルームウェアの購入を提案してよかったと思ったのであった。
ルームウェアを購入したあと、ふたりが訪れたのは下着売り場だった。
「えっと、じゃあ俺はその辺で時間潰してるから、終わったら声かけてよ」
女性用下着売り場ほど、男性にとって居心地の悪い場所はあるまい。
先の化粧品売り場とはまた異なる居心地の悪さである。
そんなわけで、陽一はそこから逃げるようにそう告げたが、踵を返す前に服の袖を実里につかまれてしまった。
「あの……一緒に、選んでください……」
(ええーっ!?)
危うく叫びそうになるのをなんとか心の中に抑えながら、陽一は実里のほうを見た。
実里は顔を真っ赤にして目を逸らしていたが、それでも袖をつかむ手にはそれなりの力が入っていた。
「だ……、だめ、ですか……?」
しばらく陽一が返事をできずにいると、実里は意を決したように陽一のほうを見てそう問いかけた。
「あ、いや……、うん」
実里の潤んだ瞳に捉えられた陽一から、この提案を断るという選択肢が消えた。
「あの、どういうのが……いいですか?」
売り場を歩きながら、実里が問うてくる。
「あー、いや、実里ちゃんがいつも買ってるようなので――」
「どいうのを、着けてほしい……ですか?」
「へ?」
なんとか無難に乗りきろうとしたが、そうはいかないらしい。
陽一は覚悟を決め、売り場内を見回した。
さすが一流のデパートだけあって、アダルトショップにあるようなドギツいランジェリーのようなものはない。
であれば、どれを選んでも問題あるまいと思い、ひととおり見て回ったところ、ある1点で陽一の視線が止まった。
(あれは……、ちょっとエロいな)
それは黒いシースルーの、華美なレースをあしらったベビードールであった。
数秒のあいだそこに視線が固定されていたのだが、陽一はすぐに視線を外し、結局彼が選んだのは、ごく無難なデザインでベージュや薄いピンクのブラジャーとショーツのセットだった。
「会計しておくので、売り場の外で待っていてください」
「あ、うん」
陽一は半ば逃げ出すように売り場を離れた。
ズボンの前ポケットに入れていたスマートフォンが無音で振動し、それを合図に陽一は目覚めた。
「実里ちゃん、もう着くよ」
自分にもたれかかって寝息を立てる実里を軽く揺すって起こす。
「んん……」
実里は両腕を前に出してぐぐっと身体を伸ばすと、陽一の顔を見上げた。
寝ぼけ眼《まなこ》を向ける実里の眼鏡が、少しずれていた。
(か、かわいい……)
実里はしばらく陽一をぼーっと見上げたあと、ふと我に返り、あわてて眼鏡の位置や姿勢を正した。
「あの、ごめんなさい。私、寝ちゃって……」
「ああ、大丈夫。俺もほとんど寝てたから」
「そうですか……」
そう答えた実里は、ほっと胸を撫で下ろしているように見えた。
「じゃ、降りよっか」
車内放送のアナウンスが停車を告げる。
「あ、はい」
ほかの乗客が網棚からカバンを降ろしたり、スーツケースの持ち手を伸ばしたりしているあいだに、身軽なふたりはさっさと立ち上がってデッキに向かった。
【無限収納+】のある陽一は手ぶらであり、仕事明けから家に戻らず陽一についてきた実里は、普段から持っているであろうショルダーポシェットのみなので、降車のための準備は必要ないのである。
「んんー……!!」
電車を降りた陽一は、乗降口から数メートル歩いたところで大きく伸びをし、実里のほうを振り返った。
「えっと、これからどうしようか?」
陽一は家に帰る、実里はそれについてくる、というかたちでここまで来たわけであるが、まだ日は高い時間帯である。
このまま家に帰るというのも味気ないので、せめて食事でもと思い陽一は訊ねてみたのだが、実里から返ってきた答えは少し予想外なものだった。
「あの、着替えなんかを……、用意したいです……」
実里は自分の服を軽くつまみ、少しうつむき加減で陽一に訴えた。
「あー……、そうだよねぇ」
これに関して、陽一は迂闊《うかつ》だったと言わざるをえない。
着の身着のまま新幹線で半日の場所へ訪れた女性を、まさか終電で帰れと言えるわけもなく、無論陽一も最初から泊めるつもりではあったのだが、着替え云々《うんぬん》に関しては完全に失念していたのだった。
「じゃあ、どこか服屋さんに行こうか。どこ行こう?」
「私は、どこでもいいですけど」
この駅にもちょっとしたショッピングモールはあり、衣料店もあるのだが、どちらかというと大衆向けの安い店しかない。
陽一は女性のファッションに精通しているわけではないが、実里が身に着けているものはシンプルではあるものの、それなりにいいものではないかと予想していた。
(あ、鑑定すりゃいいか!!)
そこで【鑑定+】を発動。
「ん…………? ぶほっ!!」
「……あの、なにか?」
「ああ、いや、なんでもない」
実里が身に着けている服を鑑定したものの、聞いたことのないブランドばかりが出てきたので、次に参考価格を出してみたところ、シャツひとつ取ってみても数万円を超え、それ以外もなかなか高価なものばかりだった。
安い服屋に連れていって不興を買うというようなこともなかろうが、陽一としては少し格好をつけたいところである。
ここから電車で少し移動して県の中心街へ行けばデパートなどもあるので、できればそちらに行きたいところだが、「ここは安い服屋しかないから別の場所に行かない?」と言ったところで「べつに安いところでいいです」などと言われそうである。
「あ!!」
そこで陽一は、なにかを思いついたように声を上げた。
「えっと、化粧品なんかもいるよね」
「あ、はい……。できれば、でいいですけど……」
現在実里はすっぴんのように見えるが、ホテルでシャワーを浴びたあと、簡単な化粧を行なっていたのを陽一は思い出した。
肩にかけている小さなポシェットに入る程度の化粧品では、化粧直しはできてもちゃんとした化粧はできないはずである。
「よし、じゃあデパートのあるとこまでいこうか」
「えっと、遠回りになりませんか?」
「あ、大丈夫。そっちからのほうが電車は早いから」
ここから中心街へ移動した場合、距離的には陽一の家から離れるのだが、いざ電車で移動となった場合、この駅から乗るのと中心街から乗った場合だと、路線の関係で中心街から乗ったほうが早く着くのである。
ただし、ここから直接向かうのと中心街を経由するのとでは、無論ここから直接向かったほうが早いのだが、そこを詳しく説明する必要はあるまい。
「じゃあ、お任せします」
「オッケー。じゃ、行こっか」
陽一が先導するように歩き始めると、実里は少し戸惑ったように周りを見回したあと、不安げな表情を浮かべた。
そして少し小走りに陽一へと追いつき、うしろから彼の服の袖をつまんだ。
「ん?」
それに気づいた陽一は、少し歩くペースを抑え、うしろを振り向いた。
実里は少し恥ずかしげにうつむいたまま、陽一について歩いていた。
(くそぅ……いちいちかわいいなぁ……)
陽一は視線を前に戻し、しばらく歩いたあと、意を決して実里の手を握った。
「あ……」
突然手をつかまれた実里は驚いて顔を上げたが、陽一は前を向いており、その表情は見えなかった。
在来線で数駅、県の中心街へ到着したふたりは、駅から連結されている入り口を通ってデパートに入った。
まずは1階の化粧品売り場へ行ったが、ここはさすがに実里任せとなる。
男にとって、化粧品売り場というのは居心地が悪いものである。
そんな陽一の気分を感じ取ったのか、実里は手際よく各ブランドを巡り、店員の会話をうまくかわしながら必要なものをさっさと購入していった。
「えっと、俺出そうか?」
「いえ、これはさすがに自分で……」
と、ここでの支払いは拒否された。
実里は主に電子マネーかデビッドカードを使用しており、クレジットカードを使用する気配はなかった。
ひととおり化粧品がそろったあと、次はレディースファッションのフロアへと移動した。
「こんな感じで、どうでしょうか……?」
「うーん、いいんじゃないかな」
試着室から姿を現わした実里に、陽一は少し自信なさげに答えた。
もともと陽一は普段着を作業服で済ませるような男であり、自分自身のファッションにすら興味がない。
自分のファッションに興味がない人間というのは、他人のファッションにも興味がないのである。
なので、よっぽど奇をてらったものでなければ「いいと思う」「問題ない」くらいの感想しか出せないのであった。
その毒にも薬にもならないような感想を参考にしたのかどうかはともかく、実里は落ち着いた色のスカートとキュロット、それにあうカーディガンをそれぞれ1点ずつ購入。
シャツは白無地を2点と色や柄が抑えめのものをさらに数点購入した。
洋服を買い終えて移動していると、マネキンに飾られたルームウェアが現われた。
そしてほぼ同時にふたりの足が止まった。
どうやら陽一と実里は同じものを目にしているらしい。
立ち止まったふたりは、自然とお互いを見合った。
「えっと……」
「あの……」
声が被ってしまった陽一と実里は、お互い照れたように視線を逸らした。
このままの流れでいけば実里は陽一の家に泊まることになると思われるが、しかしそれを互いに明言はしていない。
ここでルームウェアを買えばそれはもう決定事項になるのだろうが、自分から言い出しいていいものかと、各々迷ってしまったのである。
「あのさ……」
互いに視線を泳がせ、何度か目が合っては逸らすということを繰り返したあと、意を決したように口を開いたのは陽一のほうだった。
「……はい」
「これも、買っとこうか……?」
陽一は実里から目を逸らし、恥ずかしそうに頬をかきながらそう訊ねた。
「……はいっ!」
少し嬉しそうな感情が乗った実里の返事を聞き、陽一はルームウェアの購入を提案してよかったと思ったのであった。
ルームウェアを購入したあと、ふたりが訪れたのは下着売り場だった。
「えっと、じゃあ俺はその辺で時間潰してるから、終わったら声かけてよ」
女性用下着売り場ほど、男性にとって居心地の悪い場所はあるまい。
先の化粧品売り場とはまた異なる居心地の悪さである。
そんなわけで、陽一はそこから逃げるようにそう告げたが、踵を返す前に服の袖を実里につかまれてしまった。
「あの……一緒に、選んでください……」
(ええーっ!?)
危うく叫びそうになるのをなんとか心の中に抑えながら、陽一は実里のほうを見た。
実里は顔を真っ赤にして目を逸らしていたが、それでも袖をつかむ手にはそれなりの力が入っていた。
「だ……、だめ、ですか……?」
しばらく陽一が返事をできずにいると、実里は意を決したように陽一のほうを見てそう問いかけた。
「あ、いや……、うん」
実里の潤んだ瞳に捉えられた陽一から、この提案を断るという選択肢が消えた。
「あの、どういうのが……いいですか?」
売り場を歩きながら、実里が問うてくる。
「あー、いや、実里ちゃんがいつも買ってるようなので――」
「どいうのを、着けてほしい……ですか?」
「へ?」
なんとか無難に乗りきろうとしたが、そうはいかないらしい。
陽一は覚悟を決め、売り場内を見回した。
さすが一流のデパートだけあって、アダルトショップにあるようなドギツいランジェリーのようなものはない。
であれば、どれを選んでも問題あるまいと思い、ひととおり見て回ったところ、ある1点で陽一の視線が止まった。
(あれは……、ちょっとエロいな)
それは黒いシースルーの、華美なレースをあしらったベビードールであった。
数秒のあいだそこに視線が固定されていたのだが、陽一はすぐに視線を外し、結局彼が選んだのは、ごく無難なデザインでベージュや薄いピンクのブラジャーとショーツのセットだった。
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