えっ、転移失敗!? ……成功? 〜ポンコツ駄女神のおかげで異世界と日本を行き来できるようになったので現代兵器と異世界スキルで気ままに生きようと思います〜

平尾正和/ほーち

1-12 人型の魔物と戦う

 拳銃を持って異世界を訪れた陽一は、さらに訓練とは名ばかりの、戦闘を繰り返した。

 耳が刃になっている兎型魔物のブレードラビットは、間合いがスピアラビットと変わらなかったので、先手を取って仕留めることができた。

 フォレストハウンドという犬型の魔物が5匹の集団で現われた。
 単体討伐ランクGのフォレストハウンドは3匹以上の集団になると討伐ランクが一気にEへとランクアップするのだが、【鑑定+】によって位置や考えをある程度把握できる陽一にとってはそれほど脅威にならず、拳銃を乱射して3匹倒すと、残り2匹は逃げていった。

 続けてファンタジーものでは雑魚の代名詞となっているゴブリンも登場した。
 身長は140センチ程度で、緑色の肌に頭髪のない醜い顔、身長と細身の骨格のわりには分厚い筋肉をまとった人型ひとがたの魔物であり、数匹でまとまって森の中をうろついているようだった。
 陽一は拳銃を構え、狙いをつけた。
 照準の向こうに見えるゴブリンは、明らかに人とは異なる異形の存在である。
 醜い容貌、歪な体型、人としてはありえない肌の色。
 どう見ても人ではないのだが、人型をしているというだけで、なぜか妙な感情が湧き上がってくる。
 数匹でまとまって森をウロウロしている姿が、その背の低さもあってか、なんだか子供が戯れているように見えてくるのだから不思議だ。

「ふぅー……」

 陽一は一旦照準を外し、木陰に身を隠した。
 銃を構えたままの両手を胸に当て、天を仰いで大きく息を吐く。

(うぅ……、なんか人型ってだけでやりづらいなぁ……)

 しかし、ゴブリンを狩れないようでは、この世界で生きていくことも困難だろう。
 向こうがこちらに気づけば、おそらくゴブリン達は陽一の命を奪うべく襲いかかってくるはずである。

 そう、魔物は人を襲うのだ。

 魔物には食事が必要ないといわれている。
 それは体内に宿した魔石が、空間を漂う魔力を吸収して活動エネルギーとすることができるからだという。
 にも関わらず、魔物は人を襲い、かつ死肉を食らうのである。
 いや、生きたまま食うこともある。
 人を食うことで体内を流れる魔力を取り込むとも、単純に人の肉の味を娯楽として楽しむのだともいわれているが、明確な理由は判明していない。

 しかし、魔物が人を襲うことは確かである。
 そうである以上、やられる前にやらねばならない。

「ふっ……!!」

 陽一は短く息を吐くと、木陰から顔を出し、銃を構えて狙いをつけた。
 照準の向こうではあいかわらずゴブリンが無邪気に戯れているように見える。
 いまからあれを撃つのだと思うと、呼吸は乱れ、心音が速くなってくる。

「ふぅー……」

 狙いをつけたまま、自分を落ち着けるよう、静かに、しかし大きく息を吐く。
 そうやって呼吸を落ち着けると、ひと呼吸ごとに心拍が落ち着き、頭がクリアになっていくのを感じた。

(……いける)

 10秒と経たないうちに平常心に近いところまで精神状態が落ち着いたことへ、自分でも軽い驚きを覚えつつ、陽一は狙いを澄まして引き金に指をかけた。

パンッ!! パンッ!!

 森の中に2発の銃声が響く。
 眉間と胸に1発ずつ銃弾を受けたゴブリンが、力なくその場に倒れるところまでを確認した陽一は、いったん木陰に身を隠した。
 ギャアギャアという、鳥とも獣ともつかない喚《わめ》き声が耳に届く。
 陽一にはそれが、なにか意味を持った悲痛な叫びのように聞こえた。

(殺した……。俺が、殺した……!!)

 落ち着いていた心臓が、再び激しく動き出した。
 全身から冷や汗が吹き出し、手が震え、呼吸が乱れる。

(あれは魔物……。あれは魔物……!! 人じゃないっ!!)

 銃を構えたままの両手を胸に強く押し当て、目を閉じて天を仰ぎながら、陽一は懺悔するように心の中で叫び続けた。
 そうやって自分自身に言い聞かせると、これまた嘘のように心が落ち着いてきた。

 心臓の鼓動はいつものペースを取り戻し、汗は引き、手の震えが止まった。
 心身の変化に多少の驚きを覚えながらも、陽一は再び木陰から顔を出した。
 数匹のゴブリンが、喚き声を上げながら周りを警戒していたが、そのうちの1匹が倒れたゴブリンの元にしゃがみ込み、安否を確認するように身体を揺すっていた。
 その光景に、陽一の胸はチクリと痛みを覚えたが、それも数秒で消えた。
 やがて、耳に届くゴブリンの喚き声は、ただの雑音になった。

 パンッ!! パンッ!! パンッ!! パンッ……

 まるでなにかの機械が動いているかのように銃声が続けて鳴り響くと、その度にゴブリンが仰け反り、倒れていく。
 およそ10秒後にはその場にいたすべてのゴブリンが地面に倒れ伏していた。

 陽一は、自分の心音や呼吸に乱れがなく、精神も落ち着いていることを確認し、拳銃の構えを解いた。

(俺って自分で思ってたより神経図太いのかな)

 答えは否である。
 もう一度【健康体+】の効果をおさらいしてみよう。

 ――心身ともにベストコンディションを維持する。

 そう、【健康体+】は身体だけでなく心、すなわち精神状態も平常を保つように作用するのだ。
 そうなると感情の起伏が少なくなるのではないかと思われるかもしれないが、そこはやはり神に類するものが与えたもう加護である。
 ポジティブな感情には作用しない、という都合のいい仕様となっている。
 ポジティブとネガティブの判定基準は、陽一本人の快、不快に依存するといったところか。

 一度慣れてしまえばそれ以降人型の魔物を相手にしても大してあわてることもなくなった。

 その後も陽一は数日間、異世界と日本とを行き来した。
 実際に異世界の森を歩いてみると、足りないものやあったほうが便利だと思えるものがいくつか出てきたので、何度かホームセンターへ行ったり、ネット通販で買い揃えたりした。
 その日もいつものように異世界の森で魔物を相手に戦っていると、陽一の前にこれまでのものとは明らかに存在感の異なる、大きな熊型の魔物が現われたのだった。 

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コメント

  • 船枻 蔑

    下ネタ多すぎて面白さ半減

    0
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