学生時代

Me-ya

泣かないで、マイ・ラブ 10

私は慌てて自分の周りをキョロキョロと見回す。

-しまった………。

治夫と彼女にばかり注意がいきすぎて、いつの間にか改札を通り過ぎ、周りに人がいなくなっていたのにも気付けず………。

だから。

当然、私の前にいた人達もいつの間にかいなくなっていて。

私ひとり、隠れる場所もなく、治夫と彼女の後をつけていた事がバレバレの状態。

そして。

何故か。

私と治夫の視線がバチッと合ってしまい。

-ヤバい………流石にこんなバレバレのストーカー行為………いくら温厚な治夫でも、きっと怒られる………。

と思った瞬間。

治夫がツカツカと私の方に歩いてきて。

-きゃー!こっちにくる!!やっぱり怒ってるんだ!!逃げる?謝る?どうする!?

逃げるか、謝るか迷ってその場から動けずにいる私の側に近付く治夫。

ふわりといい香りがして。

思わず、こんな時なのに鼻の穴をおっぴろげてクンカクンカ治夫の香りを嗅いでしまう私。

だって、こんな間近で治夫の香りを嗅ぐ機会なんか、滅多にないんだもん。

治夫の香りを嗅いでウットリとしている私に構わず、治夫は。

いきなりガシッと私の肩を抱き、クルリと彼女の方を振り返る。

ーああ………夢みたい………遠くからしか見る事のできなかった治夫がこんな近くで………それも私の肩を………。

一気に乙女になった私は胸の前で両手を組み、凜々しい治夫の横顔をハートの目で見詰める。

治夫はそんな私を見る事なく、真っ直ぐ彼女を見詰めて口を開いた。

「俺、彼女と付き合っているから」

……………………………。

……………ええーーーーーっ!?

いつの間に!?

いつから!?

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