学生時代

Me-ya

瞳の中、君に 14

多分、隼人は俺の質問の真意を…俺が何故、こんな質問をしてきたのか…俺が隼人と松山の関係に気付いているのか…考えているのだろう。

「いくら昼休みで誰も来ないからって、あんな場所でアンナコトしちゃ駄目だよ」

―あれから何回か、隼人と松山との場面を目撃した。

松山はわざと俺だけにその場面を見せているんじゃないかと思う程に。

…二人をそういう目で、気を付けて見ているとその場面を目撃するのは簡単だった。

皆が二人の関係に気付いてない事が不思議に思う程に簡単だった。

松山は隼人を連れて、皆の輪の中から自然に抜け出す事がよくある。

俺が隼人に接触できないでいる内に、松山は大胆になっていき、とうとう昼休みまでも隼人に手を出すようになっていた。

俺は二人の行為を初めて見た放課後じゃなく、最近見た昼休みの事を口にした。

―以前から二人の行為を知っていたと隼人に知られたくなかったから。

握っている隼人の手に力が入って、隼人のショックが俺にも伝わってきた。

言い訳もせず、黙っている隼人に不安が過る。

―まさか…。

「好きなの?」
「違う!!」

間髪を置かずに隼人が強い言葉で否定した。

「…違うの…?」

その言葉に、俺は立ち止まり振り返って、隼人を見る。

隼人が松山に恋愛感情を持っていない事は分かっていたが、もしかして…といった一抹の不安は拭えなかった。

だから、実際に隼人の口からそう聞かされ…安心した。

「…違う」

隼人は俺と視線が合うと慌てたように俯いたが、小さい声で…でも、はっきり否定した。

「…そうか、違うんだ」

俺はそのまま、隼人の手を握り歩き始める。

………違うんだ。

隼人がはっきりと否定した。

本当は、色々と聞きたい事がある。

なら、どうして松山と一緒に居るのか。

どうして、松山と身体を重ねているのか。

………でも。

今、俺が一番知りたかった事は隼人が松山と付き合っているのか、いないのか。

その事だった。

そして、隼人の口から、松山と付き合っていないと今、聞けた。

…なんか、それだけでいいや。

そう思い、満足してしまった。

だから、俺は気付かなかった。

―俺達を見詰めていた寧音の瞳に―。

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