学生時代

Me-ya

瞳の中、君に 13

好きでもないのに、痛みと苦しみと恥辱に耐えて、松山に抱かれている隼人に。

好きでもない松山に黙って抱かれているのは、何か弱味を握られているからか。

もしもそうなら、何故、俺に相談しないんだ!!

…俺はそんなに、頼りないか。

それとも、そんなに信用ないのか…。

…それとも…隼人が松山を好きじゃないと思うのは、俺の勘違いで…本当は、二人は付き合っているのか…。

―いきなり気付いてしまった自分の気持ちに困惑すると同時に、沸き上がった隼人と松山に対する怒りと嫉妬―。

それらの気持ちを持て余した俺は…。

無意識の内に寧音の体に回した手に、力を込めた。

…………………………。

………………………。

……………………。

…………………。

………………。

……………。

…………。

………。

……。

…。

「隼人、やっと会えた」

俺の声に、隼人の歩みはピタリと止まる。

だが立ち止まったまま。

隼人は振り向かない。

「…最近、いつもアイツと一緒に居るからさ。隼人が一人になるのを待ってたんだ」

俺は隼人の背中に話しかける。

相変わらず隼人は松山と常に行動を共にしている。

松山の爽やかな外見に誤魔化されて、周りからはそう見えないが…よく観察していると松山の方が、隼人を連れ回している事が分かる。

その為、いつも隼人と松山は一緒に居る。

―だが、今日の放課後、松山が仲間と一緒に帰る姿を確認した時、その中にいつもなら必ず居る隼人の姿がない事に気づいた俺は、すぐさま隼人を探した。

そして、職員室から出てくる隼人を待って声をかけた。

「…一緒に帰ろう」

固まったまま動かない隼人に近付き、手を握る。

隼人は俯き俺に手を引かれたまま、黙って歩く。

「…隼人は何故、いつもアイツと一緒に居るの?」

「……………」

隼人は、俯いたまま何も答えない。

「…アイツの事…好きなの…?」

俺のその言葉に、隼人が吃驚したように顔を上げる気配がする。

隼人の視線を、背中に感じる。

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