学生時代

Me-ya

遠くの夕焼けに初恋、消えた 8


「ごめんね、しばらく会わないでおこうと言われていたのに」

「いいわよ、用事だったんでしょ?何?」

いつもと変わらぬ笑顔で僕の前に現れた寧音。

決心した僕は、放課後に階段の踊場へと寧音を呼び出した。

「うん。はっきりさせたほうがいいと思って。お互いの為に…」

「何?」

「…うん、寧音さ、他に好きな人、いるだろ?」

「……え…っ」

僕の言葉に、寧音は初めて顔色を変えた。

「隠さなくていいよ。わかっているから」

驚いたのか、絶句したままの寧音に告げる。

「僕と治夫が友人だから、言いにくかった?」

その僕の言葉に、寧音は俯いてしまった。

「そういえば、治夫が来ると寧音はいつもいなくなってたよね」

寧音は顔を上げようとしない。

「あれって治夫の事が苦手だからだと思っていたけど、違ったんだね」

俯いたままだ。

「僕、鈍感だから」

最後なのに。

「気付かなくて」

これで最後なのに。

「………」

寧音が顔を上げてくれるのを少しの間、期待して待ったが、やはり寧音は俯いたまま。

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