大好きな君は

夜空星叶

一枚の写真

夜、私は松田さんの部屋に行った。


少し話したくなった。


松田さんは、アルバムを見ていた。


机には、写真立てが置いてあった。


光で反射してよくみえなかった。


「松田さん、ちょっといい?」


私は、そう言った。


「うん、いいよ」


松田さんは、見ていたアルバムをそっと隠した。


少し気になったが、触れないでおこう。


「前に、私にあった事あるの?」


「うん、えーっと?ううん?」


松田さんは、意味のわからない返事をしていた。


「えっと、あったことあるの?」


私がそう聞くと、松田さんはニッコリ笑って、言った。


「わかんない」


その言葉が何処かに突き刺さる。


少し、苦しいような、悲しいような気持ちになった。


何故だかは、わからなかった。


「トイレに行ってくるね」


松田さんは、そう言ってトイレに行った。


松田さんの部屋に私1人だけ。


机には写真立てが置いてある。


私は、ちょっとした好奇心でみたくなった。


写っていたのは・・・。


見たら、目から涙が溢れて来た。


本当は、気付いていた。違うと、思い込んでいただけ。


昔の事を思い出したくないから。


でも、私は大切な人までを忘れようとしていたのだ。


「・・・ナツカ」


私の涙は止まることはなかった。


私が泣いていると、松田さんが部屋に戻ってきた。


「晴江ちゃん、何で泣いてるの?」


そう言って、優しく抱きしめてくれた。


懐かしい。


やっぱりこの人は、捺加なんだ。


やっと確信が持てた。


「捺加、なんだよね?」


「うん、思い出した?」


私は、今まで貯めて来た涙が、全て流れてしまったような気がした。


捺加は、私が泣き止むまで、優しく抱きしめてくれていた。


・・・この人は、本当に大切な人だったんだ。


私は、いつの間にか寝てしまっていた。


捺加に抱きしめられながら。

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