夕暮れ真っ黒

山田 みつき

4

僕は窓を空けて、人差し指を立ててシーッと清貴に言いながら、片方の手で、最新ゲーム機を持って窓の中に手を入れながら招きだした。

目を輝かせて、清貴は後ろを振り返り、どうやら自身の母親に見付からないかどうかを確認している模様だ。
彼、清貴自身も、欲しがっていたから当然窓から出るに決まっていたもので、其れを買ってくれないキミに怒られたから、連れ出すのにはとても好都合だった。

僕は彼の手をひいて、公園へ連れて行く。

僕「どう?欲しかったでしょ?」

清貴「勿論!だって高いからってママ怒るんだもん。圭太くんは買ってくれたのに、"僕のママ"は買ってくれないなんて、やっぱりケチババアだ!」

僕「そっかぁ。でも…ママの事大好きなんだね。大好きじゃなかったら、ママってキーワードなんて簡単に出て来ないもの。」

清貴「だって僕、将来ママと結婚するんだもん!」

そう言いながら、新しいゲームの画面にもう夢中で。

僕「そっかぁ。清貴はママと結婚するんだね!そうそう、清貴がお兄ちゃんになったからプレゼントしたんだよ。お兄ちゃんの清貴は、公園で一人でちょっとだけ待てるかなぁ?お兄ちゃんだから待てるよねっ?」

僕は、子供騙しの様に軽快なテンポで清貴を乗せていく。

彼が頷いたのを確認し、家を急いだ。
角から呑気に鼻をティッシュで押し当てているキミが窓から見えた。
清貴が言ってたよ、キミと結婚するんだってね。

キミはきっと清貴自身が窓を開けて玄関から出て、遊びに出掛けたと思っているんだろう。
僕はその為に清貴には小声で

「靴を持って来ないと窓からは出られないよ、それから家の鍵を持ってきてね。」

って教えたから成功したみたい。

呑気なキミを見ていると、殺意で気が狂いそうになるけれど、最も大切なものを破損した時の音を想像しただけでも身震いしそうな程に狂喜に駆られている僕が存在した。

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