夕暮れ真っ黒

山田 みつき

3

ようやくJRから降りて、駅からタクシーに乗り込み、キミの家迄急いだ。

運転手「お客さん?」

僕「…チッ。」

僕は舌打ちした。
そのねじ曲がった声質、どうにかならないのかな。
全く素知らぬフリしてる。
多分このルートだとここまで料金は跳ね上がらない。
何度も何度も僕が口頭でルート案内をしているのに対して、そこだけを聞こえないフリをするんだ。

やはり関東のタクシーは相変わらず愛想が悪く、以前に関東に住居を置いていた頃とは時代を感じさせず、全く変わっては居なかった。
そこに『らしさ』さえ感じる。

この街は何も変わってはいない。
時計の針は止まったまんまなんだ。

深呼吸をする。
キミの家の近くのコンビニで降りる。
一服して、やっと家に辿り着いた。

キミの家の構図。
裏口まで回って、丁度相手にとって四角で見えない場所があるのだが、窓から見るのはやはり危険で、コッチだって怖い。
しかし、覗かないと始まらないのだ。

一番最初に見えたのが清貴。
どうやら、ランチタイムの様だ。
可愛い頬に、食べた跡が付着している。

…って事は。
キミは家に居る。
これはマズイ事になってしまった。
計画が上手くいかない。

清貴は小学校をどうやら、休んでしまったらしい。
モンスターペアレントなのかな?
清貴の誕生日だから、休ませてあげるキミってとっても優しいんだね。

僕の事は「仕事」と言い放ったのにね。
キミも清貴の為に仕事を休み、息子を休ませてあげたんだね。

この際だから二人纏めてヤッちゃいたい位なんだけど、それでは意味が無い。

さて。
キミがトイレに行った。
僕は急いで清貴の居る部屋の窓にかぎが掛かっていないかをチェックした。

ー幸運な事にお見事、開いていた。

さあ、始めようね。
キミの大切なもの、なーんだ?

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