High School Break

堕天使x

2話〜魔法陣〜

翌日、昼休み
今日からはその殺人事件に関する情報収集をする。
まず、動機が大事だ。生徒が教師に失礼を働き、怒り殺したのと、どこかの組織が狙って殺したのとではかなり話が変わってくる。
もちろん前者でもあってはならないが、後者であればより大きな事件となる。
一番に調べるべきはその殺された生徒がその後どう扱われたのか。
その情報を聞くのであれば
「米原、昨日の件についてなのだが、もう少し情報を聞きたい。」
クラスに行き周りに聞かれないようにそっと廊下に連れ出す。
「その殺されたと言う人の名前は分かるか?」
「えっと......はっきりとは覚えてないけど、霞谷とかだったような...でもそこまで見る余裕は無かったし違うかも」
「なるほど...」
と言い水瀬は名簿を一つ一つ見て行く。霞谷という名前はなかったが、
「この葭谷じゃないか?感じがよく似ているし、珍しい感じだから霞に見えたんだろう。」
なるほど、という感じの表情を浮かべる米原。
(となると葭谷と言う人についての情報収集だな。)
「よし、ありがとう。もう戻って大丈夫だ。」
「うん。」

ここ異能学園はコの字型になっていて、2、3年生の部分、1年とプール、体育館や講堂などのある部分、そして職員室や特別教室がある部分に分かれている。それぞれ4階と屋上がある。
水瀬は葭谷のいる、正式には居たはずの3年C組へ向かう。
その教室のドアを開け、
「超能力部生徒会副会長の水瀬遥斗です。とある調査の為に情報提供をお願いしたいのですが、どなたかお願いできますか?」
すると教室の前の方の机に固まって弁当を食べている女子3人がイコイコ〜なんていいながらドアの方へ向かう。
水瀬は3人を外に出し、いくつか聞く。
「このクラスに葭谷と言う人がいると思うのですが、今日は来てますか?」
「......葭谷?聞き覚えがないけど。もしかして見間違えとかではないの?」
慌てて名簿を見直すがやはり葭谷と言う人は3年C組にいる。
(名簿の年数も一致している。と言うことは忘れているのか?何者かによって?)
水瀬は3人に名簿を見せ、
「この名簿には確かに葭谷と言う人はいるのですが、本当にそんな人はいなかったのですか?」
「ええ、いませんでしたよ」
「......なら出席番号32番の生徒は誰なんです」
「えーとこの名簿で言えばちょうど1人ずつ詰める感じかな?でも何でこんな名簿が見つかったんだろう?」
水瀬は色々と考えていたが、
「......貴重な時間と情報提供、有難うございます。ではこれで失礼します」
女子生徒は何だろうねー、などと話しながら教室へ戻っていった。
(さて、名簿に架空の名前があり、それがその殺された生徒ということはあまりにも偶然すぎる。生徒の記憶を操作していると考えるべきなのか?)
生徒の記憶からは情報収集できないのであれば、資料を使うべきだ。
異能学園のデータベースには全生徒の多くの情報が保存されている。
そこで葭谷と言う人について調べれば又何か有力な情報が出てくるかもしれない。
と、そこでビー、と言う予鈴がなり、水瀬は調査をやめ教室へ戻る。

放課後、生徒会室にいたのは水瀬、生徒会会長の西堂美琴、他会計など計4名。
水瀬はpcを使いデータベースにアクセスする。
3年C組32番、そこにあったのは葭谷ではなかった。
きっちりと1人ずつ前の番号に詰めてある。
(ここまでは予想の範囲内だ。)
生徒の記憶を操作してしまうような奴だ。データベースの改ざんくらい既に済ましているのが普通だろう。
しかし水瀬はデータが消えてしまった時のために、予めデータをコピーしている。
そこに書いてあった葭谷のデータ
(魔法部か、成績は......かなりいいな。通知表の教師のコメントにはとても礼儀正しく、優しい...?教師を怒らせた、と言う可能性は低いな。)
 というか、そもそも記憶操作術をそう簡単に扱えるのだろうか。魔法や超能力の腕がどれだけ良くても大変な術は大変だ。
やはりその教員以外にも犯人はいるのだろうか。
(ならば次は事件現場か。)
米原は倉庫の裏、奥の方で見たと言っていた。水瀬も倉庫の裏へ向かう。
しかしそこにあったのはただの地面。血痕はどこにもない。本当にここで事件があったのか、疑いたくなるほどに。
証拠や手掛かりはないかと砂を払っていると
(魔法陣?ここで何か術式が使用されたのか?)
砂をどけると魔法陣の形に焦げた土が現れた。まだ他にも証拠があるかもしれない、と砂を払う。
すると、もう一つ魔法陣が出てきた。さらにもう一つ、更に1つ......地面に大量の魔法陣の跡がある。
水瀬は使われた術式を逆算で求める。
焦げた魔法陣の跡は再び光りだす。
そして浮かぶ術式は
(魔力吸収術?これは魔法刻石を体の内側に入れないといけないはず。口に入れると大概は脳が停止していても拒絶反応を引き起こすはず......
だからハサミを使って体内に刻石を入れた?)
魔力吸収術は相手の魔力を自分の魔力にする技
そして、これだけ魔法陣があると言うことはその人数、人が死んだと言うことだ。
犯人か1人かは分からないが、魔力が目的だった可能性は高い。
しかし
(死体はどこにある?)
魔力を吸った死体を大量に捨てられる場所などあるのだろうか。
更に奥に進み砂を掃くと、さっきより大きな魔法陣が現れる。

逆算によって判明した術式は閉錠術式。
つまりこれを開けると中に隠し部屋か何かがある。
(しかし、これがトラップということは無いとしても、部外者が入るとアラームが鳴るかもしれない。次に準備をしてもう一度くるか。)
そう考えひとまず生徒会室へ戻った。

生徒会室へ向かう途中、教員とすれ違った。しかし、
その教員はブルーシートに何かを包み肩に担ぎ運んでいた。
(あれはもしや?)
すると教員は声をかける。
「水瀬か。どうしてこんなところにいる?生徒会室は向こうだぞ?」
水瀬は緊張で汗が出るが、咄嗟に嘘をつく
「ある生徒がトイレが流れにくかったと言っていたのでその調査に。ですが、何事もございませんでした。」
「......そうか、ご苦労」
教員はそのまま水瀬の来た道へ向かう。
(あの態度、怪しいとは思えない。しかし米原の言うブルーシートを担いでいたし、さっきの現場に向かっていた。)
これは情報を探るチャンスだったが、さっきの教員に怪しまれた手前、見つかるかもしれない。
今日は多くの情報を得たが、断定する事はまだ少し時間がかかる。
いずれにせよ、ただの殺人ではなく、計画的、そして組織的な犯行である事、既に何人もの生徒があそこで死んでいる事などが分かった。
明日は地面の下の部分に関して調べる。

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