英雄殺しの魔術騎士
第25話「二人の《姫》」
「ああ、もう!   やっぱり始まっちまったかよ、くそったれが……っ!」
試合開始の合図を耳にしたアランは、怒りを口から漏らし激情に身を任せて、目の前に広がる見えない壁を強く叩いた。
そう、見えない。確かに眼前にあるというのに、そこには存在しない不可視の壁がある。
この矛盾を証明するに考えられる可能性は、ただ一つ。これは間違いなく結界魔術による範囲結界だ。
「しかもご丁寧に『人払い』と『認識阻害』、挙句に『拒絶』の三重張り……。リリアナさん並みの実力者じゃねぇと、ここまで鮮やかな結界は作れないぞ……」
魔術は発動する際、以前発動した魔術が起動したまま周囲に存在した場合、相互に干渉を起こし正常に発動しない。「魔術大三原則」ーー魔術師ならば誰もが知る常識の中の常識だ。
だがこの結界は目的の異なる三つの結界魔術が掛け合わされる事で、本来よりも強固に、そして繊細に魔術方陣が組み合わされている。殺戮番号No.4、世界屈指の結界術師と謳われるリリアナですら、慎重に扱う部類の芸当だ。
そんなものが帝都の工業区、しかも何の変哲も無い普通の家屋に仕掛けられている。それを異常と察知しなくて何と捉えられるのだろうか。
まず、はじめに結界の構成術式を読み解いたアランは、次に結界の要となる刻印された術式を探す。
「……まあ、言わずもがな、あの家の中だろうけど」
結界魔術を展開する場合、結界の魔術方陣もしくは魔術方陣が刻印された魔道具は、可能な限り結界の内側に書いておく。これは結界魔術の基礎中の基礎だ。
自分の実力に自信がある者は、魔道具などは手に持って移動することが多いが、結界の維持に神経と魔力を削がれながら守ることは難しい。ゆえに常識的に考えて、要は家屋内にあるとアランは踏んだ。
アランの立つ位置からおよそ五メートル先に立つ、廃墟と化した家屋。その造りから察するに、古びた鍛冶場であることが分かる。
……けど見た感じ、それほど古い家って訳でも無い。となれば可能性は一つ、か。
推測を確立させたアランは、ベルトポーチから白紙の術符を取り出し、さらに万年筆を取り出して解術に必要な魔術式を描く。要する時間はわずか十秒弱、驚異的な早さだ。
これで結界を一時的に解除できるはずだ。その間に内部へと侵入し、結界の要を破壊する。そう考え、術符を壁に叩きつけたアランであった。
だが、
「……ちっ、やっぱし無理か」
確かに術符は、アランの魔力を吸い取って機能を果たした。それは誰よりも、術者であるアランが理解している。
しかし残念なことに、この結界には『拒絶』という効果が仕込まれているのだ。
拒絶。それは外部からの物理的および魔術的な攻撃を全て防ぐと同時に、毒ガスや目眩しといった奇襲攻撃にすら対応できる特別な結界だ。
弱点といえば消費魔力が尋常では無いことと、内部からの衝撃にすこぶる弱いという二点のみ。つまり、内部に侵入されない限りはほぼ無敵を誇る結界魔術なのだ。
「さて、どうする……?」
眉間に皺を寄せながら次手を考えるアランの顔はどこか険しい。術符で結界を緩和して道を拓く方法が失敗した以上、アラン自身で行える手段を持ち得ていないからだ。
術符に先程のとは異なる、強引にこじ開ける方法の魔術式を書き、それを結界に叩きつけるという手段もある。だが、結界に使用されていた魔力が爆発して半径三キロメートル程度の被害が考えられる。
ここが工業区であり昼間である以上、人的被害は無限大だ。最悪、数百人の死者が出ないとも限らない。
そういう時の決定権は第一騎士団の団長であるリカルドか、もしくは皇帝であるヴィルガが持っている。
だが残念なことに、術符を利用した念話魔道具ーー魔接機は、今アランの手元にない。緊急用として、セレナに渡してしまった。
もはや八方塞がり。最適解が脳裏に浮かばず、ついに苛立ち始めるアラン。
「ーーあれ、そこにいるのはアラン君じゃないか」
すると幸か不幸か、アランの前に現れたのは第一騎士団であり殺戮番号として同僚。殺戮番号No.5のトーマス=ヴェンソンであった。
「トーマスさんか。こんな場所に何か用なのか?」
「いやいや。こんな普通な場所に、こんな異常なほど繊細で緻密、そして頑丈な結界を作る物好きを見に来たんだ〜。もしやこれはアラン君が?」
「トーマスさんなら見れば分かるだろう?   当然ながら俺じゃない。むしろこれが邪魔で仕方がないんだ」
「あ、やっぱり?   その顔を見てそうだと思ったよ〜」
あははは〜、と何が面白いのか理解不能だが楽しそうに笑うトーマス。しかし、ひとしきり笑ったトーマスは瞬時に顔を険しくした。
たとえ性格が苦痛快楽主義のド変態だとしても、その本質は千の魔術師を単騎にて相手にできる帝国騎士。アランの表情から緊迫した状況を読み取った。
「ーー急用かい?」
「ああ、この中に用事がある」
「了解。見るよ」
ふぅ、と息を吸うと、トーマスは自身の両目に魔力を集中させる。すると真っ黒な双眸が薄紫色へと変貌した。『魔眼』を使用したのだ。
術殺しの魔眼、それがトーマスの最強にして最大の武器。あらゆる魔術の魔術方陣を見て、解析し、そして破壊することができる。魔術師にとっての最たる天敵だ。
「…………」
その眼をもってトーマスは廃屋に展開された結界を見る。魔眼を持つ者は展開された魔術方陣からあらゆる情報を読み取れる。だがそれは、魔眼の能力の一端でしかない。
魔眼持ちが重宝される理由はいくつかあるが、その中の一つ。視認が絶対に不可能と言われる魔力を、その眼で捉えることができるのだ。
そして魔力を見ることができるということは、魔術に作用している魔力の流れも視覚化できるということ。トーマスはその力を使い結界の要をまずは探した。
「どうやら基本に忠実に、要は結界内にあるみたいだね。なら次は、この結界を解析しようかなーーーー」
どうやらアランの推察通り、要は結界の内部にあったらしい。それが確認できたトーマスは、視線をずらし結界に焦点を当てようとした。
その時だった。
「「ーーーーッ!?」」
まるでボディーブローでもくらったかのような、腹部の奥にまで伝わる強い衝撃。がらりと何かが変わったかのように、体を包み込む空気が変貌を遂げる。
その正体はすぐにわかった。
何せすぐそばには魔力をその目で見ることができる人物、トーマスがいるのだ。彼が向いている方向が、原因であるに決まっている。
ーー否。そんなことが無くとも、この常識外の圧力に気付かないはずが無かった。
二人が同時に振り向いた方角は南南西。そこには帝都の景観から抜き出るように聳える、聖堂に似た建築物が見えた。
「学院……まさか、これは姉さんなのか……?」
「いや、二人だよ。誰かは分からないけどね」
「二人……」
その二人にアランは覚えがあった。というか、絶対にユリアとシルフィアだと確信していた。根拠は無いが、そうでなければ状況が証明できない。
時間的に察するに、残り試合時間はおよそ五分。今になってようやく、本気を出さなければならないと理解したとは考えにくい。
……何が起きているんだ?
その魔力の奔流が何を表しているのか定かではない。もしかしたら、何か途轍もないことが起きているのかもしれない。
だが、これが異常事態ならば、各騎士団長や皇族を守護する第二騎士団の精鋭、さらには殺戮番号までもが動くだろう。あちらに何があっても大丈夫だと言える要素は、十分にある。
「トーマスさん、急ぎで頼む」
「了解。三十秒くらい待ってね……」
結界の読み取りを始めるトーマスを視界の傍らに、何が起きても大丈夫なようにアランは左手を剣の柄へ、右手に魔石を掴み取る。
高鳴る鼓動を抑制しながら、今か今かと集中力を尖らせていく。鋭さを増すアランの気配に呼応するように、空気は熱を帯び、チリチリと石畳が音を鳴らす。
だが、この時アランは知らなかった。
良くも悪くも、アランに匹敵するであろう実力者が、新たに二人も誕生した瞬間を。
◆
本気を出さなければ勝つことはできない。互いに悟った二人が次に行った行動は、まさかの後退であった。
ざわめく観衆、謎の行動に唖然とする帝国騎士たち。先の読めない事の運びに、思わずヴィルガですら眉間に皺を寄せた。
だが、その中で唯一何が始まろうとしているのかを察知できた人物がいた。言うまでもなく、リカルドである。
「来たか」
「何が?」
リカルドの不穏な言葉にヴィルガは思わず聞き返すが、リカルドは黙って見てろよとでも言うように、会場の方を指し示した。
だだっ広い会場に蔓延する、感じの悪い静けさの中で、二人はじっと互いを見つめ合う。
心の中では賞賛を送りながら、それでもまだ何か物足りないと訴えたそうな目を互いに向け合い、それを理解した二人はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「強いね、シルねぇ」
「お互い様でしょ?   もっと楽だと思っていたのに……」
「でも、これで分かった」
「ええ、私も理解したわ」
「「このままじゃ、勝てない」」
それは、密度の高い帝国騎士としての経験から推測した、シルフィアの確信。
それは、未だ底の見えない圧倒的な才能から予測した、ユリアの確信。
そして確信してしまった以上、この期に及んで全力で戦わないという行為は、自身の過信であると同時に、相手への侮辱である。
騎士道精神。それが試された。
ユリアもシルフィアも愚かではない。自身の力に絶対的なものを抱かず、また同時に自身の実力が同年代たちとは異質だということを理解している。
だがそれでも、二人が目指す背中はーーさらに前へと存在していた。
だから怖くない。二人の瞳に恐れや悲しみなどは微塵に無く、ただただ静かに、敵意と活力に燃え滾っていた。
すぅ、と息を吸う。たったそれだけの行為が全身の魔力を鮮明に知覚させ、操作を容易にさせる。
次の瞬間、ユリアは全魔力を右大腿部へと集約させた。視覚化されるほどの濃密な魔力が大腿部へと集まり、それにより一つの現象が生み出された。
「それは……紋章?」
さっきまでそこには無かったもの。ユリアの魔力に呼応するように、突如として姿を現し発光現象を起こしたそれは、瞬きすら忘れてしまうほど美しかった。
浮かび上がった紋章は一瞬にして観衆へと伝播し、歓声をあげる彼らにすら沈黙を強制させるほど、鮮やかに輝いていた。
だが、この会場の中でそれを知っていた彼らは、これだけでは終わらないことを知っている。「心の紙片」に刻まれたその詞を、ユリアはゆっくりと、しかし適確に語り出した。
「《我は大地の始祖を胎動せし、豊穣と混沌の美姫なりーーーー」
紡がれる言葉によって、紋章はさらに輝きを増し、それに合わせてユリアの周囲にいくつもの魔術方陣が出現した。
その正体を知っている。ほんの三週間ほど前、彼ら千を超える帝国騎士は、同じ現象を同じ会場にて目撃したはずだ。
だがそれでも、この魔術が人類という枠組みから逸脱した物だと知るものは、会場内に両手の指ほどしかいないだろう。
そしてその中に、ーーシルフィアはいた。
「ふーん。やっぱりユリアも、そこに辿り着いちゃったのか」
「…………?」
シルフィアが何を言っているのか理解できない。それではまるでーー彼女自身も、『これ』を会得したような言い方ではないか。
だが、ユリアが完全に否定するよりも先に、シルフィアが行動に出た。
ユリアを超える膨大な魔力を、一気に自身の胸部へと集約。気圧の変動に会場に暴風が吹き乱れる。
依然ユリアは沈黙を続けた。詠唱を始めた以上、そのほかの言葉を口にしては詠唱が失敗となり、また一からのやり直しとなってしまうからだ。そうなれば間違いなくユリアは負けるだろう。
しかしそれ以上に、ありえない、という思考が感情を支配していた。
今からユリアが使うのは、この大陸で技法をアランただ一人が知る魔術。未だ使える者は片手の指ほどしか存在しない、究極の魔術だ。
アランのレクチャーのもとで教わったユリアでさえ、習得するのに二週間近くの時間を必要とした。才能があると見込まれたユリアですらだ。
それに対してシルフィアは白紙だ。何のヒントもなく、たとえその存在を知ったところで、方法が分からなければたどり着けるはずがない。
どうやってーーと、ユリアが思案していると、シルフィアは唐突に一言だけ述べた。
「ーーアランの部屋」
「…………っ!」
そうか、その可能性があった。ユリアは今になって気が付き、悔しそうに、そして苛立ちを踏まえて歯を強く噛み締めた。
ユリアたちの実家ーーグローバルト家の屋敷内には、言わずもがな家族であるアランの部屋も存在する。
アランが帝国騎士として働いた数年で集めた物や、アランが帝国騎士になる前の学院生だった頃の物。その全てが保管されている。ユリアが腰に提げている剣だって、アランの部屋から収集したものだ。
魔術的知識を多くは持たないユリアは、アランの部屋で埃を被った資料の数々を、ただの物だとしか思わなかったが、シルフィアは違う。それが人々に語られない謎の多い知識だと、シルフィアは知っている。
そしてその中には、アランが究明した魔術ーー【顕現武装】に関する書物だってあるはずだ。
それをシルフィアは見つけた。偶然とも呼べるような発見だったが、資料に記された内容は、瞬く間にシルフィアを魅了した。この魔術を身につけたいと思ったことは言うまでもない。
あれから数年が経ち、ようやく「使える」と断定できる領域まで到達したシルフィア。だが、安定した平和な世界でこんな桁外れの力を使う機会もなく、日々は静かに過ぎていた。
しかしそんな折に、こうしてユリアが同じ壇上へと立った。そうなってしまった以上、シルフィアが隠す必要は無くなったというわけだ。
だからシルフィアは唱えた。久々に思い出した詩を語るように、滑らかに、そして力強くーーーー。
「《唄え、唄え、美しき詩を。踊れ、踊れ、華麗なる水面にてーーーー」
その詠唱を機に、ユリアの疑念は確固たる真実へと変貌した。しかし、だからといってユリアが選択できる手段はたった一つ。
「ーー我より全は始まり、全は我が胎へと還る。すなわち我は原初にして始源ーー」
たとえ何があっても、この詠唱は止めてはならない。その決意を胸に、ユリアは口を動かす。
「ーー海より出でし美しき悪魔。私の言葉は否応無しに人を惑わすーー」
詠唱が進むたびに二人の魔力は共鳴し合うかのように高鳴り、魔力波動は会場を包む結界を容赦なく軋ませていた。
超常的な光景に、ある者は気圧されたように身を硬直させ、またある者はその瞬間を待ち侘びるように、頬をつり上げて笑みを浮かべる。
一瞬のまばたき。その途轍もなく短い時間ですら、観衆の彼らには決して見逃せない時間であった。
いや、その言い方は正しくない。
研ぎ澄まされた空間の中で放たれる異常なほどの魔力波動は、まるで喉元に短剣を突き立てられた状態。まばたきの最中に自分が殺されてしまうのではと、本能的に恐怖を感じてしまうのだ。
その一瞬のためならば目の乾燥など惜しくないと、観衆は必死にその時が訪れるまで会場に立つ二人を凝視する。観るためではなく、生きるために。
「ーー開幕の旋律は我が歌声にて語られようーー」
「ーーゆえに悪魔にして麗しき魔女ーー」
そして長い詠唱が紡がれ、最後の言葉を唱えようとした瞬間、二人の膨れ上がった魔力は一気に体内へと潜り込んだ。
魔力はそのまま身の内へと浸透し、身体にあるとされる「心の紙片」に変革をもたらす。
そしてーーーー
「ーー唄え、創世の賛美歌を》!」
「ーーだが私は、果て無き苦悩より人々を救う安寧の聖女なり》!」
最後の一句を唱え終えると、突如発生した大爆発によって砂煙が生まれた。濃霧のように砂煙が視界を遮り、二人の様子を知ることができない。
だが、煙が晴れた次の瞬間、誰もが息を飲んだ。
そこには二人の聖女が立っていた。
ショートヘアの銀髪は琥珀色に染まり、鮮血のように真っ赤な瞳は澄んだ銅の色へと変貌していた。
その身を包むのは変わらず学院の制服だが、それは先ほどまでの制服とは異なり、魔力により編まれた特別な衣服。古代の防具にすら匹敵し、圧倒的な防御力を誇る。
そして何より目を惹きつけたのは、頭部と背部に生えた角と翼だ。それはまるで人の形を成した竜のようで、ユリアの本能にも似た才能が具現しているようだった。
「ーー《大地殻の竜姫》」
そう口ずさむユリアは、まるで災厄の権化と謳われる竜種を統べる、麗しき姫君のようであった。
そして、もう一人もまた美しかった。
煎茶色のロングヘアはカルサ共和国の海のように美しい群青色に染まり、ナイルブルーの双眸もまた群青色へと染まっている。
しかし、何より彼女が視線を集める原因となったのは、彼女の身格好であった。
ノースリーブワンピースのような純白の衣服をその身にまとい、しかしそれ以上の装飾は何一つとして無い。穢れ無き玉肌は情欲を駆り立て、ワンピースから覗くすらっとした脚は男の秘めたる欲望を奮わせる。
扇情的、その言葉に尽くされた。
そして、手に持つのは剣ーーではなく杖。しかも人の手では決して成し得ないであろう、膨大な自然の力で生み出された氷の杖だ。
「ーー《絶海の蒼姫》」
さながら物語に出てくる、純潔として名高き湖の乙女のように、シルフィアの姿は凝視することすら躊躇ってしまうほどに麗しく、そして艶やかだった。
およそ人とは思えないほどに美しく、凄まじい力を持つ二人は、互いを視野に入れて、よりいっそうに敵意を剝きだす。
「「…………」」
人智を逸脱した濃密な魔力は、二人の間で衝突し合うと、バチバチと音を立てて断続的に空気を炸裂させている。
まったくもって異質な光景だ。二人を取り囲むこの場、この領域において、理論という概念が放り捨てられたように、全てが常識を破綻させている。
そして、互いを警戒する猛獣のように睨み合っていた二人は、同時にその手に持つ得物を構える。ユリアはアランの手製剣を、シルフィアは氷の錫杖を。
「行くよ、シルねぇ」
「行くわよ、ユリア」
言葉を投げ合い、ユリアとシルフィアは相手めがけて駆け出した。人の域を超えた二人は得物を振り上げ、巨岩をも粉砕する一撃を相手へと振り下ろす。
そして次の瞬間、ーー会場は大きな震動に襲われた。
試合開始の合図を耳にしたアランは、怒りを口から漏らし激情に身を任せて、目の前に広がる見えない壁を強く叩いた。
そう、見えない。確かに眼前にあるというのに、そこには存在しない不可視の壁がある。
この矛盾を証明するに考えられる可能性は、ただ一つ。これは間違いなく結界魔術による範囲結界だ。
「しかもご丁寧に『人払い』と『認識阻害』、挙句に『拒絶』の三重張り……。リリアナさん並みの実力者じゃねぇと、ここまで鮮やかな結界は作れないぞ……」
魔術は発動する際、以前発動した魔術が起動したまま周囲に存在した場合、相互に干渉を起こし正常に発動しない。「魔術大三原則」ーー魔術師ならば誰もが知る常識の中の常識だ。
だがこの結界は目的の異なる三つの結界魔術が掛け合わされる事で、本来よりも強固に、そして繊細に魔術方陣が組み合わされている。殺戮番号No.4、世界屈指の結界術師と謳われるリリアナですら、慎重に扱う部類の芸当だ。
そんなものが帝都の工業区、しかも何の変哲も無い普通の家屋に仕掛けられている。それを異常と察知しなくて何と捉えられるのだろうか。
まず、はじめに結界の構成術式を読み解いたアランは、次に結界の要となる刻印された術式を探す。
「……まあ、言わずもがな、あの家の中だろうけど」
結界魔術を展開する場合、結界の魔術方陣もしくは魔術方陣が刻印された魔道具は、可能な限り結界の内側に書いておく。これは結界魔術の基礎中の基礎だ。
自分の実力に自信がある者は、魔道具などは手に持って移動することが多いが、結界の維持に神経と魔力を削がれながら守ることは難しい。ゆえに常識的に考えて、要は家屋内にあるとアランは踏んだ。
アランの立つ位置からおよそ五メートル先に立つ、廃墟と化した家屋。その造りから察するに、古びた鍛冶場であることが分かる。
……けど見た感じ、それほど古い家って訳でも無い。となれば可能性は一つ、か。
推測を確立させたアランは、ベルトポーチから白紙の術符を取り出し、さらに万年筆を取り出して解術に必要な魔術式を描く。要する時間はわずか十秒弱、驚異的な早さだ。
これで結界を一時的に解除できるはずだ。その間に内部へと侵入し、結界の要を破壊する。そう考え、術符を壁に叩きつけたアランであった。
だが、
「……ちっ、やっぱし無理か」
確かに術符は、アランの魔力を吸い取って機能を果たした。それは誰よりも、術者であるアランが理解している。
しかし残念なことに、この結界には『拒絶』という効果が仕込まれているのだ。
拒絶。それは外部からの物理的および魔術的な攻撃を全て防ぐと同時に、毒ガスや目眩しといった奇襲攻撃にすら対応できる特別な結界だ。
弱点といえば消費魔力が尋常では無いことと、内部からの衝撃にすこぶる弱いという二点のみ。つまり、内部に侵入されない限りはほぼ無敵を誇る結界魔術なのだ。
「さて、どうする……?」
眉間に皺を寄せながら次手を考えるアランの顔はどこか険しい。術符で結界を緩和して道を拓く方法が失敗した以上、アラン自身で行える手段を持ち得ていないからだ。
術符に先程のとは異なる、強引にこじ開ける方法の魔術式を書き、それを結界に叩きつけるという手段もある。だが、結界に使用されていた魔力が爆発して半径三キロメートル程度の被害が考えられる。
ここが工業区であり昼間である以上、人的被害は無限大だ。最悪、数百人の死者が出ないとも限らない。
そういう時の決定権は第一騎士団の団長であるリカルドか、もしくは皇帝であるヴィルガが持っている。
だが残念なことに、術符を利用した念話魔道具ーー魔接機は、今アランの手元にない。緊急用として、セレナに渡してしまった。
もはや八方塞がり。最適解が脳裏に浮かばず、ついに苛立ち始めるアラン。
「ーーあれ、そこにいるのはアラン君じゃないか」
すると幸か不幸か、アランの前に現れたのは第一騎士団であり殺戮番号として同僚。殺戮番号No.5のトーマス=ヴェンソンであった。
「トーマスさんか。こんな場所に何か用なのか?」
「いやいや。こんな普通な場所に、こんな異常なほど繊細で緻密、そして頑丈な結界を作る物好きを見に来たんだ〜。もしやこれはアラン君が?」
「トーマスさんなら見れば分かるだろう?   当然ながら俺じゃない。むしろこれが邪魔で仕方がないんだ」
「あ、やっぱり?   その顔を見てそうだと思ったよ〜」
あははは〜、と何が面白いのか理解不能だが楽しそうに笑うトーマス。しかし、ひとしきり笑ったトーマスは瞬時に顔を険しくした。
たとえ性格が苦痛快楽主義のド変態だとしても、その本質は千の魔術師を単騎にて相手にできる帝国騎士。アランの表情から緊迫した状況を読み取った。
「ーー急用かい?」
「ああ、この中に用事がある」
「了解。見るよ」
ふぅ、と息を吸うと、トーマスは自身の両目に魔力を集中させる。すると真っ黒な双眸が薄紫色へと変貌した。『魔眼』を使用したのだ。
術殺しの魔眼、それがトーマスの最強にして最大の武器。あらゆる魔術の魔術方陣を見て、解析し、そして破壊することができる。魔術師にとっての最たる天敵だ。
「…………」
その眼をもってトーマスは廃屋に展開された結界を見る。魔眼を持つ者は展開された魔術方陣からあらゆる情報を読み取れる。だがそれは、魔眼の能力の一端でしかない。
魔眼持ちが重宝される理由はいくつかあるが、その中の一つ。視認が絶対に不可能と言われる魔力を、その眼で捉えることができるのだ。
そして魔力を見ることができるということは、魔術に作用している魔力の流れも視覚化できるということ。トーマスはその力を使い結界の要をまずは探した。
「どうやら基本に忠実に、要は結界内にあるみたいだね。なら次は、この結界を解析しようかなーーーー」
どうやらアランの推察通り、要は結界の内部にあったらしい。それが確認できたトーマスは、視線をずらし結界に焦点を当てようとした。
その時だった。
「「ーーーーッ!?」」
まるでボディーブローでもくらったかのような、腹部の奥にまで伝わる強い衝撃。がらりと何かが変わったかのように、体を包み込む空気が変貌を遂げる。
その正体はすぐにわかった。
何せすぐそばには魔力をその目で見ることができる人物、トーマスがいるのだ。彼が向いている方向が、原因であるに決まっている。
ーー否。そんなことが無くとも、この常識外の圧力に気付かないはずが無かった。
二人が同時に振り向いた方角は南南西。そこには帝都の景観から抜き出るように聳える、聖堂に似た建築物が見えた。
「学院……まさか、これは姉さんなのか……?」
「いや、二人だよ。誰かは分からないけどね」
「二人……」
その二人にアランは覚えがあった。というか、絶対にユリアとシルフィアだと確信していた。根拠は無いが、そうでなければ状況が証明できない。
時間的に察するに、残り試合時間はおよそ五分。今になってようやく、本気を出さなければならないと理解したとは考えにくい。
……何が起きているんだ?
その魔力の奔流が何を表しているのか定かではない。もしかしたら、何か途轍もないことが起きているのかもしれない。
だが、これが異常事態ならば、各騎士団長や皇族を守護する第二騎士団の精鋭、さらには殺戮番号までもが動くだろう。あちらに何があっても大丈夫だと言える要素は、十分にある。
「トーマスさん、急ぎで頼む」
「了解。三十秒くらい待ってね……」
結界の読み取りを始めるトーマスを視界の傍らに、何が起きても大丈夫なようにアランは左手を剣の柄へ、右手に魔石を掴み取る。
高鳴る鼓動を抑制しながら、今か今かと集中力を尖らせていく。鋭さを増すアランの気配に呼応するように、空気は熱を帯び、チリチリと石畳が音を鳴らす。
だが、この時アランは知らなかった。
良くも悪くも、アランに匹敵するであろう実力者が、新たに二人も誕生した瞬間を。
◆
本気を出さなければ勝つことはできない。互いに悟った二人が次に行った行動は、まさかの後退であった。
ざわめく観衆、謎の行動に唖然とする帝国騎士たち。先の読めない事の運びに、思わずヴィルガですら眉間に皺を寄せた。
だが、その中で唯一何が始まろうとしているのかを察知できた人物がいた。言うまでもなく、リカルドである。
「来たか」
「何が?」
リカルドの不穏な言葉にヴィルガは思わず聞き返すが、リカルドは黙って見てろよとでも言うように、会場の方を指し示した。
だだっ広い会場に蔓延する、感じの悪い静けさの中で、二人はじっと互いを見つめ合う。
心の中では賞賛を送りながら、それでもまだ何か物足りないと訴えたそうな目を互いに向け合い、それを理解した二人はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「強いね、シルねぇ」
「お互い様でしょ?   もっと楽だと思っていたのに……」
「でも、これで分かった」
「ええ、私も理解したわ」
「「このままじゃ、勝てない」」
それは、密度の高い帝国騎士としての経験から推測した、シルフィアの確信。
それは、未だ底の見えない圧倒的な才能から予測した、ユリアの確信。
そして確信してしまった以上、この期に及んで全力で戦わないという行為は、自身の過信であると同時に、相手への侮辱である。
騎士道精神。それが試された。
ユリアもシルフィアも愚かではない。自身の力に絶対的なものを抱かず、また同時に自身の実力が同年代たちとは異質だということを理解している。
だがそれでも、二人が目指す背中はーーさらに前へと存在していた。
だから怖くない。二人の瞳に恐れや悲しみなどは微塵に無く、ただただ静かに、敵意と活力に燃え滾っていた。
すぅ、と息を吸う。たったそれだけの行為が全身の魔力を鮮明に知覚させ、操作を容易にさせる。
次の瞬間、ユリアは全魔力を右大腿部へと集約させた。視覚化されるほどの濃密な魔力が大腿部へと集まり、それにより一つの現象が生み出された。
「それは……紋章?」
さっきまでそこには無かったもの。ユリアの魔力に呼応するように、突如として姿を現し発光現象を起こしたそれは、瞬きすら忘れてしまうほど美しかった。
浮かび上がった紋章は一瞬にして観衆へと伝播し、歓声をあげる彼らにすら沈黙を強制させるほど、鮮やかに輝いていた。
だが、この会場の中でそれを知っていた彼らは、これだけでは終わらないことを知っている。「心の紙片」に刻まれたその詞を、ユリアはゆっくりと、しかし適確に語り出した。
「《我は大地の始祖を胎動せし、豊穣と混沌の美姫なりーーーー」
紡がれる言葉によって、紋章はさらに輝きを増し、それに合わせてユリアの周囲にいくつもの魔術方陣が出現した。
その正体を知っている。ほんの三週間ほど前、彼ら千を超える帝国騎士は、同じ現象を同じ会場にて目撃したはずだ。
だがそれでも、この魔術が人類という枠組みから逸脱した物だと知るものは、会場内に両手の指ほどしかいないだろう。
そしてその中に、ーーシルフィアはいた。
「ふーん。やっぱりユリアも、そこに辿り着いちゃったのか」
「…………?」
シルフィアが何を言っているのか理解できない。それではまるでーー彼女自身も、『これ』を会得したような言い方ではないか。
だが、ユリアが完全に否定するよりも先に、シルフィアが行動に出た。
ユリアを超える膨大な魔力を、一気に自身の胸部へと集約。気圧の変動に会場に暴風が吹き乱れる。
依然ユリアは沈黙を続けた。詠唱を始めた以上、そのほかの言葉を口にしては詠唱が失敗となり、また一からのやり直しとなってしまうからだ。そうなれば間違いなくユリアは負けるだろう。
しかしそれ以上に、ありえない、という思考が感情を支配していた。
今からユリアが使うのは、この大陸で技法をアランただ一人が知る魔術。未だ使える者は片手の指ほどしか存在しない、究極の魔術だ。
アランのレクチャーのもとで教わったユリアでさえ、習得するのに二週間近くの時間を必要とした。才能があると見込まれたユリアですらだ。
それに対してシルフィアは白紙だ。何のヒントもなく、たとえその存在を知ったところで、方法が分からなければたどり着けるはずがない。
どうやってーーと、ユリアが思案していると、シルフィアは唐突に一言だけ述べた。
「ーーアランの部屋」
「…………っ!」
そうか、その可能性があった。ユリアは今になって気が付き、悔しそうに、そして苛立ちを踏まえて歯を強く噛み締めた。
ユリアたちの実家ーーグローバルト家の屋敷内には、言わずもがな家族であるアランの部屋も存在する。
アランが帝国騎士として働いた数年で集めた物や、アランが帝国騎士になる前の学院生だった頃の物。その全てが保管されている。ユリアが腰に提げている剣だって、アランの部屋から収集したものだ。
魔術的知識を多くは持たないユリアは、アランの部屋で埃を被った資料の数々を、ただの物だとしか思わなかったが、シルフィアは違う。それが人々に語られない謎の多い知識だと、シルフィアは知っている。
そしてその中には、アランが究明した魔術ーー【顕現武装】に関する書物だってあるはずだ。
それをシルフィアは見つけた。偶然とも呼べるような発見だったが、資料に記された内容は、瞬く間にシルフィアを魅了した。この魔術を身につけたいと思ったことは言うまでもない。
あれから数年が経ち、ようやく「使える」と断定できる領域まで到達したシルフィア。だが、安定した平和な世界でこんな桁外れの力を使う機会もなく、日々は静かに過ぎていた。
しかしそんな折に、こうしてユリアが同じ壇上へと立った。そうなってしまった以上、シルフィアが隠す必要は無くなったというわけだ。
だからシルフィアは唱えた。久々に思い出した詩を語るように、滑らかに、そして力強くーーーー。
「《唄え、唄え、美しき詩を。踊れ、踊れ、華麗なる水面にてーーーー」
その詠唱を機に、ユリアの疑念は確固たる真実へと変貌した。しかし、だからといってユリアが選択できる手段はたった一つ。
「ーー我より全は始まり、全は我が胎へと還る。すなわち我は原初にして始源ーー」
たとえ何があっても、この詠唱は止めてはならない。その決意を胸に、ユリアは口を動かす。
「ーー海より出でし美しき悪魔。私の言葉は否応無しに人を惑わすーー」
詠唱が進むたびに二人の魔力は共鳴し合うかのように高鳴り、魔力波動は会場を包む結界を容赦なく軋ませていた。
超常的な光景に、ある者は気圧されたように身を硬直させ、またある者はその瞬間を待ち侘びるように、頬をつり上げて笑みを浮かべる。
一瞬のまばたき。その途轍もなく短い時間ですら、観衆の彼らには決して見逃せない時間であった。
いや、その言い方は正しくない。
研ぎ澄まされた空間の中で放たれる異常なほどの魔力波動は、まるで喉元に短剣を突き立てられた状態。まばたきの最中に自分が殺されてしまうのではと、本能的に恐怖を感じてしまうのだ。
その一瞬のためならば目の乾燥など惜しくないと、観衆は必死にその時が訪れるまで会場に立つ二人を凝視する。観るためではなく、生きるために。
「ーー開幕の旋律は我が歌声にて語られようーー」
「ーーゆえに悪魔にして麗しき魔女ーー」
そして長い詠唱が紡がれ、最後の言葉を唱えようとした瞬間、二人の膨れ上がった魔力は一気に体内へと潜り込んだ。
魔力はそのまま身の内へと浸透し、身体にあるとされる「心の紙片」に変革をもたらす。
そしてーーーー
「ーー唄え、創世の賛美歌を》!」
「ーーだが私は、果て無き苦悩より人々を救う安寧の聖女なり》!」
最後の一句を唱え終えると、突如発生した大爆発によって砂煙が生まれた。濃霧のように砂煙が視界を遮り、二人の様子を知ることができない。
だが、煙が晴れた次の瞬間、誰もが息を飲んだ。
そこには二人の聖女が立っていた。
ショートヘアの銀髪は琥珀色に染まり、鮮血のように真っ赤な瞳は澄んだ銅の色へと変貌していた。
その身を包むのは変わらず学院の制服だが、それは先ほどまでの制服とは異なり、魔力により編まれた特別な衣服。古代の防具にすら匹敵し、圧倒的な防御力を誇る。
そして何より目を惹きつけたのは、頭部と背部に生えた角と翼だ。それはまるで人の形を成した竜のようで、ユリアの本能にも似た才能が具現しているようだった。
「ーー《大地殻の竜姫》」
そう口ずさむユリアは、まるで災厄の権化と謳われる竜種を統べる、麗しき姫君のようであった。
そして、もう一人もまた美しかった。
煎茶色のロングヘアはカルサ共和国の海のように美しい群青色に染まり、ナイルブルーの双眸もまた群青色へと染まっている。
しかし、何より彼女が視線を集める原因となったのは、彼女の身格好であった。
ノースリーブワンピースのような純白の衣服をその身にまとい、しかしそれ以上の装飾は何一つとして無い。穢れ無き玉肌は情欲を駆り立て、ワンピースから覗くすらっとした脚は男の秘めたる欲望を奮わせる。
扇情的、その言葉に尽くされた。
そして、手に持つのは剣ーーではなく杖。しかも人の手では決して成し得ないであろう、膨大な自然の力で生み出された氷の杖だ。
「ーー《絶海の蒼姫》」
さながら物語に出てくる、純潔として名高き湖の乙女のように、シルフィアの姿は凝視することすら躊躇ってしまうほどに麗しく、そして艶やかだった。
およそ人とは思えないほどに美しく、凄まじい力を持つ二人は、互いを視野に入れて、よりいっそうに敵意を剝きだす。
「「…………」」
人智を逸脱した濃密な魔力は、二人の間で衝突し合うと、バチバチと音を立てて断続的に空気を炸裂させている。
まったくもって異質な光景だ。二人を取り囲むこの場、この領域において、理論という概念が放り捨てられたように、全てが常識を破綻させている。
そして、互いを警戒する猛獣のように睨み合っていた二人は、同時にその手に持つ得物を構える。ユリアはアランの手製剣を、シルフィアは氷の錫杖を。
「行くよ、シルねぇ」
「行くわよ、ユリア」
言葉を投げ合い、ユリアとシルフィアは相手めがけて駆け出した。人の域を超えた二人は得物を振り上げ、巨岩をも粉砕する一撃を相手へと振り下ろす。
そして次の瞬間、ーー会場は大きな震動に襲われた。
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