英雄殺しの魔術騎士
第20話「古参は知に長けている」
魔力を感じ取る。それは、正しくはあれども正確な意味では無い。
実際は魔力では無く、体外に漏れ出る魔力によって発生する波動を感じ取ることによって、騎士や魔術師、魔術騎士は魔力の質や量を推測する。これを総じて『魔力波動』という。
では、魔力波動とはどのようにして発生しているのか。実を言うと、これに関しては未だ確固たる結論が出ていない。多くの学者が挑戦し続けた未知の命題だ。
だがかつて、とある学者は言った。
「魔力波動は心臓の鼓動のように一定の間隔で波動を生み出し、体調の具合や病気などによって微妙な変化を起こす。この微妙な変化によって我々は魔術師のコンディションを常に最善の状態に維持することが出来るのだ」
しかし、当時は魔力を感覚感知できる者はそう多くはおらず、出来たとしてもそれが正しいかまで感じ取れる、才ある者はいなかった。
この仮説が世に流れて早二百年。今やこの仮説すら、人々の知識から乖離しており、魔力波動を感知できる者達にとって「魔力は感じるもの」で収まっている始末だ。
だから、たとえ魔力を感知できたとしても、彼らは疑問を抱く事は無いし、もはや現代の学者はそれを学ぼうとすらしない。
ではどうして?   それはーーーー
「設定だよ」
「これもですか?」
カフェテラスの一席に座る金髪の男性ーーフェルダー=メルトクォリスは、器用にティースプーンを回しながら、端的に結論だけを述べる。
そんなフェルダーの向かいに腰を下ろす少女は、またかと思いながらも興味を惹かれるようで、首を傾げながらフェルダーが語るのを心待ちにしていた。
「お腹が空いたら何か口にする。眠たくなったら寝る。性欲を感じたらそれを発散する。古代では、これを『人の三大欲求』と言ったそうだ」
「それは知り得ています」
少女の内に植え付けられたそれの正体は、ツウィーダ=キメラニス。稀代のマッドサイエンティストであり、同時に多くの知識を有する知者でもある。
さらにツウィーダが編み出した【血盟契約】は、少女と同じようにツウィーダとして洗脳された他の人物が所持していた技術や知識を、まるで最初から自分の物だったかのように自在に扱うことが出来る。
もはやツウィーダ=キメラニスという存在は、全智の領域に足を踏み入れているのかもしれない。それほどに知っていた。
「しかし、どうしてそれが人にとって三大欲求となっているのか。それが生物的だから?   本能的だから?   いいや、それは大きな誤解だ。答えはーーこれが設定だからだ」
誰もが疑問に思わない、感じない、考えない。それは当然のようで、よく考えてみれば不思議でしかない。
だが、それを禁止され封印されている。それが今の人間だ。奴の手中から逃げ出さない限り、人間は人間の領域から抜け出せないのだ。
しかし、ここでツウィーダが疑問を提示する。
「ですが、二百年ほど前に、魔力波動について調べた学者が……」
「ああ、いたよ。けど、その学者が調べたせいで、奴は慌てて設定を弄った。結果として、奴は蓄えていた力を再度使う羽目になり、こうして僕達が何をしようと妨害してこないというわけだ」
ツウィーダすら知らない知識を、ペラペラと語り続けるフェルダー。その見た目は二十歳前後の青年だというのに、いまいち実態がつかめてこない。今の話だって、まるで見てきたようだ。
だが、それにツウィーダが反感を覚えることも、洗脳して知識を奪おうとも考えない。それはフェルダーが『大司教』だからなのか、それとも単にフェルダーが強いからなのか。ツウィーダ自身にすら推し測れない領域だった。
「さて、この事を理解した上で、僕達は魔力波動について語るとしようか」
「なるほど、周囲に聞かれたとしても、周囲の人間は気にするどころか、何を話しているのかすら理解できないのですね」
「そう。周囲には『話している』という概念しか発生しない。これも奴による人間への干渉の結果だ。覚えておくといいよ」
さて、話を戻そう。
「先程すれ違った青年の波動……君は感じたかな?」
「ええ、あれは酷い波長です」
ほんの十数分ほど前に、フェルダーとツウィーダは商業区にて、二人組の帝国騎士の男女とすれ違った。向こう側は何気ない顔をして、何気なく横を通り過ぎたが、フェルダーとツウィーダは別だ。
「魔力の波が不規則に荒れていた。まるで波長の合わない二つの波動を、無理やりに合成したような……そう、不協和音のようだ」
真理を知る者にとってその異常さは、感じていてこれ以上が無いほどに、気持ち悪かった事だろう。
「さっきも言ったけど、普通の人間は魔力波動の波長は一定で、ああはならない。たとえ身体が病魔に侵されていたとしても、波長は常に一定に揺れる」
「では、どうして彼は……」
「決まってる。あれは元の大きな波長を封じ込めたものの、封印が壊れかけている状態を表しているんだ」
「……彼の本気は、それほどに危険だと?」
「そうだね。もしも今、この瞬間に彼の封印が壊れたとしよう。すると半日とせずに、この帝都は間違いなく壊滅するだろうね」
「あの『生きる伝説』がいてもですか?」
「ああ。たとえ君の保有するツウィーダが幾百といても、司教が何人いても、そして僕という存在がいても。あれは物ともせずに殺戮してしまうだろうね」
「……笑えない話です」
微笑みながら恐ろしい事を言ってのけるフェルダーに対し、ツウィーダは呆れつつも顔を青ざめながら徐ろに紅茶を口に含んだ。
本当に恐ろしい事だ。今や大罪教の幹部である司教たちは、名だたる英雄ーーリカルドやジェノラフといった者達と、互角以上に戦えるだけの実力を備えている。
だが、フェルダーは今、そんな彼らの実力ですら敵わないと言った。それはつまり、封印の解かれたアランは人間では決して勝てないと言われたも同然。
竜の上位種ーー真竜の、さらなる上位個体である雷電の黄竜と互角に渡り合ったリカルドも、数千という敵兵を無傷で屠った伝説を持つジェノラフも。
そして、大罪教をまとめ上げ、さらには司教達を統括するフェルダーですらも。易々と「敵わない」と言ってしまえるほど、その実力は本物なのだ。
恐怖しか感じない。
けれども、とフェルダーは言った。
「封印の結びは固い。そう簡単に解けるほど、封印が脆くはなっていないみたいだ。こちらから何かしない限りはね」
それは、ツウィーダに教えを説くように。そして、今この場にいない誰かに忠告を与えるように。フェルダーの言葉は緩やかに紡がれた。
爽やかな笑みを浮かべるフェルダー。その正体が世界の巨悪であることを、彼らの横を通る人々は知らない。
いや、知る事すら出来なかった。
◆
フェルダー達が腰を落ち着けて、午後のひとときを楽しんでいる同時刻。皇帝城の中庭にて。
二人の男が剣を交えていた。
その剣戟は、もはや人が知覚する域を超越しており、一合交えるたびに吹き荒れる飄風は、祭典ムードで弛緩した空気を容易く引き裂く。
もっと簡単に言うならば、そばで見守っている複数人の侍女が「あ、やばい。ここにいたら余波で死んじゃう!?」と、自身の命の危機を察して主人のことはどこへやら。その場から離れ、隠れてしまうほどに凄かった。
だが、本音を言うならば、これでも彼らは遊びのつもりなのだ。たとえ手に持っている剣が真剣で、的確に相手の急所を狙って振りかざしても、殺意だけは微塵も無い。
互いに力量を見定めて、動きが鈍ってないか、魔力伝達速度に遅れはないか。二十年以上続いている腐れ縁は、剣を交えるだけで相手の不調すら測ることが出来るらしい。
まあ、彼らの持論だが。
なにはともあれ。およそ十数分に及んだ激しいという言葉すら突き抜ける剣戟は、片割れの男ーーリカルドのよし、という言葉によって断ち切られた。
「鈍っては無さそうだな」
「それはこっちの台詞だ。歯応えのない敵ばかりで、年相応になったのかと錯覚したぞ」
「ん、なに?   それは俺に向かって喧嘩をふっかけているつもりなのかなあ?」
「馬鹿言え。皮肉を交えた関心だ」
ははは、とリカルドとヴィルガは互いに笑う。笑っているが……その目には、例えようの無い独特な雰囲気が静かに漂っていた。
「さて、運動もしたところでしばらく休むとするか。水、茶、酒……どれが良い?」
「んじゃ酒で」
剣を鞘に収め、安全を確認した侍女二人が持ってきたタオルで肌を拭いながら、ヴィルガはとりあえずといった感じで三択を言う。
それに対してリカルド派悩む余地すらなく酒を求め、言うや否やの速度で二人が腰をかける予定だった椅子の側のテーブルの上に、二つのワイングラスと赤ワインが置かれた。
慣れた手つきで栓を開け、自分とリカルドのグラスにちょうど良い具合に注ぐと、乾杯の音頭も無しに口に含んだ。
「ふぅ……やはり昼間から飲むのは良い気分だ」
「無理やり連れ出した俺が言うべきじゃないと思うが、仕事は終わっているのか?」
「はぁ、まったくだ。だが心配は要らない。残りの仕事は右大臣に託した。後の仕事は俺でなくとも大丈夫な案件だったからな」
「それってもしや、他国関連か?」
「おや、相変わらず鋭い勘だ」
侍女に「例の物を」と言ったヴィルガは、とりあえず次女が帰ってくるまでに、ある程度の補足を話し始めた。
「リカルドはジョルバ王国をどう感じる?」
「大陸随一の宗教国家」
「だろうな。誰もが最初はそう考える」
ジョルバ王国とはカルサ共和国の北東、アルダー帝国の南西に位置する国家で、その実態は唯一神アスエディアを崇拝する「エディア教」が主軸となった宗教国家である。
エディア教はイフリア大陸全土で最も崇拝されている宗教だが、ジョルバ王国の崇拝体系は他とは大きく異なる。
まず初めにジョルバ王国では、市長や区長よりも司祭が強い権力を有している。すなわち司祭が各区域を治めていると言っても過言では無いのだ。
次に他国と比べて、ジョルバ王国は信仰への忠誠心を証明するべく、その腕にエディア教の証を焼印しなければならない。証を持たない国民は蛮族扱いされ、迫害を受ける。逆に言えば、焼印さえ耐えられればどのような移民でも待遇する。
そのおかげあって、ジョルバ王国内のエディア教信者はほぼ百パーセントと、国家としてはあり得ない数字を叩き出している。ゆえに大陸随一の宗教国家と認識されがちなのだ。
「でも、どうして今になってジョルバなんだ?   危険視するならアルダーの方だろう」
リカルドの言い分はもっともだ。なにせここ数年でジョルバ王国が仕掛けてきた戦争は、一度として無い。アルダー帝国と結託して行ったものは一度だけあったが、あれは派閥の別れた一部が行った小規模なものだ。
政治・外交・戦争の三点において、ジョルバ王国よりも厄介なのはアルダー帝国。それは長い歴史を見ても、オルフェリア帝国の人間ならば誰もが思うことだ。
だが、ヴィルガは真剣な眼差しで、いやと否定した。すると同じくして、次女が持って来た紙束を受け取り、それをリカルドに見えるよう広げた。
紙束は報告書だった。左上に押された印鑑からして、第三騎士団のものだとすぐに理解した。
「今だからこそ危険視できるようになった、と言うべきだ。実は前からジョルバには、調査隊や諜報隊を向かわせていたんだが……帰ってこない」
「マジか。隊の規模は?」
「調査隊が四人小隊を二つ、諜報隊が八人中隊と四人小隊が一つずつだ。すべて第三騎士団から出している」
「となると……計二十人もの帝国騎士が行方知れずって訳か。もちろん、足取りは今も探っているんだろう?」
「探っているが……もはや見つからないと考えた方が良さそうだ。だが、足取り捜査の過程で、あの噂が九分九厘で事実だとも分かった」
「なるほどねぇ。そんでジョルバか」
ジョルバ王国の情報秘匿は、決して今に始まった事ではない。だが、宗教国家でありながら、他国の侵略を一度として成功に至らせないその実力は、秘匿をしていたとしても確かに物語っている。
そもそも、ジョルバ王国に関する事で、とある噂が蔓延していた。その噂とはーーーー
「模造宝具の大量生産、だな」
「そうだ。近年のジョルバでは鉱石や魔鉱石、古代武具といった資源や武具そのものが高価に取引されている。となると、その可能性が大いにあり得る」
「それじゃあ今も、ジョルバは模造宝具を生産しているってのか?」
「ああ。数は知らないが、少なくとも百。場合によっては千にも至るかもしれない」
「そんなにかよ」
かつての神代にて、人々が最上級の武具として崇めていたもの、それが宝具。現代の技術では鋳造するのはほぼ不可能と言われており、近年では宝具の性能を元にギリギリまで突き詰めた模造宝具が流行となっている。
しかし、模造宝具はあくまでも宝具の劣化版。能力を発動すれば即座に破砕するので、消耗品と同列に見なされる。それでも一度で小規模な町ならば、一瞬で蒸発させてしまえるほどに強力な武器だ。
とはいえ、ジョルバ王国の擬似宝具生産の速度はあまりにも異常だ。一つ鋳造するのに平均で一年半、最速でも半年は要する。ジョルバ王国がオルフェリア帝国への侵攻作戦を休止してから早五年。秘密を国内にとどめておくためには、大規模な鋳造作業はかえって出来ないはず。
異常な生産性と謎深いジョルバ王国の裏側。そこを探らない限り、何かが変わるとは思えない。ヴィルガの直感がそう働きかけていた。
「そんで……これからどうするつもりだ?」
ヴィルガの心意を感じ取ったのか、リカルドが痺れるような魔力波動を放ちながら尋ねる。古い付き合いのヴィルガにとって、リカルドのそれが何を表しているかなど、一目瞭然もとい一触瞭然だった。
「個人的には向こうの準備が整う前に攻めたい所だが……あいにく戦力を分ける暇が無いからな。アルダーに傭兵団『骸の牙』、そして『大罪教』……そこにジョルバを加えたら分散し過ぎてむしろ危険だ」
「そのためには一つずつ潰すって事か」
「ああ、手始めにアルダーと骸の牙だ。骸の牙はともかく、アルダーは進軍が出来ない程度に壊す必要がある」
「具体的には?」
「残存敵兵の七割の損失。および敵が二度と攻め入りたく無いと言うほどの、完膚なきまでの圧勝だ」
「むずいなー」
呆れ果てて苦笑いを浮かべるリカルド。ヴィルガの提案に、リカルドが難しいと判断した理由は二つある。
たとえアルダー帝国の兵士を七割殺戮したところで、皇帝が君臨し続ける限り、兵士の増加は抑えられないというのがまず一点。
そして、兵の増加を抑えるためにはアルダー帝国内に侵入し、そのうえ皇帝を殺害して来なければならないという、無理難題をすっ飛ばして自殺行為にすら等しい所業を行わなければならないという点だ。
実力至上主義のアルダー帝国において、皇帝は言わずもがな最強の存在。その実力がどの程度かは全くもって不明だが、ヴィルガと同等もしくはそれ以上だと言うことだけは確実であろう。
そうなると皇帝を倒せる者は容易く絞る事ができ、その中でも暗殺に特化しているといえば、やはりアランの《雷神の戦鎧》だ。
だがそれを見越してか、アルダー帝国内には至る所に妨害魔術の刻印型結界が敷かれており、どうやっても暗殺は不可能。数万という敵軍と総当たり戦を行うしか術無し、というのが今の結論だ。
しかし、それにはヴィルガ自身が大いに反対をしている。味方が死ぬのも敵が死ぬのも嫌だ、どうせなら死者は少ない方が幸せだ。などと駄々を捏ねる子供のように喚いて、最善案を未だに考え続けている。
それが正しいのか、正しくないのかは誰もが分からない。だが、それでも誰かの為を思って指揮を執るのならば、彼はきっと正しいのだろう。
だから、リカルドも覚悟する。
「無理難題は第一騎士団の領分だ。やれって言うなら容赦なくやってやるから、そん時はお前も腹を括れよ?」
「六貴会への言い訳とかか?」
「国民への言い訳とかな。ま、成功すればそれも丸く収まる訳だし?   お前は変わらず皇帝らしく、玉座に座って偉そうにしとけば良いんだよ」
「皇帝に向かってそれを言うか」
「今は古い友人だろう?」
「ふっ、上手く言いやがって……」
呆れ笑いを浮かべるヴィルガに、屈託のない笑顔を向けるリカルド。まるで無邪気な子供のようだ。
その後も二人は、たわい無い話を続けた。酒に酔って硬かった表情が弛緩し、気持ちも次第に弛緩していく。
だが、そろそろ時間だ。
「陛下、時間です」
侍女達の中でも、とびっきり経歴が長そうな、淑女然とした老婆が姿を現した。彼女はヴィルガが幼少の頃からグローバルト家に仕える、最古参の侍女だ。
彼女だって鬼ではない。幼き頃から見守ってきた御子息が、こうして皇帝という立場を忘れて楽しんでいるならば、口を閉じて静かに見守っているだろう。
だが、ヴィルガは皇帝であって、皇帝にしか成せない仕事が残っているのだ。それを放棄する事は、たとえ侍女の立場であったとしても許しはしない。
「あ、ああ。分かった」
ヴィルガも反論を唱えることなく席を立つ。少し飲み過ぎたか、と眉間に指を当てながら独り言を呟くヴィルガを前に、リカルドは頬杖をついて笑っていた。
「大変だなぁ、皇帝様は」
「うるさい。今度面倒くさい仕事が回ってきたら、即座にお前を呼んでやるから覚悟しておけ」
「おう。期待して待ってんぞ」
すると二人を言わずとも拳を突き出し、合わせる。これが古馴染みというものなのだろう。別れの言葉は無く、互いにニッと笑うとヴィルガは踵を返して城の中へと戻って行く。
訪れる静寂。しかし、そんな余韻に浸っているほど、リカルドも心の落ち着いた人間ではない。
「さて、と」
おもむろに腰を上げ、テーブルの上に残っていた資料をまとめる。これが残されたという事は、兵舎に持って帰って他の団員にも話して来い、という事なのだろう。
話しておくべきは殺戮番号たち。それも軍師として知略に長けたビットやケルティア、アランには特に話しておく必要がある。
「とりあえず、祭典中に機会を探るか」
という独り言を残して、リカルドも中庭を後にした。
しかし、ヴィルガとリカルドは気付いていなかった。世界の歯車は、彼らに隠れて密かに回り続けていることに。
その結果が、いずれ自らの首を絞めることを。
実際は魔力では無く、体外に漏れ出る魔力によって発生する波動を感じ取ることによって、騎士や魔術師、魔術騎士は魔力の質や量を推測する。これを総じて『魔力波動』という。
では、魔力波動とはどのようにして発生しているのか。実を言うと、これに関しては未だ確固たる結論が出ていない。多くの学者が挑戦し続けた未知の命題だ。
だがかつて、とある学者は言った。
「魔力波動は心臓の鼓動のように一定の間隔で波動を生み出し、体調の具合や病気などによって微妙な変化を起こす。この微妙な変化によって我々は魔術師のコンディションを常に最善の状態に維持することが出来るのだ」
しかし、当時は魔力を感覚感知できる者はそう多くはおらず、出来たとしてもそれが正しいかまで感じ取れる、才ある者はいなかった。
この仮説が世に流れて早二百年。今やこの仮説すら、人々の知識から乖離しており、魔力波動を感知できる者達にとって「魔力は感じるもの」で収まっている始末だ。
だから、たとえ魔力を感知できたとしても、彼らは疑問を抱く事は無いし、もはや現代の学者はそれを学ぼうとすらしない。
ではどうして?   それはーーーー
「設定だよ」
「これもですか?」
カフェテラスの一席に座る金髪の男性ーーフェルダー=メルトクォリスは、器用にティースプーンを回しながら、端的に結論だけを述べる。
そんなフェルダーの向かいに腰を下ろす少女は、またかと思いながらも興味を惹かれるようで、首を傾げながらフェルダーが語るのを心待ちにしていた。
「お腹が空いたら何か口にする。眠たくなったら寝る。性欲を感じたらそれを発散する。古代では、これを『人の三大欲求』と言ったそうだ」
「それは知り得ています」
少女の内に植え付けられたそれの正体は、ツウィーダ=キメラニス。稀代のマッドサイエンティストであり、同時に多くの知識を有する知者でもある。
さらにツウィーダが編み出した【血盟契約】は、少女と同じようにツウィーダとして洗脳された他の人物が所持していた技術や知識を、まるで最初から自分の物だったかのように自在に扱うことが出来る。
もはやツウィーダ=キメラニスという存在は、全智の領域に足を踏み入れているのかもしれない。それほどに知っていた。
「しかし、どうしてそれが人にとって三大欲求となっているのか。それが生物的だから?   本能的だから?   いいや、それは大きな誤解だ。答えはーーこれが設定だからだ」
誰もが疑問に思わない、感じない、考えない。それは当然のようで、よく考えてみれば不思議でしかない。
だが、それを禁止され封印されている。それが今の人間だ。奴の手中から逃げ出さない限り、人間は人間の領域から抜け出せないのだ。
しかし、ここでツウィーダが疑問を提示する。
「ですが、二百年ほど前に、魔力波動について調べた学者が……」
「ああ、いたよ。けど、その学者が調べたせいで、奴は慌てて設定を弄った。結果として、奴は蓄えていた力を再度使う羽目になり、こうして僕達が何をしようと妨害してこないというわけだ」
ツウィーダすら知らない知識を、ペラペラと語り続けるフェルダー。その見た目は二十歳前後の青年だというのに、いまいち実態がつかめてこない。今の話だって、まるで見てきたようだ。
だが、それにツウィーダが反感を覚えることも、洗脳して知識を奪おうとも考えない。それはフェルダーが『大司教』だからなのか、それとも単にフェルダーが強いからなのか。ツウィーダ自身にすら推し測れない領域だった。
「さて、この事を理解した上で、僕達は魔力波動について語るとしようか」
「なるほど、周囲に聞かれたとしても、周囲の人間は気にするどころか、何を話しているのかすら理解できないのですね」
「そう。周囲には『話している』という概念しか発生しない。これも奴による人間への干渉の結果だ。覚えておくといいよ」
さて、話を戻そう。
「先程すれ違った青年の波動……君は感じたかな?」
「ええ、あれは酷い波長です」
ほんの十数分ほど前に、フェルダーとツウィーダは商業区にて、二人組の帝国騎士の男女とすれ違った。向こう側は何気ない顔をして、何気なく横を通り過ぎたが、フェルダーとツウィーダは別だ。
「魔力の波が不規則に荒れていた。まるで波長の合わない二つの波動を、無理やりに合成したような……そう、不協和音のようだ」
真理を知る者にとってその異常さは、感じていてこれ以上が無いほどに、気持ち悪かった事だろう。
「さっきも言ったけど、普通の人間は魔力波動の波長は一定で、ああはならない。たとえ身体が病魔に侵されていたとしても、波長は常に一定に揺れる」
「では、どうして彼は……」
「決まってる。あれは元の大きな波長を封じ込めたものの、封印が壊れかけている状態を表しているんだ」
「……彼の本気は、それほどに危険だと?」
「そうだね。もしも今、この瞬間に彼の封印が壊れたとしよう。すると半日とせずに、この帝都は間違いなく壊滅するだろうね」
「あの『生きる伝説』がいてもですか?」
「ああ。たとえ君の保有するツウィーダが幾百といても、司教が何人いても、そして僕という存在がいても。あれは物ともせずに殺戮してしまうだろうね」
「……笑えない話です」
微笑みながら恐ろしい事を言ってのけるフェルダーに対し、ツウィーダは呆れつつも顔を青ざめながら徐ろに紅茶を口に含んだ。
本当に恐ろしい事だ。今や大罪教の幹部である司教たちは、名だたる英雄ーーリカルドやジェノラフといった者達と、互角以上に戦えるだけの実力を備えている。
だが、フェルダーは今、そんな彼らの実力ですら敵わないと言った。それはつまり、封印の解かれたアランは人間では決して勝てないと言われたも同然。
竜の上位種ーー真竜の、さらなる上位個体である雷電の黄竜と互角に渡り合ったリカルドも、数千という敵兵を無傷で屠った伝説を持つジェノラフも。
そして、大罪教をまとめ上げ、さらには司教達を統括するフェルダーですらも。易々と「敵わない」と言ってしまえるほど、その実力は本物なのだ。
恐怖しか感じない。
けれども、とフェルダーは言った。
「封印の結びは固い。そう簡単に解けるほど、封印が脆くはなっていないみたいだ。こちらから何かしない限りはね」
それは、ツウィーダに教えを説くように。そして、今この場にいない誰かに忠告を与えるように。フェルダーの言葉は緩やかに紡がれた。
爽やかな笑みを浮かべるフェルダー。その正体が世界の巨悪であることを、彼らの横を通る人々は知らない。
いや、知る事すら出来なかった。
◆
フェルダー達が腰を落ち着けて、午後のひとときを楽しんでいる同時刻。皇帝城の中庭にて。
二人の男が剣を交えていた。
その剣戟は、もはや人が知覚する域を超越しており、一合交えるたびに吹き荒れる飄風は、祭典ムードで弛緩した空気を容易く引き裂く。
もっと簡単に言うならば、そばで見守っている複数人の侍女が「あ、やばい。ここにいたら余波で死んじゃう!?」と、自身の命の危機を察して主人のことはどこへやら。その場から離れ、隠れてしまうほどに凄かった。
だが、本音を言うならば、これでも彼らは遊びのつもりなのだ。たとえ手に持っている剣が真剣で、的確に相手の急所を狙って振りかざしても、殺意だけは微塵も無い。
互いに力量を見定めて、動きが鈍ってないか、魔力伝達速度に遅れはないか。二十年以上続いている腐れ縁は、剣を交えるだけで相手の不調すら測ることが出来るらしい。
まあ、彼らの持論だが。
なにはともあれ。およそ十数分に及んだ激しいという言葉すら突き抜ける剣戟は、片割れの男ーーリカルドのよし、という言葉によって断ち切られた。
「鈍っては無さそうだな」
「それはこっちの台詞だ。歯応えのない敵ばかりで、年相応になったのかと錯覚したぞ」
「ん、なに?   それは俺に向かって喧嘩をふっかけているつもりなのかなあ?」
「馬鹿言え。皮肉を交えた関心だ」
ははは、とリカルドとヴィルガは互いに笑う。笑っているが……その目には、例えようの無い独特な雰囲気が静かに漂っていた。
「さて、運動もしたところでしばらく休むとするか。水、茶、酒……どれが良い?」
「んじゃ酒で」
剣を鞘に収め、安全を確認した侍女二人が持ってきたタオルで肌を拭いながら、ヴィルガはとりあえずといった感じで三択を言う。
それに対してリカルド派悩む余地すらなく酒を求め、言うや否やの速度で二人が腰をかける予定だった椅子の側のテーブルの上に、二つのワイングラスと赤ワインが置かれた。
慣れた手つきで栓を開け、自分とリカルドのグラスにちょうど良い具合に注ぐと、乾杯の音頭も無しに口に含んだ。
「ふぅ……やはり昼間から飲むのは良い気分だ」
「無理やり連れ出した俺が言うべきじゃないと思うが、仕事は終わっているのか?」
「はぁ、まったくだ。だが心配は要らない。残りの仕事は右大臣に託した。後の仕事は俺でなくとも大丈夫な案件だったからな」
「それってもしや、他国関連か?」
「おや、相変わらず鋭い勘だ」
侍女に「例の物を」と言ったヴィルガは、とりあえず次女が帰ってくるまでに、ある程度の補足を話し始めた。
「リカルドはジョルバ王国をどう感じる?」
「大陸随一の宗教国家」
「だろうな。誰もが最初はそう考える」
ジョルバ王国とはカルサ共和国の北東、アルダー帝国の南西に位置する国家で、その実態は唯一神アスエディアを崇拝する「エディア教」が主軸となった宗教国家である。
エディア教はイフリア大陸全土で最も崇拝されている宗教だが、ジョルバ王国の崇拝体系は他とは大きく異なる。
まず初めにジョルバ王国では、市長や区長よりも司祭が強い権力を有している。すなわち司祭が各区域を治めていると言っても過言では無いのだ。
次に他国と比べて、ジョルバ王国は信仰への忠誠心を証明するべく、その腕にエディア教の証を焼印しなければならない。証を持たない国民は蛮族扱いされ、迫害を受ける。逆に言えば、焼印さえ耐えられればどのような移民でも待遇する。
そのおかげあって、ジョルバ王国内のエディア教信者はほぼ百パーセントと、国家としてはあり得ない数字を叩き出している。ゆえに大陸随一の宗教国家と認識されがちなのだ。
「でも、どうして今になってジョルバなんだ?   危険視するならアルダーの方だろう」
リカルドの言い分はもっともだ。なにせここ数年でジョルバ王国が仕掛けてきた戦争は、一度として無い。アルダー帝国と結託して行ったものは一度だけあったが、あれは派閥の別れた一部が行った小規模なものだ。
政治・外交・戦争の三点において、ジョルバ王国よりも厄介なのはアルダー帝国。それは長い歴史を見ても、オルフェリア帝国の人間ならば誰もが思うことだ。
だが、ヴィルガは真剣な眼差しで、いやと否定した。すると同じくして、次女が持って来た紙束を受け取り、それをリカルドに見えるよう広げた。
紙束は報告書だった。左上に押された印鑑からして、第三騎士団のものだとすぐに理解した。
「今だからこそ危険視できるようになった、と言うべきだ。実は前からジョルバには、調査隊や諜報隊を向かわせていたんだが……帰ってこない」
「マジか。隊の規模は?」
「調査隊が四人小隊を二つ、諜報隊が八人中隊と四人小隊が一つずつだ。すべて第三騎士団から出している」
「となると……計二十人もの帝国騎士が行方知れずって訳か。もちろん、足取りは今も探っているんだろう?」
「探っているが……もはや見つからないと考えた方が良さそうだ。だが、足取り捜査の過程で、あの噂が九分九厘で事実だとも分かった」
「なるほどねぇ。そんでジョルバか」
ジョルバ王国の情報秘匿は、決して今に始まった事ではない。だが、宗教国家でありながら、他国の侵略を一度として成功に至らせないその実力は、秘匿をしていたとしても確かに物語っている。
そもそも、ジョルバ王国に関する事で、とある噂が蔓延していた。その噂とはーーーー
「模造宝具の大量生産、だな」
「そうだ。近年のジョルバでは鉱石や魔鉱石、古代武具といった資源や武具そのものが高価に取引されている。となると、その可能性が大いにあり得る」
「それじゃあ今も、ジョルバは模造宝具を生産しているってのか?」
「ああ。数は知らないが、少なくとも百。場合によっては千にも至るかもしれない」
「そんなにかよ」
かつての神代にて、人々が最上級の武具として崇めていたもの、それが宝具。現代の技術では鋳造するのはほぼ不可能と言われており、近年では宝具の性能を元にギリギリまで突き詰めた模造宝具が流行となっている。
しかし、模造宝具はあくまでも宝具の劣化版。能力を発動すれば即座に破砕するので、消耗品と同列に見なされる。それでも一度で小規模な町ならば、一瞬で蒸発させてしまえるほどに強力な武器だ。
とはいえ、ジョルバ王国の擬似宝具生産の速度はあまりにも異常だ。一つ鋳造するのに平均で一年半、最速でも半年は要する。ジョルバ王国がオルフェリア帝国への侵攻作戦を休止してから早五年。秘密を国内にとどめておくためには、大規模な鋳造作業はかえって出来ないはず。
異常な生産性と謎深いジョルバ王国の裏側。そこを探らない限り、何かが変わるとは思えない。ヴィルガの直感がそう働きかけていた。
「そんで……これからどうするつもりだ?」
ヴィルガの心意を感じ取ったのか、リカルドが痺れるような魔力波動を放ちながら尋ねる。古い付き合いのヴィルガにとって、リカルドのそれが何を表しているかなど、一目瞭然もとい一触瞭然だった。
「個人的には向こうの準備が整う前に攻めたい所だが……あいにく戦力を分ける暇が無いからな。アルダーに傭兵団『骸の牙』、そして『大罪教』……そこにジョルバを加えたら分散し過ぎてむしろ危険だ」
「そのためには一つずつ潰すって事か」
「ああ、手始めにアルダーと骸の牙だ。骸の牙はともかく、アルダーは進軍が出来ない程度に壊す必要がある」
「具体的には?」
「残存敵兵の七割の損失。および敵が二度と攻め入りたく無いと言うほどの、完膚なきまでの圧勝だ」
「むずいなー」
呆れ果てて苦笑いを浮かべるリカルド。ヴィルガの提案に、リカルドが難しいと判断した理由は二つある。
たとえアルダー帝国の兵士を七割殺戮したところで、皇帝が君臨し続ける限り、兵士の増加は抑えられないというのがまず一点。
そして、兵の増加を抑えるためにはアルダー帝国内に侵入し、そのうえ皇帝を殺害して来なければならないという、無理難題をすっ飛ばして自殺行為にすら等しい所業を行わなければならないという点だ。
実力至上主義のアルダー帝国において、皇帝は言わずもがな最強の存在。その実力がどの程度かは全くもって不明だが、ヴィルガと同等もしくはそれ以上だと言うことだけは確実であろう。
そうなると皇帝を倒せる者は容易く絞る事ができ、その中でも暗殺に特化しているといえば、やはりアランの《雷神の戦鎧》だ。
だがそれを見越してか、アルダー帝国内には至る所に妨害魔術の刻印型結界が敷かれており、どうやっても暗殺は不可能。数万という敵軍と総当たり戦を行うしか術無し、というのが今の結論だ。
しかし、それにはヴィルガ自身が大いに反対をしている。味方が死ぬのも敵が死ぬのも嫌だ、どうせなら死者は少ない方が幸せだ。などと駄々を捏ねる子供のように喚いて、最善案を未だに考え続けている。
それが正しいのか、正しくないのかは誰もが分からない。だが、それでも誰かの為を思って指揮を執るのならば、彼はきっと正しいのだろう。
だから、リカルドも覚悟する。
「無理難題は第一騎士団の領分だ。やれって言うなら容赦なくやってやるから、そん時はお前も腹を括れよ?」
「六貴会への言い訳とかか?」
「国民への言い訳とかな。ま、成功すればそれも丸く収まる訳だし?   お前は変わらず皇帝らしく、玉座に座って偉そうにしとけば良いんだよ」
「皇帝に向かってそれを言うか」
「今は古い友人だろう?」
「ふっ、上手く言いやがって……」
呆れ笑いを浮かべるヴィルガに、屈託のない笑顔を向けるリカルド。まるで無邪気な子供のようだ。
その後も二人は、たわい無い話を続けた。酒に酔って硬かった表情が弛緩し、気持ちも次第に弛緩していく。
だが、そろそろ時間だ。
「陛下、時間です」
侍女達の中でも、とびっきり経歴が長そうな、淑女然とした老婆が姿を現した。彼女はヴィルガが幼少の頃からグローバルト家に仕える、最古参の侍女だ。
彼女だって鬼ではない。幼き頃から見守ってきた御子息が、こうして皇帝という立場を忘れて楽しんでいるならば、口を閉じて静かに見守っているだろう。
だが、ヴィルガは皇帝であって、皇帝にしか成せない仕事が残っているのだ。それを放棄する事は、たとえ侍女の立場であったとしても許しはしない。
「あ、ああ。分かった」
ヴィルガも反論を唱えることなく席を立つ。少し飲み過ぎたか、と眉間に指を当てながら独り言を呟くヴィルガを前に、リカルドは頬杖をついて笑っていた。
「大変だなぁ、皇帝様は」
「うるさい。今度面倒くさい仕事が回ってきたら、即座にお前を呼んでやるから覚悟しておけ」
「おう。期待して待ってんぞ」
すると二人を言わずとも拳を突き出し、合わせる。これが古馴染みというものなのだろう。別れの言葉は無く、互いにニッと笑うとヴィルガは踵を返して城の中へと戻って行く。
訪れる静寂。しかし、そんな余韻に浸っているほど、リカルドも心の落ち着いた人間ではない。
「さて、と」
おもむろに腰を上げ、テーブルの上に残っていた資料をまとめる。これが残されたという事は、兵舎に持って帰って他の団員にも話して来い、という事なのだろう。
話しておくべきは殺戮番号たち。それも軍師として知略に長けたビットやケルティア、アランには特に話しておく必要がある。
「とりあえず、祭典中に機会を探るか」
という独り言を残して、リカルドも中庭を後にした。
しかし、ヴィルガとリカルドは気付いていなかった。世界の歯車は、彼らに隠れて密かに回り続けていることに。
その結果が、いずれ自らの首を絞めることを。
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