英雄殺しの魔術騎士
第9話「話さなければ、伝わらない」
魔獣討伐任務の最中。曰く付きの魔獣ーーザクログモと出会ってしまったアラン達。
蜘蛛特有の鋏角をカチカチと鳴らして、正面に対峙するアランに威嚇を行うザクログモは、その丸太のような八本足に付いた棘のような剛毛を地面に擦り付け地面を削り取っている。
ザクログモは毒蜘蛛だ。神経毒である体液をその長い八本足から垂らし、背後から奇襲を仕掛けて傷口から内部へと毒を擦り込む。毒自体は三時間ほどで治るような弱いものだが、単体におけるしつこさ故に上位魔獣として登録されている。
上位魔獣という名柄の中では、明らかに下から数える方が早いザクログモ。新米数人でも死ぬ気で挑めば勝てなくもない相手。だというのに歴戦の猛者であるアランとグウェンはーー
「「………………」」
心底、見たくも無い物を見せられたような顔でフリーズしていた。
過去に何があったのかは知る由も無い後輩である新米帝国騎士は、そんな二人のあからさまな不機嫌な表情を見て首を傾げ、例えようの無い雰囲気に周囲が包まれる。
そして。
『kshaaaaaaaaaaaaaa!』
静止していた空間を切り裂くように、ザクログモが呻きのような声で叫んだ。金切り音のような音に、途端アラン達も意識を戻す。
だが刹那、ザクログモが動いた。
八本足を豪快に動かして突進を繰り出す。無論、返り討ちにも出来たが万が一を考慮して、アランと毒に伏した帝国騎士を抱えたグウェン、新米帝国騎士は大木の枝へと跳躍回避。
「アラン!   二十秒だ!」
「がってん!」
何がを問う必要もなくアランは枝から飛び降りて、ザクログモを挑発するべく剣を抜き放った。木の葉の合間を通り抜けて届いた陽光が、アランの愛剣を鈍く光らせる。
「たたた隊長!   あの野郎、下に降りちゃいましたよ!?」
二人の意思疎通が理解出来ないでいる新米帝国騎士は、慌ててグウェンにアランの奇行を伝えるが、グウェンはそれに耳を貸さない。
アランに伝えた二十秒とは、「この男の応急処置をするから二十秒稼げ」という合図だ。そして二十秒で完璧な処置が出来るかと言われれば、グウェンですら危うい。だから、一瞬たりとも意識を逸らさない。
ベルトポーチからガーゼと解毒薬、冷却魔術が刻印された湿布を取り出し、意識が低迷している帝国騎士に無理やり流し込んで傷口をガーゼで拭い、患部を冷やすように湿布を貼る。
もちろん解毒魔術も存在するが、扱いが難しく過剰な魔力によって使用すると患者に後遺症が残ってしまう恐れがある。そのためには治療の技術に長けた魔術師がいる森外部の村へと急いだ方が良い。
「この騎士は俺が背負う。……お前は走れるか?」
「は、はい!」
「よし。……アラン!」
ちょうど二十秒。グウェンの声を聞いたアランは、ベルトポーチから魔石を取り出し自分と対峙するザクログモの眼前に投擲。ザクログモに衝突する寸前に魔石に刻まれていた魔術が起動し、辺り一帯を光が埋め尽くした。
「逃げるぞ!」
新米帝国騎士はグウェンの影を追って、至近距離ゆえに閃光を喰らってしまったアランは、しかしながらも目では無く音で行き先を聞き分け、それがグウェンだと分かり次第すぐさまに追いかけた。
ザクログモに閃光による目眩しはあまり通用しないが、そもそも蜘蛛には聴覚や嗅覚はあれど、それを駆使して正確な場所を把握する事は難しい。方角は分かっても距離は分からないのだ。
よって獲物が逃げたと知性によって判断したザクログモは、まず始めに無駄に動かず方角だけを聴覚嗅覚を利用して把握する。その間に複眼の異常事態を復旧させる。
だがその復旧にも最速で五秒を要する。それだけあればどれだけ鈍足な帝国騎士でもザクログモから百メートルは距離を取れる。
そして、ここまでに至る最適解を知っているからこそ、アランとグウェンは考える必要も無く行動へと至ったのだ。
『kshhhhhhhhhhh!!』
「怒ってんなぁ」
「諦めてくれれば楽なんだがな」
「そ、そんな事、言ってる、場合じゃ、ないでしょ!?    追いかけて来てますよ!」
遠方から唸り声のような雄叫びを轟かせるザクログモに、若干ながらの不戦を期待するアラン達だったが、そういうわけにもいかず。ズドドドという擬音とともに森中を駆けて来るザクログモに新米帝国騎士は、恐怖を顔に浮かび上がらせながら二人の後方を走り続けた。
道筋はまっすぐ北方へ。地の利はザクログモにあるようだが、魔力による身体強化によって増した速力は、そう簡単に距離を縮められない。
『gyaaa!』
時折騒ぎを聞きつけてやって来た猿のような魔獣に襲われるが、両手が自由なアランは行き道で散々戦ったこともあって、ほんのコンマ数秒で急所を切り裂き絶命に至らしめる。
そして三体目の魔獣を屠ったところで、
「新米!   ザクロまでの距離は!?」
「テメェに新米なんて呼ばれる筋合いーー」
「いいから答えろ!」
「チッ……五十メートル程かと!」
アランの言葉に憤然とした様子で言い返そうとした新米帝国騎士だが、グウェンの急かすような怒鳴り声によって渋々ながらも距離を伝える。無論、舌打ちは聞こえていたが今はスルーだ。
五十メートル。森を突き出るまでは少なくとも一分は必要な訳だが、それではどうしてもザクログモに追い付かれてしまう。
「ええい、仕方が無い……アラン!」
「了解!   患者置いたらすぐ戻って来いよ?」
「ーー気分による」
「あ、それ、絶対来ない奴の言う台詞だ!?」
少し馬鹿げたやり取りを終えた二人は互いに信頼を踏まえた笑みを浮かべ、グウェンはそのまま直行。アランは大地を踏みしめ、一気に逆方向へと転換した。
数多の魔獣と戦闘経験をこなしてきたアランだが、どうにも昆虫型、特に巨大な蜘蛛やらバッタやらは好かない。強いからでは無く、見た目が気持ち悪いからだ。
想像してみよう。本来体長が十数センチしかないはずのバッタが、数十倍も巨大になって現れた時の情緒を。頭ほどある巨大な複眼に、今ならなんでも食えるとでも言いたげな蠢く口部。がむしゃらに追いかけて来る光景など恐怖でしかない。
「けど、やんねぇと俺が食われるからなぁ……」
呆れ笑いを浮かべながらアランは再び剣を抜き放ち、足を止めた獲物を食らわんと、足を地面に突き立てて速度を殺し始めるザクログモと対峙する。
昆虫型の魔獣には共通した弱点が存在する。全方位を見渡すことが出来る複眼や、節足の柔らかくて脆い部分、体の裏側も皮が薄くて剣を突き刺しやすい。
「疾ッ!」
ともかく弱点がそれなりに多い昆虫型だが、その分視野が広く隙というものが途轍もなく少ない。動物のように呼吸をする必要も無いので、意識が緩むタイミングを掴むことすら難しい。
前方で剣を構えたまま機を伺うなど自殺行為に等しい。故にアランは身体強化によって速力を限界まで上昇、木々を利用してザクログモの視線を掻い潜ろうと試みる。
だが。
『shaaaaaaaaa!』
「うおわっ!?」
ザクログモが口部から何かを吐き出しながらグルグルと回転して、周囲にそれを撒き散らす。ツンとする臭いと溶解音が耳に届いた。どうやら酸を吐いたらしい。
このザクログモ、思ったよりも知性が高い。普通ならば側面は取られまいと八本足を器用に動かし敵を追うのだが、このような奇策を利用するとは考えもしなかった。
「けどまあ、それも当たんなければ意味ないけど……なぁッ!」
側面から足を切り落とさんと懐に飛び込んだアラン。魔力を付与して切れ味が増した剣で思いきり叩き切る。
しかし当たりどころが悪かったのか、キィンッと金属同士がぶつかり合ったような音を立てながらアランは仰け反り、そこを目掛けてザクログモは余った足を突き下ろしアランを狙う。
「ちぃッ!」
無理矢理な回避は不可能。そう判断したアランはザクログモの足を壁に見立て、壁キックの応用で突き刺し攻撃の範囲から緊急離脱。騎士服の端が鋭利な先端によって少し裂かれたが、その程度で済んだと思った方が良いだろう。
『ksssssssssssss……』
あちらも仕留めたと思ったのだろうか。肝心の獲物を探せど落ちていない事を知った途端、残念そうに鋏角を鳴らして、枝の上に移動したアランを漆黒の複眼で見つめる。
「…………」
そんなザクログモの行動を睨むように見つめながら、アランは剣の柄を握っていた右手を開いて閉じてを何度か繰り返し、痺れを確認する。
昆虫なんだから剣で切れるでしょう?   などと言って、何も知らない若者が無策で突っ込んでどれだけ殉職したことか。
彼らだって進化する。身体の柔らかさゆえに剣撃に耐えられないのならば、剣撃に耐え得るだけの硬さに表皮を進化させるしかない。そうして彼らは魔獣の中でもしぶとい魔獣系統に仲間入りしているのだから。
とはいえ全身を硬皮で覆う訳にもいかない。先程も言ったように関節肢の関節や胴体の裏側などは弱点のままだし、全方位を見渡すことが出来る複眼も急所の一つだ。
だが、そんな剥き出しの急所をそう容易く狙わせてくれるはずも無く、一対一の場合、昆虫型との戦闘はある意味では竜種と戦うよりも気を張った戦闘になるだろう。
それはアランも然り。
今や脳の片隅で「早くセレナの試合を観に行きてー」などと考える暇は無く、いかに殺すかを必死に考えなければならない現状だ。
そして何より気になっているのは、
「あの腹部の膨らみ……いるなぁ」
赤い斑点が特徴的なザクログモの腹部。それは他の蜘蛛の魔獣とは異なったとある特殊な腹部であり、ザクログモと一度でも戦闘を経験した事ある者達にとって、そこは不可侵領域とも言うべき場所なのだ。
先ほどまではザクログモの前方からしか見てなかった故に気付かなかったが、通常よりも膨らんだ腹部に警戒心を緩ませないザクログモの動き。なにより枝の上にいるアランに飛びかかって来ない事を見る限りでは間違いは無いだろう。
この場合のザクログモに対する行動は大きく分けて二つ。
一つ、余す事なく消滅させること。
二つ、逃亡すること。
正直なところ、現状ではザクログモを単独撃破は難しい。体長三メートルもある巨大な蜘蛛を、一瞬かつ高威力の魔術で倒そうなどと考えれば、最速でも十五秒程度の準備が必要になる。
アランの十八番【顕現武装】も詠唱中に攻撃されてしまっては、発動は不可能。回避しながら詠唱を行うのは、成功確率が数パーセントしかない。
かといえ、逃亡は許されない。グウェンが戻って来るまでの時間、せめてザクログモをこの場に留めておかなければ、被害がさらに広がる恐れがある。
上位魔獣の多くは進化の過程で戦い方、主に騎士との上手い戦闘法を本能によって覚える。その結果として気配を遮断し、奇襲を仕掛ける場合が近年増えつつある。
この討伐に参加した騎士の一人が、こうも簡単に倒されてしまったのだ。他の若輩者ではいとも容易く倒され食われてしまうだろう。
だからこそ、グウェンがやって来るまでの間アランが牽制と監視を続け、グウェンと二人がかりで一気に討伐する。それがベストな選択だと考えた。
グウェンが森を出て近場の村に患者を置き、ここに戻って来るまでに要する時間はおよそ十分。戦闘から二分が経過しているので、残りは八分といったところだろう。アランはザクログモが吐き出す酸攻撃を回避しながら推測を立てる。酸によって足場が減っているので、そろそろ枝の上も無理だろうか。
「それじゃあ……ほいっ、と」
本日二回目の閃光。さすがのザクログモも瞬間に理解したのか足で複眼を隠したが、それでも隙は生じた。その瞬間にアランは懐に入りーー剣を振り下ろす。
『kssssha!?』
バツンという音と共に足の一本が切り取られ、緑色の体液を垂れ流しながら地面へと転がる。もう一撃と考えたが、ザクログモが急速に距離を取ったので叶わず。
だが、挑発するには十分な一撃だ。
そのままアランはザクログモに背を向けて走り出した。ザクログモも鋭利な鋏角を鳴らしながらその背を追う。
魔獣にとって足や腕の損失は大した事ではない。彼らは再生能力を有しており、二ヶ月程度あれば余裕で再生など可能だ。故に足部の損失は差して気に触る事では無かった。
では何に怒っているのか。それはいたって単純な事で、自分の腹部、そこにいるであろう子供達に対する危害の恐れゆえだった。
ザクログモの名は、その腹部に自分の子供である小蜘蛛を大量に飼育していることが由来だ。腹部で小蜘蛛を育て、自分が命の危機を感じると、生存本能からか一斉に小蜘蛛を外に排出するのだ。
そして何より面倒なのがこの小蜘蛛だ。十や二十ならともかく、千以上の小蜘蛛がカサカサと音を立てながら歩いて来る光景など、冷や汗と恐怖のあまりに身が震える。動きに規則性はなく単体では弱いものの、その圧倒的な数による暴力によって、村などは簡単に壊滅するだろう。小蜘蛛とはいえ、その力は木っ端魔獣よりは強いから。
二十メートルほど移動してちょうどいい場所を見つけたアランは、再び枝の上へと跳躍し、時間を稼ぎながら地道にザクログモへの対処方法を考える。
最も簡単なのはグウェンの大規模な火属性魔術で塵にする事だが、あいにくここは森の中。火が飛び移って二次災害になる事だけはどうしても避けたい。
「やっぱ水属性かねぇ……」
広範囲かつ高火力となると、やはり扱い易いのは大衆的である火属性と水属性だろう。風属性や雷属性は一点特化型といっても過言では無いほど局所的なものだし、地属性はそもそも攻撃には向かない。
その分水属性は工夫さえ凝らせば広範囲で高火力な魔術を生み出せるし、火属性を除いた他属性とは異なり多くの過程を必要としない。やはりここは水属性で決まりだろう。
「あとはどうやって倒すかだけど……っと」
アランが移動するであろう枝を先読みして、酸によって溶かしたザクログモ。着地と同時にアランの重さに耐え切れず折れ、アランは空中で一回転しながら着地した。
やはり学習能力が高い。こんなにも早くアランの時間稼ぎ作戦を封じて見せたザクログモは、アランを上質な獲物だと認め、涎で鋏角をねっとり照らす。もはや木っ端魔獣だとは侮れない。
「残りあと八分と少し……。余所見はすんなよ?」
『kshaaaa!』
ここからが本気だと言わんばかりに魔力と殺気を放出。風がざわめき、木々が唸り、大地が揺れる。これほどの殺気に対しても身動ぎ一つしない所からして、余程の修羅場を経験したことがあるのだろう。
だが、それがどうした。
そんなのアランにとっては日常茶飯事であり、それに出くわした事が無い日など一日たりとて存在しなかった。甘ったるい日常に身を浸していたのもまた事実だが、そんなことでアランの三年間が帳消しになるはずもなかった。
常に強者と対峙する。その度に味わってきた強者と弱者の天地の差、劣等感、屈辱、吐き出したくなる嫌悪感。
何より戦場における死の予感。
それらを飽きるほど味わって尚ここに立つアランは、ザクログモに対して敬意など払わない。アランと対峙して力量の雲泥の差を読み切れなかった時点で、奴は『そこら辺のザクログモよりは少しは賢い蜘蛛』だ。
故に思い知らせねばならない。その死の瞬間まで、アラン=フロラストという人物に刃向かった事が愚行だったという事実を。
「殺す気で来い。遊んでやる」
『gshaaaaaaaaaaaaaa!!』
一方は細身の剣を、もう一方は鋼をも貫く鋭利な前足を。その切っ先にあらん限りの殺意を込めて、ーー構える。
今再び、アランとザクログモの激突が始まった。
◆
一方その頃、グウェンの方。
「隊長!?   こんなところにどうしてーー」
「急患だ!   ザクログモの解毒を頼む!」
「は、はいっ!」
慌てて救命所へと入ってきたグウェンを見て驚く帝国騎士の言葉を遮り、グウェンは近場で空いていたベッドにザクログモの毒にやられた帝国騎士を寝転がし、即座にその場から去った。
救命所に送った以上、グウェンの手伝いはかえって専門知識と経験の多い救命担当の彼らの邪魔になる。消費した魔力をベルトポーチの中に仕込んでいた魔石によって回復し、ザクログモの討伐法を思案したところでいざ森へーー
「……おや?」
と、思ったが、ふとおかしなことに気がついた。そう、後方を走っていたはずの新米帝国騎士の姿が見えないのだ。
村に入った時にはまだいた。付いて来るようにともしっかり伝えた。返事も聞こえていた。では、その彼はいったいどこに?
「まさか」
グウェンは知っていた、彼はプライドが高い人種だと言うことを。
グウェンは知っていた、彼は人一倍負けず嫌いだと言うことを。
グウェンは懸念していた、彼が自分の命令にいつしか背くのではないかと。
ザクログモから逃げる途中、グウェンは新米帝国騎士ではなくアランに信頼を置いていた。そう、見知った自分ではなく、名も知れぬ訳の分からない存在が信頼されていたのだ。
それを普通ならば、どう捉えるだろうか。疑念?   憤怒?   哀愁?   憎悪?   その答えは定かではない。だが、これだけは分かる。
ーーアランよりも自分を頼って欲しかった。
ならばそれを証明するには何が必要か。アラン以上の絶対的な信頼だ。ならばそれを成し遂げるには、
「クソが……っ!」
次の瞬間、グウェンは先ほどまでとは比べ物にならない速さで駆け出した。大気が身を叩き、胃液がこみ上げるような感覚に苛まれながらも走り続けた。
不規則に並ぶ樹木を避けながら、グウェンの異常な速度に怯えを成す魔獣を無視しながら、ただひたすらに二人の安否を願った。
否、切に願ったのはアランの安全だ。
今日のアランは何かおかしい。今朝に会ったその瞬間から何かを感じていたが、今になってようやくその違和感の謎を思い出す。
あれは何かを悟った者の目だ。そして昨夜あったことと言えば、たった一つしかない。だとすればアランは何かを隠している。隠しきれると踏んでいる。
歯軋りがするほど強く噛み締め、腹立たしさを魔力で具現するグウェン。アランの魔力を探知して向かったその場にはーー
「やめーー」
何かを制止するように叫ぼうとするアランと、
『kshーーーー』
ザクログモの首部を叩き切る、新米帝国騎士の姿があった。
蜘蛛特有の鋏角をカチカチと鳴らして、正面に対峙するアランに威嚇を行うザクログモは、その丸太のような八本足に付いた棘のような剛毛を地面に擦り付け地面を削り取っている。
ザクログモは毒蜘蛛だ。神経毒である体液をその長い八本足から垂らし、背後から奇襲を仕掛けて傷口から内部へと毒を擦り込む。毒自体は三時間ほどで治るような弱いものだが、単体におけるしつこさ故に上位魔獣として登録されている。
上位魔獣という名柄の中では、明らかに下から数える方が早いザクログモ。新米数人でも死ぬ気で挑めば勝てなくもない相手。だというのに歴戦の猛者であるアランとグウェンはーー
「「………………」」
心底、見たくも無い物を見せられたような顔でフリーズしていた。
過去に何があったのかは知る由も無い後輩である新米帝国騎士は、そんな二人のあからさまな不機嫌な表情を見て首を傾げ、例えようの無い雰囲気に周囲が包まれる。
そして。
『kshaaaaaaaaaaaaaa!』
静止していた空間を切り裂くように、ザクログモが呻きのような声で叫んだ。金切り音のような音に、途端アラン達も意識を戻す。
だが刹那、ザクログモが動いた。
八本足を豪快に動かして突進を繰り出す。無論、返り討ちにも出来たが万が一を考慮して、アランと毒に伏した帝国騎士を抱えたグウェン、新米帝国騎士は大木の枝へと跳躍回避。
「アラン!   二十秒だ!」
「がってん!」
何がを問う必要もなくアランは枝から飛び降りて、ザクログモを挑発するべく剣を抜き放った。木の葉の合間を通り抜けて届いた陽光が、アランの愛剣を鈍く光らせる。
「たたた隊長!   あの野郎、下に降りちゃいましたよ!?」
二人の意思疎通が理解出来ないでいる新米帝国騎士は、慌ててグウェンにアランの奇行を伝えるが、グウェンはそれに耳を貸さない。
アランに伝えた二十秒とは、「この男の応急処置をするから二十秒稼げ」という合図だ。そして二十秒で完璧な処置が出来るかと言われれば、グウェンですら危うい。だから、一瞬たりとも意識を逸らさない。
ベルトポーチからガーゼと解毒薬、冷却魔術が刻印された湿布を取り出し、意識が低迷している帝国騎士に無理やり流し込んで傷口をガーゼで拭い、患部を冷やすように湿布を貼る。
もちろん解毒魔術も存在するが、扱いが難しく過剰な魔力によって使用すると患者に後遺症が残ってしまう恐れがある。そのためには治療の技術に長けた魔術師がいる森外部の村へと急いだ方が良い。
「この騎士は俺が背負う。……お前は走れるか?」
「は、はい!」
「よし。……アラン!」
ちょうど二十秒。グウェンの声を聞いたアランは、ベルトポーチから魔石を取り出し自分と対峙するザクログモの眼前に投擲。ザクログモに衝突する寸前に魔石に刻まれていた魔術が起動し、辺り一帯を光が埋め尽くした。
「逃げるぞ!」
新米帝国騎士はグウェンの影を追って、至近距離ゆえに閃光を喰らってしまったアランは、しかしながらも目では無く音で行き先を聞き分け、それがグウェンだと分かり次第すぐさまに追いかけた。
ザクログモに閃光による目眩しはあまり通用しないが、そもそも蜘蛛には聴覚や嗅覚はあれど、それを駆使して正確な場所を把握する事は難しい。方角は分かっても距離は分からないのだ。
よって獲物が逃げたと知性によって判断したザクログモは、まず始めに無駄に動かず方角だけを聴覚嗅覚を利用して把握する。その間に複眼の異常事態を復旧させる。
だがその復旧にも最速で五秒を要する。それだけあればどれだけ鈍足な帝国騎士でもザクログモから百メートルは距離を取れる。
そして、ここまでに至る最適解を知っているからこそ、アランとグウェンは考える必要も無く行動へと至ったのだ。
『kshhhhhhhhhhh!!』
「怒ってんなぁ」
「諦めてくれれば楽なんだがな」
「そ、そんな事、言ってる、場合じゃ、ないでしょ!?    追いかけて来てますよ!」
遠方から唸り声のような雄叫びを轟かせるザクログモに、若干ながらの不戦を期待するアラン達だったが、そういうわけにもいかず。ズドドドという擬音とともに森中を駆けて来るザクログモに新米帝国騎士は、恐怖を顔に浮かび上がらせながら二人の後方を走り続けた。
道筋はまっすぐ北方へ。地の利はザクログモにあるようだが、魔力による身体強化によって増した速力は、そう簡単に距離を縮められない。
『gyaaa!』
時折騒ぎを聞きつけてやって来た猿のような魔獣に襲われるが、両手が自由なアランは行き道で散々戦ったこともあって、ほんのコンマ数秒で急所を切り裂き絶命に至らしめる。
そして三体目の魔獣を屠ったところで、
「新米!   ザクロまでの距離は!?」
「テメェに新米なんて呼ばれる筋合いーー」
「いいから答えろ!」
「チッ……五十メートル程かと!」
アランの言葉に憤然とした様子で言い返そうとした新米帝国騎士だが、グウェンの急かすような怒鳴り声によって渋々ながらも距離を伝える。無論、舌打ちは聞こえていたが今はスルーだ。
五十メートル。森を突き出るまでは少なくとも一分は必要な訳だが、それではどうしてもザクログモに追い付かれてしまう。
「ええい、仕方が無い……アラン!」
「了解!   患者置いたらすぐ戻って来いよ?」
「ーー気分による」
「あ、それ、絶対来ない奴の言う台詞だ!?」
少し馬鹿げたやり取りを終えた二人は互いに信頼を踏まえた笑みを浮かべ、グウェンはそのまま直行。アランは大地を踏みしめ、一気に逆方向へと転換した。
数多の魔獣と戦闘経験をこなしてきたアランだが、どうにも昆虫型、特に巨大な蜘蛛やらバッタやらは好かない。強いからでは無く、見た目が気持ち悪いからだ。
想像してみよう。本来体長が十数センチしかないはずのバッタが、数十倍も巨大になって現れた時の情緒を。頭ほどある巨大な複眼に、今ならなんでも食えるとでも言いたげな蠢く口部。がむしゃらに追いかけて来る光景など恐怖でしかない。
「けど、やんねぇと俺が食われるからなぁ……」
呆れ笑いを浮かべながらアランは再び剣を抜き放ち、足を止めた獲物を食らわんと、足を地面に突き立てて速度を殺し始めるザクログモと対峙する。
昆虫型の魔獣には共通した弱点が存在する。全方位を見渡すことが出来る複眼や、節足の柔らかくて脆い部分、体の裏側も皮が薄くて剣を突き刺しやすい。
「疾ッ!」
ともかく弱点がそれなりに多い昆虫型だが、その分視野が広く隙というものが途轍もなく少ない。動物のように呼吸をする必要も無いので、意識が緩むタイミングを掴むことすら難しい。
前方で剣を構えたまま機を伺うなど自殺行為に等しい。故にアランは身体強化によって速力を限界まで上昇、木々を利用してザクログモの視線を掻い潜ろうと試みる。
だが。
『shaaaaaaaaa!』
「うおわっ!?」
ザクログモが口部から何かを吐き出しながらグルグルと回転して、周囲にそれを撒き散らす。ツンとする臭いと溶解音が耳に届いた。どうやら酸を吐いたらしい。
このザクログモ、思ったよりも知性が高い。普通ならば側面は取られまいと八本足を器用に動かし敵を追うのだが、このような奇策を利用するとは考えもしなかった。
「けどまあ、それも当たんなければ意味ないけど……なぁッ!」
側面から足を切り落とさんと懐に飛び込んだアラン。魔力を付与して切れ味が増した剣で思いきり叩き切る。
しかし当たりどころが悪かったのか、キィンッと金属同士がぶつかり合ったような音を立てながらアランは仰け反り、そこを目掛けてザクログモは余った足を突き下ろしアランを狙う。
「ちぃッ!」
無理矢理な回避は不可能。そう判断したアランはザクログモの足を壁に見立て、壁キックの応用で突き刺し攻撃の範囲から緊急離脱。騎士服の端が鋭利な先端によって少し裂かれたが、その程度で済んだと思った方が良いだろう。
『ksssssssssssss……』
あちらも仕留めたと思ったのだろうか。肝心の獲物を探せど落ちていない事を知った途端、残念そうに鋏角を鳴らして、枝の上に移動したアランを漆黒の複眼で見つめる。
「…………」
そんなザクログモの行動を睨むように見つめながら、アランは剣の柄を握っていた右手を開いて閉じてを何度か繰り返し、痺れを確認する。
昆虫なんだから剣で切れるでしょう?   などと言って、何も知らない若者が無策で突っ込んでどれだけ殉職したことか。
彼らだって進化する。身体の柔らかさゆえに剣撃に耐えられないのならば、剣撃に耐え得るだけの硬さに表皮を進化させるしかない。そうして彼らは魔獣の中でもしぶとい魔獣系統に仲間入りしているのだから。
とはいえ全身を硬皮で覆う訳にもいかない。先程も言ったように関節肢の関節や胴体の裏側などは弱点のままだし、全方位を見渡すことが出来る複眼も急所の一つだ。
だが、そんな剥き出しの急所をそう容易く狙わせてくれるはずも無く、一対一の場合、昆虫型との戦闘はある意味では竜種と戦うよりも気を張った戦闘になるだろう。
それはアランも然り。
今や脳の片隅で「早くセレナの試合を観に行きてー」などと考える暇は無く、いかに殺すかを必死に考えなければならない現状だ。
そして何より気になっているのは、
「あの腹部の膨らみ……いるなぁ」
赤い斑点が特徴的なザクログモの腹部。それは他の蜘蛛の魔獣とは異なったとある特殊な腹部であり、ザクログモと一度でも戦闘を経験した事ある者達にとって、そこは不可侵領域とも言うべき場所なのだ。
先ほどまではザクログモの前方からしか見てなかった故に気付かなかったが、通常よりも膨らんだ腹部に警戒心を緩ませないザクログモの動き。なにより枝の上にいるアランに飛びかかって来ない事を見る限りでは間違いは無いだろう。
この場合のザクログモに対する行動は大きく分けて二つ。
一つ、余す事なく消滅させること。
二つ、逃亡すること。
正直なところ、現状ではザクログモを単独撃破は難しい。体長三メートルもある巨大な蜘蛛を、一瞬かつ高威力の魔術で倒そうなどと考えれば、最速でも十五秒程度の準備が必要になる。
アランの十八番【顕現武装】も詠唱中に攻撃されてしまっては、発動は不可能。回避しながら詠唱を行うのは、成功確率が数パーセントしかない。
かといえ、逃亡は許されない。グウェンが戻って来るまでの時間、せめてザクログモをこの場に留めておかなければ、被害がさらに広がる恐れがある。
上位魔獣の多くは進化の過程で戦い方、主に騎士との上手い戦闘法を本能によって覚える。その結果として気配を遮断し、奇襲を仕掛ける場合が近年増えつつある。
この討伐に参加した騎士の一人が、こうも簡単に倒されてしまったのだ。他の若輩者ではいとも容易く倒され食われてしまうだろう。
だからこそ、グウェンがやって来るまでの間アランが牽制と監視を続け、グウェンと二人がかりで一気に討伐する。それがベストな選択だと考えた。
グウェンが森を出て近場の村に患者を置き、ここに戻って来るまでに要する時間はおよそ十分。戦闘から二分が経過しているので、残りは八分といったところだろう。アランはザクログモが吐き出す酸攻撃を回避しながら推測を立てる。酸によって足場が減っているので、そろそろ枝の上も無理だろうか。
「それじゃあ……ほいっ、と」
本日二回目の閃光。さすがのザクログモも瞬間に理解したのか足で複眼を隠したが、それでも隙は生じた。その瞬間にアランは懐に入りーー剣を振り下ろす。
『kssssha!?』
バツンという音と共に足の一本が切り取られ、緑色の体液を垂れ流しながら地面へと転がる。もう一撃と考えたが、ザクログモが急速に距離を取ったので叶わず。
だが、挑発するには十分な一撃だ。
そのままアランはザクログモに背を向けて走り出した。ザクログモも鋭利な鋏角を鳴らしながらその背を追う。
魔獣にとって足や腕の損失は大した事ではない。彼らは再生能力を有しており、二ヶ月程度あれば余裕で再生など可能だ。故に足部の損失は差して気に触る事では無かった。
では何に怒っているのか。それはいたって単純な事で、自分の腹部、そこにいるであろう子供達に対する危害の恐れゆえだった。
ザクログモの名は、その腹部に自分の子供である小蜘蛛を大量に飼育していることが由来だ。腹部で小蜘蛛を育て、自分が命の危機を感じると、生存本能からか一斉に小蜘蛛を外に排出するのだ。
そして何より面倒なのがこの小蜘蛛だ。十や二十ならともかく、千以上の小蜘蛛がカサカサと音を立てながら歩いて来る光景など、冷や汗と恐怖のあまりに身が震える。動きに規則性はなく単体では弱いものの、その圧倒的な数による暴力によって、村などは簡単に壊滅するだろう。小蜘蛛とはいえ、その力は木っ端魔獣よりは強いから。
二十メートルほど移動してちょうどいい場所を見つけたアランは、再び枝の上へと跳躍し、時間を稼ぎながら地道にザクログモへの対処方法を考える。
最も簡単なのはグウェンの大規模な火属性魔術で塵にする事だが、あいにくここは森の中。火が飛び移って二次災害になる事だけはどうしても避けたい。
「やっぱ水属性かねぇ……」
広範囲かつ高火力となると、やはり扱い易いのは大衆的である火属性と水属性だろう。風属性や雷属性は一点特化型といっても過言では無いほど局所的なものだし、地属性はそもそも攻撃には向かない。
その分水属性は工夫さえ凝らせば広範囲で高火力な魔術を生み出せるし、火属性を除いた他属性とは異なり多くの過程を必要としない。やはりここは水属性で決まりだろう。
「あとはどうやって倒すかだけど……っと」
アランが移動するであろう枝を先読みして、酸によって溶かしたザクログモ。着地と同時にアランの重さに耐え切れず折れ、アランは空中で一回転しながら着地した。
やはり学習能力が高い。こんなにも早くアランの時間稼ぎ作戦を封じて見せたザクログモは、アランを上質な獲物だと認め、涎で鋏角をねっとり照らす。もはや木っ端魔獣だとは侮れない。
「残りあと八分と少し……。余所見はすんなよ?」
『kshaaaa!』
ここからが本気だと言わんばかりに魔力と殺気を放出。風がざわめき、木々が唸り、大地が揺れる。これほどの殺気に対しても身動ぎ一つしない所からして、余程の修羅場を経験したことがあるのだろう。
だが、それがどうした。
そんなのアランにとっては日常茶飯事であり、それに出くわした事が無い日など一日たりとて存在しなかった。甘ったるい日常に身を浸していたのもまた事実だが、そんなことでアランの三年間が帳消しになるはずもなかった。
常に強者と対峙する。その度に味わってきた強者と弱者の天地の差、劣等感、屈辱、吐き出したくなる嫌悪感。
何より戦場における死の予感。
それらを飽きるほど味わって尚ここに立つアランは、ザクログモに対して敬意など払わない。アランと対峙して力量の雲泥の差を読み切れなかった時点で、奴は『そこら辺のザクログモよりは少しは賢い蜘蛛』だ。
故に思い知らせねばならない。その死の瞬間まで、アラン=フロラストという人物に刃向かった事が愚行だったという事実を。
「殺す気で来い。遊んでやる」
『gshaaaaaaaaaaaaaa!!』
一方は細身の剣を、もう一方は鋼をも貫く鋭利な前足を。その切っ先にあらん限りの殺意を込めて、ーー構える。
今再び、アランとザクログモの激突が始まった。
◆
一方その頃、グウェンの方。
「隊長!?   こんなところにどうしてーー」
「急患だ!   ザクログモの解毒を頼む!」
「は、はいっ!」
慌てて救命所へと入ってきたグウェンを見て驚く帝国騎士の言葉を遮り、グウェンは近場で空いていたベッドにザクログモの毒にやられた帝国騎士を寝転がし、即座にその場から去った。
救命所に送った以上、グウェンの手伝いはかえって専門知識と経験の多い救命担当の彼らの邪魔になる。消費した魔力をベルトポーチの中に仕込んでいた魔石によって回復し、ザクログモの討伐法を思案したところでいざ森へーー
「……おや?」
と、思ったが、ふとおかしなことに気がついた。そう、後方を走っていたはずの新米帝国騎士の姿が見えないのだ。
村に入った時にはまだいた。付いて来るようにともしっかり伝えた。返事も聞こえていた。では、その彼はいったいどこに?
「まさか」
グウェンは知っていた、彼はプライドが高い人種だと言うことを。
グウェンは知っていた、彼は人一倍負けず嫌いだと言うことを。
グウェンは懸念していた、彼が自分の命令にいつしか背くのではないかと。
ザクログモから逃げる途中、グウェンは新米帝国騎士ではなくアランに信頼を置いていた。そう、見知った自分ではなく、名も知れぬ訳の分からない存在が信頼されていたのだ。
それを普通ならば、どう捉えるだろうか。疑念?   憤怒?   哀愁?   憎悪?   その答えは定かではない。だが、これだけは分かる。
ーーアランよりも自分を頼って欲しかった。
ならばそれを証明するには何が必要か。アラン以上の絶対的な信頼だ。ならばそれを成し遂げるには、
「クソが……っ!」
次の瞬間、グウェンは先ほどまでとは比べ物にならない速さで駆け出した。大気が身を叩き、胃液がこみ上げるような感覚に苛まれながらも走り続けた。
不規則に並ぶ樹木を避けながら、グウェンの異常な速度に怯えを成す魔獣を無視しながら、ただひたすらに二人の安否を願った。
否、切に願ったのはアランの安全だ。
今日のアランは何かおかしい。今朝に会ったその瞬間から何かを感じていたが、今になってようやくその違和感の謎を思い出す。
あれは何かを悟った者の目だ。そして昨夜あったことと言えば、たった一つしかない。だとすればアランは何かを隠している。隠しきれると踏んでいる。
歯軋りがするほど強く噛み締め、腹立たしさを魔力で具現するグウェン。アランの魔力を探知して向かったその場にはーー
「やめーー」
何かを制止するように叫ぼうとするアランと、
『kshーーーー』
ザクログモの首部を叩き切る、新米帝国騎士の姿があった。
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