英雄殺しの魔術騎士
第6話「義姉弟デート」
魔剣祭二日目。
この日も選手達の休息日といえど、市街かしこは大いに賑わっていた。
「やべぇ……空腹でマジ死ぬ」
そんな中、今朝の一件で限界まで体力を使ったうえに朝食を食べさせてもらえなかったアランは、普段よりもいっそう死んだ様な目をしていた。
市民よりも給与が多いはずの帝国騎士が飢えているというなんとも面白おかしい光景に、道行く人々は好奇の視線を向ける。
ーーいや、それはアランにだけでは無かった。
「ねえアラン。これとこれなら、どっちが好き?」
両手に服を持ったシルフィアが、ほれほれとでも言わんばかりにアランに選ぶように強制させる。
そう、二人は予定通りデートをしていた。
アランは相変わらず安っぽい白シャツに薄汚れた黒のスラックス、その上にフィニア内乱の後に新調してもらった藍の騎士服を纏って街を闊歩するが、シルフィアは違う。
爽やかな白のワンピースとシルバーグレイのカーディガンを合わせ、ブラウンのベルトが巻かれて強調された腰回りはなんとも扇情的。足元はカルサ共和国で流行しているサンダルを履いており、煎茶色の長髪は三つ編みポニーテールにされていた。
そこには帝国騎士としてのシルフィア=グローバルトの姿は一切無く、一人の女性としてのシルフィアがアランとのデートを目一杯に楽しんでいた。
嫉妬の視線がアランを焼く!
「……俺よかシルフィア姉さんの方がセンスあるだろうに。自分の直感に頼って買うべきだと思います」
「それじゃ意味無いの。まったく……家事全般は出来るのに、ほんっとにこういう事には鈍いんだから……はぁ」
まあ良いわ、とシルフィアは持っていた服を商品棚に戻すとアランの横に駆け寄り腕を組んだ。見ていた男性陣があっと声を出すが、シルフィアはどこ吹く風。
「服は良いのか?」
「それはいつでも良いわ。それよりも昼食にしない?   アランが好きそうな店を知ってるの」
「飯!?   行こう、直ぐに行こう!」
腹の虫が栄養を求め叫び続けているアランにとって、その誘いは僥倖と言わざるを得なかった。シルフィアだって今朝の一件については色々と言及したいだろうはずなのに、それも今の所何も無い。
そう、今のところ。
いつもは思慮深いアランがこの時、後先を考えずにシルフィアの誘いに乗ったのは、限界に至っていた空腹が原因だろう。
この一時間後、アランは容易に提案に乗った事を後悔することをまだ知らない。
◆
シルフィアに言われるがまま二人が向かったのは、商業区の西側にある人目から少し隠れた店だった。
店内に人は疎らで、そのほとんどが行商人のような格好をした御老人。外のどんちゃん騒ぎとは裏腹な、のどかな雰囲気が漂っている。
「……なにこれ美味い!?」
「ふふふ。お気に召したようで良かった」
驚愕しつつも手を休めず料理を口に運び続けるアランを見て、シルフィアは嬉しそうに微笑む。
アランが食べているのは謎の真っ赤な鶏肉。表面はパリッと香辛料のスパイシーな香りが鼻腔を刺激して食欲を唆り、中身は細かく刻み煮込まれた野菜がたっぷりと詰め込まれている。
最初は怪訝そうだったアランも、一口味わってしまえばその味に籠絡され魅了されてしまった。
「これって確か、辛味の強い木の実を乾かして粉末状にしたカルサの特産品だったよな……辛過ぎて食べられんクズ食品かとばかり思っていたが……」
「ここの店主の人が自己流に味を調整しているんですって。やっぱり市販品は辛いみたい」
「ふむ。俺も今度、向こうから取り入れて調合でもしてみるか……」
「相変わらずそういう事が好きねー」
呆れるように笑うシルフィアを見て、アランは悪いかよとでも言うように視線を送る。別段呆れられても仕方は無いと思ってはいるが、趣味である以上、理性とは裏腹に無意識に身体が動いてしまうのだ。
一口大にナイフで切り分けた鶏肉をフォークで口に放り込みながら、記憶に刻むようにしっかりと味わい脳裏にレシピを記していく。
今度上手く作れたなら、ユリアにでも出してみよう。などと考えた、その時だった。
「それでアラン。エルシェナ皇女殿下とは、いったいどういう関係なのかしら?」
視線が凍てつき鋭さが増し、声から優しさが無くなり、シルフィアから溢れる魔力は容赦なくアランに重圧となって襲い掛かった。思わず手が止まる。
やはり許してはいなかったようだ!
笑っているが優しく無い。まるで切っ先を突きつけるようにアランへ殺伐とした視線を向けるシルフィアは、数秒前までの面影を残してはいなかった。
「いや、ただの知り合いーーーー」
「『ただの知り合い』が全裸でベッドに入ってくるかしら?   それが世の常識なのかしら。そうじゃないよね、ね?」
「はい……ごもっともです」
もはや立つ瀬が無くなる勢いで論破されたアラン。口の中のスパイシーが消え失せる。心なしか、周囲の雰囲気が寒々としたものと変わりつつあるのだが……。
「よもや友好国のご令嬢と肉体関係を持ってるだなんて言わないわよね?   まさか二年間も連絡が無かった間にそういう事になってたとか言う訳じゃ無いでしょうね?」
「無い無い。俺自身はエルシェナにそういう興味はあれど、そういう関係になろうなどとは一切これっぽっちも考えた事は無いし、こっちから手を出した事は一度としてまりません!」
「本当かしらねぇ……」
とても怪訝そうだ。だが真実なのだから狼狽えても仕方がない。固唾を飲みながら、アランはじっとシルフィアの澄み切った青色の双眸を見つめ返す。
「……………………」
「……………………」
それから十秒ほど経過して。
「……良いわ。アランは昔っから私達に嘘をつくのは苦手だったし。どうやら嘘もついてない様だし」
「信用してくれて助かる」
緊張の糸が切れて、息を吐き出しながらそのまま背凭れに腰を預けるアラン。それを見たシルフィアは手を組んでそこに顎を乗せながら、愉快そうに微笑んだ。
そして。
「あー、アランを弄るのは相変わらず楽しいわねー。もういっそのこと、私もアランをお婿さんに貰っちゃおうかしら?」
「……冗談、だよね?」
というか嘘であって欲しい。欲しかった。
けれどアランの疑念に対して返ってきたのは、ーー意味深な沈黙と微笑みだった。
「……え、えーっと……確か昔のお偉い人がこんな事言ってたっけなあ。『沈黙は否なり』だっけか?」
わざと惚けて全てを誤魔化そうとするが、
「いやいや、是なりでしょうが。そして私の答えはもちろんこっち。可愛い妹の旦那になるくらいなら、むしろ私がいただくわよ」
「ははは……義姉妹に引っ張り蛸だー」
もう笑えない。笑う気力すらない。準決勝進出が確定に近いシルフィアと、このまま順当に勝ち続けてユリアも準決勝に出たとする。もしもこの二人が決勝戦で戦ったすれば、いったいアランの未来はどうなるだろう?
二人のどちらが勝っても、アランは義姉妹と結婚する事になる。お先真っ暗だ。
「そ、そうだ!   そもそも姉さんには婚約者いるはずだ。彼はどうするんだ?」
ふと思い出したシルフィアの許嫁について。シルフィアが中等部の頃に果たした六貴会の一端、シーフォード家の三男との婚約に関してだ。如何にグローバルト家が栄光を得ているからといっても、書面上で認可された婚約を破棄する事は出来ないはずだ。
だからこそ、アランはアランとの結婚を諦めるはずだと予感していた。
だがしかぁし、シルフィアは諦めない!!
「そんな物、陛下の権力でどうとでもなるわよ。それにあれはお爺様が勝手に決めた事だし」
確かに。魔剣祭の優勝者への褒賞である「願い事を可能な限り何でも叶える」という恩恵は、国そのものを巻き込んでさえ叶える事を意味している。
皇帝であるヴィルガが「それ無し」と言えば、たとえ両者が合意の上だったとしてもシルフィアの婚約を強制的に却下する事が可能だ。そしてそれに食い下がる事は決して許されない。
ヴィルガとしても時折現れる無茶振りを言う選手と比較して安易な願いだろうから、快く引き受ける事だろう。しかもかなり強めの方法で。
そうなればアランは、二度と自由を手にできなくなる。
「どうしよう……もう逃げちまおうか。セレナには済まんが借金の事は何とかしてもらうとして、最果てに逃亡でもしてやろうか……」
病んだ眼差しでブツブツと作戦を練るアラン。シルフィアがやる気になった以上、アランが籍に入る事はほぼ確定状態だ。結果が決まる前に姿を隠した方が自由気ままに生きられるだろう。
だがどこに?   オルフェリア帝国内は一月とせずに見つかってしまうだろうし、カルサ共和国にも六貴会の手は回っている。フィニア帝国に至ってはエルシェナが待ち構えている。
……アルダーは行きたくないしなあ。
苦悩を漏らすように息を吐き出すアラン。空気が途轍もなく重たい。キラキラとしていた眼差しが、色彩を失ったように死んでいる。
「まあまあ。それよりも食事を続けましょう」
「……ソウデスネー」
そんな人生のどん底に滞在するようなアランの気持ちとは裏腹に、帝都内は活気の絶えない賑わいを見せていた。
◆
昼食を取ったアランとシルフィアは、買い物デートを再開した。シルフィアが気になった服やアクセサリー、アランが珍しく感じた掘り出し物の魔道具など、お互いに度々足を止めて気が済むまで舐めるように商品を物色する。
するとふと思い出したように、
「そういえばセレナちゃんとかは何してるの?」
とシルフィアが言った。やはりデートと聞いて、ユリアが影ながら付いて来ると考えていたのだろう。だが実際には付いて来ていない。
「二人には明日の選手に関する情報収集を課題にしてきた。毎回俺の情報だけを頼りにするのは良くないと思ってた頃だしな」
アランの情報がどれだけ信憑性のある物かは、各人のアランに対する信頼による。その点においては二人は間違いなくアランの与えた情報を鵜呑みにするだろう。
だがそれでは良くない。如何にアランが持っている情報が正しいからと言っても、全てをアランの情報だけに任せるわけにはいかない。自分なりに多少なれど情報は集めておくべきなのだ。
ちなみにアランは昨日の時点で既に情報は粗方集めておいた。収集源は秘匿だ。
「二人が向かった先は……図書館かしら」
「まあそれが妥当だろう。例外を除いた九分九厘は、アルカドラ魔術学院を卒業した帝国騎士だからな。卒業して数年でこうして魔剣祭に若手騎士の代表として選ばれる実力者なら、必ず何らかの実績は残しているだろうし」
「街中を無闇に走り回るよりは楽な選択肢だものね」
そうだな、とアランは薬瓶に入った謎の半固体物質を見つめながら受け答える。やはりこういった祭典が行われている日は、物珍しい品々が至る所に陳列している。
「親父、この軟膏みたいな奴は?」
「そりゃあウチの村近くに生えている木の幹から採った、魔獣避けの薬だよ。蓋を開けてみな、ツーンとくるだろう?」
「うわっ、マジで鼻にくるな……」
魔獣の多くは五感が鋭く、特に獲物を見つけるための嗅覚と聴覚が特化した肉食系の魔獣が多いのだ。人間ですら余り嗅ぎたく無い刺激臭は、魔獣達にとって脅威となる。
……香りは凄いが、強めのハーブってところか。
陳列する品数が少ない所を鑑みて、売れ行きが良いのか、はたまた生産数が元から少ないのか。こんな物があるというのに、未だに魔獣からの被害が一向に減る気配が無い事を持ち上げれば、やはり数に限りがあるのだろう。
「親父、これ二つ買うよ。あとそこの紐で絡んである香菜もちょーだい」
「あいよ。全部で千エルドだ」
「やっぱ薬は高いなあ。ま、しゃーないか」
薬瓶二つと香菜を金貨一枚で交換したアランは、ベルトポーチを開いて中にしまう。予め中身は全て部屋に置いて来たので、まだ余裕はありそうだ。
「ねえ。そのお薬、何に使うの?」
露店から少し離れたところで興味津々にシルフィアが尋ねてきた。やはり物が物だけにアランが何の意図を持って買ったのか、気になって仕方がないのだろう。
「ん。一個は実験用に。ちゃんと役に立つのかをな。もう一つは調査用に。成分調べてもうちょっと仕様の幅を増やせないかなー、と」
「あんた……ほんっとに物好きね……」
「趣味ですから」
呆れるように笑いながらも、それを嫌っている風には見えないシルフィア。そのなんとも言えない雰囲気が、二人を若い騎士と美女のカップルに錯覚させている。
だが二人はそんな事を気にもせず、周囲の視線を目もくれずにデートを続けた。
商業区の大通りに出て巷で人気のあるスイーツを食べたり、お互いに騎士の顔に戻って鍛冶屋を少しばかり覗いてみたり、小洒落た帽子店でシルフィアが気に入ったらしい帽子をプレゼントとして買ってあげたり。二人は大いに楽しんだ。
すると。
「そこの黒髪の!」
呼ばれた気がしたアランは、声の方向へと身を翻した。そこには今帝都に着いたばかりといった風貌の、齢三十あたりの男性が、仲間の乗った数台の馬車を引き連れながらこちらに向かっていた。
男性は馬から降りるとアランにずいと近寄って、髪や目を見つめた。近寄って分かる、この男から発する猛者としての覇気が。
「……アンタ、もしかしなくとも騎士だよな。アンタみたいな青の混じった黒髪で、鉛のような瞳をした二十代くらいの騎士は他にもいるかい?」
「い、いないと思うが……どうかしたのか?」
「そうか……ならあいつが言っていた青年ってのはお前さんで間違い無いんだろう。少し待っててくれ」
纏う覇気とは裏腹に謙虚な態度で男はアランに待つよう願い、そそくさと馬車の中へ何かを取りに戻った。
「ねえアラン。あの人と知り合い?」
「いや、初対面だ。だからあの人が言った『あいつ』にも心当たりは無い」
だが気になる。どうしてその『あいつ』という存在はアランの事を知っているのか。髪と目の色、そして年齢を知っていたのだろうか。
「すまねぇ、待たせちまったな。……これがあいつに頼まれて、お前さんに渡して欲しいと言われた物だ」
「……本?」
馬車から戻って来た男が持っていたのは、一冊の大きな古本だった。古本といっても後生大事に扱われていたらしく、古本自体に大まかな傷や劣化は見られない。
渡された表紙を見て、そこに書き記された第一神聖語を目の当たりにして、アランは眉を顰めた。
「『名無き勇者の物語』か?   いや、これはそうは読まないはずだ……」
手始めにパラパラと数枚ページを繰ってみた。そこに書き記された第一神聖語の物語は見覚えがある。『名無き勇者の物語』と全く同一の内容だ。だが表紙のタイトルは間違いなく『名無き勇者の物語』とは読めない。
「なあ、おっさん。この本誰から貰ったんだ?」
何気無しにアランは問うた。だが男は困ったような表情を浮かべ、しばらく何かを考えてから言った。
「すまねぇ忘れた……いや、忘れさせられたのほうが正しいな。人相やそいつと喋った内容は思い出せるが、どうにも名前が出てこない……」
「……そうか」
分からない事には仕方がない。アランは感謝を述べて、少しばかりのお金と商売に特化したスポットを教えた。すると満足して旅商人達は馬車を引いて教えた地点へと向かった。
その後ろ姿を見送ったところで、
「……なあ、シルフィア姉さん。そんな事ってあると思うか?」
「あの人の言っていた事?   そうね……あの感じからすると、それ以前に忘れた事すら忘れていたって感じがしたわね。記憶の操作なんて魔術、私も聞いた事は無いけど」
「だよなあ」
アランとシルフィアの魔術的知識を統合した場合、ほとんど隙間なくあらゆる魔術に関して詳細に語れる自信がある。それだけ二人の魔術に関する学力は高く、深いのだ。
だがそんな二人でも理解出来ない魔術がある。もはやそれは固有魔術、常人では成し遂げられない領域に位置する高位の魔術と言える存在だ。
しかし近年の固有魔術ならともかく、数十年も昔の固有魔術となると偉人として名が残っており、固有魔術に関しても些細に書き記されている場合が多い。
もちろん、その人物は生きている。ならば近年に開発した固有魔術である可能性も捨てきれない。だがその場合、その人物は大罪教『怠惰司教』ツウィーダ=キメラニスと同等かそれ以上の天才だと言えるだろう。
ここ数年で開発された固有魔術は、汎用魔術もしくは他者の固有魔術を自身なりにアレンジして作られた、いわば自己流魔術なのだ。
となれば無論、そんな魔術は歴史なり記録なりとして本に残されているはずだ。だがアランとシルフィアの知る限りでは「記憶を操作する」と言った魔術は存在しない。
……記憶を書き換える、ならあったけど。
あれは確か、一定以上書き換えると対象者の自我が崩壊するとか言った、現代では禁術とされている魔術。迂闊に手を出そうとする輩など、まさに外道しかあり得ないだろう。
「……用心、しておくか」
その人物が何者かアランは分からない。だがどうしてだろう、その人物の事を考えると敵意を漏らさずにはいられない。その背中すら見えていないというのに、殺気立つのは若気の至りか?
アランは視線を下ろし、男から貰った本の表紙を指でなぞる。その人物がどれだけこの本を大事にしていたかは見れば分かる。まるで形見だとでも示さんばかりの几帳面ぶりだ。
端的に、気持ちが悪い。
確かに本の類、特に『名無き勇者の物語』に関しては国によって国宝と同列の扱いがされるほど貴重な代物だ。だが、ただの人物が本のためにそこまで神経を張り詰めるなど、狂人の沙汰としか考えられない。
戦闘経験によるアランの直感が、不穏な気配……というか予感を感じ取った。
「また何か面倒な事件に巻き込まれるとか、そんなんじゃ無いだろうなぁ」
大きく息を漏らして頭を掻くアラン。態度とは裏腹にその身から溢れる剣気と魔力は、並み居る帝国騎士よりも遥かに上をいく。
そして、そんなアランの背後でシルフィアは思った。
それはフラグだよ、と。
この日も選手達の休息日といえど、市街かしこは大いに賑わっていた。
「やべぇ……空腹でマジ死ぬ」
そんな中、今朝の一件で限界まで体力を使ったうえに朝食を食べさせてもらえなかったアランは、普段よりもいっそう死んだ様な目をしていた。
市民よりも給与が多いはずの帝国騎士が飢えているというなんとも面白おかしい光景に、道行く人々は好奇の視線を向ける。
ーーいや、それはアランにだけでは無かった。
「ねえアラン。これとこれなら、どっちが好き?」
両手に服を持ったシルフィアが、ほれほれとでも言わんばかりにアランに選ぶように強制させる。
そう、二人は予定通りデートをしていた。
アランは相変わらず安っぽい白シャツに薄汚れた黒のスラックス、その上にフィニア内乱の後に新調してもらった藍の騎士服を纏って街を闊歩するが、シルフィアは違う。
爽やかな白のワンピースとシルバーグレイのカーディガンを合わせ、ブラウンのベルトが巻かれて強調された腰回りはなんとも扇情的。足元はカルサ共和国で流行しているサンダルを履いており、煎茶色の長髪は三つ編みポニーテールにされていた。
そこには帝国騎士としてのシルフィア=グローバルトの姿は一切無く、一人の女性としてのシルフィアがアランとのデートを目一杯に楽しんでいた。
嫉妬の視線がアランを焼く!
「……俺よかシルフィア姉さんの方がセンスあるだろうに。自分の直感に頼って買うべきだと思います」
「それじゃ意味無いの。まったく……家事全般は出来るのに、ほんっとにこういう事には鈍いんだから……はぁ」
まあ良いわ、とシルフィアは持っていた服を商品棚に戻すとアランの横に駆け寄り腕を組んだ。見ていた男性陣があっと声を出すが、シルフィアはどこ吹く風。
「服は良いのか?」
「それはいつでも良いわ。それよりも昼食にしない?   アランが好きそうな店を知ってるの」
「飯!?   行こう、直ぐに行こう!」
腹の虫が栄養を求め叫び続けているアランにとって、その誘いは僥倖と言わざるを得なかった。シルフィアだって今朝の一件については色々と言及したいだろうはずなのに、それも今の所何も無い。
そう、今のところ。
いつもは思慮深いアランがこの時、後先を考えずにシルフィアの誘いに乗ったのは、限界に至っていた空腹が原因だろう。
この一時間後、アランは容易に提案に乗った事を後悔することをまだ知らない。
◆
シルフィアに言われるがまま二人が向かったのは、商業区の西側にある人目から少し隠れた店だった。
店内に人は疎らで、そのほとんどが行商人のような格好をした御老人。外のどんちゃん騒ぎとは裏腹な、のどかな雰囲気が漂っている。
「……なにこれ美味い!?」
「ふふふ。お気に召したようで良かった」
驚愕しつつも手を休めず料理を口に運び続けるアランを見て、シルフィアは嬉しそうに微笑む。
アランが食べているのは謎の真っ赤な鶏肉。表面はパリッと香辛料のスパイシーな香りが鼻腔を刺激して食欲を唆り、中身は細かく刻み煮込まれた野菜がたっぷりと詰め込まれている。
最初は怪訝そうだったアランも、一口味わってしまえばその味に籠絡され魅了されてしまった。
「これって確か、辛味の強い木の実を乾かして粉末状にしたカルサの特産品だったよな……辛過ぎて食べられんクズ食品かとばかり思っていたが……」
「ここの店主の人が自己流に味を調整しているんですって。やっぱり市販品は辛いみたい」
「ふむ。俺も今度、向こうから取り入れて調合でもしてみるか……」
「相変わらずそういう事が好きねー」
呆れるように笑うシルフィアを見て、アランは悪いかよとでも言うように視線を送る。別段呆れられても仕方は無いと思ってはいるが、趣味である以上、理性とは裏腹に無意識に身体が動いてしまうのだ。
一口大にナイフで切り分けた鶏肉をフォークで口に放り込みながら、記憶に刻むようにしっかりと味わい脳裏にレシピを記していく。
今度上手く作れたなら、ユリアにでも出してみよう。などと考えた、その時だった。
「それでアラン。エルシェナ皇女殿下とは、いったいどういう関係なのかしら?」
視線が凍てつき鋭さが増し、声から優しさが無くなり、シルフィアから溢れる魔力は容赦なくアランに重圧となって襲い掛かった。思わず手が止まる。
やはり許してはいなかったようだ!
笑っているが優しく無い。まるで切っ先を突きつけるようにアランへ殺伐とした視線を向けるシルフィアは、数秒前までの面影を残してはいなかった。
「いや、ただの知り合いーーーー」
「『ただの知り合い』が全裸でベッドに入ってくるかしら?   それが世の常識なのかしら。そうじゃないよね、ね?」
「はい……ごもっともです」
もはや立つ瀬が無くなる勢いで論破されたアラン。口の中のスパイシーが消え失せる。心なしか、周囲の雰囲気が寒々としたものと変わりつつあるのだが……。
「よもや友好国のご令嬢と肉体関係を持ってるだなんて言わないわよね?   まさか二年間も連絡が無かった間にそういう事になってたとか言う訳じゃ無いでしょうね?」
「無い無い。俺自身はエルシェナにそういう興味はあれど、そういう関係になろうなどとは一切これっぽっちも考えた事は無いし、こっちから手を出した事は一度としてまりません!」
「本当かしらねぇ……」
とても怪訝そうだ。だが真実なのだから狼狽えても仕方がない。固唾を飲みながら、アランはじっとシルフィアの澄み切った青色の双眸を見つめ返す。
「……………………」
「……………………」
それから十秒ほど経過して。
「……良いわ。アランは昔っから私達に嘘をつくのは苦手だったし。どうやら嘘もついてない様だし」
「信用してくれて助かる」
緊張の糸が切れて、息を吐き出しながらそのまま背凭れに腰を預けるアラン。それを見たシルフィアは手を組んでそこに顎を乗せながら、愉快そうに微笑んだ。
そして。
「あー、アランを弄るのは相変わらず楽しいわねー。もういっそのこと、私もアランをお婿さんに貰っちゃおうかしら?」
「……冗談、だよね?」
というか嘘であって欲しい。欲しかった。
けれどアランの疑念に対して返ってきたのは、ーー意味深な沈黙と微笑みだった。
「……え、えーっと……確か昔のお偉い人がこんな事言ってたっけなあ。『沈黙は否なり』だっけか?」
わざと惚けて全てを誤魔化そうとするが、
「いやいや、是なりでしょうが。そして私の答えはもちろんこっち。可愛い妹の旦那になるくらいなら、むしろ私がいただくわよ」
「ははは……義姉妹に引っ張り蛸だー」
もう笑えない。笑う気力すらない。準決勝進出が確定に近いシルフィアと、このまま順当に勝ち続けてユリアも準決勝に出たとする。もしもこの二人が決勝戦で戦ったすれば、いったいアランの未来はどうなるだろう?
二人のどちらが勝っても、アランは義姉妹と結婚する事になる。お先真っ暗だ。
「そ、そうだ!   そもそも姉さんには婚約者いるはずだ。彼はどうするんだ?」
ふと思い出したシルフィアの許嫁について。シルフィアが中等部の頃に果たした六貴会の一端、シーフォード家の三男との婚約に関してだ。如何にグローバルト家が栄光を得ているからといっても、書面上で認可された婚約を破棄する事は出来ないはずだ。
だからこそ、アランはアランとの結婚を諦めるはずだと予感していた。
だがしかぁし、シルフィアは諦めない!!
「そんな物、陛下の権力でどうとでもなるわよ。それにあれはお爺様が勝手に決めた事だし」
確かに。魔剣祭の優勝者への褒賞である「願い事を可能な限り何でも叶える」という恩恵は、国そのものを巻き込んでさえ叶える事を意味している。
皇帝であるヴィルガが「それ無し」と言えば、たとえ両者が合意の上だったとしてもシルフィアの婚約を強制的に却下する事が可能だ。そしてそれに食い下がる事は決して許されない。
ヴィルガとしても時折現れる無茶振りを言う選手と比較して安易な願いだろうから、快く引き受ける事だろう。しかもかなり強めの方法で。
そうなればアランは、二度と自由を手にできなくなる。
「どうしよう……もう逃げちまおうか。セレナには済まんが借金の事は何とかしてもらうとして、最果てに逃亡でもしてやろうか……」
病んだ眼差しでブツブツと作戦を練るアラン。シルフィアがやる気になった以上、アランが籍に入る事はほぼ確定状態だ。結果が決まる前に姿を隠した方が自由気ままに生きられるだろう。
だがどこに?   オルフェリア帝国内は一月とせずに見つかってしまうだろうし、カルサ共和国にも六貴会の手は回っている。フィニア帝国に至ってはエルシェナが待ち構えている。
……アルダーは行きたくないしなあ。
苦悩を漏らすように息を吐き出すアラン。空気が途轍もなく重たい。キラキラとしていた眼差しが、色彩を失ったように死んでいる。
「まあまあ。それよりも食事を続けましょう」
「……ソウデスネー」
そんな人生のどん底に滞在するようなアランの気持ちとは裏腹に、帝都内は活気の絶えない賑わいを見せていた。
◆
昼食を取ったアランとシルフィアは、買い物デートを再開した。シルフィアが気になった服やアクセサリー、アランが珍しく感じた掘り出し物の魔道具など、お互いに度々足を止めて気が済むまで舐めるように商品を物色する。
するとふと思い出したように、
「そういえばセレナちゃんとかは何してるの?」
とシルフィアが言った。やはりデートと聞いて、ユリアが影ながら付いて来ると考えていたのだろう。だが実際には付いて来ていない。
「二人には明日の選手に関する情報収集を課題にしてきた。毎回俺の情報だけを頼りにするのは良くないと思ってた頃だしな」
アランの情報がどれだけ信憑性のある物かは、各人のアランに対する信頼による。その点においては二人は間違いなくアランの与えた情報を鵜呑みにするだろう。
だがそれでは良くない。如何にアランが持っている情報が正しいからと言っても、全てをアランの情報だけに任せるわけにはいかない。自分なりに多少なれど情報は集めておくべきなのだ。
ちなみにアランは昨日の時点で既に情報は粗方集めておいた。収集源は秘匿だ。
「二人が向かった先は……図書館かしら」
「まあそれが妥当だろう。例外を除いた九分九厘は、アルカドラ魔術学院を卒業した帝国騎士だからな。卒業して数年でこうして魔剣祭に若手騎士の代表として選ばれる実力者なら、必ず何らかの実績は残しているだろうし」
「街中を無闇に走り回るよりは楽な選択肢だものね」
そうだな、とアランは薬瓶に入った謎の半固体物質を見つめながら受け答える。やはりこういった祭典が行われている日は、物珍しい品々が至る所に陳列している。
「親父、この軟膏みたいな奴は?」
「そりゃあウチの村近くに生えている木の幹から採った、魔獣避けの薬だよ。蓋を開けてみな、ツーンとくるだろう?」
「うわっ、マジで鼻にくるな……」
魔獣の多くは五感が鋭く、特に獲物を見つけるための嗅覚と聴覚が特化した肉食系の魔獣が多いのだ。人間ですら余り嗅ぎたく無い刺激臭は、魔獣達にとって脅威となる。
……香りは凄いが、強めのハーブってところか。
陳列する品数が少ない所を鑑みて、売れ行きが良いのか、はたまた生産数が元から少ないのか。こんな物があるというのに、未だに魔獣からの被害が一向に減る気配が無い事を持ち上げれば、やはり数に限りがあるのだろう。
「親父、これ二つ買うよ。あとそこの紐で絡んである香菜もちょーだい」
「あいよ。全部で千エルドだ」
「やっぱ薬は高いなあ。ま、しゃーないか」
薬瓶二つと香菜を金貨一枚で交換したアランは、ベルトポーチを開いて中にしまう。予め中身は全て部屋に置いて来たので、まだ余裕はありそうだ。
「ねえ。そのお薬、何に使うの?」
露店から少し離れたところで興味津々にシルフィアが尋ねてきた。やはり物が物だけにアランが何の意図を持って買ったのか、気になって仕方がないのだろう。
「ん。一個は実験用に。ちゃんと役に立つのかをな。もう一つは調査用に。成分調べてもうちょっと仕様の幅を増やせないかなー、と」
「あんた……ほんっとに物好きね……」
「趣味ですから」
呆れるように笑いながらも、それを嫌っている風には見えないシルフィア。そのなんとも言えない雰囲気が、二人を若い騎士と美女のカップルに錯覚させている。
だが二人はそんな事を気にもせず、周囲の視線を目もくれずにデートを続けた。
商業区の大通りに出て巷で人気のあるスイーツを食べたり、お互いに騎士の顔に戻って鍛冶屋を少しばかり覗いてみたり、小洒落た帽子店でシルフィアが気に入ったらしい帽子をプレゼントとして買ってあげたり。二人は大いに楽しんだ。
すると。
「そこの黒髪の!」
呼ばれた気がしたアランは、声の方向へと身を翻した。そこには今帝都に着いたばかりといった風貌の、齢三十あたりの男性が、仲間の乗った数台の馬車を引き連れながらこちらに向かっていた。
男性は馬から降りるとアランにずいと近寄って、髪や目を見つめた。近寄って分かる、この男から発する猛者としての覇気が。
「……アンタ、もしかしなくとも騎士だよな。アンタみたいな青の混じった黒髪で、鉛のような瞳をした二十代くらいの騎士は他にもいるかい?」
「い、いないと思うが……どうかしたのか?」
「そうか……ならあいつが言っていた青年ってのはお前さんで間違い無いんだろう。少し待っててくれ」
纏う覇気とは裏腹に謙虚な態度で男はアランに待つよう願い、そそくさと馬車の中へ何かを取りに戻った。
「ねえアラン。あの人と知り合い?」
「いや、初対面だ。だからあの人が言った『あいつ』にも心当たりは無い」
だが気になる。どうしてその『あいつ』という存在はアランの事を知っているのか。髪と目の色、そして年齢を知っていたのだろうか。
「すまねぇ、待たせちまったな。……これがあいつに頼まれて、お前さんに渡して欲しいと言われた物だ」
「……本?」
馬車から戻って来た男が持っていたのは、一冊の大きな古本だった。古本といっても後生大事に扱われていたらしく、古本自体に大まかな傷や劣化は見られない。
渡された表紙を見て、そこに書き記された第一神聖語を目の当たりにして、アランは眉を顰めた。
「『名無き勇者の物語』か?   いや、これはそうは読まないはずだ……」
手始めにパラパラと数枚ページを繰ってみた。そこに書き記された第一神聖語の物語は見覚えがある。『名無き勇者の物語』と全く同一の内容だ。だが表紙のタイトルは間違いなく『名無き勇者の物語』とは読めない。
「なあ、おっさん。この本誰から貰ったんだ?」
何気無しにアランは問うた。だが男は困ったような表情を浮かべ、しばらく何かを考えてから言った。
「すまねぇ忘れた……いや、忘れさせられたのほうが正しいな。人相やそいつと喋った内容は思い出せるが、どうにも名前が出てこない……」
「……そうか」
分からない事には仕方がない。アランは感謝を述べて、少しばかりのお金と商売に特化したスポットを教えた。すると満足して旅商人達は馬車を引いて教えた地点へと向かった。
その後ろ姿を見送ったところで、
「……なあ、シルフィア姉さん。そんな事ってあると思うか?」
「あの人の言っていた事?   そうね……あの感じからすると、それ以前に忘れた事すら忘れていたって感じがしたわね。記憶の操作なんて魔術、私も聞いた事は無いけど」
「だよなあ」
アランとシルフィアの魔術的知識を統合した場合、ほとんど隙間なくあらゆる魔術に関して詳細に語れる自信がある。それだけ二人の魔術に関する学力は高く、深いのだ。
だがそんな二人でも理解出来ない魔術がある。もはやそれは固有魔術、常人では成し遂げられない領域に位置する高位の魔術と言える存在だ。
しかし近年の固有魔術ならともかく、数十年も昔の固有魔術となると偉人として名が残っており、固有魔術に関しても些細に書き記されている場合が多い。
もちろん、その人物は生きている。ならば近年に開発した固有魔術である可能性も捨てきれない。だがその場合、その人物は大罪教『怠惰司教』ツウィーダ=キメラニスと同等かそれ以上の天才だと言えるだろう。
ここ数年で開発された固有魔術は、汎用魔術もしくは他者の固有魔術を自身なりにアレンジして作られた、いわば自己流魔術なのだ。
となれば無論、そんな魔術は歴史なり記録なりとして本に残されているはずだ。だがアランとシルフィアの知る限りでは「記憶を操作する」と言った魔術は存在しない。
……記憶を書き換える、ならあったけど。
あれは確か、一定以上書き換えると対象者の自我が崩壊するとか言った、現代では禁術とされている魔術。迂闊に手を出そうとする輩など、まさに外道しかあり得ないだろう。
「……用心、しておくか」
その人物が何者かアランは分からない。だがどうしてだろう、その人物の事を考えると敵意を漏らさずにはいられない。その背中すら見えていないというのに、殺気立つのは若気の至りか?
アランは視線を下ろし、男から貰った本の表紙を指でなぞる。その人物がどれだけこの本を大事にしていたかは見れば分かる。まるで形見だとでも示さんばかりの几帳面ぶりだ。
端的に、気持ちが悪い。
確かに本の類、特に『名無き勇者の物語』に関しては国によって国宝と同列の扱いがされるほど貴重な代物だ。だが、ただの人物が本のためにそこまで神経を張り詰めるなど、狂人の沙汰としか考えられない。
戦闘経験によるアランの直感が、不穏な気配……というか予感を感じ取った。
「また何か面倒な事件に巻き込まれるとか、そんなんじゃ無いだろうなぁ」
大きく息を漏らして頭を掻くアラン。態度とは裏腹にその身から溢れる剣気と魔力は、並み居る帝国騎士よりも遥かに上をいく。
そして、そんなアランの背後でシルフィアは思った。
それはフラグだよ、と。
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