英雄殺しの魔術騎士
第9話「セレナ=フローラ・オーディオルム」
セレナ誘拐事件から翌朝。平日となるこの日、セレナとユリアは学院を休むことなく登校した。
アラン曰く、何事も無かったことを世間にアピールするため、だそうだ。セレナの屋敷は人民区のほぼど真ん中にあるゆえ、昨晩の魔術戦はかなりの人に知られていた。
魔術戦は余程のことがあった事を暗に示してしまう。それをゆるりと布を被せるように、二人は何気無い顔付きで通学路を歩く。
「……そういえば、アルにぃは?」
昨晩のこともあり、遅くならないうちに家へと帰ったユリアは、寝ぼけ眼をセレナに向けながらそう尋ねる。
「あー、アイツなら……」
一応まだ敵が近くにいるかもしれない事を考慮して、セレナはユリアの耳元に口を近づけると細々と言った。
「クソ親父に会いに行く、ですって」
◆
皇帝ヴィルガ=ヘクトヴェルム・オーディオルムが住まう由緒ある城の横に、アランの目指す場所、帝国騎士第一騎士団の駐屯所はある。
本来なら帝国騎士で無い者は、絶対に近づくことの無いその場所に、アランは躊躇う様子もなく「いつも散歩する道ですがなにか?」みたいな雰囲気を醸しながら歩み寄った。
しかし。
「止まれ、貴様。ここがどういう場所が分かっての行いか?」
全身を鋼の甲冑で包む男性騎士と思しき人物が、アランの行く手を阻むように立ち塞がる。その身からは威圧的な魔力が迸っていた。
……若いなあ、こいつ。
口調といい、仕草といい慣れが見えない。甲冑にも戦場で付けられたような剣傷は無い。むしろピカピカの新品だ。それを見てアランははぁ、とため息を漏らす。
「お前。見知らぬ人が来るたびいつもそうしてんの?   身長だけでも威圧的なのに、その上魔力で威嚇なんてお前は鬼畜か?   だからここが一般市民に『魔物の巣窟』ってアダ名で呼ばれてんだよ……ったく」
「貴様、こちらが手を出せないと思ってそんな口を……!   私は今この場で、貴様の言動に処断をする事も出来るのだぞ!」
「はいはい、勝手にほざけよ。三下」
「この……っ!」
アランの軽い発言についに怒りを抱いた甲冑騎士が腰から剣を抜き取り、切っ先をアランの目先へと向ける。やはり激情に身をまかせるところからして、騎士になってまだ数ヶ月といったところか。
……魔力が揺れてる。見栄張りすぎだろ、こいつ。
人に向けて剣を向ける機会は、今や学院で幾度とあるだろう。だがこうして敵意を持たない相手を無闇に斬る事に、身を竦ませる程度の恐怖は感じているのだ。
だがそんな二人が対峙する場に一人の男が現れる。
「よっ。何やってんの、二人で」
リカルドだ。顎には無精髭を付け、四十という見た目とは裏腹な笑みを浮かべたリカルドは、駐屯所の中からではなく、どうやら外から帰ってきたようだ。
「り、リカルド騎士団長!   ちょうど良かった。この男が駐屯所に無断で侵入しようと試みたので、どうか処罰をーー」
甲冑騎士がいそいそと説明する中、リカルドは気まずそうな顔をしながら、
「あー……すまん。これは俺の息子なんだわ」
「む、息子ぉ!?   い、いえしかし、団長は娘さんがお二人だったはずでは……」
「まあ、義理の息子だからな。すまんがこいつの処罰は無しにしてやってくれ」
「しょ、承知しました……」
リカルドが言うのならばそうなのだろう、と甲冑騎士はいとも容易く納得して元の場所に戻る。
「もしもこのクソ親父が幻影魔術で作られた偽物だったら、今ので駐屯所は即壊滅だな……」
「あの若僧、今度みっちり訓練でもさせねぇとな」
さて、とリカルドはアランに向き直る。
「久々に来やがったなクソ息子。今日はどういったようけん……って、愚問だな」
リカルドの自己認識にアランは首肯して言った。
「お前の息子のアラン=フロラストとして頼みに来た。アイツに関する全ての情報を教えやがれクソ親父」
「……なるほど。だからお前は騎士服を着ていない訳だ」
リカルドの発言に対してアランはああ、と再び首肯する。
今ここで騎士としてリカルドに頼もうものなら、リカルドはアランにとって上位者に当たる人物だ。「答えられない」の一言で済まされるだろう。
だがアランは「義理の息子」という体面でリカルドとの会話の場を設けようとしている。この場に職業問題は存在しない。
だが。
「タダで教えるわけにはいかないなぁ」
騎士団長が秘匿にする情報だ。それ相応の対価となる交渉材料が必要になる。
そしてあいにくリカルドは貴族にしては金銭に対して無欲に等しい。たとえ数万エルドを積まれたところで首を縦に振ることはないだろう。
というわけで。
「昨日ユリアが置いていったこのシャツーー「よこせぇええええええええええッ!!!!」ーーを、って早っ!?」
アランが言い終わる前に色欲に飢えたリカルドは、その血走った目でそのシャツを見定め、光の速さでシャツを奪い取り、変態のごとく顔に押し当て荒い鼻息を立て始める。
もはや変態そのものだ。自分の娘に欲情する人物が義父だなんて思いたくもなかった。
……すまん、ユリア。
今の時間帯からして学院にいるであろうユリアに向けて、アランは誠心誠意の謝罪をしたのであった。
◆
「うぅ……何か悪寒が……」
その時ユリアは、全身を這い回る寒気に身をすくませた。時間的には太陽がそろそろ頂点に達しようとしているはずだから、朝寒いという事は決してない。
「どうしたの、ユリア?   まさか、昨日アイツに何かされた?」
そんなユリアを心配したセレナはそう声をかけるが、ユリアは首を横に振って否定する。
「きっと、あの変態だと思うから……」
「?」
あの野郎ブッ殺す、とでも言いたそうな鋭い気配を漂わせたユリアを見ながら、セレナはただ何が起きているのか不思議でたまらなかった。
◆
「さて、まず何から聞きたい?」
取り敢えず駐屯所の中へとやって来た二人は待合室の一端に腰をかけた。
「いやまずはシャツから顔を離せよ。このクソ変態親父」
「嫌だね!   今日は一日中このシャツ越しで息するもんね!」
「変態だ!   ここに自分の立場も考えずにクソな事やってるド変態がいるぞぉ!!」
アランの叫び声に、
「え、なになに?」
「あれって団長だよな?」
「わー、ほんとだ。団長だー」
「てか、何やってんのあの人?」
「なんか娘さんが昨日着てたシャツの匂いを嗅いでるんだとさ」
「変態だ……」
「相変わらずの変態だ……」
「文句無しのド変態ね……っ!」
「ああ、変態だな!」
「「「「「今更だけどな(ね)!!!」」」」」
とリカルドを蔑むような目で見る団員たちが続々と増えていく。
……こんな人物が義父だなんて思いたくない……っ!!
世の中とはなぜこうも不自然に狂っているのだろうか。アランは疑問に思う。
だが、さすがこれ以上はと感じたのか、ちっ、と舌打ちをしたリカルドは顔からシャツを離した。
「……で、セレナ嬢ちゃんに関する事が聞きたいんだったな。それも昨日の襲撃に関する事を全体的に」
リカルドの問いにアランは無言で首肯する。
その応答にリカルドはどうしたものか、とでも言うようにため息を漏らした。
「さてと。どう説明したもんかねぇ……こっちにも守秘義務があるからなぁ……」
「無理はしなくていい。どうせ限りある情報でも大体理解できるからな」
「はいはい、天才様は言う事がえげついなっと」
さて、とリカルドは言うと一呼吸整えてから話を始めた。
「まず第一にお前に言っておきたい事がある。これは守秘義務は無いが、あまり他言するなよ?」
「は、いったい何を……」
「いいか?   セレナ嬢ちゃんはな……」
ニッと笑って、
「実の皇帝の娘じゃない」
◆
「は、はぁ!?   それがどういう意味ーー」
と、言いかけたところでアランはその言葉の真意を察知した。
「……なるほど。そういう事か」
「そう。セレナ=フローラ・オーディオルムは現皇帝の実の子じゃない。彼女は母であるリエル・フローラの連れっ子なんだ」
ヴィルガがリエルを妾にしたのは革命終結の五年前のこと。つまりその時十歳だったセレナは生まれていないと可笑しい。
「じゃあ父親は……?」
「分からん。母親も五年前に息子を産んで亡くなったし、そもそもリエル・フローラの情報が入ってこない。手がかりが少な過ぎてこれ以上は調べようがないほどにな」
ったく、とリカルドは毒づいた。
「ここから更に意味の分からん状況が続く。セレナの義弟にあたるハッシュ=エルドフレ・オーディオルム、まあつまり第三皇子が二週間ほど前に何者かによって暗殺された」
「五歳児を殺すなんて、そいつら生粋の外道野郎だな」
「まったくだ。……だが、これで謎が二つになった。
一つ、現皇族ばかりを狙った犯行の首謀者達の正体とその目的。
二つ、第三皇子は暗殺、先週の第二皇子も殺す気で襲って来たのになぜセレナ嬢ちゃんだけが誘拐だったのか。
一つ目に関しては第一騎士団でなんとかするが、二つ目は情報が足りんからなんとも言えない」
「昨日俺が捕まえたあの四人から聞き出せばいいじゃないか」
「ああ、あいつらなら死んだ。自害しやがった」
吐き捨てるようにリカルドは言う。
「刻印型の爆裂魔術だ。捕まったら元からそうする手はずだったんだろうが……分かるだろう?」
それに対してアランはああ、と首肯する。
刻印型の爆裂『魔術』。つまり第一神聖語を熟知した者が魔術方陣を描いたという事だ。意味など理解せずに魔術方陣を描いても術は発動するが、字体バランスや文法の違いで人を殺すまでの威力には至らない。
「その魔術方陣を描いたやつは相当な切れ者だな……俺と同じか、またはそれ以上か……」
「なんにせよ、敵は俺達の思っている以上に巨大かもしれん。数百、もしかしたら数千単位の構成組織かもしれないな」
「……でもそれを潰すのが、第一騎士団の仕事の一端だろ?」
ニッとアランが笑うと、リカルドもそれに応じた。
「まあ、ぶっちゃけお前に仕事をさせようなんて、これっぽっちも思っちゃいねぇさ。だがまあ、しばらくはお前に任せちまう事になるけどな」
「は?   それってどういうーー」
アランが問いただそうとすると、
「団長!   そろそろ行きますよ!」
団員の一人が待合室に座る二人へと声をかけた。身を帝国騎士の騎士服に包み、髪型はピシッと整えられ、第一騎士団を表す金獅子と横たわる剣の描かれた徽章もしっかりと胸に付けられている。
「行くって、どこに行くんだよ?」
「さてと……アラン=フロラスト帝国騎士。ここからは上司と部下の話だ」
唐突に声音を変えるリカルド。それは日常的にニヘラニヘラとした喋り口調ではなく、仕事用の本格的な帝国騎士第一騎士団団長としてのものだ。思わずアランも顔を引き締める。
「我々第一騎士団は、本日正午を以て帝都リーバスを出立。第一騎士団所属総勢三百十八名は敵国境線付近にて敵と対峙。暫くの間、帝都を留守にする」
「敵、とは?」
「アルダー帝国だ」
「な……っ!?」
リカルドの返答にアランは驚愕を表した。
アルダー帝国。一世紀以上も昔からオルフェリア帝国と国境を奪って奪われてを繰り返している国だ。魔術を重視するオルフェリア帝国とは異なり、アルダー帝国では人為的な合成獣の生成に重点を置いている。成体の合成獣は魔術に対して強い魔力抗力を持つからだ。
皇帝が変わった現在でもアルダー帝国は変わらず国境を攻め続けている。むしろ五年以前よりも過激さを増しているかもしれない。
「三日前から、アルダー帝国国境付近にて多数の影を確認。おそらく成体の合成獣だと判断される。それに加えて幼体が数十体と、敵魔術兵団百人部隊が四つ。これらから近い内にアルダー帝国は侵攻を始めるものだと推測される」
「かなりの大規模だな……」
その規模なら大型の成竜ですら容易に屠れるだろう。とくに魔術兵が四百人となると、第一騎士団も手を焼くだろう。
アランの呟きに眉一つ動かさないリカルドは、話をさらに続ける。
「アラン=フロラスト帝国騎士は本作戦に参加せず、現任務を全うする事を騎士団長として命ずる。これは皇帝からの許可も下りている」
そして耳元に口を寄せると、
「『護り』は任せたぞ。クソ息子」
そう言ってニッと笑うと、リカルドは団員を連れて待合室を後にした。
……護りは任せた、ねぇ。
帝国騎士団は第一から第三までの三つに大きく割れる。
第一は「武力行使」。第二は「皇族守護」。そして第三は「秩序と処罰」。それゆえに第二と第三に所属する帝国騎士のほとんどが剣を握り、殺人用の魔術をぶっ放す本気の殺し合いに慣れていない。
ゆえに戦力となるのは第一騎士団のみ。その第一騎士団全員が帝都を離れるのだからもしもの事があれば、一番頼りになるのはリカルドが最も信頼するアランという訳だ。
「また妙な期待をしやがって、あのクソ親父……」
自分は本当は帝国騎士ではなく、一般市民だ。それはアランも重々承知である。だからと言って、帝都が襲撃されても黙って見過ごす事など出来るはずがない。
そして何より今一番気になるのが、
「……セレナ=フローラ・オーディオルムの謎だな」
自身で名付けたその命題についての情報を、ゆっくりと脳内で整理する。
第三皇子の暗殺と第二皇子への襲撃。それにもかかわらずセレナは誘拐。セレナは皇族直系の血族では無い。では敵が求めるのはセレナの何か?   だがならなぜ第三皇子と第二皇子を狙ったのか。駄目だ、情報が少な過ぎる。
「くそ……っ」
予想以上に巨大な敵組織。第一神聖語を翻訳し、自在に操ることが出来るアラン並みの天才。第一神聖語はイフリア大陸全土で知られている言語だから、特定の国は断定できない。タイミング良く集まっているアルダー帝国の魔術兵団と合成獣。なぜこうもタイミングが良いのか。もしかして敵はアルダー帝国?   だがそう断定出来る要素が少ない。
「八方塞がりだなぁ、これは」
訳わからんとでも言うようにアランは大きく伸びをする。すでに駐屯所には騎士の一人もおらず、辺りは気持ちの悪いほどに静かだった。
そろそろ帰るか、と椅子から腰を上げ、入り口へと足を向けるアラン。リカルドから得た情報で確信的なことは何一つ掴むことは出来なかった。
だが、それに代わって得たものは一つある。
「母親は病死。父親は行方不明か……」
戦災孤児であるアランは物心がついた頃には既に実の両親はいなかった。捨てられていた赤子として見つけてくれて、そして目の前で死んでいった義理の両親は覚えているが、五歳の頃からリカルドに実の息子のように育てられ、なに不自由なく暮らしてきたアランは親がいない事への虚しさと寂しさを知らない。今やもう大人だ。それすらもう感じることは無いだろう。
だがセレナは違う。彼女はまだ十五歳で、少女で、子供だ。十歳で両親がいなくなったとはいえ何かしらの虚しさを感じているだろう。
これは同情ではない。単なる理解だ。
生まれながらにして何もかもを一旦は無くし、そしてリカルドに拾われて何もかもを手にした。そんな自分が歯痒くて、そして十二歳の時に自分の道を自身で選択した。あの時の選択が間違いだったと、今なら絶対に言えるだろう。自分の犯した罪は一生消えることはなく、幾千度と自身を蝕むだろう。正真正銘の呪いのように。
だがそんな人生を肯定してくれるかのように、力を求める少女がいた。それはまるで八年前の自分を想起させるようで、彼女にも自分と同じ血の道を歩んで欲しくは無かった。
だが彼女は思った以上に強かった。心が何より強かった。そして彼女は言った。
『私は帝国騎士になって行きたい場所があるのよ』
そこはフリーゲルの幻想城。かつて三百を超える精鋭魔術騎士達が赴き、生存者はたったの一人という地獄の果てだ。
以前リカルドがこう言っていた事を思い出す。「あそこは普通の人間が行くような場所じゃない」と。
なら自分はどうだろうか。「あの事故」以来、自分はどうなのだろうか。「この身体」はもはや人間ではないのだろうか。そんな事を考えてしまう。
……もしもセレナが、俺と同じになったら。
そんな不安が脳裏をよぎったその時、
『ま、期待しているから』
ほんの三日前のあの言葉が、アランの頬を引っ叩いた。彼女は言ったのだ。期待している、と。
「俺が弱気になってるなぁ……」
期待は何時か身を滅ぼすと、むかし誰かから耳にした覚えがある。だがおそらくこの身は終える事はあろうとも、滅ぶ事は無いだろう。
ならば、期待を大いに受け入れようではないか。もしもセレナに何か起きようものならば、自分が命を賭して止めに入れば良い。自分の学んだ全てを、自分とは異なる道筋で伝えれば良い。
ならば自分の意思はもう決まっている。
駐屯所の出口を抜けると、眼前には大きな古城。中にはセレナの義父であるヴィルガ=ヘクトヴェルム・オーディオルムが玉座に鎮座しているのだろう。
彼だって人間だ。神霊や英霊では無いのだから、嘘や隠し事など一つ二つあるだろう。きっとセレナが今も人民区で過ごしているのにも訳があるに違いない。
「……そういえば」
セレナがヴィルガの子供では無いとしたら、あの魔力容量の大きさはどういう訳だろうか。一般市民だったリエルが貴族級の魔力容量を持っているとは到底思えない。だとしたら考えられるのはセレナの父親が貴族という可能性だ。別に貴族と一般市民の婚約に前例が無い訳ではない。
だが当時の貴族は五十家以上はある。その中で『六貴会』を除いたとしても、四十数の可能性があるのだ。しらみ潰しに探しても見つかる事はまず無いだろう。
「だとしたら、俺が考えても意味は無いか」
時刻的にお昼時。丘の上に立つ駐屯所からは学院が眺められた。魔力による視覚強化でテラス席で食事を楽しむ生徒達の姿が見える。
……そういや、俺も腹減ったなぁ。
道中で何か買おう、などと考えながらアランは学院を目指して歩き始めるのだった。
アラン曰く、何事も無かったことを世間にアピールするため、だそうだ。セレナの屋敷は人民区のほぼど真ん中にあるゆえ、昨晩の魔術戦はかなりの人に知られていた。
魔術戦は余程のことがあった事を暗に示してしまう。それをゆるりと布を被せるように、二人は何気無い顔付きで通学路を歩く。
「……そういえば、アルにぃは?」
昨晩のこともあり、遅くならないうちに家へと帰ったユリアは、寝ぼけ眼をセレナに向けながらそう尋ねる。
「あー、アイツなら……」
一応まだ敵が近くにいるかもしれない事を考慮して、セレナはユリアの耳元に口を近づけると細々と言った。
「クソ親父に会いに行く、ですって」
◆
皇帝ヴィルガ=ヘクトヴェルム・オーディオルムが住まう由緒ある城の横に、アランの目指す場所、帝国騎士第一騎士団の駐屯所はある。
本来なら帝国騎士で無い者は、絶対に近づくことの無いその場所に、アランは躊躇う様子もなく「いつも散歩する道ですがなにか?」みたいな雰囲気を醸しながら歩み寄った。
しかし。
「止まれ、貴様。ここがどういう場所が分かっての行いか?」
全身を鋼の甲冑で包む男性騎士と思しき人物が、アランの行く手を阻むように立ち塞がる。その身からは威圧的な魔力が迸っていた。
……若いなあ、こいつ。
口調といい、仕草といい慣れが見えない。甲冑にも戦場で付けられたような剣傷は無い。むしろピカピカの新品だ。それを見てアランははぁ、とため息を漏らす。
「お前。見知らぬ人が来るたびいつもそうしてんの?   身長だけでも威圧的なのに、その上魔力で威嚇なんてお前は鬼畜か?   だからここが一般市民に『魔物の巣窟』ってアダ名で呼ばれてんだよ……ったく」
「貴様、こちらが手を出せないと思ってそんな口を……!   私は今この場で、貴様の言動に処断をする事も出来るのだぞ!」
「はいはい、勝手にほざけよ。三下」
「この……っ!」
アランの軽い発言についに怒りを抱いた甲冑騎士が腰から剣を抜き取り、切っ先をアランの目先へと向ける。やはり激情に身をまかせるところからして、騎士になってまだ数ヶ月といったところか。
……魔力が揺れてる。見栄張りすぎだろ、こいつ。
人に向けて剣を向ける機会は、今や学院で幾度とあるだろう。だがこうして敵意を持たない相手を無闇に斬る事に、身を竦ませる程度の恐怖は感じているのだ。
だがそんな二人が対峙する場に一人の男が現れる。
「よっ。何やってんの、二人で」
リカルドだ。顎には無精髭を付け、四十という見た目とは裏腹な笑みを浮かべたリカルドは、駐屯所の中からではなく、どうやら外から帰ってきたようだ。
「り、リカルド騎士団長!   ちょうど良かった。この男が駐屯所に無断で侵入しようと試みたので、どうか処罰をーー」
甲冑騎士がいそいそと説明する中、リカルドは気まずそうな顔をしながら、
「あー……すまん。これは俺の息子なんだわ」
「む、息子ぉ!?   い、いえしかし、団長は娘さんがお二人だったはずでは……」
「まあ、義理の息子だからな。すまんがこいつの処罰は無しにしてやってくれ」
「しょ、承知しました……」
リカルドが言うのならばそうなのだろう、と甲冑騎士はいとも容易く納得して元の場所に戻る。
「もしもこのクソ親父が幻影魔術で作られた偽物だったら、今ので駐屯所は即壊滅だな……」
「あの若僧、今度みっちり訓練でもさせねぇとな」
さて、とリカルドはアランに向き直る。
「久々に来やがったなクソ息子。今日はどういったようけん……って、愚問だな」
リカルドの自己認識にアランは首肯して言った。
「お前の息子のアラン=フロラストとして頼みに来た。アイツに関する全ての情報を教えやがれクソ親父」
「……なるほど。だからお前は騎士服を着ていない訳だ」
リカルドの発言に対してアランはああ、と再び首肯する。
今ここで騎士としてリカルドに頼もうものなら、リカルドはアランにとって上位者に当たる人物だ。「答えられない」の一言で済まされるだろう。
だがアランは「義理の息子」という体面でリカルドとの会話の場を設けようとしている。この場に職業問題は存在しない。
だが。
「タダで教えるわけにはいかないなぁ」
騎士団長が秘匿にする情報だ。それ相応の対価となる交渉材料が必要になる。
そしてあいにくリカルドは貴族にしては金銭に対して無欲に等しい。たとえ数万エルドを積まれたところで首を縦に振ることはないだろう。
というわけで。
「昨日ユリアが置いていったこのシャツーー「よこせぇええええええええええッ!!!!」ーーを、って早っ!?」
アランが言い終わる前に色欲に飢えたリカルドは、その血走った目でそのシャツを見定め、光の速さでシャツを奪い取り、変態のごとく顔に押し当て荒い鼻息を立て始める。
もはや変態そのものだ。自分の娘に欲情する人物が義父だなんて思いたくもなかった。
……すまん、ユリア。
今の時間帯からして学院にいるであろうユリアに向けて、アランは誠心誠意の謝罪をしたのであった。
◆
「うぅ……何か悪寒が……」
その時ユリアは、全身を這い回る寒気に身をすくませた。時間的には太陽がそろそろ頂点に達しようとしているはずだから、朝寒いという事は決してない。
「どうしたの、ユリア?   まさか、昨日アイツに何かされた?」
そんなユリアを心配したセレナはそう声をかけるが、ユリアは首を横に振って否定する。
「きっと、あの変態だと思うから……」
「?」
あの野郎ブッ殺す、とでも言いたそうな鋭い気配を漂わせたユリアを見ながら、セレナはただ何が起きているのか不思議でたまらなかった。
◆
「さて、まず何から聞きたい?」
取り敢えず駐屯所の中へとやって来た二人は待合室の一端に腰をかけた。
「いやまずはシャツから顔を離せよ。このクソ変態親父」
「嫌だね!   今日は一日中このシャツ越しで息するもんね!」
「変態だ!   ここに自分の立場も考えずにクソな事やってるド変態がいるぞぉ!!」
アランの叫び声に、
「え、なになに?」
「あれって団長だよな?」
「わー、ほんとだ。団長だー」
「てか、何やってんのあの人?」
「なんか娘さんが昨日着てたシャツの匂いを嗅いでるんだとさ」
「変態だ……」
「相変わらずの変態だ……」
「文句無しのド変態ね……っ!」
「ああ、変態だな!」
「「「「「今更だけどな(ね)!!!」」」」」
とリカルドを蔑むような目で見る団員たちが続々と増えていく。
……こんな人物が義父だなんて思いたくない……っ!!
世の中とはなぜこうも不自然に狂っているのだろうか。アランは疑問に思う。
だが、さすがこれ以上はと感じたのか、ちっ、と舌打ちをしたリカルドは顔からシャツを離した。
「……で、セレナ嬢ちゃんに関する事が聞きたいんだったな。それも昨日の襲撃に関する事を全体的に」
リカルドの問いにアランは無言で首肯する。
その応答にリカルドはどうしたものか、とでも言うようにため息を漏らした。
「さてと。どう説明したもんかねぇ……こっちにも守秘義務があるからなぁ……」
「無理はしなくていい。どうせ限りある情報でも大体理解できるからな」
「はいはい、天才様は言う事がえげついなっと」
さて、とリカルドは言うと一呼吸整えてから話を始めた。
「まず第一にお前に言っておきたい事がある。これは守秘義務は無いが、あまり他言するなよ?」
「は、いったい何を……」
「いいか?   セレナ嬢ちゃんはな……」
ニッと笑って、
「実の皇帝の娘じゃない」
◆
「は、はぁ!?   それがどういう意味ーー」
と、言いかけたところでアランはその言葉の真意を察知した。
「……なるほど。そういう事か」
「そう。セレナ=フローラ・オーディオルムは現皇帝の実の子じゃない。彼女は母であるリエル・フローラの連れっ子なんだ」
ヴィルガがリエルを妾にしたのは革命終結の五年前のこと。つまりその時十歳だったセレナは生まれていないと可笑しい。
「じゃあ父親は……?」
「分からん。母親も五年前に息子を産んで亡くなったし、そもそもリエル・フローラの情報が入ってこない。手がかりが少な過ぎてこれ以上は調べようがないほどにな」
ったく、とリカルドは毒づいた。
「ここから更に意味の分からん状況が続く。セレナの義弟にあたるハッシュ=エルドフレ・オーディオルム、まあつまり第三皇子が二週間ほど前に何者かによって暗殺された」
「五歳児を殺すなんて、そいつら生粋の外道野郎だな」
「まったくだ。……だが、これで謎が二つになった。
一つ、現皇族ばかりを狙った犯行の首謀者達の正体とその目的。
二つ、第三皇子は暗殺、先週の第二皇子も殺す気で襲って来たのになぜセレナ嬢ちゃんだけが誘拐だったのか。
一つ目に関しては第一騎士団でなんとかするが、二つ目は情報が足りんからなんとも言えない」
「昨日俺が捕まえたあの四人から聞き出せばいいじゃないか」
「ああ、あいつらなら死んだ。自害しやがった」
吐き捨てるようにリカルドは言う。
「刻印型の爆裂魔術だ。捕まったら元からそうする手はずだったんだろうが……分かるだろう?」
それに対してアランはああ、と首肯する。
刻印型の爆裂『魔術』。つまり第一神聖語を熟知した者が魔術方陣を描いたという事だ。意味など理解せずに魔術方陣を描いても術は発動するが、字体バランスや文法の違いで人を殺すまでの威力には至らない。
「その魔術方陣を描いたやつは相当な切れ者だな……俺と同じか、またはそれ以上か……」
「なんにせよ、敵は俺達の思っている以上に巨大かもしれん。数百、もしかしたら数千単位の構成組織かもしれないな」
「……でもそれを潰すのが、第一騎士団の仕事の一端だろ?」
ニッとアランが笑うと、リカルドもそれに応じた。
「まあ、ぶっちゃけお前に仕事をさせようなんて、これっぽっちも思っちゃいねぇさ。だがまあ、しばらくはお前に任せちまう事になるけどな」
「は?   それってどういうーー」
アランが問いただそうとすると、
「団長!   そろそろ行きますよ!」
団員の一人が待合室に座る二人へと声をかけた。身を帝国騎士の騎士服に包み、髪型はピシッと整えられ、第一騎士団を表す金獅子と横たわる剣の描かれた徽章もしっかりと胸に付けられている。
「行くって、どこに行くんだよ?」
「さてと……アラン=フロラスト帝国騎士。ここからは上司と部下の話だ」
唐突に声音を変えるリカルド。それは日常的にニヘラニヘラとした喋り口調ではなく、仕事用の本格的な帝国騎士第一騎士団団長としてのものだ。思わずアランも顔を引き締める。
「我々第一騎士団は、本日正午を以て帝都リーバスを出立。第一騎士団所属総勢三百十八名は敵国境線付近にて敵と対峙。暫くの間、帝都を留守にする」
「敵、とは?」
「アルダー帝国だ」
「な……っ!?」
リカルドの返答にアランは驚愕を表した。
アルダー帝国。一世紀以上も昔からオルフェリア帝国と国境を奪って奪われてを繰り返している国だ。魔術を重視するオルフェリア帝国とは異なり、アルダー帝国では人為的な合成獣の生成に重点を置いている。成体の合成獣は魔術に対して強い魔力抗力を持つからだ。
皇帝が変わった現在でもアルダー帝国は変わらず国境を攻め続けている。むしろ五年以前よりも過激さを増しているかもしれない。
「三日前から、アルダー帝国国境付近にて多数の影を確認。おそらく成体の合成獣だと判断される。それに加えて幼体が数十体と、敵魔術兵団百人部隊が四つ。これらから近い内にアルダー帝国は侵攻を始めるものだと推測される」
「かなりの大規模だな……」
その規模なら大型の成竜ですら容易に屠れるだろう。とくに魔術兵が四百人となると、第一騎士団も手を焼くだろう。
アランの呟きに眉一つ動かさないリカルドは、話をさらに続ける。
「アラン=フロラスト帝国騎士は本作戦に参加せず、現任務を全うする事を騎士団長として命ずる。これは皇帝からの許可も下りている」
そして耳元に口を寄せると、
「『護り』は任せたぞ。クソ息子」
そう言ってニッと笑うと、リカルドは団員を連れて待合室を後にした。
……護りは任せた、ねぇ。
帝国騎士団は第一から第三までの三つに大きく割れる。
第一は「武力行使」。第二は「皇族守護」。そして第三は「秩序と処罰」。それゆえに第二と第三に所属する帝国騎士のほとんどが剣を握り、殺人用の魔術をぶっ放す本気の殺し合いに慣れていない。
ゆえに戦力となるのは第一騎士団のみ。その第一騎士団全員が帝都を離れるのだからもしもの事があれば、一番頼りになるのはリカルドが最も信頼するアランという訳だ。
「また妙な期待をしやがって、あのクソ親父……」
自分は本当は帝国騎士ではなく、一般市民だ。それはアランも重々承知である。だからと言って、帝都が襲撃されても黙って見過ごす事など出来るはずがない。
そして何より今一番気になるのが、
「……セレナ=フローラ・オーディオルムの謎だな」
自身で名付けたその命題についての情報を、ゆっくりと脳内で整理する。
第三皇子の暗殺と第二皇子への襲撃。それにもかかわらずセレナは誘拐。セレナは皇族直系の血族では無い。では敵が求めるのはセレナの何か?   だがならなぜ第三皇子と第二皇子を狙ったのか。駄目だ、情報が少な過ぎる。
「くそ……っ」
予想以上に巨大な敵組織。第一神聖語を翻訳し、自在に操ることが出来るアラン並みの天才。第一神聖語はイフリア大陸全土で知られている言語だから、特定の国は断定できない。タイミング良く集まっているアルダー帝国の魔術兵団と合成獣。なぜこうもタイミングが良いのか。もしかして敵はアルダー帝国?   だがそう断定出来る要素が少ない。
「八方塞がりだなぁ、これは」
訳わからんとでも言うようにアランは大きく伸びをする。すでに駐屯所には騎士の一人もおらず、辺りは気持ちの悪いほどに静かだった。
そろそろ帰るか、と椅子から腰を上げ、入り口へと足を向けるアラン。リカルドから得た情報で確信的なことは何一つ掴むことは出来なかった。
だが、それに代わって得たものは一つある。
「母親は病死。父親は行方不明か……」
戦災孤児であるアランは物心がついた頃には既に実の両親はいなかった。捨てられていた赤子として見つけてくれて、そして目の前で死んでいった義理の両親は覚えているが、五歳の頃からリカルドに実の息子のように育てられ、なに不自由なく暮らしてきたアランは親がいない事への虚しさと寂しさを知らない。今やもう大人だ。それすらもう感じることは無いだろう。
だがセレナは違う。彼女はまだ十五歳で、少女で、子供だ。十歳で両親がいなくなったとはいえ何かしらの虚しさを感じているだろう。
これは同情ではない。単なる理解だ。
生まれながらにして何もかもを一旦は無くし、そしてリカルドに拾われて何もかもを手にした。そんな自分が歯痒くて、そして十二歳の時に自分の道を自身で選択した。あの時の選択が間違いだったと、今なら絶対に言えるだろう。自分の犯した罪は一生消えることはなく、幾千度と自身を蝕むだろう。正真正銘の呪いのように。
だがそんな人生を肯定してくれるかのように、力を求める少女がいた。それはまるで八年前の自分を想起させるようで、彼女にも自分と同じ血の道を歩んで欲しくは無かった。
だが彼女は思った以上に強かった。心が何より強かった。そして彼女は言った。
『私は帝国騎士になって行きたい場所があるのよ』
そこはフリーゲルの幻想城。かつて三百を超える精鋭魔術騎士達が赴き、生存者はたったの一人という地獄の果てだ。
以前リカルドがこう言っていた事を思い出す。「あそこは普通の人間が行くような場所じゃない」と。
なら自分はどうだろうか。「あの事故」以来、自分はどうなのだろうか。「この身体」はもはや人間ではないのだろうか。そんな事を考えてしまう。
……もしもセレナが、俺と同じになったら。
そんな不安が脳裏をよぎったその時、
『ま、期待しているから』
ほんの三日前のあの言葉が、アランの頬を引っ叩いた。彼女は言ったのだ。期待している、と。
「俺が弱気になってるなぁ……」
期待は何時か身を滅ぼすと、むかし誰かから耳にした覚えがある。だがおそらくこの身は終える事はあろうとも、滅ぶ事は無いだろう。
ならば、期待を大いに受け入れようではないか。もしもセレナに何か起きようものならば、自分が命を賭して止めに入れば良い。自分の学んだ全てを、自分とは異なる道筋で伝えれば良い。
ならば自分の意思はもう決まっている。
駐屯所の出口を抜けると、眼前には大きな古城。中にはセレナの義父であるヴィルガ=ヘクトヴェルム・オーディオルムが玉座に鎮座しているのだろう。
彼だって人間だ。神霊や英霊では無いのだから、嘘や隠し事など一つ二つあるだろう。きっとセレナが今も人民区で過ごしているのにも訳があるに違いない。
「……そういえば」
セレナがヴィルガの子供では無いとしたら、あの魔力容量の大きさはどういう訳だろうか。一般市民だったリエルが貴族級の魔力容量を持っているとは到底思えない。だとしたら考えられるのはセレナの父親が貴族という可能性だ。別に貴族と一般市民の婚約に前例が無い訳ではない。
だが当時の貴族は五十家以上はある。その中で『六貴会』を除いたとしても、四十数の可能性があるのだ。しらみ潰しに探しても見つかる事はまず無いだろう。
「だとしたら、俺が考えても意味は無いか」
時刻的にお昼時。丘の上に立つ駐屯所からは学院が眺められた。魔力による視覚強化でテラス席で食事を楽しむ生徒達の姿が見える。
……そういや、俺も腹減ったなぁ。
道中で何か買おう、などと考えながらアランは学院を目指して歩き始めるのだった。
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