香川外科の愉快な仲間たち

こうやまみか

久米先生編 「夏事件」の後 115

 次期教授との呼び声も高かった黒木准教授を――オレはその時はまだ学生だった――あっさりと覆して国立病院の教授の最年少に就いた香川教授とひと悶着もんちゃく有るだろうというウワサが医学生にまで届いていたのも事実だった。場合によってはバチバチとした殺気立った医局になるのと思いきや、黒木准教授は温厚で和やかな感じで教授の「女房役」を務めている。ちなみに、田中先生の場合は医局でトラブルが起こりそうになると、最小限の言葉で相手を黙らすという点とか過去の失敗を――大事件に分類されるようなことは起こっていないが、いわゆるヒヤリ・ハットは稀に聞く――チクリと言うという戦法を取っているので陰では「香川教授の小姑こじゅうとめ」と言われている。
 そういう意味では温和で温厚極まりなくて、そして香川教授が手技に没頭できるようにという心配りをする「大人」な黒木准教授と似ているのかな?と思っていたけれど、いったん頭に血が上ると何を仕出かすか分からない人なのだという認識を持ってしまった。
 まあ、あんな「とんでもない」事件はこれからはないと思いたいので、遠藤先生もキれることはないだろうけれども。
 ともかく医局のデスクに居ても大変静かだし私用のPCに向かっている姿が多い。当然、遠藤先生も
主治医を務めているので、その患者さんへの注意事項とかはナースや同僚に申し送りはしている。
 ただ、その存在感の薄さは医局一だと思う。
 オレの場合は田中先生や柏木先生にイジりのネタにされているので、医局の中でも声は大きいほうだろう。我ながら情けない悲鳴とか、この頃は特にデートの予行演習で容赦なくダメだしをされて凹んでいる声とかで、到底アクアマリン姫には見せたくない。
 だから、ウチの医局に呼ぶよりも脳外科に行った方が断然好感度は上がるだろう。
 ただ、結婚を前提としたお付き合い希望だし、結婚前から「そういうコト」をするのは今の時代普通だろう。
 そうなった場合、どうすれば良いのだろう?
 オレの同級生で、しかも私学文系という「暇な時間を作ろうと思えばいくらでも」というある意味羨ましい環境でもイケていないヤツは「そういうお店」に行っているらしい。ただ、そういうトコのお姉さんは――中には小母さんという年齢の人も居るらしいが――「お仕事」として慣れているし、何でもイロイロとサービスをしてくれて男は何もしなくても良いらしい。
 けれども。

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